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第2話 そのヨン

話が脱線したが、マサコのコスチュームはピンクのゴスロリが基本で戦う美少女としてはやはりお決まりの肘丈グローブ・膝丈ブーツが漏れなく付いていた。そして、ドレスの中に何重ものパニエを着なければならないその衣装を着たユイコ曰く「こんなにスカートの中がいっぱいじゃ動くのも大変で、戦闘どころの話じゃないってば」だそうだ。 木曜日は「BKA98」という、大集団ということでギネスに認定された事だけが売り物の筈なのに、そこは悪知恵の働く仕掛け人がいて先行投資で実弾をばらまいて情報を操作して名を売り後はサクラを使って小劇場を盛況と見せかけて注目を集め、バカなアイドルオタを集めてただの人気投票を総選挙などと国語がダメダメだった事がバレバレなタイトルのイベントを企画して一人ウン十枚もCDを買わせたりして搾取しさらにはその資金で年末の賞まで買ってしまうまでに肥大したものの100人以上いる女のコたちはほんの10人にも満たない者しか芸能界に生き残る事は出来ないのに明日のスターを夢見て努力すれば夢はかなうというはかない夢を信じて実際はぼろきれのように扱われているのに気付かずに踊らされ続けている、説明が長くなってしまったがそんな小劇場アイドルのコスチュームだった。基本的に赤-黒系チェック柄のブレザー+膝上10cmのミニスカートで、サトミはユイコに歌って踊ることを所望したが、そんな小劇場アイドルなぞ知らなかったユイコにはもちろん不可能だった。 金曜日は「麻布10番」という、地下アイドル(文字どおり、地下駐車場の一画にスペースが与えられてそこで歌って踊り、取材も来ずNETにも乗らず口コミだけでしか伝わらない、芸能界の地下を静々と進んでいく泡沫アイドルで、そんな状態だから女のコたちも同性・異性を問わずくっついたり繋がったりして問題を起こしてはやめていって新たな女のコがいつの間にか補充されているらしい)のコスチュームだった。 土曜日は「春日のハラヒレ」という、我儘一杯の美少女が相手の了解を得ずに勝手に周囲を巻き込んで騒動を起こすも、都合よくあくまでも『偶然に』通りかかった宇宙人、魔法使い、神、天使、悪魔とかそんな感じの物体が余計なお節介をして解決すると言う、レベルの低いライトノベルが原作の美少女アニメのコスチュームだった。と言っても、エヴァに形も色もよく似たセーラー服(スカートは膝上10cmと短めだったが)で、ただ片腕に「SOD団」と書かれた腕章をしているだけだったが。でも、ユイコとしては一番活動しやすい衣装であった。 日曜日は「じょしえん」という、演劇部とほのかな恋を主題にしていた女子高生の青春ものだったのが、いつのまにか各国の代表と戦うバトルトーナメントに出場し、さらには東京タワーはおろか東京スカイツリーよりも巨大なロボットに乗り込んで勝手に人類を統合して進化させようとしている悪の秘密結社と戦い、最後にはおめでとうと言って大団円になってしまうというよくわからない東京12ch系アニメのコスチュームだった。と言っても、まあ、特に特徴のない紺色系のその辺のどこにでもいる普通の女子高生そのものの衣装だった。またもユイコ曰く「普通ですね」だそうだ。 シンイチも月曜日や火曜日は下腹部に妖しい膨らみが出るので恥ずかしがっていたが、水曜日以降は基本的にスカートなので羞恥心はほぼ消えて、サトミの笑顔を見れる事に喜びを見出してノリノリで女装してユイコに変身していた。 それらのコスチュームの下に着る為に用意されたブラとパンティのセットも、コットン地の廉価品ではあったが、ボーダーラインがクリームイエロー・ピンク・サックス・ミント・ベージュ・グレーと毎日色変わりだったのもシンイチには何故か嬉しかった。 しかし、それでも寝間着は過激なものを着せられるので、夜は悩ましい気分で寝ることになった。サトミが用意した寝間着は白のレース地のベビードールとスキャンティだった。ベビードールも肩が露出しているのもあれば可愛くパフスリーブになっていたり、前開きがあれば後開きのタイプ(ノーマルのものも当然あるとして)があったりとバラエティに富んでいた。さらにスキャンティとは言っても月曜日はフルバックのノーマルではあったが、何せレース地なので透けて見える範囲が多いのだ。火曜日だとそれがTバックとなり、水曜日はハイレグになり、木曜日はハイレグのTバック、金曜日はローライズ、土曜日はローライズのTバックとなってしまった。当然、フル勃起したペニスをスキャンティの中に納められたのは木曜日までで、金曜日からは陰嚢の部分までしか隠せなくなってしまった。 「ウフフ、そんなにクリトリスをフル勃起させちゃって・・・スキャンティが小っちゃくてきついかしら?」 「は、恥ずかしい事言わないで、サトミお姉さま・・・」 自分の用意したランジェリー姿になったユイコの下半身のお決まりの反応が嬉しくて、サトミは鼻の下をそれまで以上にゆるゆるにしてこれ以上はないというだらしないスケベ顔を晒していたが、それさえも嬉しくて喜んでいるのだとユイコの頭の中で変換されて認識されてしまっていた。そして、恥ずかしさに顔を両手で覆ってしまうというサトミの喜ぶ反応を無意識の内に取ってしまっていた。 「ウフフ、ユイコちゃんったら・・・女のコのくせに女のコのランジェリーを着て興奮してクリトリスをフル勃起しちゃうなんて・・・そんないけないコにはやっぱりおしおきしなくちゃいけないわね」 言うが早いか、サトミはユイコの大きなクリトリスを口に咥えてしまった。 「あっ、だめっ」 と拒否の言葉をユイコは発するが、勿論それはポーズに過ぎない。 大きなクリトリスという言い方で誤魔化してもそれはペニス、それをしゃぶりたい大人の女とそれを気持ちよくしてもらいたい男のコ双方にとって当然のなりゆきであった。 「どう?気持ちいい?」 いちいち正確な言葉に訳すのは面倒なので、ペニスを咥えながら話そうとするサトミのくぐもった声の表記は省略する。 