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第1話 そのヨン

「大分進んだわね。じゃあ、一気に行くわよ!」 イツコは大きく腰を前に突き動かした。 「ぅむうううううううううううううっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!」 イツコのペニス?が一気にカリ首まで突き込まれ、シンイチは激しく頭を振って先程よりも大きい声量で呻いた。 “ややめてぇっ!い、痛いっ!痛いよぅっ!” 無意識にアヌスを激しく締め付けるシンイチ。 一方、己のペニス?が進まなくなった理由を一瞬で悟ったイツコはシンイチにやさしく声を掛けた。 「ダメよ、力を抜くの。そのままだと痛いだけだから」 「シンイチくん、大きく深呼吸して。そうすればリラックスできるから」 サヤも自分の経験からアドヴァイスする。 とにかく痛いのから解放されたくてシンイチはサヤのアドヴァイスに従った。すると数回の深呼吸でリラックスできたシンイチのアヌスの締め付けが緩んだ。そのタイミングを逃さず、イツコは一気に己のペニス?を根元まで突き入れた。 「さあ、私のペニス?が根元まで入ったわ。これでもう、貴方は女のコよ」 「アナルヴァージン開通おめでとう、シンちゃん」 「おめでとう、というのも何か違う気がするけど。でも、よく頑張ったわね、シンイチ」 サトミが何かずれた祝福を、そしてアスリンは労いの言葉をシンイチに贈った。 「・・・これで貴方もきっと女のコの心になって立派にシンデレラを演じられると思うわ」 サヤはシンイチの頭を優しく撫でてやると、猿轡を外してやった。 「・・・お・・・お願いです・・・は、早く・・・抜いて下さい・・・お尻が・・・痛いんです・・・」 シンイチは涙だけは溢すまいと必死に堪えながら、アヌスへの苦痛からの解放を望んだが。 「でも、女のコは誰でも初めては痛いんだから、それもガマンしなくてはね」 イツコはそう言いながらゆっくり腰を引きながら己のペニス?をゆっくりと後退させ始めた。 「・・・は・・・早く・・・抜いて・・・下さい・・・」 「そう・・・そんなに早く抜いて欲しいのならこれから一気に引き抜いてあげるけど、それもまたかなり痛いわよ?それでもいいかしら?」 「そ、そんな・・・・・・・・・それはやめて下さい・・・」 シンイチはまたアヌスを拡げられた時の痛みが怖くて身震いした。 「フフフ・・・震えているのね・・・可愛いわ、シンイチくん・・・もっとシンイチくんの可愛い姿を見せてくれないかしら?」 嘗てサヤをその毒牙に掛けた時のようにシンイチに対し嗜虐心が込み上げてきたイツコは後退させた己のペニス?をまた前進させた。 「ひぎぃっ!」 ディルドを抜いてくれるものだとばかり思っていたイツコのまさかの行動に、アナル内壁を突き上げられたシンイチは悲鳴を上げていた。 「ちょ、ちょっと、イツコ?」 サトミもイツコの想定外の動きに慌てた。今日はシンイチのアナルヴァージンを開通させたらそれで終わりの筈だったのだ。 「まあ、いいじゃないこれぐらい。みんなこのコの事ばかり褒めてあげてるけど、私だってこのコのアナルヴァージン開通の大事な役目を担ったんだから」 「それはそうだけど・・・」 サトミは納得しかねているようだが。 「確かに赤城先生の言うとおりだわ。本当は私がやりたかったけど残念ながら経験した事なかったから代わりにお願いした訳だし、ご褒美を出してあげてもいいと思うわ」 アスリンは慰労の代わりにイツコに取りあえず好きにさせてあげてもいいという意見だが、勿論それは本心ではなく、その心の裏にはシンイチをイジメたいという激しく屈折した想いが渦巻いていた。勿論、それさえもイツコはお見通しだったが。 「う・・・嘘・・・やめてよ、アスリン・・・そんな事言わないでよ・・・」 シンイチは愕然としてアスリンの顔を見上げた。 「シンイチは今日は一日女のコでしょ?もう少しの辛抱よ」 邪悪な欲望をその美しい微笑で隠してシンイチを貶めようとするアスリン。 「シンイチくんはまだ女のコとセックスした事無いでしょう?」 突然、そんな事をイツコから問われて思わず顔を真っ赤にするシンイチ。勿論、イツコの言うとおりシンイチはまだ童貞である。 「だから、初めてのセックスの時に女のコがどんな思いになるか、将来の為に知っていて損は無いわよ」 言葉巧みにシンイチを籠絡しながら、非常にスローモーな速度で自分のペニス?をシンイチのアナル内でピストンするイツコ。 「そ、そんな事・・・言われても・・・んぅ~っ」 自分のアヌスを犯しているディルドの動きが前後のピストンだけでなく、軸方向のグラインドまで加わって、思わずシンイチは異様な感覚に呻いた。 “あれっ?シンちゃん、呻いてる・・・” “ウソっ!?まさか、シンイチったら、感じてるの!?” 勿論、それはアスリンの凄絶な勘違いであった。 “まぁ・・・お姉様ったら、とっても気持ち良さそう・・・どうせなら、私が相手をしてあげたいのに・・・” サヤの推測どおり、感じて切ない喘ぎ声とくぐもった呻き声を漏らしていたのはイツコの方だった。