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第3話 そのニー

実は魔法でもなんでもなかった。制服をぱっと脱いでベッドに放ったまま、クローゼットからワンピースを取り出して着替えただけなのだ。制服もベッドの上に脱ぎ散らかしたままなので女のコとしてはどうかと思うが、家主も全く同じ性格なのでもしかしたらいつのまにか写ってしまったのかもしれない。 「お、お待たせしました、アスリン様・・・」 「ふーむ、あんたはシャツ出し派なのね」 「は?」 「だから、シャツの裾をブルマーに入れるか入れないか、って事よ」 アスリンの言うとおり、体操服のシャツをブルマーの中に入れるか入れないか、そのどちらが正しいのかと言う論争は長く行われているのだ。 裾をブルマーの中に入れるのは、ぴしっと引き締まった着こなしに見えて、学校の先生方にはこれを正しい着こなしと言う意見が大多数を占める。 これに対し、裾をブルマーの外に出すのは、何となくだらけた着こなしに見えてしまうので、学校の先生方は苦言を呈すことが多い。 一方、では生徒の意見はどうかと言うと、女子の場合はブルマーのゴムの部分が見えるのは小学生っぽくて幼稚でダサいという意見が多くて、ゴムの部分を覆い隠す為に外出し派の方がやや多い。また、単純に学校・先生への反抗心で外出しスタイルを取っている者もいる。対して中入れ派の方は、ブルマーのゴムの締め付けをシャツの裾で和らげられると言う理由でそのスタイルを好むようだ。学校・先生からもうるさく言われないので一石二鳥と思っているらしい。 ちなみに男子の意見はどうかと言うと、女子の「小学生っぽくて幼稚でダサい」と感じる者はまずいなくて、どうでもいい・その日の気分や状況で使い分ける・もう少し頭を使って折衷案など様々だ。 ちなみにシンイチの場合は頭を使って折衷案―――裾の全部ではなく一部を入れてゴムの締め付けをシャツの裾で和らげつつも中に入れずに余った部分を外に出してゴムの部分を覆い隠す―――というスタイルで、半分学校側に反抗しつつも半分恭順している形になる。 勿論、今のシンイチが普段と違って裾を全部外出しにしているのはそれなりの理由があるのだが。 「でも、てっきりハミパンすると思ったんだけどね」 「え?見、見えてないですよね?」 シンイチは慌ててチェックして問題無い事を確認したが。 「何慌ててんのよ。大丈夫、ハミてないから。で、それじゃあ、どうやってハミパンを防いだのかしら?」 「え?それは・・・あの、パンティのサイドを上に引き上げて・・・」 「やっぱりね。安物ならそれでいいけど、高いのでやったらダメになっちゃうから気を付けるのよ」 「は、はい、アスリン様・・・」 どうやら、帰宅してすぐにシンイチの穿いているパンティをチェックした際に好都合とか言ったのはこの事を予見していたからだろう。 「にしても・・・やっぱりしっかりとブルマ―の前突っ張らせちゃって・・・パンティの上にさらにブルマーで押さえられて、しっかりアヌスにローター咥えこんで随分と嬉しいみたいね?」 「あぅっ・・・ま、待って、アスリン様・・・そんな・・・」 アスリンがいきなりアナルローターのスイッチをONにしたので思わずシンイチは小さなうめき声を漏らし、両足をガクガクと震わせた。 「アヌスローターを入れられて嬉しくて興奮してチンポ硬くしてんじゃないの?」 「そ、そんな・・・ち、違い・・・ます・・・」 「何が違うてーのよ?」 アスリンはローターの振動の強弱を大きくしたり小さくしたりしてシンイチのアヌスをいじめる。 「だ、だって・・・女装するだけで・・・女のコのパンティ穿くだけで・・・オチンチン、大きくなるから・・・」 アヌスをいじめられるのが嬉しいと言う事を断固として否定したくて―――勿論それは本当なのだが―――逆に女装で興奮してしまう性癖である事を吐露してしまうシンイチ。 「・・・ったく、いつまでたっても女装趣味の変態なんだから・・・」 そう言いながらも取りあえずスイッチをOFFにしたアスリンだったが。 「いつもアヌスにローター入れて、その上夜は口でチンポしゃぶりしながら寝てるんだから、いい加減に女のコらしくなって貰わないと困るのよ」 なかなかシンイチが思いどおりのアヌス快楽奴隷に成長しない事にイラついたのか、アスリンは思わず言わなくていい事を漏らしてしまった。 「・・・・・・・・・こ、困るって・・・?」 「何でも無いわよ!」 「あうぅ・・・」 自分の言葉について思わずシンイチに疑問を持たれたことに気づいたアスリンはいきなりまたアナルローターのスイッチを入れた。ただし、振動の大きさは最弱のレベル1に留めた。 「もう一週間もアヌス調教をしてるんだから、そろそろレベルをあげていかないとね。今から1時間、ずっとスイッチは切らないから、ずっとそのままで我慢しなさい。あ、感じて射精したくなったらちゃんと私に言う事。その時は我慢しなくていいから射精する事を許可するわ。ただし、ちゃんとイク様子を私に見せる事」 「そ、そんなぁ・・・」 まさか、アナルローターの振動で性欲が高まって射精衝動が起こるほどの快楽など微塵も感じられないと思っているシンイチだったが、もしも万が一にもアスリンの欲望に沿うように “ア、アスリンの前で射精するとこを見せるなんて・・・そんなの絶対に嫌だ・・・” それがもしアスリンでなくてサトミであれば、自分がイク様を見られる事に積極的に拒否する気は無かったのだが。 「わかった?返事は!?」 「・・・は、はい・・・ア、アスリン様・・・」 只でさえアヌスにローターが入っていて異物感を感じているのに、それが絶え間なく振動しているのはさらに異物感が大きくなったとシンイチは感じていた。