三田村のアドバイスはこうだった 1.酒川と会う頻度を高めること 2.ちゃんと酒川の目を見て話すこと 3.酒川とは笑顔で接すること 4.酒川以外のひととも コミュニケーションをとること 5.諦めないこと 週はじめ 出勤ラッシュの 電車に揺られながら 睦月は思い出していた 「恋を叶えるためにどうすれば良いか」 という相談にこころよくのってくれた三田村 酒川が片想い中で望みは薄いと伝えたら 「まだ気になる程度だろ？ 先にこっちに振り向かせやりゃいいんだよ 始まる前からあきらめてどうすんだ ゲイだって恋していいんだよ」 と険しい顔で説教された そんなことがあり睦月の 三田村に対する印象は 面倒見がいいと言うよりも 他人の言動が気になって 口を出してしまうタイプ というものに変わった それが睦月にはどこか温かく 説教されているにも関わらず フッと笑ってしまうほどだった 三田村と話すと不思議と前向きになれる 睦月は恋が叶うような気がしてならなかった そして電車が会社の最寄り駅に到着し ひとの流れに押されるように歩いていたとき 睦月はすこし前を歩く酒川を見つけた 三田村のアドバイスをさっそく実践しようと ひとをかき分けて酒川に追い付く 「...おはよう」 目を見て 笑顔で を心がけ 睦月よりも身長の高い酒川を見上げていると 上司から声を掛けられたと思ったらしい酒川が 「おはよーございまーす」 ときらきらした笑顔で睦月を振り返った 「あれー？睦月？」 一瞬だけ驚いたように目を見開き その後よりいっそうきらきらした笑顔で 睦月を見つめ返してくる酒川 そのまぶしいほどの笑顔が たまらなくかっこよくて 睦月はしばらく 動悸がおさまらなかった