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もう少し頑張ってみよう
酒川と佐々木とランチをした
その日の就業時間
睦月はいつになく疲れていた
恋をしようと決めたのは睦月自身だ
だが上手くいかないことが多く
挫けそうになるのも事実だ
次はいつ酒川と会えるだろうか
睦月から誘って良いのだろうか
酒川と会うことに必死で
睦月は忘れかけていたが
佐々木とふたりになり
やはり男が男に恋情を抱くことは
普通では無いのだと知らされた
いつか思いを告げるつもりでいるが
酒川にとって睦月から好かれることは
迷惑に違いないだろう
それでも三田村は
“ゲイだって恋していい”
“諦めないこと”
と言ってくれた
どうなるかは分からない
ただもう少し頑張ってみよう
そう結論付けて
睦月は荷物をまとめる
“いつ会えるか”ではなく“いつ会おうか”だ
自ら動かなければこの恋は0のままだ
睦月は心で唱えエレベーターホールへ向かう
その途中探していた人物と出会えた
荷物をもった酒川
フロアが違うのにどうして
帰り際にここにいるのだろうか
「睦月ー!今帰りー?」
「あぁ、酒川も?」
「うん!睦月に会いに来たんだよー!
昼間はごめんな 折角誘ってくれたのに
先戻っちゃってさー」
「いや気にしないで」
「ね このあと時間ある?
昼間のお礼とお詫びさせてよ」
わざわざ礼をすることでも
詫びることでもない
睦月はそう思ったが
酒川と過ごす機会を
逃したくはなかった
「...佐々木は?」
「いないよ ふたりだけ」
酒川と“ふたり”
睦月が願っていたチャンスだった
折角緊張が和らいで来たというのに
意識するとやはりだめだ
睦月は真っ赤になりながらも
嬉しさを押さえきれず笑顔で答える
「わ、かった、行こう!」
微笑む睦月を見つめる酒川もまた
自然と笑みがこぼれていた
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