それでも、アスリンに冷たい目線と強い口調で復唱を求められたら、絶対的な弱みを握られているが故に恭順の言葉を言うしかなかった。 「ほっほーう、なかなかイイ」 と、いきなりサトミの声が掛かった。いつの間にか帰宅していたのだ。 「何が?」 「ムフフ・・・シンちゃんのブルマー姿と、アスリンの毅然とした態度の両方よ」 「あら、アリガト」 そしてサトミはシンイチの姿を上から下まで舐めるように眺め、そして視線を下から上に戻して途中で止めた。 「まぁた、シンちゃんったら、オチンチンをフル勃起させちゃってカワイイんだから」 サトミに指摘されてシンイチは思わず手をびくっとしたが、その手でブルマーの前の膨らみを隠そうとはしなかった。アスリンに指摘された時は隠そうとしたのに、反応が違うのは勿論サトミとアスリンのそれぞれに対する信愛の情に天と地ほどの違いがあるからだった。 尤も、アスリンもシンイチの反応の違いにすぐ気付いたが、文句をいう事はせず、一先ず堪えた。 “与えられた屈辱は・・・倍にして返してあげるわ!覚悟しなさい!!” 勿論それはシンイチに何の落ち度も無いアスリンの一方的な言い分であった。そしてアスリンが何を倍にしたかと言うと、アナルローターのON時間を2倍の2時間にすると言う事だった。 それはさておき。 「でも、シンちゃん、ブルマー穿くのは初めてよね?よくハミパンせずに上手く着れたわね、感心感心。ちゃんと女のコしてるわよン」 変な事で感心しているサトミだが、彼女は一つ忘れていた。 「あ、あの・・・前にブルセラムーンのコスプレした時・・・ブルマーは穿いた事ありますから・・・」 「あ、そっか、そう言えばそうだったわね、自分でコスプレさせたのに忘れてたわ・・・まあ、それはこっちに置いといて、じゃあ、シンちゃんはその時の事を思い出して前を膨らませちゃってたのね?」 「い、いえ、そうではなくて・・・」 「私が帰ってきた時にはもういつものメイド服に着替えていて、その時からフル勃起よ」 「ふーん・・・でも、シンちゃん、いつも体操シャツは中入れしてたじゃない?何で今日は違うのかしら?」 「え?えっと、それは・・・」 「あ、わかった!前が膨らんでるのが恥ずかしいから少しでも隠そうと思ったんでしょ?もう、ホントにシンちゃんったらカワイイんだから・・・」 「い、いえ、その・・・この方が女のコらしいかなって・・・」 「・・・でも、そんな事気にする必要ないのよ、それもシンちゃんの魅力なんだから・・・」 何か頭の螺子が切れたかのようにベラベラと自分勝手な妄想を喋り捲るサトミはシンイチの説明など全然聞いていなかった。 「ところで、どうしていきなりシンちゃんに体操シャツ・・・は別にどうでもいいか、ブルマーを穿かせる事にしたの?それにアレ、贅嶺女学院高校のものでしょ?」 シンイチがアナルローターの微振動に耐えながらキッチンで晩御飯を拵えている最中、最中を摘みながらくつろいでいたサトミはアスリンに訊いてみた。 「えーとね・・・女子のブルマーに付いてどうするかが来週のホームルームの議題になったでしょ?」 それは「シャツは中入れと外出しのどちらが正しいか?」なんて単純な物ではなくて、「ブルマーはダサいからやめて男子と同じハーフパンツにしたい」、と言う意見と、もう一つは「ブルマーの方が機能的に優れているからこのままでもいい」と言う意見だ。 この日、学校では体育の授業があった。その時、授業中の雑談でブルマーを廃止してハーフパンツにしたら?という話が出た。話の発端は女子の一人がハミパンしてた事だった。アスリンはそれを迂闊だと切って捨てたのだが、じゃあハミパンしないような物に変えればいいという意見が出て、じゃあ男子と同じハーパンにしたらいいのでは?と発展したのだった。で、帰る前のショートホームルームの時に来週のホームルームの議題としてそのブルマー問題が提案されたのだ。 ちなみにその提案をしたのは迂闊だとアスリンに切って捨てられたキヨミと言う女子生徒だった。 尤も、その提案の理由はハミパンするからではなく、ダサいからという理由にいつの間にか変わっていたが。 「私は別にダサいとか思わないし、そのコ達の言い分は理解できないんだけどね」 もう一つ全く関係無い話のようで実はシンイチにブルマーを穿かせようとアスリンが閃く理由になった話があって、それはコウジの「そんなのどうでもええやないか。くだらない事言うなや」と言う発言から始まった。 それにキヨミを始め数名の女子が噛みついた。 「勝手な事言わないでよ!これは女子に取っては大事な問題なのよ!」 「だから男子にとってはどうでもええって言ってるやないか。そんなの女子の中で勝手に決めたらええ。クラス全体の議事に取り上げるような事やないやろ!?」 確かにブルマーを穿くかどうかは女子の問題であって男子には関係無い。コウジの言い分も尤もだ。尤も、男子の中には「女子はブルマーの方が可愛いに決まってるじゃんか!」と思ってる者も多い。女子の盗撮?写真を売ってこずかい稼ぎをしているケンタがその代表格で、コウジ自身も同意ではあるが、硬派気取りのプライドが邪魔して堂々とは言えなかった。そして、その時シンイチの反応は・・・それは後でわかるとして。 「でも、これは私達のクラスだけの問題じゃない筈です。他のクラスだって、他の学年の女子だって、ブルマーは嫌だと思ってる人は多いと思います」 「だから、それは憶測だけじゃん。証拠を出せよ」 「待て待て、証拠が有っても無くても、女子だけの問題だろ?いちいち男子を巻き込むなよ」 「どうしてもホームルームでやりたいんなら、その間は男子は自由時間としてくれるんならいいけどさ」 「はいはい、ストーップ!