シンイチのアヌスを犯しているディルドはアナル内壁を擦るたびに表面が摩擦され、それがエネルギーとなって今度はイツコのヴァギナに収まっているバイブを蠢かせる仕組みになっていたのだ。 「フフフ・・・もう少し激しくするわよ・・・感じて、いっぱいアヌスを締め付けなさい」 イツコはピストン運動のスピードを上げた。 「んあぁっ!だっ、だめぇっ!やめてえぇっ!!」 アヌスを突き上げるイツコのペニス?の動きが激しくなり、シンイチは溜まらず悲鳴を上げた。 「いいわ、シンイチくん、もっと鳴いてちょうだい!」 シンイチの悲鳴を耳にしてさらに己の嗜虐心が激しく燃え上がり、イツコもより興奮の度合いを増していく。 そしてアスリンも、涙を溢しながらアナルレイプに悶えているシンイチの泣き顔を見て、自分の心の中で何かが膨らんでいくのを自覚していた。 “シンイチったら・・・あんなに泣きながら顔を激しく振って・・・何か、私もだんだん変な気分に・・・” シンイチに女装を強いて困らせたり、自分の目の前でのオナニーをさせたりしていろいろといじめたりしたアスリンだが、それまでとはレベルが違う、今目の前で起きている事象にイツコと同じく嗜虐心をいたく刺激されたのか、いつのまにかアスリンは自分の秘所を濡らし始めていた。 “今回は・・・赤城先生にやって貰ったけど・・・次は私が・・・そうよ、やをい本を見て勉強すれば、私にもできる筈よ・・・ああ、早くシンイチを泣かせてみたいわ・・・” 一方、二人と違ってシンイチに対する嗜虐趣味は無いサトミは少し心配気味にその光景を見ていた。 “イツコ・・・いつまでやってるの・・・もうそろそろシンイチくんを開放してあげてくれないかしら・・・” 勿論、この後でシンイチを慰めるのは自分の役目、いや、役得だとも思ってはいるのだが。 “そうよ・・・アヌスを犯されて痛い目に遭ったシンイチくんを・・・今度は私が気持ちよくさせてあげるのよ・・・この手で・・・シンイチくんの・・・クリトリスを扱いてやって・・・舐めてあげてもいいかも・・・” その行為を想像したサトミの顔はさっきの心配そうな顔からだんだんだらけていやらしい笑みを浮かべたものに変わっていった。 また一方、サヤはと言えば、三人とはまた違った反応を見せていた。さっきまではシンイチのアヌスを犯して嬉しそうなイツコを見て、その相手をする自分を想像してうっとりとした面持ちだったのだが、シンイチの悲鳴を聞いてはっとしてからは目の前の惨劇から辛そうに眼を背けていた。 愛する者が相手ならどんな仕打ちも受け入れるサヤだが、そうではない者が相手では絶対に何も受け入れられない・・・だから、シンイチが自分の意志とは全く無関係にイツコにアナルレイプされている光景を見るのは辛く忍びなかったのだ。 「いっ、いいわ、シンイチくん・・・私も・・・も、もう・・・」 大きく突き入れたその瞬間、シンイチのアヌスはイツコのペニス?を食い千切らんばかりに締め付けた。その激しい摩擦がついにイツコの中のバイブを大きく蠢かせた。 「んっふうぅ~~~っ!!」 とうとう絶頂に達したイツコは後ろにのけぞってその快楽をしばしの間享受した。 「・・・ふぅ・・・よかったわ、シンイチくん・・・」 イツコは先程までの快楽の余韻に浸りながら、ゆっくりとペニスバンドを外していった。 「で、でも、どうして気持ちよかったの?シンイチのアヌスを犯しただけで気持ち良くなるなんて考えられないんだけど・・・気分の問題なのかな?」 女性は入れられて快楽を得る生き物、男性は入れて快楽を得る生き物。それが逆転した形では双方に快楽が得られることは普通は無い。ただし、稀にその状況に萌えを感じる場合はそれが快楽に繋がる事もあるのが、人間が本能だけで生きる他の動物とは違っている部分だ。 「フフ、気分ねぇ・・・もしかしたらそれもあるかもしれないけど、本当は違うわ」 イツコはペニスバンドのカラクリをアスリンやサトミに説明してやった。 「あー、そういう事だったのね・・・」 「使いたい時は貸してあげてもいいから言って頂戴」 「い、いや、イツコの中に入ったものだし、それはちょっと・・・」 「ちょっとって何よ?まさか、変な病気持ってるとか考えてるんじゃないでしょうね!?」 「そ、そんな訳は無いって」 「・・・ん~、でも、ま、別の意味で病気って言えば病気かな?」 少々お怒り気味の表情のイツコにアスリンは弁解したが、サトミは親友ならではの見事な切り返し。 「シンイチはどうだった?入れられて気持ちよくなっちゃった?」 「・・・気持ちいい訳・・・無いじゃないか・・・」 笑顔で興味津々に訊いたアスリンだが、シンイチは顔を向ける事も無くか細い声で答えるのが精一杯だった。 解放されたシンイチはスリップドレスを降ろして下腹部を何とか隠してカーペットの上に力なく横向きで横たわっていた。 アナルレイプされたショックで腰が抜けた状態らしく、イツコに脱がされたパンティも片方の足首に小さく丸まって絡まっているままだ。 「ふーん。変ね、男のコはアヌスに入れられたら気持ちいいんじゃなかったっけ?ましてシンイチは今は女のコだし」 「だからやをいというムーヴメントが起こった訳よね」 自分の青春時代から現在に至ってもまだ続いているやをい文化に思いをはせるサトミ。