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第103話 教科書泥棒2

(葵語り) 次の日は、数学の教科書が無くなり、日本史、現代文と教科書シリーズが終わったら、上履きが片方無くなっていた。教科書は落ちてたり、捨てられてたりしても手元へ戻ってきたが、結局後者は出てこなかった。 いじめ?とも考えたけど、破かれたり落書きもされてないし、やることの程度が低いというか、ちょっと違う気がしていた。 それにクラスや部活での人間関係はすこぶる良好で心当たりの節が全く見当たらない。 防止策として全部毎日持って帰ろうか、と考えていたら、島田がそんなのでは甘いと怒り出した。 「葵君はお人好しだ。そんなの捕まえて理由を吐かせないと、いつまでもなめられたままだよ」 「捕まえるって、いつ誰がやったのかもわかんないのをどうやってやるんだよ」 島田は目をキラキラさせながら説明を始める。 「昼間は教室には誰かがいるし、休み時間も時間が短いから限られてくる。僕はね、放課後か朝だと思うんだよね、そいつが盗みに来るのは。だから待ち伏せが有効だと思う」 探偵みたいにかっこよく言ってるつもりなんだろうけど、島田がやると似合っていない。 「一緒に待ち伏せして捕まえようじゃないか」 「嫌だよ。逆ギレされたら怖い。結局、俺にいい感情は持ってないからこんなことする訳でしょ。放っておけばいい」 「僕が側にいるから、大丈夫だって。2対1でなんとかなる。悪の根源を断つんだ!」 そう言えば島田は以前、山本先輩を追いかけて捕まえたと聞いたことがある。 一度狙うと狩るまで追い続ける肉食獣のような中身を持っているらしい。見た目からはひ弱な男子にしか思えないし、はっきり言って島田だけじゃ頼りにならない。 「ええー……先生呼ぼうかな」 「熊谷先生は忙しいから来てくれないよ。きっと煩わしく思われるだけだって。こんなの僕たちで解決できる」 「そうかな……」 「絶対そうだよ。ね?僕とやってみよう」 「……うーん…………島田が言うなら……」 先生が煩わしく思うことはなさそうだが、何かを企むような島田のゴリ押しに負ける。 今日の放課後、教室で『そいつ』を待ち伏せすることになった。

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