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受け入れられない

こうなれば逃げるしかない そう決意した睦月は 就業定時の午後6時 即座に荷物をまとめ エレベーターホールへと駆け出す しかし角を曲がったところで 立ちはだかっていた人物とぶつかる 佐々木だ 「おう睦月 まだ時間あるから ひとまず一緒に飯行こうぜ」 「いや用事が...」 「悪いなぁ 三田村から 睦月はぜってぇ連れてこいって 言われたんだよ」 三田村から一体何と聞いているのか どうやら佐々木は睦月を連行しに ...もとい迎えに来たらしい その後も帰ろうとする睦月を 佐々木は巧みに誘導して 駅前の小料理屋に来ていた 「がっつりは食わないよな? 適当につまめるもん頼むぞ」 睦月が無言でいると 肯定と受け取ったのか 佐々木が注文をする 「今日...誰が来るんだ?」 「酒川ならちゃんと来るぞ 聞いてないのか?」 なぜ酒川の話になるのか 疑問に思いつつも睦月は 何も言わなかった 「篠原は来れないらしい 筒井と三田村が遅刻で... あと山田も来るんじゃないか?」 山田が来るならなおさら 睦月は帰るべきだろう そう思ってしまうほど 同性愛を受け入れられない と言うことは当然なことだと 睦月は考えていた 佐々木はどうなのだろう きっとゲイだと打ち明ければ 山田のように顔を歪めるに違いない 今の睦月にはそんな風に思えてならなかった 「おい睦月 どうしたんだよ」 黙り込む睦月を見て さすがに心配したのか 佐々木はそんな声を掛ける いくらなんでも悲観的すぎる 佐々木の心配気な顔をみて それを自覚した睦月は ちょうど届いたビールを煽って 自身を納得させるように頭を振るう 「いや 何でもない」

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