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第97話 それぞれの年越し7

(真理語り) 前項の綺麗なままで終わる訳がなく、僕は彗さんに欲情していた。 彗さんとのキスは僕の芯の部分に火をつける価値を充分に持っていた。身体に火がついたらあとは燃えるのみで、僕は衝動的に彗さんを押し倒していた。 激しくムラムラする。 「ちょっと待って」 「なんで待つの?」 彗さんは押し倒されたまま困った表情で話し出した。 「体がまだ本調子じゃないだろう。それに、ここだとみんなに見つかる。真理はいいのか、俺は別に問題無いが」 確かにあの事件から体は元に戻っていなかった。上辺だけは元には戻ったかもしれないが、底の部分は治っていない。悪寒や震えはまだあるし、夜もあまり眠れてなかった。 「彗さんと繋がりたいって思ったから、だめ? 無理だったら途中で止める」 「だめ。途中では俺が止められなくなるから、真理に無理やり酷いことをしてしまう」 彗さんも……したいと思ってくれてるのかな。 胸がじんわりあったかくなり、繋がりたい欲求に拍車が掛かる。 「彗さん、僕としよう」 「ちょ、あ、待てって」 答えを聞く前に、僕は彗さんの口を塞いだ。 本当は恐怖もあった。冷たい感覚が今にも押し寄せて来ようとしたけど、彗さんとなら平気だと思った。そして、くるりと回転した彗さんが、僕の上に乗ってくる。 「しょうがないな。優しくするから、安心して」 「彗さんはいつも優しいから平気。」 「俺を買いかぶりすぎだ。そんなにいい人じゃない」 僕の着ているシャツのボタンを一つづつ外しながらキスをくれた。 僕は今までセフレしか居なかった。 だから、好きな人と繋がるのが初めてで、心臓がドキドキして破裂しそうなくらい高鳴っている。 「真理…………やっぱり今日は止めよう」 彗さんが途中で手を止める。 「震えてる。まだ怖いんだろう。俺はいつでもいいから、真理の体が治るまで待つよ。無理しないで。焦って何になる」 彗さんが僕を引き寄せ抱きしめた。 自分でも知らないうちに震えていたらしく、暫く止まらなかった、恐怖は身体の中を燻っていたようだ。 続けて欲しいと伝えたけど、彗さんに強く宥められてしぶしぶ納得した。 ちぇっ残念……もうちょっとだったのに。 部屋を出たら、兄ちゃんと居合わせた。 僕と彗さんを見て珍しい組み合わせだな、なんておどろいていたから結果的に途中で止めてよかった。 ふと葵君が気になった。 電話してみようかなと、携帯をポケットから出した。

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