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怒号を浴びせた

勢いよく顔を出した酒川 佐々木は「あぁ来たか」という表情をし 睦月は「どうして酒川がっ?」と困惑し 酒川は「おいっ!」と 佐々木に怒号を浴びせた 酒川は泣いていることに 驚いたのだろうと思った睦月は 平然を装い涙を拭いつつ 「何で酒川?駅集合のはずじゃ?」 と感じた疑問を口にする 「さっき呼んだんだよ 残業終わったっていうから」 佐々木も平然と返事をする しかし酒川はいつもの爽やか笑顔も 想像が付かないような剣幕で 佐々木のカッターシャツの襟元を掴み 「何で睦月が泣いてるんだよ?」 と唸るような声を出す 睦月は酒川が怒っていることに 疑問を抱き戸惑いつつも酒川を止める 「さっ酒川?佐々木は何もしてない...」 睦月にそう言われて酒川は シャツの襟元を掴んでいた手を離す 硬い表情は変えないまま 先程よりも少し優しい声で 「睦月 行くよ」 と声を掛けて 今度は睦月の手首を掴んだ 睦月の荷物を手早くまとめ そして佐々木に挨拶もなく 出ていこうとする 睦月は何が起こっているのか よく理解できないままに とりあえず佐々木を窺うと 「また会社でな」 と箸を片手に見送られた そうして睦月は 酒川に引かれ店をあとにする そのあと行き着いた先は すっかり来慣れた 酒川の住むアパートだった

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