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第7話 放課後②

(葵語り) 「もしもし………」 先生に促されて、恐る恐る電話に出た。 「あ、伊藤君?元気してた?俺が居なくてお昼休み大丈夫だったかなーとか、心配でさ。」 いつもと違うくぐもった熊谷先生の声が聞こえる。後ろがざわざわして、電車のアナウンスが響いていた。駅にいるようだ。 「ええ、まあ……何か用でしたか?」 「俺ね、出張でこれから帰るんだけど、お土産何がいいかなと思って。」 お土産……のために電話してきたらしい。 「何でも……いいです。」 重い空気に耐えきれないので、できるだけ早く電話を切りたかった。この会話を黙って先生が聞いている。 「しょっぱいのと、甘いのどっちがいい?伊藤君は甘いのが好きだったっけ?」 「どっちでも。構いません。」 「どっちでもが一番困るんだよ。どちらか言ってよ。後は俺が決めるから。」 「…………じゃあ、甘いので。」 向こうの方で、誰かが熊谷先生を呼んでいる。今行く、と軽く返事をしていた。 「分かったー。了解。甘いのな。あ、あと隣の猪俣によろしく言っといて。じゃあね。また明日な。忘れずに来いよ。」 一方的に、電話が切れた。最後の言葉が気になる。猪俣によろしくって言ってたよね。 先生と一緒って知ってたのだろうか。背筋がひんやりして、心臓がドキドキした。 「今の誰?」 俺が一呼吸したところに、先生が聞いてきた。 「あっ………いとこ……です。」 「従弟に敬語使うの、葵は。違うだろ。」 「………塾の先生。」 「塾行ってないよね。俺が誰かあててあげようか?」 先生はこっちを振り返りもせず、運転したまま聞いたことのない怖い声で、 「熊谷だろ。」 と言った。

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