アスリンもクラスメートの一部の女子に見せて貰った事のある18禁の薄い本の場面を思い出し、シンイチの反応を不思議がる。 「つまり、人間の身体は不思議なもので、場合によっては入れられた方も快楽を感じる事ができるのよ」 「えっ?ホント?」 イツコの言葉に思わず身を乗り出すアスリン。彼女がシンイチに対して何を考えているかはイツコにはお見通しだった。 「例えば、このサヤ。このコはアヌスでも感じるわ。そうよね?」 「は、はい。お姉様に責められるのならば、アヌスでも感じちゃいます。まあ、ヴァギナよりはエクスタシーの度合いが下がりますけど」 「ど、どうやって感じるようになったの?いえ、躾けたんですか?」 「最初は暗示ね。一種の催眠効果でアヌスに物を入れられて刺激されたら感じるように刷り込みを掛けたのよ」 「えっ?そうだったんですか?」 そのイツコの説明はサヤにとっては初耳だった。 「ええ。でも、この方法はあまり長続きしないわ。本当に快楽を感じるようになるには、心から変えていかなければならないの。はっきり言って、サヤが私のアヌス責めで感じるようになったのは、偏にサヤが私の事を慕ってくれているからよ」 「・・・言うなれば、‘愛の力’ってやつかしら?」 「はいっ!そのとおりです。私はお姉様を愛していますから、お姉様が私にされる事は何でも感じてしまうようになったんです!」 サトミのちょっとフザケ気味の台詞にサヤは大肯定してうんうん肯いた。 わかりやすく言えば、要するにサヤはマゾだからアヌスでも感じる、シンイチは違うから感じないという事なのだが・・・シンイチのペニスはアヌスにディルドを突き入れられる前にはもう萎えて小さくなっていたという事実には誰も気づかなかったようで、アスリンはなおも心中wktkさせてイツコに質問を続けた。 「じゃ、じゃあ、その暗示というのを使えば、私もシンイチをアヌスで感じさせる事ができる訳ですか!?」 「可能性はゼロでは無いわね」 「うーん・・・でも、私はやっぱり違うと思うわ」 聞いていたサトミは首を傾げた。いったいサトミは何を否定したいのか? 「違うって、何が?」 「やっぱりさ、女のコが入れる方になって男のコが入れられる方になるのはおかしいんじゃないかしら?イツコがさっきエクスタしたのも結局はバイブのおかげでシンちゃんとは関係ないじゃない」 「まあ、否定はできないわね」 「でしょ?いくら可愛く女のコしてても、その中身は男のコなんだから、やっぱり男のコとして愛してあげなきゃいけないと思うのよ」 サトミは言葉ではっきりとは言っていないが、言いたいのはシンイチとアスリンが本当に生まれつきの性のままで結びついて欲しいという事だった。 「・・・そうかしら?それはやっぱり、サトミがショタコンだからそう思うんだと思う。それに、人はみな違う訳でしょ?」 「それも確かに否定はできないけどさ」 「大事なのはお互いの心でしょ?シンイチがアヌスで感じる事を喜んでくれるのならそれでいいとと思うわ」 横たわっているシンイチへのケアなど忘れて女性達のアナル性感談義は続いていった・・・。 “・・・んぅん・・・何だろう?・・・何か、いい気持ち・・・” いつの間にか眠ってしまっていたシンイチは、自分の大事なところから広がっていく感覚―快楽とも言う―に覚醒し始めた。 「・・・ん・・・んぅん・・・」 思わず切ない声を漏らしてしまった瞬間、シンジは目を開いた。 「・・・ここは・・・僕の部屋?」 「そうよ。シンイチくん、あの後リビングで眠っちゃったからみんなで運んだのよ」 「・・・あれ?これって・・・」 身体を起こしたシンイチは自分が身に纏っているのが先程までのスリップドレスから悩ましいベビードールに変わっているのに気付いた。 「ああ、それ?私の一番お気に入りのランジェリーよ。下に穿いてるスキャンティもね」 「えっ?」 シンイチが自分で確かめてみると、そのスキャンティは両サイドが紐になっているタンガタイプのものだった。ちなみにベビードールもスキャンティもセクシーなピンクのシースルータイプ。刺繍されている花柄が同じデザインという事は、どうやらそれらはセットになっているようだ。 「あっ・・・」 先程まで快楽を感じていた証拠とでも言わんばかりに自分のペニスがフル勃起状態でスキャンティの上にその先端を覗かせているのに気づいたシンイチはそれをサトミに見られないように両手で覆った。 「あらぁ?シンちゃ~ん、今更何を恥ずかしがってるのかなぁ?」 「い、いえ、その・・・」 「さっき、シンちゃんのぴんぴんになったオチンチン、しっかり見ちゃったもんねー」 その瞬間、シンイチは茹蛸のように顔を真っ赤にしてしまった。 “まあぁ・・・シンちゃんったらカワイイ~” サトミはシンイチのその反応に心をキュンキュンさせて、気が付いた時にはシンイチの身体を抱きしめていた。 「サ、サトミさん・・・」 シンイチもおずおずとサトミの背中に手を回し、ソフトに彼女を抱きしめた。 “あ・・・” シンイチのその反応で、その心がガラスのように繊細なものである事に今更ながら気付いたサトミは、どうしても言っておかなくてはいけない事を思い出した。 