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ねぇ睦月

「...っさ、酒川っ!」 大股の酒川に腕を引かれ 早足で歩いていたせいで 酒川のアパートに着いたとき 睦月は息を切らせていた はぁはぁ と荒い呼吸をする睦月 黙ったまま荒い足取りで歩く酒川 睦月はこれまで見たこともない 明るさの欠片もない酒川に アパートの部屋についてもなお 動悸がおさまらない 酒川はリビングへとむかいながら スーツのジャケットを脱ぎ捨て シュルっとネクタイを抜き取る 睦月は戸惑いながら後ろを着いていく ソファの前まで行き着くと 酒川は突然振り向いて カッターシャツのボタンを外しながら 逆の手で睦月を引き寄せる 「ねぇ睦月 俺ね好きな人がいるんだよ」 「...っ!」 「優しくして 仲良くなって 心を開いてもらおうって 思ってたんだよ」 「...っ何で、そんな話っ!」 酒川が一歩睦月に近づく そして後ろのソファに押し倒すと そのうえに乗り上げて睦月を見下ろす 緊張と止まらない動悸 これから何を言われるのか という不安で睦月の目には 次第に涙が溜まっていく そんな睦月を雄々しい目で見下ろし 酒川はそっと告げる 「...睦月だよ」 酒川は睦月の肩口に置いている手に ぐっと力を込めた

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