ひとまず落ち着いてちょうだい」 男子と女子の間で言い合いが始まったところをサトミは鶴の一声で治めた。 「確かに男子には関係無い事だけど、クラスの中から出た議題でしょう?それとも他に何か議題がある人はいますか?」 そこで新たな議題も特に出てくることはなかった。 「他に無いようなので、来週のクラスホームルームの議題は「女子のブルマーは廃止すべきかどうか?」とします。男子のみんなにとっては全然関係無い話でしょうけど、それでもちゃんと参加してちょうだい。世の中には、全く興味を持てない事でも、何かしら考えて自分の意見を出さなきゃいけない場面はいくらでも出て来るわ。選挙とかがその代表例だけどね」 で、話はまた学校からサトミ宅に戻って。 「私としては別にどっちでもいいと思ってる。まあ、できればブルマーの方が機能的だし可愛いく見えると思うから好きだけど・・・てゆーか、もしブルマーがハーパンに変わったら、シンイチに女装させられないでしょ?」 「・・・えーと、よく話が見えないんだけど・・・学校の体育で女子がブルマーを穿かなくなったとしても、シンちゃんには関係無いんじゃない?」 「ニブイわね~。いい、女子の体育がブルマーならば、シンイチが体育時に女装する場合も・・・」 「ちょ、ちょっと待って、アスリン・・・貴女、まさかシンちゃんに学校でも女装させるつもり!?」 プライベートならともかく、学校内―――そしてそれは公共施設内や屋外の衆人環視状況下にエスカレートするかもしれない―――での女装調教なんて、流石にサトミには看過できない事と思われたのだが。 「慌てないで。何かのイベントとかが有れば、よ。運動会の仮装行列でもいいし、何かの競技で女子の人数が足りなくなったら女装させて人数合わせするとか、いろいろあるでしょ?」 確かに、文化祭の劇のシンデレラでシンイチの公的な女装は前例がある。アスリンのアイデアも後者はルール違反とかでダメそうだが前者は冗談で片づけられそうなので大丈夫そうな気がした。 「う、うん、いいわね、それ・・・」 サトミの脳裏では仮装行列か仮装競争とかでブルマー姿になっているシンイチの姿が描かれていた。だが、その妄想の中でシンイチは女装フェチの性癖をさらけ出してブルマーの前をフル勃起したペニスで思いっきり突き上げている、と言うのが何ともサトミのお間抜なところだった。そんな状態でシンイチが衆人環視の前に出られる訳がないし、そんな事態になったらサトミも・・・いや、指導方針を糾弾されて学校側もただでは済まないのだが・・・。 「まあ、それが実現するかはさておき、その為にもブルマーが廃止されたら困るのよ。だから、シンイチにブルマー女装させてブルマーが好きになって貰って、来週のホームルームでブルマー廃止反対派に回って貰いたいのよ」 女子の中でシンイチは割と人気がある。シンイチがブルマー擁護派なら、それに同調する女子も多く出て来る筈だ。そして、評決に置いても、男子はブルマー問題とは無関係なのだがクラスのホームルームに参加する以上、評決にも参加させる事としたら、無関係だから何も考えずに棄権する者が多いかもしれないが、何人かは賛否どちらかに回るだろう。その時、シンイチがブルマー擁護派だと言ったら、まあそれに同調してもいいかと考える男子も出て来るだろう。 まあ、この段階でアスリンはケンタがブルマー廃止反対工作に動いている事を全然知らなかったのであるが。 そしてブルマー存続が決まったら、サトミが脳裏で妄想したシーンを何とか実現させて、「ブルマーを穿きたかったからブルマー廃止は困るから反対したのね」と女子の前でさらし者にする事をアスリンも妄想していた。学校はともかくとして、サトミの立場を考慮するなど、邪な策略を企むアスリンはまだ心は未成熟だったのでできる筈も無かったのだ。 そして一週間が過ぎて、いよいよクラスホームルームが行われる日がやってきた。 その日の授業も何事とも無く無事に五時間目まで終了し、後は各人の思惑が交錯するクラスホームルームの時間となった。 「えー、今日の議題は「女子のブルマーを廃止するべきかどうか」についてです」 書記に任命されたシンイチが黒板にその議題を書いていくのを背にしてクラス委員長のヒカリが議長として進行役を務める。 「はい!」 早速挙手したのはブルマー廃止を言い出したキヨミだった。その意見の主旨は、ブルマーはダサいから廃止して男子と同じハーパンにしたい、と言う事だった。彼女がブルマー廃止を言い出した本当の事情を知っている女子生徒たちの一部は思わず呆れ顔になった。その反応に事情を知らない男子生徒たちはきょとんとしていた。が。 「はぁ?何言ってんの?こないだ体育の授業でハミパンしたのが恥ずかしいから言い出したんでしょうに」 つい、アスリンは口にして言ってしまった。その途端、男子生徒たちの間から失笑が漏れる。 笑われてしまったキヨミはきっ、とアスリンを睨むが、アスリンは全く動じなかった。 「惣竜さん、発言はまず挙手してからにしてくれない?」 ヒカリが一応アスリンを窘めると。 「あ、ごめんなさい。それでは、改めて」 アスリンは言われたとおり、挙手してから自分の意見を述べた。その趣旨は、ブルマーは運動の目的から考えると実に機能的であるので廃止すべきではない、と言う事だった。 それから、女子の間で数人が言い合った。 三代キヨミ「機能的とか言う前に、ハミパンするという問題を何とかすべきでしょ?」 桐芝マナ「だったらハミパンしないように気を付ければいいだけでしょ?ハイレグのパンティにするとか」 惣竜アスリン「私はいつもTバックに変えるから全然心配無いけどね」 古都コトコ「下着の問題にすり替えないで。