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ちゃんと話そう

睦月が次に酒川と会ったのは 会社の食堂だった 「睦月ー 今日はハンバーグ定食が 安いらしいよー」 といつも以上ににこにこと 話しかけてくる酒川に 「酒川は食べるの好きだね」 と睦月もいつも以上に楽しげだった ふたりは4人席で向かい合って座り 他愛もない会話を続けていた 昼時の社食はいつも通りに混みあっていて ちょうど空いている席を探す男がいた 睦月が見上げたことでその男と目があう そうしてようやく気づく それは山田だった 山田は即座にスッと目を反らし 別の席へと座った 睦月は居たたまれなくなり そっとうつむいた 一方の酒川は何も気づかなかったようで にこやかなまま会話を続ける 「ところで睦月 来週いつひま?」 「火曜と金曜なら なんかあるのか?」 「同期会で話そうと思って 俺らのこと」 「...そういうの話すことに抵抗ないのか?」 睦月が不安そうに問うと 酒川はまっすぐに睦月を見て 力強くこたえる 「ないよ 好きって気持ちは本物なんだ」 睦月は目を見開く 「もちろん睦月のことだよ? けどそれだけじゃなくて これまで一緒にしてきた同期たちもさ 大事な仲間だって思ってるし ちゃんと話したい」 酒川と話をするほどに睦月は 酒川が魅力的にうつるのには ちゃんと理由があるんだと思い知る 「...わっかだと思うんだよ」 「わっか?」 「そう、輪! 俺がいて睦月がいて 佐々木も三田村も他の同期も なんとなーく繋がっててさー まん丸じゃなくても 例えば0みたいなへんてこな輪でも ちゃんと繋がってるんだよ だから分かり合いたいし 分かり会えるって思う」 そういいながらハンバーグ定食の 付け合わせの輪切りの人参を 箸でつまんで掲げる酒川の顔は やはり睦月にはきらきらと輝いてみえる 「そうだね 三田村も言ってたよ 俺らが向き合わなきゃなんないのは 恋愛ばかりじゃないって ...ちゃんと 話そう」 睦月の返事に酒川は 嬉しそうに微笑みつつも 「なんでそこで他の男が出てくるのー もう怒るよー睦月ーー!!」 と不満そうな声をあげた

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