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第25話 レモンキャンディ4
(島田真理語り)
僕の家までは、電車と徒歩で1時間弱かかる。
その間、伊藤君の個人情報を引き出そうと、僕は躍起になって質問攻めをした。
下の名前は『葵』というらしく、葵君って呼んでいい?と聞いたら間があったけど、いいよと了承してくれた。彼にぴったりの素敵な名前だと思った。
葵君は大学生のお姉さんがいて、全然似合わないけどサッカー部に入っている。
ふと、さっき裏庭で覗いていたのは葵君かと思ったが、彼は絶対そんなことしなさそうだった。される側であっても、することはないだろう。犯人は近いうちに見つけるからいい。
家に着いたら、出勤前の兄ちゃんがいた。兄ちゃんはカフェバーを友達と経営していて、主に夜のバーを仕切っている。僕は随分前から兄ちゃんと二人暮らしだ。
「真理、おかえり。今日は早いね。お友達かな?学校の友達連れてくるなんて珍しい。こんにちは、可愛い子だね」
「同じクラスの葵君。さっ、あがって」
「あの……約束通り、送ったから帰る」
そのままの流れで家に上がってくれるかと思いきや、葵君は入らずに一歩下がった。
あぁ、帰っちゃうか。
残念だけど、これ以上引き止める理由がない。
「葵君だっけ?お家どこ?何駅?」
会話を聞いていた兄ちゃんが口を挟んだ。
「T駅です」
「その線ね、車両事故で電車止まってるよ。さっきニュースでやってた。開通までには時間がかかりそうだし、良かったらご飯食べていけば?ね、真理?」
ナイス!!ナイス兄ちゃんと電車!!
これは葵君と僕の運命じゃないのか。
まるで僕の心を神様が知っていたかのようだった。
「でも……悪いし、駅で待ちます」
「遠慮しないで、僕と宿題やって待とうよ」
一緒に宿題やろうって、小学生か。
健全な学生のフリならいくらでもできる。
だけど、僕は今から健全なことを全くやるつもりはなかった。葵君の体から溢れるものの正体が知りたい。ちょっとでいいから味見させて欲しかった。
さっきからこの同級生は尋常じゃない気怠げな雰囲気を漂わせている。
「では…………少しだけ待たせてもらっていいですか」
「どうぞどうぞ。真理、部屋に案内して。ご飯できたら呼ぶ。」
「はーい。葵君こっちだよ」
「おじゃま、します……」
やばい、にやにやが止まらない。
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