男子と同じハーパンだったら何も気にしないでいいじゃない」 山石マユミ“それは女性としてはどうかと・・・やっぱり、恥じらいは乙女として持っておかなくては・・・” ハミパンするとか、パンティをどうしろとか、そんな話もあまり男子の前ですべきではなさそうに思えたが、アメリカ帰りのアスリンにとってはあまり大和撫子みたいな恥じらいのような感覚よりは、やはり合理的実利的な考え方が主体であるが故にどんどん主張するので、周りの女子も仕方無しに発言を躊躇する事が無くなっていったようだ。 井戸ヒデコ「それに、もしハミパンに気づかないでいたら、男子たちとかに見られちゃうし・・・」 男子生徒一同?“誰もお前らなんて見ねーよ!!” と思ったのもさもありなん。ここまでブルマー反対派として意見を述べているのは、ほとんど男子には人気の無い女子だった。 例えば、キヨミは言っちゃなんだがブスと言われる容姿だし、コトコは超肥満体のデブだし、ヒデコはネクラであまり女子にも話し相手はいなかった。 「ったく、自意識過剰なやっちゃな。だいたい、男子と女子は体育の授業は別やろ?」 「鈴川くん、発言は挙手してからって言ってるでしょ!」 「ああ、スマンスマン」 ヒカリに怒られたコウジを見て、サトミはタイミング良しと思って口を開いた。 「えーと、ここまで女子ばかり意見を出してるけど、男子から何か意見はありませんか?」 「何で男子に意見を求めるんですか!?これは女子の問題です!」 サトミに早速言いだしっぺのキヨミが噛みついたが。 「でも、女子の問題だから男子は関係無いと言うのなら、この件はクラスホームルームで話し合う事では無くなるわ。先週、貴女がこの事を提案した時にも、男子からは女子の間だけで決めたら、って言う発言があったわよね?」 「そ・・・それは・・・」 「クラス全体で話し合う事として提案しておきながら、今更男子の意見なんて関係無い、なんて筋が通らないわよ?」 キヨミ、コトコ、ヒデコの三人の他、ブルマー反対派はサトミの冷静な指摘に言い返す意見が無くて押し黙ってしまった。 「男子のみんなにも、無関係な話ではあるけれど、ちゃんと何かしら意見は考えてきてと言ったわよね?」 すると、ケンタがさっそく手を上げた。 「率直に言わせてもらうとさ、女子はブルマーの方が可愛いと思う」 「ちょおま!?」 「何それ!?セクハラ発言じゃない!!」 「え?何で?可愛いとか可愛くないとか、どんな感じ方をするかは自由じゃん?それが何で性的嫌がらせになるんだよ?」 「そっちの考えは関係無いのよ!女性が嫌だと思ったらダメなものはだめなの!」 「それもおかしいだろ!何か、女性の意見は全て尊重で男性の意見は全て蔑ろなのか!?」 「レディファーストって言葉を知らないの!?男がそんなんだから男女平等にならないのよ!」 「レディファーストって、本当は男女平等とは違う事を知らないのか!?そんな、女は都合のいいところだけ利用しようとするからいつまでたっても男女平等にならないんだよ!」 例えば会社員で同じ能力・実績があるなら地位・報酬も男女平等にすべきであるが、その前提を無視して数の勘定だけで男女の比率を同じにするのは逆に男性差別になる。政治家・議員の男女の比率を同じにする場合もそういったまず男女云々を言う前に人物としての能力が平等である事を前提にしなければならない。 話が少々脱線したが、同様に一部の女子と男子でやや話が脱線気味の言い合いになったが。 「ちょっと待って!発言は挙手してから!みんな、ちゃんとルールは守ってよ!」 ヒカリが教卓をバンと叩いたので一先ず言い合いは中止された。 「まあ、ちょっと議論の内容がセクハラ云々に脱線したけど、それはまたいつか次の機会にしましょう。それで、男子の意見は他には?」 実は、男子たち、てゆーかケンタやコウジの計画ではシンイチに発言させる予定だった。だが、まさかシンイチが書記になってしまったので、仕方なくケンタが発言したのだが、普段からそれとなく女子にあまりいい受け止め方をされてないせいもあってケンタは墓穴を掘ってしまったようだった。 すると、今までいろんな意見を黒板に書き留めていたシンイチが手を上げた。 「・・・じゃあ、僕から一言・・・」 「ちょっと待って、猪狩くんは書記だから発言権は無い筈よ」 それを慌ててコトコが遮る。 「え?そうなんですか?」 シンイチがサトミに訊いてみると。 「いいえ、そんな事は無いわよ」 「何でですか!?書記は議事進行の記録役だから発言してたらダメでしょう!」 「それは違うわ。書記にも、議長にも自分の意見を発言する権利はあるわ。当然、評決権もね」 「そんな、そんなのおかしいです!」 サトミの説明にコトコもキヨミも納得できないようだが。 「おかしくはないわよ。クラスの全員が評決権を持っているの。でも議長と書記がいないと会議が進まないから、誰かにやって貰っているだけなのよ。確かに貴女の言ったとおり議事進行に支障をきたすのならマズいけど、今はそんな状況じゃないでしょ?男子の意見はありませんかと訊いたところに発言を求めたんだから」 「でも、書記はちゃんと書記の仕事だけをするべきです。猪狩くんならちゃんとやってくれると思ったから書記に推薦したんですよ!」 「うーん・・・何でそこまで拘るの?猪狩くんや来市さんに発言されたら何かまずい事でもあるのかしら?」 ずばり、サトミに鋭く指摘されてコトコやキヨミたちブルマー反対派は押し黙った。それもその筈、シンイチを書記に推薦したのは彼女達で、その理由はサトミの言ったとおりシンイチに発言させたくなかったからだ。 女子に人気があるシンイチの発言は議事の行方を左右しかねない可能性が大だ。