「・・・シンちゃん・・・さっきは御免なさい・・・イツコの暴走を止められなくて、シンちゃんを傷付けてしまった・・・」 「サトミさん・・・」 「お詫びの印、と言っていいかわからないけど・・・でも、どうしてもシンちゃんに謝りたくて・・・だから、私の一番のお気に入りのランジェリーをシンちゃんにあげる事にしたの」 確かにアヌスをレイプされるというあのまさかの出来事でシンイチの心はひどく傷ついた。女顔だと言われて苛められていた事など、今日のアナルレイプに比べたら取るに足らないものだった。 「・・・シンちゃん、女のコになるの、嫌いになった?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 熟考した後で、シンイチは首を横に振った。 自分はやはりサトミが好きで、サトミが望むのならば女装も拒否しない・・・いや、積極的にサトミを愉しませてあげたいとシンイチは思うからだ。 「サトミさんが望むのなら・・・いつだって・・・」 「ありがとう・・・シンちゃんの事、大好きよ」 それは、少々歪んだ形かもしれないが、確かにお互いを想うが故の心の交流であった。 「わぉ~、シンちゃんったらメイド服も似合うじゃないの」 「可愛いですか?」 「ええ、と~っても!」 「嬉しいです、サトミさんが悦んでくれて」 サトミがコスプレショップで仕入れてきた中古のメイド服(多分、アキバのメイドカフェで使用していた物の質流れか何かと思われる)に身を包み、ロングのウィッグに猫耳のカチューシャを付けたシンイチはその場でくるっと回ってサトミの目を愉しませた。 「はいそこ、遊んでないで練習を始めるわよ」 「はい、お姉様」 アスリンがシンデレラの劇の練習を告げると、シンイチはすぐに役に成りきって女口調で答えた。 家で何度も女装して劇の練習をしているうちにシンイチはしっかり女のコになりきる事を覚え、劇の芝居もどんどん上達していった。 「やはり、一度‘女のコ’を体験した事が効果あったみたいね」 「感じてくれたらなお良かったんだけど」 アスリンやイツコは完全に勘違いしているのだが、幻想に酔って気づかないでいた。 勿論、その幻想とはヤヲイ幻想そのものではなくて、シンイチに対してこれから自分達が行おうとしている欲望の空想・妄想であった。 そしてその週末の土曜日、劇の衣装が用意できたので一度通しで劇の稽古をする事になった。 お城の舞踏会に出る為に魔法使いによってお姫様に変身させてもらったシンデレラ・・・純白のドレスに身を包みお化粧を施したシンイチの姿に誰もが驚いた。 「ほ、本当に猪狩くん!?・・・う、嘘でしょ・・・」 「本当に女のコそのものじゃない!?」 クラスメートの女子生徒達はシンイチのその美しさに唖然呆然とした。 「やっぱ、素材がよかったからかもね。自分でもここまでになるとは思わなかったわ」 メイクを担当したクラス委員長の女子生徒も満面の笑み。主役がどうにも冴えなかったら劇の評判にも影響するのは必至だが、どうやらその心配は無さそうで一安心と言ったところか。 一方、男子生徒も大騒ぎだった。 「凄ぇ・・・凄ぇよ、猪狩・・・」 「知らない奴が見たら、絶対に女と見間違えるに違いないぜ。間違い無い!」 「こんな可愛いコが男のコの筈がないっ!ってか?」 「・・・何で・・・何で男なんや・・・こんなに別嬪やのに・・・」 何故か悔しがる者もいた。 「ちょっと、そこ!変な気を起こさないでよね!」 クラス委員長の彼女はどうやらノーマルらしく、一部の男子の不穏な言葉に早速口を挟んだが。 「・・・これなら、別に王子役がそのまま男子でも良かったんじゃない?てゆーか、今からでも変更すべきよね」 クラスの一部の圧倒的少数のアブノーマルな女子生徒数人は自分勝手な発言。 「そういう訳にもいかないわ。何たってこの私の晴れ姿を披露できるんだから」 そこに王子の衣装に身を包んだ凛々しい姿のアスリンが登場。目の部分が開いているヴェネツィアマスクに鍔広の羽付帽子にサーベルを手にしたその姿は何かズレているように感じるが、本人がこのカッコがいいとゴリ押ししてそのまま通ってしまったのだ。 「カッコいいよ、アスリン」 「っ!?あ・・・ありがと・・・」 シンイチからその言葉を掛けられてアスリンは一瞬狼狽えてしまい、返した言葉も小声になってしまった。 今まで家で劇の稽古の為に男装をしてきたが、シンイチからそんな好意的な言葉は全く無かったので、思わずドキっとしてしまったのだ。 初めて通しで行われたゲネプロは、舞台上の演者についてはセリフの間違い・噛み・抜け等は一切なく、演技も良くできていたが、場面転換(暗転時)の際の舞台照明の切り替えタイミングに遅れが生じるといったちょっとしたトラブルがあっただけだった。 そんなこんながありながらも劇の準備は着々と進み、私立練芙学院中等部はついに文化祭の日を迎えた。 主役が男女入れ替えという一風変わった劇「シンデレラ」は大好評で終了した。 時刻も夕暮れ時となって空が暗くなり始めた頃、グラウンドではファイアーストームが開始された。 