「うん・・・とっても・・・」 「でも、まだ出さないで・・・ギリギリまで我慢して・・・たっぷりおしゃぶりを楽しませて頂戴・・・」 愛しい女装美少年のフル勃起したペニス、それを性欲丸出しでしゃぶり続けるサトミ。男性経験の数から言えばしゃぶり慣れてるとは言い難い筈だったのだが、それでもサトミのフェラチオは確実にユイコのペニスの快楽ポイントを刺激していた。ひとえにそれは相手の愛しい女装美少年に対する愛による奇跡だった。愛が経験を凌駕したのだ。 そしてユイコの方も込み上げる快楽に必死に耐える為に無意識の内に感覚を研ぎ澄ませていた。サトミの口―――唇・歯・舌、それらが三位一体となったもの―――が自分のペニス―――根元、茎、カリ首、亀頭、鈴口、それらの前後左右―――のどこをどのように―――吸っているのか吹いているのか、舐めているのか噛んでいるのか、刺激の強弱・範囲、舌・歯・唇の動かし方etc.―――を駆使して愛撫しているのかを、撃ち込まれる快楽のパルスから瞬時に判断・理解して記憶していった。ひとえにそれは相手の憧れの美しい女性に対する愛による奇跡だった。愛が経験を凌駕したのだ。 しかしそれでも愛撫する側と愛撫される側を比べれば、弱い立場にいるのは圧倒的に後者だった。能動的な動作に対し疲労を感じれば適度な休息を取れば良いのだが、受動的な反応を我慢するのに休息はありえない。 「お・・・お姉・・・さま・・・も・・・もう・・・私・・・」 「いいわ、イッテも・・・女のコなのにクリトリスをフル勃起させて、男のコのようにミルクを噴き上げて、激しくイッちゃいなさい!」 「ああっ、だめっ、イ、イク、イクッ、イックゥ~~~ッッッ!!!」 頬がこけるほどのきついバキュームをしながらペニスの茎を唇で締め付けて激しく大きくピストンさせたサトミの口の中に、我慢の限界を超えたユイコは濃厚なミルクをペニスの先端から激しく噴き上げた。それも一度や二度ではなく、数回に渡って―――流石に終わり近くになるにつれてその噴射の勢いは急速に衰えていったが・・・。 とにかく、そうやってサトミとシンイチは眠りにつく前のひと時を使ってペニスの口唇愛撫を愉しみ・愉しまれながらの日々を繰り返していった・・・。 シンイチとアスリンの二人の中学生を預かりながらも収入は教職による給与しかないサトミが何故そんなに毎日コスプレ衣装やセクシーランジェリーを買ってこれるのか?アルバイトもしたこともなく労働についてはまだ何も知らないシンイチがそんなことに気づくことは無かったのが、サトミにとっても今は僥倖とも言えた。 だが、そこにはやはりアスリン絡みの理由があった。 それはとある日の放課後の事だった。 放送で応接室に呼び出されたサトミはそこでアスリンからある人物を紹介される事になった。 「紹介するわ、サトミ。こちらは剣崎キョウヤさん。私のスポンサー代理人よ」 「はい?」 「初めまして、ラングレー・コーポレーション日本支部チーフマネージャーをやっております、剣崎と申します」 そう言って彼が差し出した名刺には自己紹介したとおりその会社名と肩書きが記載されていた。 「あ、これはどうも、ご丁寧に・・・」 「サトミの事はもう説明しているから自己紹介はしなくていいわ」 立ち話もナンだから、と言うことでとにかく三人は応接室のソファに座って話すこととなった。 そこで剣崎からサトミが説明を受けた事は、アスリンの日本でのミッションへの協力についてだった。 アスリンが萩生一族の直系に当たり、日本に来る際にあるミッション―――猪狩一族の末裔であるシンイチを自分たちの仲間に引き込むこと―――勿論それはシンイチとの友好的な関係の構築であり、さらに欲を言えばシンイチと恋愛関係になってくれればこの上は無い―――を受けていた事は本人から聞いていた。そして、アスリンの思いが少々・・・いや、かなり歪な気はしているのだが、シンイチと結びついてくれたらそれはそれでいいのではないかとも思っていたサトミだった。 「我々は彼女が猪狩シンイチ君と強い絆を結んでくれれば、萩生コンツェルン・猪狩コンツェルンの双方にとって将来的にも―」 「ええ、存じております。私も二人が結ばれてくれたら大変喜ばしい事だと思います」 「理解して頂いて、感謝致します。つきましては、早速ですが、これをどうぞ」 剣崎はアタッシュケースからA4の茶封筒と一枚のカードを取り出した。 「これは?」 「ラングレー・コーポレーションのコーポレート・カードです」 そのカードの下部には何やら世界中のクレジット会社のマークが数個並んでいて、どうやらクレジットを使えるようだった。茶封筒の中身はそのカードの規約説明書や契約書類であろう。 「彼女のミッション達成のための資金として弊社がサポートするのですが、中学生に持たせるには額が大きすぎますので、保護者である貴女に管理をお任せしたいと思っております」 どうやら、萩生一族がアスリンのミッションをサポートするには何かしら表沙汰にできない理由―――おそらく、アスリンを一族の一員として認めようとする一派と認める気が無い一派で内部に対立があるのかもしれない―――があるのかもしれない。従って、萩生コンツェルンの傘下にあるラングレー・コーポレーションを通じてサポートするという事なのだろう。 勿論、大人のサトミだからそんな事を推測できるのであって、アスリン本人は自分を認めようとしない一派がいるだろうという事を想像するのに及びもしなかった。 「それでは、くれぐれも彼女の事をよろしくお願いします」 剣崎はサトミのサインが入った書類をアタッシュケースにしまうと去って行った。 当座の金として用意されているのは1000万円。その金額の大きさに吃驚仰天していたサトミは、剣崎を見送るアスリンの瞳が恋する相手を想う少女のそれと同じになっている事に全く気付かなかった。 帰宅してから次の朝まではずっとサトミに女装させられてそのショタコン性欲の餌食?になりながらもそれを受け入れるシンイチだったが、では朝起きてから学校に行っている間の時間はどうかと言ったら、きれいさっぱりにサトミとの秘め事は記憶の奥底に厳重に保管されていた。