だからこそ、ケンタ・コウジらはシンイチにブルマー反対の意見を言わせようと画策し―――それは勿論アスリンの関与しないところであった―――コトコ・キヨミらはその動きを察知してシンイチの発言を封じようと企んだ―――それも当然アスリンの関知しないところであった―――というのが真相だった。 勿論サトミはその真相とやらは知らなかったが、彼女達の反応で薄らと気づいた。これぞ、「語るに落ちる」じゃなくて「黙るに落ちる」である。しかし、大人の彼女に比べてまだ子供な生徒達は全く気付かなかった。もし、気づいた者がいたらホームルームどころじゃなくなるだろうと言う事は想像に難くなかった。 「じゃあ、シンイチくん、どうぞ」 「えーと・・・簡単に言えば、男と女は違うのだから服も違うのが普通だろうと思うんだ。男女同権・男女平等というのはとても重要な事だけど、何から何まで男女全く同じにしていい訳じゃないよね。更衣室とか水着も男子と同じなんて無理だろう?だから、区別すべきところは区別すべき、ということで僕も女子はブルマーの方がいいと思う」 一部の男子の中には「いや、水着も更衣室も男女同じで問題無い」と思ったバカがいたかもしれないが、そんな事は女子にとっては勿論絶対に受け入れられない事だった。 それ故にシンイチの意見に男子も女子も多くの者が同意するかのように頷いた。それを見て、慌てたコトコは・・・。 「じゃあ何?女子はハミパンするのを我慢しなきゃいけないって言うの?それのどこが男女平等なの?男子はそんな心配が無いんだからずるいわよ!」 「何度同じ事を言ってるの?そんなの、簡単に防ぐ方法あるんだから理由にならないわよ。それを怠ってハミパンするのは女としての嗜みが足りない粗忽で迂闊なだけだわ」 コトコの噛みつきはアスリンの発言で一蹴されてしまった。勿論、この発言内容も事前にサトミから教えられていたものだ。 そして、そろそろ終了の時間が近くなったという事で「女子のブルマーを廃止すべきか?」について評決が取られた。 結果は勿論、反対が多数でブルマー廃止は否決された。 これでケンタ・コウジ・・・はさておき、アスリンとしては一安心となったのだが、コトコ・キヨミらブルマー反対派はこれで諦めた訳ではなかった・・・。 「いやぁ、本当に上手く行ったわね、「ブルマー廃止運動」廃止作戦は」 その日の夕食メニューがアスリンの大好きなハンバーグである事も相まって、アスリンは上機嫌だった。 「ちゃんとアシストした私にも感謝してほしいところだけどね」 「勿論よ!流石サトミ、あいつらの企みをよくぞ潰してくれたわね」 帰宅してからサトミはブルマー反対派の女子が何故シンイチを書記に推薦したのか、その真相―――もちろんあの女子生徒達の口を割らせた訳ではないから推論に過ぎないが、実のところそれは100%当たっていた―――をアスリンに教えてあげたのだ。 「ったく、あのバカ女達ったら、自分がダメな事を棚に上げて我儘ばっかし言うんだから、困ったもんよね。だから男子に鼻で笑われてんのよ」 ブルマーからのハミパンなど、下に穿くパンティをどうかすれば簡単に防げる。女のコとして恥ずかしくないようにその立居振舞に注意を払うのは女のコとして当然の事。それさえも怠って、悪いのはブルマーだと言うのは、交通事故が起きたら悪いのは車そのものだとか、殺人事件でピストルが凶器に使われたらピストルを無くせとか言い出すのに等しい。それがアスリンの持論だった。 日本人としては、自分中心主義で家の外に一歩出たら周囲は敵ばかり、と考えて銃器で武装するというアメリカ人の信条は少々納得できかねるので、サトミはアスリンの持論の最後の部分は完全には同意できなかったが。 しかし、ブルマー反対派の女子はそれだけでなく、誰の目にも太っているのにダイエットもせず―――誰の目にも太っているとは思えない女性が「ダイエットしなきゃ」などと言い出す時代なのに―――昼食の後でお菓子やアイスなどをパクパク食べていたりしているのを見れば、女のコとしてはだらしない・恥ずかしい姿に感じるので、男子達にも人気が無いのだ。 「でも、ま、一番の功労者はシンちゃんよね。あの意見はアスリンと話し合っていたの?」 「あ、いえ・・・私の本当に思っていた事を話しただけです」 シンイチは「ブルマー廃止運動」廃止作戦が成功して終了したと言うのに、いまだ体操シャツとブルマー姿のままだった。それは勿論、アスリンの言いつけによるものだ。まだ、何か企んでいるらしい。 だが、今はそんなアスリンの企みがどうかと言う話よりは、シンイチのどことなく不安そうな面持ちが気になるサトミだった。 今のシンイチはやはりアナルにバイブを入れさせられている。だが、モーター部分だけは出ているのでそこがブルマーのお尻の布地を突っ張らしていて、しかも椅子に座る事ができなくなるのだ。 だからアスリンは新しいタイプのバイブに変えてやった。充電式でモーター部もディルドゥ部の中に格納され、その底は吸盤の付いた円盤状になっているのでそれがストッパーの役目も果たすので間違って全体が侵入する事もなく安心して椅子に座れるというシロモノだった。勿論アスリンに頼まれたサトミが例のX資金で入手してきたのは言うまでもない。ただし、今までのものよりも亀頭部のカリの最大径が少々太くなっていたのでシンイチのアヌスがそれを飲み込むには以前よりも時間は掛かったが、入ってしまえば何とか我慢できるようになっていたのは今までのアナル調教のおかげかもしれなかった。 話がそれたが、シンイチが不安に思っているのは勿論そんな事ではなかった。 「シンちゃん、どしたの?何か心配事でもあるのかしら?」 