文化祭での役目を終えて不要となった書類や工作物等が火の中にくべられて炎と光と煙に変わっていく。その周囲では校内放送で流される音楽に合わせてフォークダンスの輪ができていた。 「終わっちゃったわね、文化祭・・・」 グラウンドとそこから一段高い所にある校舎との間にある土手の芝生に腰を下ろしてファイアーストームの様子を眺めていたシンイチの傍にサトミが腰を降ろした。 「・・・大変だったけど、なんとか無事にやり遂げる事ができました。達成感とかそういう言葉が正しいのかどうかわかりませんけど、正直ほっとしています」 「自分の顔に自信が付いたかしら?」 「それもちょっと違いますけど・・・でも、今では何で悩んでいたんだろうってぐらい、小さな事だと思ってます。これもサトミさんのおかげです」 「あら?私、何かシンイチくんにお礼言われるような事をしたかしら?」 「だって、サトミさんが僕を説得したんですよ。トラウマを克服するために劇に挑戦しろって」 「そうだったっけ?」 シンイチの女装姿を見たかったというのが本心だったので、サトミはその場の思い付きか何かで自分がシンイチに何を言ったのかを完全に忘れていた。 だが、それをサトミがすっとぼけているのだろうとシンイチは勘違いしてしまった。 「サトミさんらしいなぁ・・・でも、改めてお礼を言います。本当にありがとうございました」 「あ、でも、お礼ならアスリンに言った方がいいと思うわ。あのコがシンイチくんをシンデレラ役に推薦したから今のこの結果がある訳だし・・・」 シンイチを女装させて愉しみたいのも本心であるが、できればアスリンとシンイチが仲良く結ばれて貰いたいとも思っているサトミはその為にシンイチを誘導し始めた。 「うーん・・・確かにそうだけど・・・あくまでも十分条件であって必要条件じゃない気がします」 アスリンの言葉は切っ掛けに過ぎない、あくまでもサトミのおかげで今の自分があるとシンイチには思えた。 一方その頃、そのアスリンは視聴覚室でイツコとともに祝杯―――と言ってもジュースだが―――を挙げていた。 「アスリン、劇の成功おめでとう」 「ありがとう、イツコ先生。でもまだこれは始まりに過ぎないわ」 「そうね。サトミに憧れているシンイチくんの想いを利用してサトミを巻き込みながら彼に女装趣味を覚えさせた。貴女の『シンイチくんペット化計画』、次の一手を楽しみにしているわよ」 「それにはイツコ先生のさらなる協力をお願いするわね」 二人は妖しい目で微笑み、肯き合った。 また一方その頃、使用されていないとある教室の片隅で。 「売れる・・・これはきっと売れるぞ・・・間違い無い」 十数枚の写真をアルバムにまとめて一人ほくそ笑む男子生徒がいた。 とある土曜日の夕方、アスリンはサトミとともにイツコ宅にお邪魔した。いや、正しくは夕食会に招待されたのだが。 「いらっしゃいませ」 サトミと同じようなマンションの最上階にイツコ宅はあった。その玄関を開けると出迎えたのはメイド服姿のサヤだった。 「・・・部屋を間違えたかしら?」 「間違っていませんよ。お姉様がお待ちです」 サヤはメイド然として膝を折って二人の為にスリッパを出してくれた。 「もしかして、何かのplay中かしら?」 「まあ、そんなところです。さあ、どうぞ奥へ」 サヤに案内されて奥へ行くと、リビングのソファに優雅なガウンを羽織ったイツコがワイングラスを片手に玩びながら待っていた。 「二人とも、来てくれて有難う」 「こちらこそ、御招き頂きまして。これ、買ってきたから食べて」 サトミは駅前のケーキ屋で買ってきたショートケーキをリビングの豪奢なテーブルに置いた。 土曜日になるとサヤはイツコ宅に通い、メイドとなってイツコの世話を焼いている・・・いや、イツコの命令を嬉々として受けているらしかった。そして夜になると二人は激しく愛し合い、日曜日の昼過ぎにサヤは後ろ髪引かれる―――ショートヘアだが―――想いでイツコ宅を辞して自宅に帰るのだった。翌日からはまた学校で会えると言う事を愉しみとして・・・。 だが、今日はイツコの意向で二人の愛を確かめる事は翌週までお預けとなった。 「せっかく共通の目的ができた三人だもの、もっと親睦を深めながら同時に今後の計画も考えればいいんじゃないかと思ったのよ」 という訳で、料理上手なサヤの拵えた素敵なディナーと美味しいお酒で―――アスリンは未成年なのでシャンパン風のジュースだったが―――で晩餐会は盛り上がった。 「やっぱり、次は外で愉しみたいわね」 「プールとかどうかしら?あのコに水着を着せちゃって反応を愉しむの。それも、野暮ったいスクール水着よりはハイレグワンピースかビキニがいいわよね。ドゥフ」 「サトミったら、妄想が暴走してるわね。水着なんか着せたらバレバレになって、それこそ大騒ぎになっちゃうわよ」 「そうね・・・女装させてもバレないようにしなくちゃ、彼も楽しくないでしょう?普通にセーラー服でいいんじゃない?」 「それもそっか・・・それならさ、スカートは思いっきり短いのにしない?」 「ああ、それはいいわね。下着が見えるかもしれないって、思いっきり怖がらせるのも愉しそう」 等と、シンイチを女装させてどうやって愉しむかという話題で話は弾んだ。 