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パンはおやつで

そうしてビル近くの こじんまりとした定食屋 かもめ食堂に向かう途中 睦月はこの後の流れを想定する 昼食を取りながら趣味なんかを探り それとなく次の約束を取り付ける 酒川と会う頻度を高めるためだ そしてその後ろで 酒川と佐々木が連れ立って歩いている 前を歩く睦月には聞こえない声で 佐々木は酒川に話しかける 「さっき買ってたパンはどうするんだ?」 「うっさいなー!あれはおやつなの!」 怒ったかと思えば次の瞬間には にこやかに睦月を見つめる酒川 その横顔と睦月の背中を見比べながら 佐々木は微妙な顔を浮かべていた 実のところ睦月の酒川に対する態度は 誰から見ても緊張で固まっているのだと 非常に分かりやすいものだった そして酒川の言動も 睦月に対するものは明らかに違っていた それらがどんな意味を持つのか 佐々木はどう考えても たどり着く答えはひとつだった 「...やっぱり"好き"なのか?」 「んー?好きだよー! メロンパンは日本の特産品!」 「そっちじゃない」 「あー!かもめ食堂はやっぱ 白身魚フライ定食が絶品だよな!」 「確かに上手いけど」 酒川が本気でわかっていないのか 誤魔化しているだけなのか ただ少し仲のいい同期という立場では 判りかねる佐々木だった そして二人の関係に自分が 踏み込むべきなのかどうかも いまいち分からないでいた

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