シンイチが以前から今の今までずっと自分の意に沿わぬ事をアスリンに強要され続けている事など頭の中からキレイさっぱり忘れている―――もしかしたら、脳内で記憶を改竄していっているのかもしれない―――サトミは笑顔で訊いてきた。 「その・・・まだ、終わって無いかも・・・」 「それってどういう事?」 アスリンもマジメな顔になってシンイチの話を聞き始めた・・・。 今日の放課後の事。 ショートホームルームも終わって掃除当番を残して他の者は部活動―――当然「帰宅部」も立派な部活動である、と言うのは冗談だが―――に勤しむ為に教室を出たのだが、シンイチは昇降口の前で数人の女子に取り囲まれた。 「ちょっと、あんたどういうつもりなのよ!?」 取り囲んだのはコトコ、キヨミ、ヒデコらブルマー反対派の女子数名。 「何が?」 「何がじゃないわよ!何で私達がブルマーは嫌だって言ってるのにそれに反対するのよ!?」 「それはさっきホームルームで言っただろ?それに何で僕一人にそんな事を言うのさ?多数決でブルマー廃止反対ってなったんだよ?文化祭の時だって、僕は嫌だったのにクラスの評決でシンデレラの役をやったんだ。君達もその時は賛成してたぞ」 確かに、あの時は女子は全員賛成で、反対だったのは先行き不安を感じた一部の男子だけだった。 「君達は納得できなくてもクラス全員の評決で決まったんだ。仕方ないじゃん。」 「何言ってんのよ!あんたのせいでみんな反対側になったのよ!」 「無茶な事言わないでくれるかな?僕の意見に同意しろ、なんていつ僕がみんなに言った?それに僕にそんな事を強制できる権利なんか無いよ。みんなは自分の意志で判断したんだ」 「そんなの関係無いわ!私達が嫌な思いする事になったら全部あんたのせいよ!」 どうも彼女達は自分達の意見が通らなかった事がどうにも我慢ならないらしい。 巷の学園漫画だったら私立の学校が舞台なら学校の理事長の娘とかが親の権力を笠に着て―――何かあったら親に行って退学させるとか脅して―――場合によっては先生に対しても親に行ってクビにしてもらうとか脅して―――自分の好き勝手我儘放題な事ばかりしたり問題を起こしたり、それがヤンキー系漫画だったら当然お猿のお山の大将になったりして、一般生徒に迷惑―――というレベルで済めばいい方だが―――を掛けまくったり、酷くなればイジメ・嫌がらせなどをするなんて事態になるが、でも最後には正義と良心を持つ主人公の前に敗れ去ると言うお約束の展開が待っている訳である。 まあ、どちらかと言えば、この学校の校長(代理)である夕月コウゾウが自分の両親の古い知り合いであるシンイチの方がその権力を笠に着れる側に近い。勿論、そんな事実を夕月はともかくシンイチの方は知らないし、知っていたとしてもそんな事をして堕落するようなシンイチではなかったが。 でも、今シンイチを取り囲んでいるのはそういう自己中心の我儘女ばかりではあるが、生憎権力を笠に着る事はできない一般生徒だった。 「うーん、それは困ったわね・・・」 「何言ってるの?困るも何も、みんなで多数決で決めた事でしょ?自分達だけが立場悪くなるわけでもないのに、単なる我儘じゃないの!そんなの無視よ、虫!」 少々思案顔のサトミに対し、アスリンは多数決が正義とばかりに熱弁を振った。 「あ、それで、その後どうしたの?」 「ちょうどそこにトオル先輩が通りかかって助けてくれたんです」 「・・・誰?」 「凪羅トオル先輩の事です」 「ああ、生徒会副会長の凪羅くんね。でも、シンちゃんは何で名前で呼んでるの?」 「最初は凪羅先輩って呼んだんですけど、名前で呼んでくれって言われて・・・」 アスリンも最初はわからなかったが、生徒会副会長の肩書の事を言われてピンときた。前に女子トイレの中で男子生徒の人気ランキングの話を小耳に挟んだ時に聞いた、人気No.1の三年生の男子生徒の事だった。生徒会長の三年生の女子生徒、綾見レイナと合わせて美少年・美少女の理想のカップルのように見られている一面もある。 しかし、アスリンもきゃあきゃあ騒ぐ女子生徒の後ろから彼を見てみたが、何となくキザっぽい印象が大きくてそれほどには・・・という感じだった。 アスリンとしては同年代の男子よりはやはりもっと大人の男性(※)が好みであった。(※:ただし、イケメンに限る。) 「それで、凪羅くんは何て言ったの?」 「生徒間の問題解決には生徒会が手を貸しましょう、って・・・彼女たちの言い分を聞いて、生徒会役員会で稟議してみるとか・・・」 「えっ!?」 「嘘っ!?」 サトミもアスリンも驚いた。まさか、2-Aの問題だったブルマー廃止騒動に生徒会が関与してくるのは予想外だったからだ。 「・・・で、どうなる訳?」 アスリンのそのセリフにシンイチもサトミも思わずずっこけた。アスリンは何もわかってなくて驚いたらしい。 「だ、だからね、生徒会役員会の判断によっては、ブルマー廃止問題が2-Aだけでなく学校全体の問題になってしまう可能性がある訳」 2-Aだけならば、シンイチの発言で事態を有利な方向に進める事ができたが、学校全体の問題となるとそうはいかない。他の学年合わせて全11クラスまでシンイチの言葉に影響力があるとは考えられないからだ。 「サトミさん、今学校全体の問題って言いましたけど、生徒全員の問題、じゃないんですか?」 「生徒会役員会の判断で、これが生徒総会での議決事案まで行っちゃって、ブルマー廃止が否決されれば問題無いわ。でも、もしブルマー廃止が可決しちゃったら、学校としても生徒全員の意見という事でそれを完全に無視するにはいかなくなるの」 「そこでサトミが反対意見をブチあげればいいじゃないの!」 「勿論、YES/NOを言えと言われたらNOと言うわよ。