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ありがとう

そろそろ帰ろうと店を出て 店内の喧騒がわずかに聞こえる静けさの中 睦月はひとり考えていた 静寂の中でひとりで生きていく そんなつもりで居たのに 三田村の言った通り 案外受け入れられるものなのだ すると背後の戸が開き にわかにざわめく音が耳にはいる 振り替えると山田がいた 「...睦月」 店の外で睦月とふたりになった山田は やはり気まずそうな顔をしていた 「山田 ありがとう」 睦月がそう声をかけたことに 山田は驚いた 「は?なに言って...」 「かばおうとしてくれたんだよな? ライバル減ったーってさ」 山田は解せないといった表情を浮かべる 「...かばうってか こないだのこと悪かったって ...言ったことは謝らないけど いくら本心だとしても 他に睦月を傷つけない言い方が あったんじゃないかって 後で...思って...」 いたずらを告げ口された子どものような 何ともいえない山田の表情に 睦月は笑いながらありがとうと繰り返した そうこうしているうちに他の同期たちも 店から出て来て自然と円陣が組まれていく 店の戸が締まり再び静寂が訪れる しかし睦月はひとりではない 同期の輪のなかに睦月も立っている まん丸じゃなくていい 睦月の同期たちは 戸惑ってもなお 無理だと言ってもなお 繋がってくれている それが睦月には 嬉しくてたまらなかった 「よっし!そんじゃー2次会ー!」 山田が拳を掲げる 「娘が寝ないで待ってんだ」 「嫁が早く帰ってこいって」 「俺も嫁に怒られててさ」 「睦月はこれから俺ん家ね?」 佐々木と残りの既婚組はもちろん 酒川もちゃっかり帰宅を宣言する 「三田村ー!いくぞーー!!」 「俺も帰りたいんだけど?」 「三田村は行くぞー」 「なんで筒井が決めんだよ」 そんなやり取りを経て 今回の同期飲みは解散となった そして三田村は不本意ながらも 山田に付き合って2軒目へと向かうのだった

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