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第101話 それぞれの年越し11

(葵語り) 島田の家に帰るともう2時を過ぎていて、さすがに眠くてたまらなかった。 島田には散々嫌味を言われたが、自分だって彗さんと一緒に居ればいいのに、口を尖らせて葵君はずるいを連呼していた。俺は何もズルい ことはやっていない。 それを見た彗さんは後ろで笑っていた。 彼の素敵な笑顔に俺もつられて笑ってしまう。島田を宥めて飼い慣らしている所が凄い。あの島田が唯一適わない人が彗さんで、彼の言うことは従うのだ。 弥生さんはもうそこに居なかった。 大晦日は夜中も電車が動いているので、それで帰宅したようだ。島田宅に残っているのはほんの数人だった。ゆっくりと静かな時が流れている。 炬燵(こたつ)でまったりしていたら、突然睡魔が襲ってきた。温かくてふらふらして、包まれるような夢心地だ。 頬を机に乗せて目を閉じた。机上にある蜜柑からは柑橘類の甘い香りがした。 微睡んでいる俺に気付いた島田が擦り寄ってきた。隣に無理やり入ってきて、ベタベタ身体に触れてくるも、何故だか心地がよかった。 「葵君、寝るなら僕の部屋で寝る?」 「………島田の部屋にはもう行かない。ここで寝る」 「もう何にもしないからさ〜、僕を信じてよ。一緒に寝よ?」 「嫌だね」 「前って?何かあったの?」 反対側へ座っていた先生が会話に入ってきた。 「何にも……ないよな」 「うん。何にもない。熊谷先生の聞き間違いじゃない?」 「島田と葵は本当に仲良くなったな。先生は嬉しいぞ。だが、それとこれとは別だ。何があったか教えなさい」 「だから、地獄耳!!絶対に教えないよ」 2人でふふふと笑った。 少し寝てから帰ることにしてゴロンと横になる。僕も寝ると、島田も隣に横になった。島田の温もりが心地よくて、間もなく意識が飛んだ。 遠くの方で、炬燵で寝たら風邪ひくぞーという悠生さんの声が聞こえた気がした。

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