アスリンはシンイチを自分の言いなりになる従順なペットにしたい、サトミはシンイチの女装姿を堪能したい、そしてイツコは結果はともかくその過程を愉しみたい・・・三者三様の別々な思惑があるのだが、ベクトルは同じ方向だった。つまり、シンイチをイジメたいという邪な欲望が心の奥底にあったのだ。 アルコールが入り過ぎたサトミとイツコの二人はとうとう睡魔に襲われてうっつらうっつらとし始めたので、二人は一足先に横になった。イツコは勿論自分の寝室のベッドに、サトミは客間に用意された布団に。 「あら、こちらでしたか」 アスリンはベランダに出て少々火照った頬を夜風で冷やしていた。 「二人は?」 「大丈夫ですよ。シーツの上で安らかな寝息を立てています。それより御気分はどうですか?」 「・・・バレてた?」 アスリンは二人の大人の目を盗んでワインを少々失敬していたのだ。 「ええ、まあ・・・何と言いますか、何事も経験とか・・・その、私が口をはさむ事でもありませんので」 サトミはともかく、年下のアスリンにまで敬語を使うのは勿論イツコの命令によるもので、サヤは当然のような顔をしていた。 「ねえ、サヤさん。もしかして、私もあのヨッパライと一緒の部屋に寝る事になる訳?」 イツコが呼び捨てでいいと言うのでサトミも学校とは違ってサヤちゃんと名前で呼ぶ事にしたが、アスリンはやはり自分が年下であるのでそこまでくだけられず、サヤさんという呼び方にした。 「最初はその予定でしたが、あそこまで酩酊されるとは・・・私のお部屋ならベッドがありますがお使いになりますか?」 「えっ?サヤさんの部屋もあるの?」 「ええ、お姉様のご配慮で・・・」 案内された部屋は客間としてはかなり小さかったが、それでもベッドもクローゼットもテーブルや椅子もちゃんと一式は備わっていた。 「お姉様の言い付けで御留守番をする時はいつもここで横になっています」 どういう時に御留守番を言いつけられるのか?だがアスリンはそこまで聞く必要も無いと思ってやめた。 実際はと言うと、放置・焦らしプレイで使用するのが一番頻度が多い。目隠しをされて後ろ手に拘束されて身体の敏感なところに微かに振動するものを取り付けられて、もどかしい想いをしながらせつない吐息を溢しながら愛するイツコが戻ってきて自分をイジメてくれるその時を心待ちにして過ごす、といった具合だが、サヤはそこまで話す必要も無いと思ってやめた。 「えっと、私がこのベッドを使うとしたら、サヤさんはどこで寝るの?」 「それはどうかお構いなく。毛布があればカーペットの上でもソファの上でも寝れますので」 「・・・サヤさん、もう寝ちゃった?」 「いいえ、まだ・・・」 「教えてほしい事があるんだけど、いいかな?」 「どうぞ」 「サヤさん、あまり話に乗って来ないけど・・・何か理由があるの?」 アスリンとイツコとサトミとの三人で、どうやってシンイチを従順なペットに躾けるかについていろいろと空想・妄想を繰り広げて話し合った今宵の晩餐会だが、サヤはほとんど発言をしてこなかったのだ。口を開いたのはイツコに何かを聞かれた時だけ。 「いえ、特に理由は何も・・・私はお姉様のペットですから、自ら話の中に入るのは差し出がましい事ですし・・・」 「そう?何か、異性の事には興味が無い・・・てゆーか、男ギライみたいな感じがするんだけど・・・あ、レズだからそれも当然かな?」 少々アスリンは誤解しているが、レズビアンは女性同性愛者・・・つまり性的欲求の対象が自分と同じ女性である事であり、それがすぐに男ギライと=(イコール)になる訳では無い。 「男ギライ、ですか・・・それも、少しはあるかもしれません・・・」 「イケメンの俳優とかカッコイイ男性アイドル歌手とか、お気に入りの人はいないの?」 「いいえ、別に・・・私はもう男性には興味有りませんから・・・お姉様がいてくれさえすれば、私はもう・・・」 「そう・・・まあ、それで幸せであればそれでいいものね。あ、でも、最初から、てゆーか生まれつきレズだった訳じゃないんでしょ?私だって所謂【やらないか?アッー】は最初は全然興味なかったけど、クラスメートに薄い本を見せて貰ってからは大好きになっちゃったし・・・つまり・・・」 「切っ掛け、ですか?私がレズになった・・・」 「うん・・・良かったら、教えてくれる?」 「・・・中学生の時、同級生の男子にレイプされたんです・・・」 「えっ!?」 サヤが14歳の秋だった。文化祭の非公式行事の校内美人コンテストでサヤは優勝した。勿論、非公式であるためそれは男子生徒達だけの内輪の行事であり、女子生徒達には何も知らされていなかった。当然、サヤ本人も自分がいつの間にかコンテストの候補者になっていて、あまつさえ優勝してしまった事など全く知らなかった。 「クラスメートの女子がちょっと相談したい事があると言って、お休みの日に学校の演劇部室に行ったの」 サヤは演劇部員だったのだがそれはさておき。 「でも、誰もいなくて、そのコも後から来るんだろうと思ってたら、男子が数人入ってきた・・・」 その男子生徒達は、サヤが潔癖症であるがゆえに毛嫌いしていた素行不良のワル数人だった。 