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第34話

キスをしながら、少しずつ移動する。 秀介は響をベッドサイドまで連れてきたところで、唇を放してやり、彼の肩を掴んでベッドの上に縫い付けた。 「秀介!?何考えてるの!?」 冗談じゃないと、響は声を荒げる。 まさかとは思うが、彼は響を抱こうとしているのだろうか。 無理だ。 男同士で交わる経験も覚悟もないまま、肌を重ねようと思うなんて、後悔するに決まっている。 「や……や、だ……秀介……聞いてよ……ッ……!」 服がどんどん脱がされていく。 上半身にまとっていたニットのセーター、その下に着ていたTシャツ、ジーパン、ボクサーパンツも。 素っ裸にされた響は、抗えない力を持つ秀介に、微かな恐怖を抱いた。 ちょっともがいたくらいでは、秀介の力には対抗できない。 響が心の中で怯えていると、秀介もまたスーツを脱ぎ始めた。 まずブレザーを脱ぎ、ネクタイを緩めて解いて、ワイシャツを脱ぐ。 次にベルトのバックルを外し、ホックを外してスラックスを脱ぎ、最後に下着を脱いだ。 「やだってば!秀介!もうやめて!」 全裸になっても、響はまだ抵抗する。 手足をバタつかせ、時に秀介の顔をひっかくほど腕を動かし、夢中で彼の力から逃れようとする。 「大人しくしてくれ、響」 凛とした声に、響は両目を見開く。 こんな風に落ち着いた秀介を見るのは、初めてのことではないだろうか。 いつも落ち着いているようでどこか子供っぽさを併せ持っているのに、今の彼は大人の男の顔をしている。 「傷つけたことは謝る。すまなかった」 「!?」 「だが、お前を誰かにくれてやるつもりはない」 「な、なんで……?」 響の声が上ずった。 どうして今更こんなことを言って、自分達の仲を修復させたいと思っているのかが、本気で分からない。 「好きだからだ」 「え……?」 「抱くのに、それ以外の理由が必要か?」 いいや、必要じゃない。 響だって意地を張ってはいるが、まだ秀介のことが好きなままだ。 その気持ちを再確認した響は、瞼を下ろして深い深呼吸を一つすると、秀介の滑らかなくせ毛を指で梳き始めた。 それが合図であったかのように、秀介が響に改めてキスを落としてくる。 さっきと同じように、舌が挿し入れられると、響は自分の舌を秀介のそれに絡め合わせてみた。 ああ、心地いい。 好きな人とのキスが、こんなに気持ちよくて頭の芯がとろんとするものだとは、知らなかった。 秀介は唇を解放すると、今度は響の耳に唇を這わせる。 耳に熱い吐息を送り込みながら、「好きだ」と囁きかけてきた。

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