32 / 35

付き合ってるから

三田村はにかっと笑い 佐々木は黙って枝豆をつまみ 篠原と筒井は固まった そして山田はゆっくりと深く息を吐き 呆れたような顔をしていた 酒川が同期飲みの場で 「俺と睦月 付き合ってるから」 と言ったためだ 睦月は黙ってうつむいて 事の次第を思い出していた 酒川とちゃんと話そうと決めてから いつものように同期飲みをしようと 三田村に持ちかけた そしていつものように居酒屋に来た なんの因果か今回は 普段集まっている全員が参加していた 睦月が何よりも驚いたのは 山田も参加していることだった もう顔すら合わせてもらえない のではないかと睦月は思っていた しかし意外にも 酒川の言葉に最初に反応したのは 山田だった 「めでてーな!ライバル減ったぜー!」 山田の少しズレた発言に 場の空気は余計に異様なものになりかけた 三田村がツッコミをいれる 「彼女募集中なの山田だけだし」 「えぇ!三田村もだろ!!」 「あれー?言わなかったかー? 素敵な恋人がいるんだよー」 「いつの間にーっっ!!」 ふたりの掛け合いがいつもの 飲みでのノリそのもので 篠原も筒井もふたりにつられたのか いつものように話しはじめる 「いやー 睦月が酒川を好きなのは 気付いてたけど 付き合いはじめるとは」 篠原の発言に 睦月と山田が驚いた 「「なんで分かったんだ!」」 睦月と山田は同時に声をあげた 睦月が山田の方を見ると 山田はまた気まずそうに目を反らす ふたりの様子を見ながら筒井が こらえきれないというように 笑いながら言った 「気づいてないの山田だけだよ」 「っはぁぁえ?」 山田のいつものような 間の抜けたリアクションに みんなが笑い声をあげる 「まぁでも酒川もそうだってのは ちょっと意外だったなー」 「ゲイってわけじゃないよな?」 「睦月だけだよ」 「早速のろけんなよー」 睦月の予想に反して すっかりお祝いムードな同期たちに 睦月は逆の意味で居たたまれなくなり 隙を見て席を立つのだった

ともだちにシェアしよう!