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第23話 レモンキャンディ2
(島田真理語り)
盛り下がった気分を上げるにはどうしたらいいか考えた。
思いつくことはセックスしかない。
でも、こんな時に限って誰とも連絡がつかず、素直に諦めて大人しく家へ帰ることにした。
校舎を出たところで、校門に誰か立ってるのが見えた。明らかに高校生ではないその人は、下校中の生徒を凝視している。チャラチャラした不潔そうな身なりに煙草を咥えた人物を俺は知っていた。やばい、信一だ。絶対に僕を探してる。
先週、交際の申し込みを丁重にお断りした筈なのに、学校まで僕を探しに来ている。高校名まで知ってるとは往生際が悪い奴だ。
兄ちゃんの知り合いだから、余計に面倒くさいことになりそうで関わりたくなかった。
向こうからゴリ押ししてきたので、しょうがなく2、3回相手をしただけだ。
うわー、どうしよう。
修羅場っぽいのは苦手で、裏口から逃げるか真剣に考えた。逃げても家を知られてるから同じだろうし……と、下駄箱付近で悩んでいたら、
「どうかしたの。具合でも悪い?」
声を掛けられた。
声の主は……誰だっけ?
確か…同じクラスの……伊藤君だ。
伊藤君は僕ほどじゃないけど可愛い顔をしている。その気になれば、モテモテじゃないかな。
色気もその辺の女子よりある。
そうだ、彼に協力してもらおうと、いい考えが思い浮かんだ。
「あのさ、伊藤君、協力してほしいことがあるんだけど」
突然早口で話し始めた僕に、伊藤君は呆気にとられている。
「校門に、怖い知り合いが来てるんだ。見つかったら絶対殴られる。家を知られてるから、逃げられない。話を着けたいから一緒に来てほしいんだ」
「一緒に?俺が?」
当然、伊藤君はびっくりした顔をする。
「何もしなくてもいいから。側にいてくれればいい。1人だと怖くて。僕、友達いないから頼れる人がいないんだ」
伊藤君は、少し考えてから「いいよ」と答えた。彼は案外お人好しなのかもしれない。
2人で並んで一緒に校門へ向かうと、案の定、信一が僕を見付けて駆け寄ってきた。
「真理、俺の話をもう一度聞いてほしい」
今にも噛みつかんばかりの必死さが伝わってくる。
「聞くよ?あっちに公園があるから、そこで話そう」
僕の作戦がうまくいきますように。
そう祈りながら、伊藤君と共に信一を公園へ誘導した。
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