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佐々木の登場
三田村にどう思われようが
やはり取り繕うことなど出来ない
男である睦月が
同じく男である酒川に
恋情を抱いていると
バレるくらいなら
睦月は酒川を嫌っていると
誤解されていた方が
まだましなのではないかと
「さ、かがわ、俺やっぱり、」
睦月が適当な理由をつけて
帰宅しようとしたそのとき
「 ...っうそだろ!早く言えよっ!!」
ガラガラと音を立て居酒屋の扉が開く
中から出て来たのは
スマホ片手に通話をし
ひどく慌てた様子の男
同期の佐々木だった
「んじゃ!すぐ帰っから!」
そう言って電話を切った佐々木に
酒川が声を掛ける
「おい佐々木、どうした?」
すると佐々木は酒川と睦月の存在に気づく
「ふたりとも来たのか!
嫁から電話で娘が熱出したって!!」
「大丈夫なのか?」
「わっかんねぇ!とりあえず帰んねぇと!
みんなに先帰るって伝えといてくんね?」
そう言って駆け出す佐々木
「みんなもう出てくっから!そんじゃ!」
と立ち去る姿が見えなくなる頃
会計を終えたらしい同期たちが
2次会の場所を相談しながら
店を出てきた
そうして睦月は帰るタイミングを
失ったのだった
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