「そのコもどうやら脅されていたと後でわかったのだけど、騙されたと気づいた時にはもう逃げる事もできなくて・・・捕まえられた私の上に何度も男子たちが乗っかってきて・・・」 なぜ、サヤがそのような理不尽な辱めを受けねばならなかったのか?それを道理とする理由は全く無い。ただ、そのワル達がサヤを輪姦した理由はあった。 それは、前年の美人コンテストの優勝者が負けた腹いせで仕組んだものだったのだ。 「妊娠は免れたのがせめてもの救いだった・・・」 レイプされた事を弱みとして握られたマヤは事件を学校にも両親にも言う事はできず、登校拒否、そして両親の計らいで全校生徒が寄宿舎生活する他県の私立の女子校に転校する事にした。 「そこで私はお姉様と出会ったの」 サヤが初めて見たイツコは生徒会長として週初めの全校朝礼での挨拶をしているところだった。 その凛々しさに驚いたサヤは壇上のイツコをずっと見つめ続け、転校初日なので唯一人前の学校の制服を着ていたサヤを壇上からすぐに見つけたイツコ。 視線が合わさった時、イツコはサヤに微笑み掛けた。その微笑一つでイツコに魅了されたサヤは緊張していた心が安らかになった。 「お姉様は生徒会長であるだけでなく、化学部の部長も兼任されていたの。それで私も化学は好きだったから入部した訳」 そしてイツコの方もサヤの聡明さに感心し、二人の会話は弾んだ。二人の仲はどんどん近くなり、当初は部活の時だけだったのが授業中を除く時間のいつでも二人は一緒になる事が多くなっていった。 「その頃の私はまだ同性愛という言葉さえ知らなかった。でもお姉様に憧れて、お側に居られるだけで幸せだと感じていた」 やがて、イツコが卒業を迎えた時、サヤは思い切って己の想いをイツコに告白した。そしてイツコもサヤの想いを受け入れてくれた。 桜が満開となった4月のとある日、イツコは高校に入学した。そしてその日、二人は初めて身体を重ねた。 その行為はあの忌まわしき災難とほとんど同じだった。しかし、あの時と違って二人の間には相手を求める愛情で満ちていた。 あの時は苦痛でしかなかったその行為は、この時は深く激しい悦楽に満ちたものだった。 「私の身体は穢れているのに、お姉様は私を慈しむかのように愛してくれた・・・私はあの日誓ったの。一生をお姉さまのために捧げるって・・・」 「それからそれから、どうしたの?」 刻が過ぎるに従って彼女達は成長するとともに、二人の愛はより大きく、二人の関係はよりディープなものになっていった。 サヤはイツコを追うようにして同じ高校・大学に進んだ。勤務先も同じになったのはイツコの計らいによるものだったが。 「・・・と、いろいろあって、現在に至る訳」 いつの間にか時刻は24:00を越えていて、サヤの口調はメイド言葉の丁寧語から普段のものに戻っていた。 「・・・ありがとう。辛い事まで話してくれて、何だか申し訳ないわね」 「参考になったかしら?」 「えっ?ま、まあ、そうね、たぶん・・・」 マヤは自分とイツコの関係がどうして上手くいっているか、それは二人が強い絆で結ばれているからだとアスリンに理解してほしくて、そこまで赤裸々に語ったのだった。つまり、アスリンとシンイチとが強い愛情で結ばれて仲良くなってほしいという願いがあった。 しかしアスリンの方はそんな事は露にも思わず、どのようにしてイツコがサヤを手懐けていったのかという事に興味があったので、サヤに問われた時にあたふたと慌てて誤魔化すような回答しかできなかったのだが、どうやらサヤはそれを自分がシンイチを好きだと気づかれたくないためにアスリンが誤魔化しているのだろうと受け取った。 「まあ、これからゆっくり、時間をかけて進めていけばいいと思うわ。それじゃあ、お話はこれぐらいにしてもう寝ましょう。お休みなさい、アスリン」 「は、はい、お休みなさい、サヤさん」 こうして愛の三人組(?)が初会合した記念すべき日の夜は更けていった・・・。 だが、サヤの話は終わっていたが、事実にはその後も続きがあった。 とある高層ビルの最上階のオフィスに三人の麗しき女性が集っていた。だが、彼女達を招集したらしい上司のデスクにはスピーカーが置かれているだけで、その豪華な座席の主の姿はどこにも無かった。 と、突如スピーカーの電源ランプが点灯して声が聞こえてきた。 『お早う、私のエンジェル達。ご機嫌如何かな』 「ええ、おかげさまで」 答えたのは眼鏡を掛けた知的そうなロングヘアの美女。 「元気ハツラツです」 ボケたのは愛くるしい笑顔のショートヘアの美女。 「ボケはいいから」 ツッコミを入れたのは彫が深い顔立ちのブロンドヘアの美女。 『・・・・・・・・・さて、今回の任務だが―』 デスクの背後の壁に掛けられた大型ディスプレイに映像が現れた。 『この三人の男達はドラッグを使って数多くの女性をかどわかし、レイプした後で殺害した強姦殺人犯だ。さらにそのレイプ映像を地下で流して多額の利益を享受している』 「なんて非道い奴らなの!」 「正に女の敵ね!」 『だが、こいつらには残念ながら財界・官僚・政治関係者の有力なコネがあり、警察も手出しができない』 「そこで私達の出番と言う訳ですね」 『手段は問わない。