相賀くんの意見じゃないけど、やっぱり私も女子はブルマーの方が可愛いと思うし」 「逆に男子と同じハーパンの方がダッサいわよねー」 そう言ってアスリンがシンイチに振ると。 「そ、そうですね・・・私も、ブルマーの方が好きです・・・」 いきなりで一瞬慌てたが、シンイチは何とかアスリンが喜びそうな受け答えができた。 「それはともかく、やっぱり私の意見だけじゃどうにもならないわよ」 「イツコ先生やサヤ先生もいるじゃない」 「たった三人じゃ勝てないって。もし、教員会の多数決でブルマー廃止が決まったら、後は学園の理事会だけど、そんなのズブズブだからね・・・仕事せずに理事の肩書だけで給料もらってる人ばっかりだもの、否決したら後の説明が面倒だって事で、あっさりしゃんしゃんで通っちゃうでしょうね・・・」 折しも新聞の投書コーナーでブルマー強制反対の意見が採用されたり、TV番組でもどこかの女子大の先生がブルマー廃止に賛成意見を表明したりと、日本では既にブルマー廃止運動がどんどん大きくなってきている。 生徒総会から上がってきて教員会でも通った事を否決したら、確かにPTAも含めて後々の説明が非常にメンドクサイ事になるだろう。 しかも、練芙学園は第三新東京市でも実力校であることからその影響力によって他の学校もブルマー廃止の方向へ動くかもしれない。 「・・・あの、もしそうなったとして、すぐに切り替えられるんですか?」 シンイチの疑問ももっともだ。 「まあ、次年度から、って事になるでしょうけど・・・業者に連絡しても人数分揃えられるかと言ったら、間に合わない可能性も無きにしも非ず、かな」 「じゃあ、全員分揃うまでブルマーは廃止にならない?」 「さあ・・・そうなった場合も当然考慮していろいろ決まると思うけど・・・うーん、特例としてブルマーじゃなければ何でもいいとかになっちゃうかもしれないわね・・・」 以前の四季がある日本だったら即ジャージズボンを穿くだろう。何しろ、寒い冬には制服のスカートの下にジャージズボンを穿いている女子高生がよく見かけられたのだから。でも、それでもスカートをわざと短くしていたらしいのが非常にマヌケであったが。 しかし、今の日本は常夏と言う方が近い。暑いのにわざわざジャージズボンを穿くようなそこまでのバカはいないだろう。 じゃあ、どうするかと言えば、市販のジョギングパンツとかショートパンツの類で間に合わせるしかないだろう。 “うーん・・・どうすればいいかしら?” 2-Aだけならまだしも、中等部三学年全体の過半数を味方につける方法はアスリンには思いつかなかった。残された方法としては、生徒総会でブルマー廃止の方向になっても教員会議で廃案にしてもらうしかない。そして、教職と言ってもそこは大人である。実弾という実に効果的な方法がある事をアスリンは思い出した。 「・・・後は、先生の過半数を味方につけるしかないわね」 「どうやって?」 「あんたには内緒にしておくわ。必要な時が来れば言いつけるから」 アスリンは不敵そうな笑みを浮かべた。 そしてまた一週間後、掲示板に生徒総会開催の案内が張り出された。そこに書かれていた開催理由は「女子の体操服のブルマー廃止について」となっていた。 “ったく、悪あがきしやがって!” アスリンは心の中で吐き捨てた。 結局、生徒会役員会で稟議した結果、ブルマーが嫌だと言う人がいる以上、ブルマーを廃止するか否かは生徒全体の問題として考えるべきという事になってしまったのだ。 生徒総会開催はさらに一週間後。 「既に敵勢力は新聞部にブルマー廃止の意見を載せて貰おうと活動を起こしている。我々は、何もせずにこのまま黙って見ている訳にはいかない!」 「ブルマー存続有志の会」という文字が黒板に大きく書かれたとある使われていない教室内で、ケンタは一人立って演説していた。勿論、ブルマーが廃止されてしまうと女子生徒の盗撮写真―――と言っても、更衣室で着替え中とかの非合法なものではなく、あくまでもブルマー姿での体育の授業前後あるいは陸上部・バレーボール部・バスケットボール部その他の運動系部活動の様子を被写体本人の了解を得ずに撮影したというものだが―――の売れ行きに大きな悪影響を及ぼすのが心配なだけである。表だって口にしていないが、そこに集っている者たちはみんなそんな事ぐらいお見通しだった。 「せやけどなぁ・・・生徒会があいつらの意見を受け入れて生徒総会を開くって言い出したんやろ・・・アカンのとちゃうか?」 コウジは最初から白旗状態。勝ち目の無い戦はしたくないようだ。 「いや、まだだ!まだ一週間ある!全ての男子を味方に付ければ勝てる!」 確かに人数は男子の方が多いのだが、もし今回全ての女子を敵にしたならば、その後高等部に進学してもずっと男子・女子の間に蟠りが残るに違いない。 それに、「ブルマー廃止に反対する男子は、女子をいやらしい目で見ているからだ」と言ったネガティブキャンペーンも口コミで広がりつつある。ブルマー存続派に回るのを躊躇する者も出てくるだろう。 「うむむ・・・シンイチ、何かいい方法無いか?」 無理矢理シンイチがその有志の会に引きずり込まれた―――と言っても、アスリンやサトミの意見と同様にシンイチ自身も元々ブルマーの方が可愛いと思っているし、ブルマー存続派に与するのは吝かではない。それに、先々週からのアスリンによる調教でずっとブルマーを着用させられていて、すっかり女装趣味にはまってしまったシンイチは何だかそれが好きになってしまったので、ブルマー存続を願っていた―――のは、勿論先日の2-Aのホームルームで勝利の立役者になったからだった。 「えーとね・・・多分、生徒会役員会は必ずしもブルマー廃止派に与しているとは言えないと思う」 「何でや?」 