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第9話 放課後④
(葵語り)
口に入れた太くて固いものを、喉の奥まで突っ込まれて涙が流れる。
むせそうになるけど、喉まで入ってるからできない。
これ、すごく嫌いだ。吐きそうになってもなお、モノは出入りを続けた。
イクまで我慢しなくちゃいけないのかと拷問のような時間に耐えていたら、暫くして口から抜かれた。自らの涎でびしょびしょに濡れている顎が不快だ。
間髪入れずに、俺は横向きで膝を抱えるような姿勢をとらされる。
「挿れるよ。力を抜いて。」
力を抜くなんて無理だと、言葉にするのは諦めた。この人は無理矢理俺を抱いて何から逃れたいのだろう。それで先生が安心するなら、痛くても構わないと思った。
いつもの蕩けるようなキスや、優しく触れる手は無くても、先生の役に立ちたい。
ゴムを纏ったらしいモノが無理やり侵入してきたので、目を瞑って耐える。みちみちと音が聞こえてきそうな位入り口は狭く、割けるような痛みが身体を走った。
それに、異物感が半端ない。
「………っ……あ、あ……うぅ……」
自然と呻き声が漏れた。こんなに乱暴に抱かれたことがなかったから、身体が悲鳴を上げている。たぶん血も滲んでる。先生が腰を動かす度に激痛が走った。潤滑油の役割を果たしているのが、血液ではないかと思える位だった。
どうして、なんでこんなことをするの?
「はぁ………はぁ……」
先生の息遣いと腰がぶつかる音が耳に入るも、痛みで気が遠のいていく。
俺に何一つ快楽を与えてくれなかったセックスは、先生に支配されている感覚と恐怖で満たされた。
そこで記憶が途切れている。
気が付くと、灯りも付けず薄暗い中で、シャツを羽織った先生が隣に座っていた。窓の外からは濃紺の夜空が見える。空の色が部屋に写って水槽の底にいるみたいにゆらゆらしていた。
きれいだな。
先生は、俺の手を握って泣いていた。
泣きたいのはこっちなのに....…
やりたいだけやって、後はこれかと大人の身勝手さにため息が出た。
「……先生、どうして泣いているの?」
俺は先生にゆっくりと手を伸ばし、聞いてみた。
「葵、ごめん。悪かった。熊谷と話してるのを見て抑えがきかなくなった。痛かったよな。ごめん……ごめん……」
握った手に力が籠るのが伝わってくる。
この人は、ずるい大人だな。
俺が逃げられないのを知ってて、わざとやったんだ。
好きだから、何しても好きだから……ずるい。
「ごめん……ごめん……」
静かな部屋に響く声は俺の好きな優しい声だった。
「いいよ。もういいから……だから……泣かないで。」
「……うん……悪かった。こっち来れるか?起きてごらん。」
寝ている俺を起こして ぎゅっと抱きしめてくれた。
よかった。元の先生に戻っているみたいだ。俺は先生の背中をぽんぽんと優しく叩くも、身体が軋むように痛かった。我慢して抱かれている俺は、先生の何だろうか。先生にとって俺はどんな存在なのかなと、喉まで出かかった質問を飲み込んだ。
ああ、手のかかる大人だこと。そう思ったら少し笑みがこぼれた。
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