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第41話 犯人は誰6
(熊谷先生語り)
島田がいると話がややこしくなるので、他にも何か言いたそうだったが無視して無理矢理帰した。奴の相手をしていると本当に疲れる。
それに、山本の方が性急に解決する必要があると判断したからだ。何をやっても治る見込みのない島田に対し、山本には受験という人生の大1番が待っているのだ。重要度が違う。
「なんで覗き見したんだ。誰にも言わないから言ってみろよ。第三者が聞いてもあいつらの方が悪いから、お前は被害者だと思うぞ。
それとも加瀬か?サッカー部で部長と副部長コンビに何かあったのか」
ビッチ島田に捕まえられてしゅんとしていた山本が、遂に口を開いた。顔には転けた時にできたと思われる大きな擦り傷を作っている。
「俺……加瀬と友達だと思ってたのに……島田とかいう変なホモ男に引っかかって、うれしそうな加瀬が……許せない」
うんうん、分かるぞ。
友達に裏切られた感じがしたんだよな。
島田最悪だな。
お互い遊びなのは一目瞭然だが、山本にはそう見えなかったのだろう。
「そしたら……期末テスト前に……裏庭で抱き合ってるのを見て……何も手がつかなくなって……苦しくて……引退してからも…サッカー部の練習に時々顔を出してるのに、加瀬だけ来なくて……そしたらまた裏庭で……むかつきました。どうしようもなかったんです」
加瀬を取られて、凹んでいたのか。
山本は加瀬に恋してんじゃないのかと一瞬思ったが、その辺は有耶無耶にしておいた方がいいこともある。
「そうか。覗き見は趣味が悪いから、バレるようなことはやめておけよ。島田にはキツく叱っておくから、山本も加瀬のことは置いておいて、そろそろ本格的に受験勉強しないと。取り返しが付かなくなる」
「分かってます。熊谷先生、加瀬にも忠告してください。ホモはよくありません。絶対によくないんです」
「そうだな。良くないかは別にして、学校ではああいうことをしてはいけない。二人共に注意しておくから、山本も大人しく家に帰れ」
「はい……本当にお願いします。加瀬は純粋なんです」
加瀬にホモは良くないから注意してほしいと何度も念押しして、山本は帰っていった。一応、保健室に寄るように伝えたが、ちゃんと怪我の消毒をしたか心配になる。
あいつのことだから、忘れてフラフラ歩いているに違いない。
正直、葵とのことに足を踏み入れてしまってから、加瀬と島田のことは抵抗がなく、難なく受け入れることができた。
自らも非難の対象に入ることを自覚せねばなるまい、と思いながら、葵に他愛のないメッセージをせっせと送るのだった。
そろそろ葵の本心を探ろう。
俺も我慢の限界が来た。こんなにも自分が待てない男だったことに驚きを隠せなかった。
【閑話、お終い】
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