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第15話 久々の逢瀬1
(葵語り)
夏休みに入る少し前、猪俣先生から連絡があった。先生とは2~3週間に1度、会えるか会えないかだから、本当に嬉しかった。
先生から連絡が来ない限り俺が関わることは許されていない。虚しい自分の存在意義も、先生の顔を見たら吹き飛んでしまう。後悔の波が後から俺を包み込むが、そんなことを今は気にしたくなかった。
「葵、こっちにおいで。」
「うん…………」
今日の先生は特段に優しい。
ホテルの部屋に入ると抱きしめてくれた。
俺が先生を独り占めできるこの瞬間が一番幸せだ。シャツにピッタリとくっつけて、頬を擦り寄せた。
『葵が好きだ』
突然頭の中で、熊谷先生の言葉がリフレインした。先生とは全然違う煙草と甘い匂いを思い出し、一瞬俺はどこにいるんだろうと錯覚を起こしてしまう。無意識に身体を強ばらせていたようで、先生が怪訝そうに俺を見た。
「葵、どうしたの?」
「なんでもない。先生、キスしよ。」
熊谷先生は、猪俣先生のことを好きでもいいと、俺に笑っていて欲しいと言った。俺は熊谷先生に何かしてあげれるのかな。
ぼんやりと考えていると、
「他のことは考えない。」
「ん……ごめんなさい。」
キスの合間に注意をされた。
次第に押し寄せる快楽に考えることを止めてしまった。
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