本来から女装趣味ではないし、根が真面目だから昼間は学業に集中していたせいもある。 それでも、アスリンのいない家に帰ってからサトミの帰宅を待つ間は、今日はどんな女装をさせられてしまうのか―――まあ、サトミが何やらコスプレ衣装ばかり買ってくるから、いったいどんな姿にされてしまうのか?ということについて興味が湧いた、というレベルであるが―――ということに何だか期待していたりするシンイチだった。 日曜日、女装―――と言っても普通の女子高生ルックであったが―――させられたシンイチは軽いお化粧をされた後、車でサトミに外に連れ出された。あの文化祭を除いて、赤の他人が大勢いる中で女装姿を晒すのは初めての体験である。 サトミは一つ隣の街まで車を走らせると、車を地下の駐車場に入れてその上のショッピングモールにユイコを連れてきた。その中の映画館で恋愛映画を見て、レストランで美味しいランチを食べて、屋上の遊園地で遊んで、ランジェリー・ショップで新しいデザインパンティを買って貰って早速着替えて、最後に食品街でスイーツを買って帰路に着いた。女装してはいるが、ユイコ(シンイチ)にとってはとても楽しいサトミとのデートだった。 「さーて、それじゃあ今日もお楽しみの時間の始まりよ~」 夕方前に帰宅してすぐにサトミはそんなセリフをのたまった。今日は学校に行かなくてもいい日曜日なので、昨日の土曜日も同様に朝から女装―――奇しくもどちらも女子中高生ルックだった―――させられていたシンイチにとっては意味不明。 「それってどういう意味ですか?昨日も今日も朝から女のコになってたのに?」 「ドゥフフ、ユイコちゃんったら、わかってるくせに~」 またいやらしい熱を帯びた視線をサトミに投げかけられて、思わずユイコも赤面。この一週間、女装は女装でも、寝る前の女装はひときわエッチなカッコにさせられてしまうし、そんな姿になったユイコもサトミも色欲に目が眩んでしまうのがこの一週間だった。 「で、でも、まだ寝るには早いし・・・」 「あらあら、ユイコちゃんったら何を期待してエッチな事を言ってるのかしら?私はエッチなランジェリーに着替えてなんて一言も言ってないわよん」 「も、もうっ、サトミさんのイジワル!」 思わずぷんすかするユイコ。 「まあ、それはともかくとしてね。じゃぁ~ん、今日はコレね!」 喜色満面でサトミが持ってきたのは、黒いビニールレザーのビキニの上下。それだけではなくて、お尻にアタッチメントでくっつけられる尻尾と猫耳付カチューシャと首輪型チョーカーもセットに付いていた。 早速着替えてきたユイコの猫耳美少女姿を見てサトミは喜色満面になった。 「まぁっ、なんて可愛いネコちゃんなのかしらっ!」 もしそこに某SFロボットアニメのMADな女性科学者がいたら、ユイコのその猫耳美少女姿を見て悩殺されて鼻血をしとどに噴いて卒倒しているところだろう。 「じゃあじゃあ、今からユイコちゃんはネコだから、ネコ語でしゃべってね」 「にゃにゃ?にゃんにゃにゃにゃにゃん、にゃににゃっにゃんにゃん、にゃにゃんにゃ?」 サトミからネコ語でしゃべってと言われて即座にネコ語で答えたユイコであったが、はっきり言って何と言ってるのかサトミにはちんぷんかんぷんだった。勿論、ネコ語でしゃべると意思の疎通なんて不可能だとサトミにはっきりとわからせるのが目的のユイコの即応だったのは明白であった。 「ごめん、わかんないから語尾だけでいいわ」 「わかってくれて、嬉しいニャ」 「それじゃあ、早速買ってきたスイーツを食べましょう」 「はいニャ。じゃあ、サトミさんはソファで待っててニャ」 と言う事で、ユイコはスイーツの準備でキッチンへ、サトミはソファで待つためにリビングへ。 “うんうん、首輪もしっかり付けてくれたし、今夜はユイコちゃんは我が家の可愛いペットのネコちゃんね。それにしても、すっかりコスプレ女装にも馴染んでくれたものだわ” サトミがまた鼻の下を長くして邪笑をこぼしたのも無理は無い。ユイコは女装を気にせず自然な態度でいたが、それでも今はいているハイレグパンティは生地がビニールレザーなので少々キツめではあるが、それでもペニスはフル勃起しており、窮屈そうではあるがしっかりとパンティの前を突き上げるかのように、なだらかでがあるがテントを張っていた。 それをサトミが口にして指摘しまえばユイコは可愛らしく恥ずかしがってくれるだろうが、それは今夜ばかりはサトミの役柄ではなかった。 「お茶はシナモンティーにしてみたニャ」 ユイコがトレーに乗せて持ってきたのは、皿に取り分けたパンプキンパイとティーカップとシナモンティーの入ったティーポット。 「うん、シナモンの香りがなかなかイイわね」 誰が言ったか知らないが、パンプキンパイにはシナモンティーが一番合うそうな。そんな抜群の取り合わせにサトミもいい気分。 「じゃあ、早速いただきましょうか」 「はいニャ」 そしてユイコがティーカップへシナモンティーを注ぎ終わった正にその時、玄関のドアが開く音がして帰宅者の声が聞こえてきた。 「ただいまー」 「あら、アスリンが帰ってきたみたいね。それじゃあ、ユイコちゃん、せっかくだからアスリンの分も用意してあげて」 「わかったニャ」 ユイコがキッチンに戻るとちょうどダイニングにアスリンが姿を現した。 「あ、アスリン、おかえりなさいニャ」 「なっ!?何そのカッコ!?」 今まで普通の女子中学生レベルから果てはセクシー、というよりも卑猥さに突きぬけてしまったランジェリー姿までシンイチの様々な女装姿を見たアスリンではあるが、こういったコスプレ女装というのは想像できなかった。 「サトミさんにネコ娘にされてしまったニャ」 「ニャ、って・・・その猫みたいな語尾もTPOに合わせたって事?」 「そのとおりニャ。もちろん、サトミさんから言われたニャ」 「ふーん・・・サトミもよくやるわねぇ」 「パンプキンパイとシナモンティーがあるから、一緒にお茶するニャ」 「あら、いいわね」 「すぐに用意するから、リビングで待っててニャ」 言われてアスリンはサトミの待つリビングへ。 