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睦月は倒錯した

睦月がじっと見つめていると 佐々木はついに来たか というように目を伏せる そのままテーブルに届いていた 揚げ出し豆腐をひとくち口に運び 嚥下したあとで真っ直ぐと 睦月と向き合う 「...ずっと ...言おうか迷ってたんだけどさ」 そのとき睦月の脳裏には つい数時間前に言われた言葉が フラッシュバックした “そういうの無理” 言われたって仕方ない 睦月は覚悟を決めて 佐々木の言葉を待つ 「...酒川も 睦月のこと 好きだと思うぞ」 睦月は驚きにまばたきを忘れた さ、さ、さ、酒川と両思いなのか? いや、そんなはずない、酒川には 思い人がいるんだから、友情の好きだ、 って、今はそうじゃなくって!! さ、酒川“も”睦月のことが、 それは睦月“が”酒川を好きだ という前提があって初めて 言えることで、 やはり佐々木は友情の話をして、 いや、でもここまでの話の流れから そんな話になるだろうか? と睦月は半ばパニックになりながら 佐々木の発言の意図を探る 「他人の恋愛なんて 口出すような事じゃない と思ってたけど さすがに鈍すぎだ」 睦月は思った 佐々木には全てバレている 「...なんでそんなに普通なんだ?」 「んー?人生経験のたまもの? そもそも三田村から何て言われて 睦月を引き留めてると思ってんだ?」 「...ぜってぇ連れてこい」 「その理由だよ 三田村は睦月と酒川を ひっつけたいらしいぞ」 睦月は倒錯した 佐々木があまりに普通すぎて むしろ睦月の方が 佐々木の話を理解できない 「嫁さんの美味い飯 我慢して来てんだから ちゃんと参加してくれ」 睦月は困惑に困惑を重ね いまいち状況を理解できない中で 佐々木には全てバレていることと 佐々木の奥さんが料理上手だ ということだけは理解した

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