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第90話 ほんとのきもち14
(真理語り)
「えっ…………………………今の本気?」
「そんなこと冗談で言う人はいない」
リアクションをどうしたらいいのか分からない。半分以上諦めていた恋だから、まさか彗さんから受け入れてもらえるなんて思ってもなかった。さて、どうするべきか。
「彗さんには彼女がいるじゃん」
いつも気になるのは、同棲している彼女だった。大人で綺麗な『彼女』には適うはずが無いのだ。
「別れた。彼女は先週出てった。最近は恋人というより同居人みたいで、互いに冷めていたのもある。それに、思いつきでもないよ。実は俺だってバイだ。男の方が好きだったりする」
「うそ………でも、だって………だからって僕と付き合うって発想に結びつかないんだけども……」
「真理は俺が好きなんだよな」
こくこくと何度も頷くと、慧さんが目を細めて笑った。眼鏡のレンズ越しに見える彼の優しい瞳が愛おしい。
「慧さんが恋人になったら嬉しい」
「俺が真理を繋ぎ止めておきたくて、考えに考えた俺の出した結論だ。昔から真理のことは可愛いと思っていたし、悠生には申し訳ない感はあるけれども、それはおいおい解決するとして…………ははは」
「兄ちゃん?なんで?」
「今は知らなくてもいいこと」
「………ふぅん……」
「真理、触ってもいい?」
「ん…………いいよ」
慧さんが俺の髪に触れて、よしよしと頭を撫でる。久しぶりの他人の手はほんの少し怖かったけど、目を瞑ったらそうでもなかった。慧さんの手は魔法が宿っている。
そうして、俺の頭上に数回キスを落とした。
「ねえ、口は?口にしないの?」
「触られるのですら強ばってるだろう……うわっ……ま、まさみちっ」
「慧さん、大好きっ」
慧さんは格好いいことを言って僕の肩を軽く抱くもんだから、俺は唇を奪うべく抱きついた。
まだちょっと怖いけれども、心は幸せで満たされている。
放置されていた小さなケーキにフォークを入れた。サンタも僕に笑いかけている。
生クリームのシンプルなケーキは口に入れると甘くて美味だった。慧さんの作るスイーツは世界一なのだ。
神様、素敵なクリスマスプレゼントをありがとう、この幸せがいつまでも続きますように。
僕はにんまりしながらお礼を念じた。
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