「いろいろやってたみたいね。まあ、別にいいけど・・・ちゃんとルールは守ってくれたんでしょうね?」 アスリンのルール云々の声は急に声が小さくなったが、それに対してサトミは無言で頷いて見せた。 ルールその1、セックスは絶対禁止。その理由は勿論サトミとしては世間体を気にして・・・ではなくてそこはアスリンの為に深い関係になってはいけないと自分で自制したからである。対して、アスリンとしてはシンイチにセックスの快楽を覚えさせたくないためである。 ルールその2、フェラチオ奨励。その理由は、サトミとしては勿論シンイチとセックスできない以上、他に自分のショタコン性欲を満足するのはシンイチにフェラチオしてやってミルクを出させることを愉しむしかなかったからである。対して、アスリンとしてはフェラチオの快楽をシンイチに覚えて貰うと同時に、サトミがどのような愛撫をしてきたかをシンイチ自身にしっかりと覚えて貰って、後々になってから実践させる計画だったからだ。 そんな二人の謀も知らず、ユイコはアスリンの分もトレーに乗せて持ってきた。 「お待たせしたニャ」 ユイコはアスリンの前にカップを置くと、ポットからシナモンティーを注ぎ入れた。 これで日曜の気怠い午後三時のお茶会の準備完了である。 「じゃあ、頂きましょうか」 「そうね。それじゃ早速」 サトミに促されてアスリンがすぐにシナモンティーを一啜り、パンプキンパイを一齧り。 「うん、美味しいわ。味音痴のサトミが選んだにしてはね」 「一言多いっつーの!それはともかく、やっぱりパンプキンパイにはシナモンティーが一番よね」 「ふーん、よく知らないけど・・・って、ちょっと待ちなさい!」 ユイコがパンプキンパイに手を伸ばした瞬間、いきなりアスリンはその手を掴んで制止させた。 「な、何かニャ?」 「勝手に手を出しちゃダメでしょ!よし、って言うまでお預け!」 早速アスリンはユイコの耳付尻尾付首輪付猫娘という姿を逆手に取って計画の一端を発動させた。 「サトミさ~ん・・・」 ユイコはなんだかしょぼくれた顔つきでサトミに助けを求めるが。 「うーん、今のユイコちゃんは可愛いペットの猫ちゃんだからねぇ・・・でも、あんまりイジワルするのも可哀そうだしぃ」 サトミはそう言ってアスリンに目線を向ける。 「じゃあユイコ、お座り!」 「はぁ・・・はいニャ」 ユイコは小さく溜息をついたが、まあこれもゴッコの延長だと割り切ってアスリンに従ってカーペットの上に正座した。 「それじゃあ、お手!お代わり!」 最初はアスリンの右手、続いて出された左手にユイコは素直にグーにした手を乗せた。 「じゃあ、最後はチンチン!」 「えっ?」 アスリンからいきなりチンチンという言葉が飛び出してユイコは思わず絶句した。年頃の美少女がチンチンなんて言葉を言って恥ずかしくないのか?と一瞬思ったからだった。 勿論、それは犬が座った状態から前足を上げて上半身を起こすポーズの意味なのだから、アスリンが口にしても何も恥ずかしい事は無いのは明白であるけれども。 「ほら、どうしたの?チンチンよ、チンチン!」 「犬じゃないんだけどニャ・・・」 ユイコは苦笑して呟きながらもそのポーズを取った。 「よくできました~。じゃあ、よし!」 アスリンの許可が出たのでユイコは再びソファに座り直して今度こそパンプキンパイを手にして齧りついた。 「それにしても、猫耳娘とは・・・サトミったらシンイチにいったいどんなカッコをさせてたの?」 「えーと、ブレザームーンとブルセラムーン、それとBKA98と麻布10番でしょ、それからまさ☆マサにじょしもんにハルヒレとか・・・」 「コスプレか・・・いろいろやってたみたいね。で、ユイコはどれが一番気に入ったのかしら?」 「え?どれと言われても・・・」 「うん、それはきっと最初のブレザームーンに違いないわね」 「ゴメン、サトミ。それどんなのか知らないんだけど?」 アスリンがすぐに脳裏にその衣装を思い浮かべられるのはせいぜいTVなどでよく見るBKA98のオーソドックスな赤黒チェックの制服ぐらいだった。 「えーと、どんなのかと言うとね、ちょっと待ってて」 サトミは二人をリビングに残して自室に戻った。ユイコは例のコスチュームを手に戻ってくるのだろうと思っていたが。 「これがユイコちゃんのブレザームーン姿よ」 サトミが持ってきたのはコスチュームではなく、封筒とそれから取り出したらしい一枚の写真だった。それにはしっかりユイコのブレザームーン姿が映っていた。 「なっ!?い、いつの間に・・・」 「だってね、一回限りじゃつまんないからさ、こうやって写真に残しておけば何度でも鑑賞して愉しめるかな、と思って」 「盗撮してたの?やるじゃん、サトミも」 「サッ、サトミさんっ!?聞いてないですよ、そんな事っ!」 「だってね、言ったらシンイチくんも女装してくれないと思って」 盗撮されていた事に憤慨して声を荒げるユイコにチャラチャラと手を振ってヘラヘラと邪笑で返すサトミ。 「他のもあるんでしょ?見せてよ、サトミ」 「ちょ、ちょっと、サトミさんっ!」 ユイコの制止も聞かず、サトミはアスリンのリクエストに応えて封筒の中身の写真をテーブルの前にばら撒いた。 「こっちが、ブルセラムーン。名前のとおりセーラー服の下がブルマーになっているだけで、要するにブレザームーンのパクリみたいなものね。で、これが魔法少女まさか☆マサコ、通称まさ☆マサ。そっちが春日のハラヒレ、略してハルヒレ」 「ふーん・・・あ、これってBKA98でしょ、これはTVで見た事あるわ。んじゃ、こっちは?」 「それは麻布10番って言う、知る人ぞ知るって言う地下アイドル」 「ふーん、なるほど・・・しかし、どれもよく似合ってるわね。ぱっと見じゃあ、まず男のコには見えないわね。さっすが女装趣味だけあるわ」 アスリンは変な方向で褒めてはいるが、勿論それが本意かどうかと言うと、勿論そんな事はどうでもいい事だった。 