「トオル先輩はそういう人だよ。生徒間の問題を解決しようと言ってくれる人が、わざわざどちらかの意見に与して生徒会役員会の威光を以って生徒の総意を誘導するなんて思えないんだ。そう言ったエリート意識を持っていたら、生徒の意見を聞く前に生徒会役員会から方針を出して押し付けようとするんじゃないかな?」 「うーん、それだったらいいんだけどな・・・」 「じゃあさ、僕から聞いてみようか?生徒会役員会の意見はどうなのかって?」 先の一件で偶然にシンイチと顔見知りになったトオルは、別れ際に「気軽に遊びに来てくれたら嬉しいよ」と言ってくれていたのだ。 「そうか、じゃあ、そっちはシンイチに任せる。今までの経緯とか、いろいろシンイチから説明しておいてくれ」 「わかった」 「後は、ケンタの趣味のアットマークで票を纏めるしかないのう」 「それを言うなら、アットマークじゃなくてネットワークだって」 コウジの素のボケに素早くケンタがツッコミを入れた。 「よし、じゃあこんなところだな。では、これでミーティングを終了する。各自、目的に向かって邁進してくれ。以上!」 いつの間にかこの会議のリーダーに納まっていたケンタの言でこの場はお開きになった。 “後は、アスリンが女子の意見をどう纏めるかだけど・・・” シンイチは生徒会役員室に向かいながらアスリンの動向を慮っていた・・・。 シンイチ、コウジ、ケンタその他数名の男子生徒が「ブルマー存続有志の会」でミーティングを行っていた同時刻頃、そことはまた別の使われていない教室に数名の女子生徒が集っていた。 「これは、生徒会役員会の陰謀だと思うわ!」 アスリンはホワイトボードの前で自分の持論を展開していた。 「あの連中は生徒会と結託し、この学校を裏から支配しようとしてるのよ!」 アスリンの傍にあるホワイトボードには、何人かの顔が雑なタッチで描かれている。おそらくそれは生徒会会長の綾見レイナ、同じく副会長の凪羅トオル、そしてキヨミ・コトコ・ヒデコらしかった。 「ちょっと待って、惣竜さん。話が飛躍しすぎていてイマイチ理解できないんだけど・・・」 「最初から話して貰える?」 ヒカリやマナに言われてアスリンはコホンと小さく咳払いをして話し始めた。 「まず、何故生徒会役員会からブルマー廃止という議題で生徒総会開催という話が出たのかについてなんだけど・・・」 それは先週のシンイチがキヨミ達に放課後に絡まれていたところに偶然トオルが通りかかったのが発端と言える。 「じゃあ、あのコ達が生徒会役員会にブルマー廃止を訴えたという訳ね」 「えー?自分達の意見が通らなかったからって、そこまでする?バカじゃないの?」 「今はそれは置いといて・・・惣竜さん、続けて」 「でね、生徒会役員会の人達自身も、実は困ってる事があったとしたら?」 「それをキヨミ達が解決する、と言う事で手を組んだって事?」 「その、生徒会役員会の困りごとって何なの?」 「ズバリ・・・後継者よ!」 「後継者?来季の?そんなの、それこそ生徒全員の選挙で決める事でしょ?別に困る事なんか・・・」 「成程、そういう事ね」 マナは理解できなかったが、クラス委員長と言う役職を持っているヒカリはすぐに理解した。 「何?どういう事?」 「そう言うのって、毎回選挙で選ぶけど、それはつまり、誰も立候補する人がいないからよ。自主的に、「生徒会役員になりたい」って手を挙げる人なんかいないでしょ?みんなそんなの面倒だと思ってさ・・・だから、毎回各クラスから無理矢理立候補者を出させて、投票して決めてるわよね」 「はあ・・・確かに・・・」 初等部でも児童会の役員選挙があったし、既に立候補とは周囲の推薦によって強制された結果に過ぎない事はわかっていた。 「そこで、もし、推薦による立候補ではなく、自主的な立候補者が現れたとしたら、どうなると思う?」 「ああそっか、それなら生徒会役員の人も安心して引継ぎできる、というワケね」 マナは得心したのか大きく頷いた。 “・・・でも・・・選考目的の選挙が無い場合は、信任するかどうかの投票があるんじゃないかしら?” マユミの思った事は実際正しかったが、今は別に言わなくてもいい事とも思ったので言わなかった。 「そう、こいつらは今度の生徒総会でブルマー廃止が支持されなくても、次の生徒会役員になってルールを変えようとしているのよ!そんな、自分達の私利私欲でルールを好き勝手に変えるなんて絶対許してはいけないわ!!」 アスリンはキヨミ・コトコ・ヒデコららしいラクガキの上に大きくバツ印を書き殴った。 「じゃあ、どうするの?」 「それをここで話し合うのよ。何か意見があれば何でもいいから手を上げて」 そこで出た意見は次のとおり。 ①ブルマーが機能的に優れている事、何でも男子と同じにすれば男女平等というものでもない事を活字媒体(例:校内新聞)で周囲に知らしめる。 ②生徒会役員会に顔を出して、陰謀に加担しないよう依頼する。 ③男子の票はブルマー存続に積極的なケンタやコウジあるいはシンイチ経由でまとめて貰う。 ④こちらからも次期生徒会役員候補を擁立する。 と言う事で、同性と言う事でブルマー廃止派の女子の考えを考察したアスリンがこのミーティングのリーダーシップを取った事もあって、女子の方が具体的な行動面の方針は多く出たようだ。 “さてと・・・後はシンイチに頑張って欲しいところだけど・・・まあ、調教の甲斐あってブルマーが好きになってきたみたいだし、何とかなるかな?” アスリンは早速②の方針を実施すべく生徒会役員室に向かいながらシンイチの意向を案じていた・・・。

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