君達の手でこの人間のクズどもを抹殺して貰いたい』 「わかりました。ところで最後に一つだけ質問があるのですが?」 『何かね?』 「いつになったらお姿を見せてくれるのでしょうか?」 『はっはっは、それはだね・・・何れ刻が来たら逢える、とだけ答えておこう』 「まったく、いつもそうやってはぐらかすんだから・・・」 とにもかくにも、彼女達は行動を開始した。 相手はドラッグを自由に使えるという事で社会の裏組織とも関わりがあるだけでなく、表の世界でも権力階層に守られているという少々厄介な相手であった。 だが、数々の危険な任務をその美貌と知性と行動力でクリアしてきた三人の美女は今回も見事なチームワークを見せた。 「ここは・・・どこだ?」 はっと気づいた男がいたそこは、自動車の後部座席の上。しかも、両腕両足を後ろに縛られただけでなく、身動ぎさえできないように自動車の中に固定されていた。 そことはまた別の場所で同様にはっと気づいた男は、自分がどこかの一室の床に固定された椅子に縛り付けられている事を知った。 そことはまたまた別の場所で同様にはっと気づいた男は、自分がどこかの工場のベルトコンベヤーの上に横たわっている事に気付いた。両手両足は縛られ、そのワイヤは頭上と足元のコンクリ塊に繋がっていて身を起こすこともままならない。 「「「な、何だこれはっ!?どうなってるんだっ!?」」」 『ようやく目が覚めたようね』 『目が覚めない方がよかったのかもしれないのにね』 『自業自得ってところね』 どこからか、スピーカーを通して聞こえてきたのは女性の声。 「・・・その声はっ!」 それは、いつものように己達の欲望の赴くままにレイプして弄ぼうとして声を掛けた女性達の声に他ならなかった。 「いったいこれは何だっ!何のつもりだっ!」 『お前達三人は数多くの女性を強姦殺人してきた。犠牲になった彼女達に成り代わってお前達に復讐する』 「何だとっ!」 「ふざけんじゃねえっ!俺達のバックには誰も手出しできない組織が付いているんだぞっ!」 「死にたくなければさっさと縄をほどけっ!」 『どんな組織が付いていようと、私達には関係無い』 『誰もお前達が今どこにいるか、決して見つける事はできない』 『それに、死ぬのはお前達の方だ』 「何っ!?』 『私の名はパピヨンとか言って、お前らに自ら罪を告白させて、それを公衆の面前で白日に晒す、なんて甘いものじゃないからね』 『銃で頭を撃って一瞬で殺したりはしない。地獄の苦しみを味わいながら死んでいきなさい』 「何だとっ!」 そして、事態は動き始めた。 車内の後部座席に縛り付けられた男、そこは実はぼろぼろになった廃車だった。 何かの機械の始動する音が聞こえ、廃車は移動させられ始めた。 「お前は今、廃車の中にいる。もうじきプレス機で圧縮されてただの鉄くずの塊になる予定だ』 「な、何いっ!?」 一室の中の椅子に縛り付けられた男、そこは護岸工事に使うコンクリートブロックを作る為の型枠の中だった。 何かの機械の始動する音が聞こえ、天井の一部からセメントが流し込まれ始めた。 「お前は今、コンクリを固める型枠の中にいる。もうじき天井まで全てセメントが埋め尽くす予定だ』 「な、何いっ!?」 ベルトコンベヤーの上に縛り付けられた男、そこは建設廃材などを粉々にする破砕工場の中だった。 何かの機械が始動する音が聞こえ、ベルトコンベヤーは動き始めた。 「お前は建築廃材の破砕工場の中にいる。もうじき破砕機の中に送り込まれる予定だ』 「な、何いっ!?」 男たちは悟った。自分達が間も無く死ぬだろうという事を。 「「「やっ、やめろっ!やめてくれっ!」」」 『やめてくれ、だって。やめる訳ないじゃない』 「「「たっ、頼むっ!助けてくれっ!」」」 『助けてくれ、だって?助ける訳ないでしょ』 「「「おっ、お願いですっ!何でもするから許して下さいっ!」」」 『許してくれ、だってさ・・・許す訳ないじゃん』 三人の女達は無慈悲な言葉を返すのみだった。 そして廃車はプレス機の中へ落下し、型枠の中に流し込まれるセメントはその界面を上昇させ、ベルトコンベヤは破砕機の開いた口の中に吸い込まれた。 『『『死ね』』』 三人の女達の恐ろしい呟きが聞こえた直後。 「「「ゥボアアアアァァァーーーッッッ!!!」」」 三人の男の断末魔の悲鳴が上がった。 上方からプレス機の巨大な鉄のハンマーが落ちてきて、男は一瞬で鉄の塊の中にぺしゃんこになってその肉も骨も血も封じ込まれて死んだ。 一気にセメントは型枠の中を埋め尽くし、男はその中に埋め込まれて死んだ。 破砕機はその凶悪な力を発揮し、男は血飛沫を上げながらミンチにされて死んだ。 「「「任務完了」」」 それぞれの場所でそれを見届けた三人の美女達はトランシーバーで連絡を入れた。 政府に繋がる秘密エージェント・梶ジョージのアシスタントを務める三人の美女・野上アカネ、阿間野カオリ、遠井ハヅキ―――通称・ジョージ’s エンジェルの活躍が人々の間に知られる事はなく、私立練芙学院中等部は学園祭が終わっての新しい学びの日を迎えた。

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