勿論、ユイコ(シンイチ)としてはサトミとの付き合いで女装しているのであって、自分自身では女装趣味とは全く思っていなかったのだが、もう何度も女装させられておまけにサトミとの心ときめくLOVEアフェアーも数度経験しているせいで、女装して条件反射で興奮してしまう性癖も覚えてしまっていた。 「で、ユイコはどれが一番気に入ったの?」 再度アスリンは同じ質問をしてきた。勿論、ユイコが答えに窮するだろうという事を想定してである。 「それは勿論このブレザームーンに決まってるわ」 ユイコが答えを言う前にサトミが答えてしまったのは、アスリンとしては不本意であった。 「だから、何でサトミが答えるのよ?てゆーか、何でサトミはそのブレザームーンだって言える訳?」 アスリンが少々むっとして言い返すと。 「だって、ほら、よく見てよアスリン。特に、コ・コ」 サトミがアスリンの目の前にその写真を突き付けて、指で特に見るべきところを示した。 その写真は少々斜め方向からの写真で、それ故に、コスチュームのサイズが合わなかったためにレオタードの下腹部の布地が伸びてハイレグになってしまった上にその中でフル勃起しているペニスによっていやらしいテントを張ってしまっている恥ずかしい姿がよくわかるものだった。 「きゃははっ、ナニコレ、すごいじゃん!ハイレグレオタードにテントなんて張っちゃって、しっかりペニスがフル勃起してるのがバレバレになってる!」 「ちょっ、ダメダメッ、見ないでよー!」 慌ててユイコはアスリンからその写真を取ろうとするが、アスリンはさっとテーブルの反対側のサトミに返してしまう。 「だーからぁ、何恥ずかしがってんのよ?女装趣味の男のコなら当然の反応なんでしょーが。今だって猫耳娘のカッコしてて、ビキニパンティの中でペニスをフル勃起させてんじゃん」 「あ、いや、その・・・」 アスリンの指摘で慌ててユイコは己の股間を両手で覆い隠すが。 「今更隠したって無駄よ。さっき、チンチンさせた時にちゃんと確認させて貰ったわ」 アスリンのその言葉にユイコは何も言い返せずに絶句した。 「流石にこれじゃあ女装して興奮してペニスをフル勃起させてる変態の男のコにしか見えないわねぇ」 アスリンはさも面白そうに微笑を見せた。なお、アンドロジーナだと言えば大丈夫と言う意見はこの際受け付けない。 「まあね。だから、そこがミニスカートで隠れるのなら大丈夫と思って、今日はじょしもんの格好でお出かけしたのよねー」 「は?じょしもんの恰好って言ったって、別に特別変わったものでもないでしょ?ふつーの女子高生じゃん」 アスリンは何故かじょしもんだけは知ってるようだった。 「そうよ。だからいいのよ。その女子高生ルックで一つ隣の町までドライブして、そこのショッピングモールの中の映画館で恋愛映画を見て、レストランで美味しいランチを食べて、屋上の遊園地で遊んで、ランジェリー・ショップで新しいデザインパンティを買って、最後にこのパンプキンパイを買って帰ってきたのよ。楽しかったよねー、ユイコちゃん」 「そ、そうだけど・・・」 「で、その間、ユイコはパンティの中でペニスをフル勃起させてた訳ね」 「い、言わないでよ・・・」 デートの最中ずっとパンティの中でペニスはフル勃起してテントを張っていたのは事実で、それを自分も自覚していたのでアスリンの言葉をユイコは否定できないでいた。 「もう、女装するのが楽しくって仕方ないんじゃない?」 「ち、違うってば!」 「何が違うのよ?」 「ユイコちゃーん、それを言うなら、違うニャ、でしょう?」 サトミが本題とズレた事を言い出したので、ユイコは猫耳カチューシャを頭から外してから言葉を続けた。 「だから、女装しているのはサトミさんが喜んでくれるからで、女装趣味じゃないし」 「じゃあ、何でペニスをフル勃起させてんのよ?あんた、女装で興奮してるんでしょーが」 「そ、それは・・・だ、だって・・・サ、サトミさんの下着だから・・・ドキドキして・・・仕方なく・・・」 「ふーん・・・だ、そうよ、サトミ」 アスリンは意味有り気に不敵な笑みを浮かべてサトミに話を振った。 「まぁ・・・私の下着で興奮してオチンチンをぴんぴんにしてくれたなんて、嬉し可愛い事言ってくれるじゃない。もう、シンちゃん大好きよ!」 「そうじゃないでしょうが!」 シナリオから少々ズレた事をサトミが言い出したのでアスリンが一喝すると。 「はいはい、わかってるって。ユイコちゃん・・・じゃなくてここからは敢えてシンイチくんに戻して言うけど、はっきり言ってあなたは誤解しているわ」 「誤解?何の事ですか?」 「誤解・・・いえ、正しく言うと思い違いかしらね。シンイチくんがこの一週間付けていたブラは、本当は私の物じゃないのよ」 「えっ?」 「よく考えてみて。あなたが付けていたブラで、私の胸を包み込めると思う?」 「・・・あっ」 最初のブレザームーンを除いて毎日取っ替え引っ替えしていた6枚のブラは、胸に膨らみが全く無いシンイチにとってはカップの部分が無意味にぶかぶかして素肌にフィットしているとは言えなかったが、それでもそのカップがサトミのふくよかな乳房を包み込む事はできそうにない事ぐらい、シンイチにもわかった。 「わかったようね?そう、サイズが違うのよ。そして、パンティも当然私の物では無かったのよ」 シンイチにとっては全く予想外の話だった。自分はサトミが好きだから、サトミのランジェリーを身に付けさせられて、それで興奮してしまっていたと思っていたのに・・・。 「そんな・・・」 「まあ、当然本当の持ち主の了解をちゃんと取ってからシンイチくんに渡していたんで、怒られる事は無いからそこは安心していいわ」 「ま、ブラについては少々きつくなってきたかな、って感じだったからグッドタイミングだったのよね。パンティもワゴンセール品だったんで別に思い入れも無いし、当然ブラもパンティも新しいセットを買えたから何の問題も無いし」 サトミが本当の持ち主に了解を取ったと言って、続いてアスリンがそこまで言葉を続けたのに、シンイチはまだ理解できていなくて首を少々傾げるだけだった。 「ったく、鈍いわね~。要するに、あんたがこの一週間身に着けてたブラとパンティは私の物だったって事よ」 「えっ?