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第80話 ほんとのきもち4

(真理語り) 信一と約束してから気分が少し楽になる。 最中は彗さんの事を考えなくていいからという安直な考えで、二つ返事で承諾してしまった。 バイト終了間際に、僕は彗さんから呼ばれた。 「お客様に配る用のクリスマスオーナメントのラッピングを手伝って欲しいんだけど、いいかな?」 「今から?明日じゃだめ?」 「ああ。明日はやることが決まってるから、頼むよ。真理しかやってくれそうな人はいないんだ」 突然の頼みに驚いたが、断ることができなかった。何より彗さんと2人で作業することが嬉しくて、信一との約束なんか一瞬でどこかへ行ってしまう。 時間帯は夜のカフェバーになり、僕は彗さんとスタッフルームでラッピングを始めた。頭の隅では信一に申し訳ない気持ちはあったものの、ほんの数分で忘れてしまった。 1個ずつ袋に入れてリボンで結ぶ。 クリスマスオーナメントは、種類が色々あって可愛い。こういう細々とした作業は嫌いじゃない。寧ろ好きなくらいだ。 「真理の本命は見つかった?」 作業に没頭していると、彗さんが話しかけてきた。スタッフルームは彼の低い声がよく響く。 「見つからないよ」 探してもいないから、他に見つかる訳がないのだ。僕にとって彗さん以上の人は現れないだろう。 「そっか。それじゃあクリスマスは俺と一緒に仕事だな。真理はどんな人がいいの?」 「…………よく分かんない。言葉で表現が難しいよ」 ぐさぐさと直球で聞いてくる彗さんに、なんて答えればいいのか分からない。僕は考えあぐねて、回答をぼかした。 「さっきお使いに行った時に会っていた人は?」 「違う。あれはただのセフレだし……」 どうやら、俺が信一と再会していたのを目撃していたらしい。彗さんはセフレ発言を聞いても無反応だった。僕のセフレなんかに興味は無いらしく、ただ静かに黙々と作業が続いていく。 「好きな人はゆっくり見つけるといい。人生長いんだし、あんなセフレにはもう会わないでほしい。真理には相応しい人が他にいる」 彗さんの口調が棘のあるものへ変化した。 これから信一と会うことを知っていて、ラッピング僕に頼んだのではないかという考えが頭を過る。 会わせないようにした? わざと?どうして? 僕のことを何とも思ってないのに、親心に似た気持ちからだろうか、よく分からない。 「そんなこと彗さんに言われたくない。誰と会おうが僕の勝手だ。彗さんは家族でもなんでもないのに……酷いよ」 「そうか、悪かった。俺が言える立場じゃなかった。そろそろ作業は終わりにして、賄いでも食べようか。用意してくる」 「もう少しで終わるから、そしたらそっち行く」 「頼んだよ」 僕1人取り残され、スタッフルームで項垂れる。こんな微妙な雰囲気になるなら信一に会えばよかったと思う。 相手の一挙手一投足に振り回されるから、だから片思いは、嫌なんだ。

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