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お洒落な男
そのとき佐々木の頭上から声がする
「おい 何してんだよこんなとこで」
ちらりと見上げた佐々木は
その顔を見たとたん
気だるげに顔を歪め
面倒だと言わんばかりに
乱雑な返事をする
「小料理屋で飯食う以外に何をすんだよ?」
そのやりとりを前にして
初めて見る佐々木の気だるげな姿と
初対面の人物に睦月は驚きつつも
ぼんやりと見つめていた
黙っている睦月を
見知らぬ男はちらりと窺う
「同僚さん? すんません
お食事の邪魔しちゃって」
謝ってきた男は洒落たスーツを着こなし
長めの髪をきちんとセットした
スマートなイケメンだった
「...いえ」
愛想笑いを浮かべる睦月に
見知らぬ男は目を細めて
値踏みでもするように
しばらく眺めてから
目礼して「失礼します」と去っていく
去り際に佐々木に「敦に近づくなよ」
と睨みを聞かせながら告げていた
どう聞いても牽制のような発言
「同期なのに会わねぇわけにいかねぇし
つーか俺 嫁も子どももいんだけど」
去っていく男に聞こえるか聞こえないか
くらいの声で佐々木は呟く
同期に“あつし”がいただろうかと
思考を巡らせ睦月は思い当たる
「三田村の知り合いか?」
確か三田村の名前が敦だった
「あぁまぁ...大学時代の知り合いで」
「佐々木と三田村は同じとこだったか」
「うん あいつも同じなんだよ
ADYでデザイナーやってる所澤って奴」
見知らぬ男は所澤という名らしい
ADYは有名な広告代理店だ
所澤がデザイン関係の
仕事をしているのなら
センスの良さにも頷ける
お洒落な男
三田村を思っての牽制
「...え?今のって三田村の」
彼氏か と気づいて睦月は驚く
佐々木は“妻子がある”と言い返していた
ということは佐々木は
三田村がゲイだと知っているのだろうか
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