う、うそ・・・」 確かに、ブラがサトミのものだったならばサイズが違い過ぎる筈だし、パンティもサトミのものにしてはデザインがおとなし過ぎた。 「最初は、私のものだからそれを身に着けたら興奮してオチンチンをフル勃起させてしまったのでしょうけど、今は違うでしょう?それに、今の猫娘もそうだしブレザームーンのコスプレの時だって、私は勿論アスリンのランジェリーは着てなくてコスプレ衣装だけで興奮してたじゃない」 「何が、サトミのランジェリーだから興奮した、よ。あんた、私のランジェリーでチンポをフル勃起させてたんじゃない!要するに、あんたは興奮できればランジェリーは誰のでもいいのよ。ホント、イツコが言ってたとおり、女装趣味の変態じゃない!」 確かにサトミのものとは関係なしに興奮していたのは事実のようだが、実はその先のサトミとのラブアフェアーを期待して、と言うもっと重要な事実があった。しかし、アスリンはその事に全く気付かず(てゆーか知らない)、サトミは知っていて言わず、シンイチも二人の指摘に動転していて失念していた。だが、運よく思い出せたとしてもそれはもっと恥ずかしい告白になってしまうので言い出せたかどうか怪しかった。 「・・・何で・・・そんな意地悪な言い方するの?・・・アスリンは、僕が女装趣味だって事を誤解とは言え理解してくれるって言ってったじゃないか・・・」 「誤解?何言ってんのよ、正しいだろうが間違いだろうがそんな事はどうだっていいのよ。要はあんたが本当に女装趣味の変態になってくれれば良かったんだから」 「・・・え?」 人にはいろんな性癖があるからそれを差別するのはいけないのでシンイチの趣味も理解する、等と言っていたその言葉を完全に翻し、アスリンは冷たい目線でシンイチに己の目的(野望としてはほんの一部てゆーかほんの触りであるが)をついに明らかにした。 「一番最初に転校してきた時から気に食わなかったのよ、あんたの事。漢字がわからなかったのにそれを指摘して人を笑いものにして、私にはそんなハンデがあるのにテストで私よりいい点数取って、私のお姉さんだったサトミを誘惑して、シンデレラの女装しているのに私よりブロマイドの人気があって・・・あんたは私のプライドを悉く傷つけてくれたわ」 第三者から見ればアスリンの言葉は明らかに一方的な言いがかりだった。転校初日にアスリンの誤字を指摘したのは笑いものにするつもりはなかったし(だから結果そんな事になったので軽くではあるがシンイチは謝ったりした)、テストは己の実力を試すものだからアスリンの事情など考慮する事はできないし、サトミを誘惑したと言うのは完全に間違いでサトミが己のショタコン性欲を抑えきれなかったせいだし、シンデレラの女装はアスリンが言い出した事でそれでそのブロマイドがアスリンより人気がある事もコウジとケンタ達が勝手にやっている事で勿論シンイチ本人には何の関わりも無い事だった。 「そんな事言われたって・・・」 「うるさい!あんたの言い分は聞かない!とにかく、プライドを傷つけられた屈辱は、何倍にもして返してあげるから、覚悟しておく事ね」 「・・・サトミさ~ん・・・何とかして下さい・・・」 アスリンのあまりの敵意剥き出しな言い方にシンイチは困惑してサトミに泣きついたが、彼女はシンイチの想定外の反応をした。 「う~ん、そう言われてもねぇ・・・シンちゃんが女装趣味の変態美少年なのは事実だしぃ~」 「サ、サトミさん!?」 「もう、まだろっこしいわね!はっきり言うわ、サトミ。今日限りでシンイチを返してもらうからね!」 「な、何言ってるの!?返してもらうってどう言う意味?僕は物じゃない!」 「まあ、黙ってたからいきなり言われても当然だわねぇ。あのね、シンイチくん、前にも言ったでしょう?私はシンイチくんとは付き合えないって。だから同世代の女のコをガールフレンドにしてちょうだいって。私があなたとイチャついたのはその時の予行演習みたいなものとも言ったでしょう?」 お風呂場でのシンイチとのエッチな秘め事の時、確かにサトミはそんな事を言っていた。 「だから、私はシンイチくんの相手としてアスリンならいいかな?って思ったの。何たって、世界に冠たる新興コングロマリット・萩生コンツェルンの御令嬢だもの」 「・・・何、それ・・・」 シンイチが素でボケた・・・いや、マジで知らないようだったのでアスリンはずっこけた。 「・・・ま、まぁ、知らなかったのならそれは仕方ないわね。とにかく、アスリンは実はいいとこの御嬢様だったのよ。だから、シンイチくんもアスリンとお付き合いした方がいいの」 サトミも一瞬コケそうになったが何とか踏み止まり、シンイチの説得を続ける。 「で、でも・・・」 「お付き合い、って言い方はちょっと違うんだけどね」 「わかってるわ、アスリン。それで、彼女はどうやらシンイチくんをボーイフレンドと言うよりはペットにしたいと思ってるみたいなのよ、困った事に」 一言多いとアスリンは思ったが何とかツッコミを入れるのは思い止まった。 一方のシンイチはペットなどと言う言葉が出てきたので目をパチクリ。 「それで、アスリンはこの一週間、イツコの家に泊まるから私にシンイチくんを好きにしていいって言ったのね。もう、嬉しくて嬉しくて、私ってばシンちゃんに女装させまくっちゃったわよ。楽しかったわよねー、ユイコちゃん?」 「え・・・い、いえ、その・・・それは・・・」 確かにシンイチ自身もサトミに女装させられおもちゃにされる事を楽しい、いや嬉しいと感じてもいたのは事実で、しかしそれを素直に言えば事態が悪くなるような気がしてしどろもどろになって答えられない。 「ふん、素直に答えなくたって、こうやってペニスをフル勃起させてるんだもの、バレバレじゃん」 アスリンはさっきのユイコのブレザームーンのコスプレ姿の盗撮写真を手にして言い放った。 「や、やめてっ、言わないでよっ!」 「まあ、私は趣味と実益を兼ねて・・・実益は無いか・・・とにかくシンちゃんを女装させまくってハッピーだったし、シンちゃんが変態女装美少年になっちゃうのもアスリンの御希望だったので、三人ともウィンウィンウィンで万事オッケーな訳よ。あ、バイブみたいな擬音使っちゃった」 シンイチが恥ずかしい事を言われてますます顔を赤らめている様子がサトミのショタコン魂に火をつけたようで、サトミは酒にでも飲まれたかのように上機嫌でべらべらと喋り捲った。 「・・・そ、そんな・・・サトミさん・・・僕を騙していたんですか・・・」 「うーん、まあ、結果的にそうなっちゃった事は否めないわねぇ。でも、これもシンちゃんのためを思っての事なのよ」 用を足しにでも行ったのか、アスリンがその場を離れて行ったのでサトミも先ほどの熱に魘されたかのような戯言めいた言い方から真摯な言い方に変えた。 「さっきも言ったように、アスリンはいいとこの御嬢様なんだから、お付き合いの形はどうであれ、何らかの絆を持つ事はきっとシンちゃんのためになると思うの」 「でも・・・僕をペットとか、そんな事言う女のコとは合わないよ・・・」 「そうかなぁ?だってシンちゃんも最初は女装を嫌がってたのに、今じゃすっかり大好きになっちゃったでしょ?だから、アスリンともお付き合いしてみなくちゃ、わからないんじゃない?」 「・・・でも・・・」 と、そこにアスリンが茶封筒を片手に戻ってきた。 「サトミ、もういいわ。こいつにはビシッと言って自分の立場ってーのを思い知らせなきゃダメなのよ!」 そう言って再びソファに座ったアスリンはすぐさま手にした封筒から一枚の写真を取り出してテーブルの上に置いた。 「あっ!?」 その写真に写っていたのは、先週のランジェリーパーティの際のユイコの純白のブラとパンティを身に着けた姿だった。 「な、何でこんな写真が・・・」 その写真を手にしたシンイチの指はふるふると震えていた。 「勿論、盗撮していたのよ、ハンドビデオでね。シンデレラ姿は文化祭の役だし、サトミがコスプレさせた制服系の姿じゃ冗談で女装してみたとも言い訳できるからね。でも、その下着姿でしかもペニスをフル勃起させてるところを見られたら女装して興奮してるんだって誰の目にもわかる筈だし」 「ふ、ふざけないでよっ!何でこんな事するのっ!?」 ついにシンイチも激高して手にした写真をびりびりと破り捨てた。 だが、アスリンはその決定的な写真を失っても少しも慌てる素振りは見せなかった。 「あんたバカァ?そんな事したって、こっちにはもっと凄い切り札があるんだからね!」 そう言ってアスリンがもう一度茶封筒から取り出してテーブルに置いた写真には、その前のランジェリーよりはもっと過激でセクシーな・・・と言うより卑猥で変態的な、胸と大きなクリトリス丸出しのオープンブラ・オープンパンティに身を包んだユイコの姿が写っていた。 それを見たシンイチは思わず絶句してしまった。 「また破り捨てたいのならどうぞご勝手に。でも、ランジェリーパーティの様子はちゃんと全部ハンドビデオで盗撮してるからいくらでもプリントアウトできるわ。データをディスクにコピーしてクラスメートにばら撒く事もできるし、パソコンに取り込んで世界中に動画を発信する事もできるのよ!」 「や、やめてよ・・・何で・・・何でそんなひどい事するの?そんなに僕の事が嫌いなの?」 「ええ、大っキライよ!」 「そんな・・・だって・・・僕の趣味を認めるとか・・・」 「あんたって、ホントに超が付くほどのウルトラスーパーバカね。そんなの嘘に決まってるでしょーがっ!」 アスリンは立ち上がってシンイチにビシッと指を突き付けて言い放った。 「超スーパーウルトラバカのあんたにもわかるように、最初から教えてあげるわ。シンデレラ役をあんたにしたのも、あんたに女装させるのが目的だったのよ!」 超にスーパーやウルトラと三つも重なっている表現もマヌケだがそこは帰国子女のアスリンだからしょーがない・・・話をもとに戻す。 「サトミがショタコンで、あんたに女装させてみたいって言ってたのを聞いた時から考えてたのよ。あんたを女装趣味の変態に堕としてやるってね。それを何にも知らないで、サトミの誘惑に負けて女装を嬉々として楽しんでいたあんたが大マヌケだったって訳よ」 アスリンは嬉々としてそれまでの仕掛けをばらした。 それを聞いて顔面蒼白気味になったシンイチを更に嘲け笑うかのようにアスリンは辛辣な言葉を言い重ねた。 「さっきも言ったように、あんたは私のプライドをズタズタに引き裂いてくれたから、今度は私の番よ。刻みつけられた屈辱は何倍にもして叩き返してやるわ!」 立っているアスリンの上から目線で憎悪に満ちた目付きで睨み付けられ、思わずシンイチは怖くなってサトミに縋った。 「サ、サトミさん・・・助けて・・・こんなの嫌だよ・・・」 目尻に涙を浮かべて今にも泣き出しそうなシンイチの顔を見て思わずショタコン心をくすぐられたサトミはシンイチを抱きしめたい衝動に駆られたが。 「ちょうどいいから今ここで正式に言っておくわ。サトミ、今日限りでシンイチを私に返して貰うからね」 その瞬間、ついにその時が来てしまったとサトミは一瞬で理解した。 所詮自分とシンイチとは教師と教え子―――その前に保護者と被保護者であるが―――であり、決して女と男の間柄にはなれなかったのだ。女装プレイで淫らな関係を結んだのは、今となってはもう冗談としか割り切って考えなければならないまるで夢のような出来事であった。 しかし、シンイチは年の離れた自分よりは同年代の女のコと結ばれるべきであると言うのは自分の本心本意でもあり、今ここにアスリンがシンイチを欲しがっている―――少々・・・いや、かなり歪な形ではあるが―――のであれば、自分が身を引く事には何の躊躇いも無かった。 果たして、サトミはシンイチの心からの願いを刎ねつけるかのように・・・。 「はいはい、約束だったもんね」 シンイチに背を向けて立ち上がったサトミは、そのかわり正面からアスリンを抱きしめて言った。 「サトミさんっ!?どうしてっ!?」 助けてくれると信じていた筈のサトミの予想外―――勿論シンイチにとっては、だが―――の態度が信じられなくてシンイチは思わず訊き返したが。 「仕方ないのよ。それに、元々シンイチくんとは本気じゃなくて遊びだったんだし」 そのセリフを聞いた途端、シンイチには一瞬刻が止まったように感じた。 「アスリン、わがままばっかり言っちゃだめよ。ちゃんとシンイチくんと仲良くするのよ?」 「・・・うー・・・うーん・・・」 アスリンは何と答えていいかわからず、唸るような声を漏らすしかできなかった。 そして、サトミは後ろ髪引かれる思いで自室に戻り、そのままベッドに入ると布団を被ってしまった。 一方、ようやくサトミにこの部屋から退出して貰ったアスリンは、これで自分に口をはさむ者は完全にいなくなったとわかって、再びシンイチを上から目線で睨み付けた。 「残念だったわねー、サトミお姉さまが味方してくれなくて。まあ、元々サトミは私のお姉さんだったんだから、私の味方をしてくれるのが当然だものね」 しかし、アスリンが勝ち誇った顔で誇らしげに言っても、シンイチはサトミに裏切られたショックで茫然自失の状態で、アスリンの言葉など聞こえていなかった。 「ちょっと、聴いてんの!?バカシンイチ!!」 手にした茶封筒でアスリンに頭をはたかれてシンイチの意識は戻った。 「・・・や、やめてよ・・・」 「じゃあ、これから私がいう事をちゃんと聞きなさい」 しかし、シンイチは口を噤んだまま、俯いた。 「ふーん、そういう態度を取るんだ・・・まだ、自分の立場が分かってないようね」 アスリンは手にした茶封筒の口を開いて逆さまにして、その中身をテーブルの上にばら撒いた。 「あっ!」 ばら撒かれた写真は勿論、あのランジェリーパーティーの夜のユイコ・・・いや、シンイチがランジェリーに身を包んでペニスをフル勃起させた姿がいろいろと映っている何枚もの写真だった。 「言っとくけど、データはちゃんとあんたの手の届かないところに保管してるから、何枚でも焼き増しできるわ。さっきも言ったけど、そのデータをクラスメートは当然、世界中の人にあんたが性同一障害じゃなくてただの女装趣味の変態だって知らせる事もできるのよ。そうなったら・・・ふふっ、あんたもう終わりね」 「・・・い、嫌だっ!そんなのやめてよ、お願いだからっ!」 とうとうシンイチは涙をこぼしてアスリンに頭を下げてお願いした。あまりに受け入れがたい酷い脅迫に恐怖し、もはや屈服するしかなかった。 「人にお願いする時って、日本じゃどうするんだっけ?確か、ちゃんと正座するんじゃなかったかしら?」 ご主人様がペットをどうやって躾けるか、アスリンはどうやらその辺の知識はイツコ邸で過ごしたこの一週間でみっちり頭に叩き込んできたようだった。 仕方なく、シンイチは打ちひしがれたかのようにのろのろと座っていたソファから降りると、カーペットの上に正座して手を前について頭を下げた。 「お願いです・・・言う事を聞きますから・・・写真はばら撒かないで下さい・・・」 「いいわ、よくできたじゃない。じゃあ、その姿勢のまま、これから私が言う事をしっかりと胸に受け止めて聞きなさい」 これが、弱みを握られるなんて事などない、それこそ先ほどまでの冗談のようなニャンコごっこであれば、言ってる事を文字どおりただ「聞く」だけ、なんて切り返しもできただろう。 しかし、そんな事は今のシンイチにとっては夢のような話で、こうしてアスリンに屈服させられている事がアクマでも現実だった。 「いい、これからあんたを一生私の言う事を聞く忠実なペットにしてやるわ。まず、私の事はちゃんと<様>を付けて呼ぶ事。私の言う事に何でも従うのは当然として、答える時は必ず「はい、アスリン様」だからね。わかった?」 「・・・はい、アスリン様・・・」 「よろしい。・・・ふふふっ、次期生徒会長とか噂もあるシンイチが私の前でひれ伏しているなんて、なんていい気分なのかしら・・・ここ、英語で何て言うかわかる?」 「Is it what a good feeling?です、アスリン様・・・」 「チッ、あんたバカァ?何ですぐに正解答えるのよ!こういう時はわかりませんって答えて、私に正解を教えてもらうのが筋ってもんでしょうが!私を誰だと思ってるの!?」 アスリンはイラつくように床を足ドンした。そしてそれにシンイチが返した答えは・・・。 「アスリン様・・・」 「・・・あんた、つくづく超ウルトラスーパーバカね・・・それは私の呼称でしょうが。いい、私はあんたのご主人様、あんたは私のペットよ!わかった?わかったらちゃんと自分で繰り返して言いなさい!」 「は、はい、アスリン様・・・アスリン様は私のご主人様、私はアスリン様のペットです・・・」 「ようし、それでいいのよ。ったく、勉強はできるけど頭の回転は全然ダメじゃないの。ペットはご主人様を喜ばす為に存在してるんだからね、逆にイラつかせてどうすんのよ。ペットの分際で頭の良さをひけらかすんじゃないわよ!」 「ご、ごめんなさい・・・」 それから、アスリンは思いつくだけのしきたりを決めていった。 命令には絶対服従が大原則、後々好きなだけルールの追加も有り、学校を始めとして屋外では二人の関係が周囲にばれないようにできるだけ今までどおりにただのクラスメートとして過ごす(勿論アスリンの依頼と言う名前の命令には絶対服従)、学校から帰ってきたらご主人様とペットという「本来の姿」に戻る、シンイチはメイド服(勿論中のランジェリーも含めて)で女装する(猫耳カチューシャと猫尻尾付、でも猫語尾は不要)、当然今まで以上におさんどん小間使い、サトミに対してもアスリンと同様な受け答えをする、etc.etc.・・・。 そして最後にアスリンは言うべきことを忘れずに告げた。 「そうそう、最後にこれだけは言っておかなくちゃあね。サトミはあんたと私が結ばれるような事を望んでいるようだけど、万に一つもその可能性は無いからね!あんたをこれからはずっと女のコして扱って躾けていくから、覚悟しておきなさい」 「・・・はい、アスリン様・・・」 そして、その日からシンイチの辛く悲しく苦しい日々が始まったのだった。

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