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第3話 そのヨン
サトミから押し付けられたバイブレーターをシンイチは受け取るしかなく、そのままサヤが手招きする席―――それは本当にシンイチの席だった―――へ歩んだ。
すると、サヤは机の中から体操服を取り出して上に置き、制服を脱ぎだした。
「あ、あの・・・井吹先生・・・」
「大丈夫、私はもうあなたを女のコと思ってるから」
もっとも、最初にイツコからシナリオを聞かされた時は異性の前で着替えをする事を躊躇したようだったが、シンイチは既に女のコに近い容姿だし、決してサヤの素肌を見た瞬間に理性を失って手を出すような人間ではないとも理解していた事から受容したのだった。
「私と同じ手順で着替えてね」
シンイチにそう言ってブルマーを穿いてスカートを外し、セーラーの上衣を脱いでから体操シャツを被る。最後に脱いだ衣類を綺麗に畳んでサヤの着替えは終わった。その手順を真似てシンイチも体操服に着替えた。
残るはバイブレーターのみ。
“・・・な、何か・・・いつもより大きいみたい・・・本当に入るのかな・・・”
シンイチがそれを見つめて少々不安な面持ちになっているのを見たサヤは、そっとシンイチのブルマーに包まれたヒップを撫でた。
「ひゃうっ」
「えっと、それを入れるには、一度ブルマーとパンティを脱がないといけないわね」
シンイチが驚くのもお構いなし。イツコのシナリオどおりにサヤは行動する。イツコの言いつけは絶対なのだ。
「それと、ローションがないんだけど・・・家では今までどうしてたの?」
「おしゃぶりして、自分の唾液を潤滑剤にしてたんだよねー。私が見ててあげるから、今までどおりやってごらんなさいよ」
サヤの席の向こうからアスリンが身を乗り出してイジワルそうに言い放った。こうやってシンイチを苛めるのがまるで至福の時間のようだと言わんばかりの冷たい笑顔で。
そんな事まで言われてばらされて、シンイチは一気に羞恥で顔を赤らめた。だが、そんな反応もサヤからすれば可愛い仕草だった。
「・・・私も、ローションが無い時はそうしてたわ。恥ずかしがる事はないの。きっと、アスリンだって同じ方法でやってるでしょうし」
「ちょっ・・・わ、私、そんな事やってないわよ!」
いきなりのサヤのアドリブでアスリンは笑顔をひきつらせて否定したが。
「別におかしくないわよ。女のコなら一度ぐらいは、オチンチンを舐めてみたいって思うものだもの」
そのサトミのセリフも、サヤ自身は積極的に否定するのに吝かでないところなのだが―――それでもたった一つ例外があって、イツコが装着したペニスバンドやダブルディルドゥだけは、それは男性器ではなく愛しいイツコの身体の一部分だと認識が脳内で自動変換してしまい―――勿論そうなるようにイツコが調教した訳だが―――積極的におしゃぶりしていた―――シナリオだから仕方なく言っているだけだ。
「ほら、勇気出して、頑張ってみて」
「・・・はい・・・」
シンイチはバイブレーターを手にすると、少し口をもぐもぐさせて唾液を出してから、バイブの尖端の亀頭部を口に咥え込んだ。
「しっかりおしゃぶりするのよ。毎晩フェラチオ強制轡で練習してたんだからわかるわよね」
アスリンがまた恥ずかしい事を言ってばらした。だが、シンイチはその瞬間に顔を少し歪めたが、しかたなくそのままバイブのおしゃぶりを続ける。
「先端だけじゃダメでしょ、幹の方までしっかり咥えて舐め回さないと、後で痛い目を見るんだからね」
亀頭部しか唾液を塗っていなかったら、そこまではアヌスに入ってもその後は抵抗がきつくなってなかなか入っていかず、何とか入れようとすれば引っ掛かって痛い目を見る、というのは事実だった(つまり、シンイチは経験済だった)訳で、シンイチは唇に舌で唾液を塗し、唇で幹の部分を濡らす事にした。フェラチオ強制轡では亀頭部分を舌で舐め回すぐらいしかできなかったからだ。だが。
“うわ!シンイチったら、教えてもいないのに、口でチンポ扱きやってるわ・・・ますますヘンタイじゃん!
腐女子仲間で集まって見たやおい・BLの18禁同人誌・アニメの場面をアスリンは思い出していた。
“まあ、シンちゃんったら…教えてもいないのにお口でオチンチンを扱くやり方を…見た事あるのかしら?それとも、本能で?…それだったら、心はもう女のコなのかしら?”
以前にショタコン仲間で集まって見たショタ(≠ホモショタ)の18禁同人誌・アニメの場面をサトミは思い出していた。
アスリンとサトミとでは、全く感じ取る印象が異なっていた。人の心の中だし、当然の事であったが。
「多分、それぐらいで大丈夫だと思うわ」
サヤに言われたシンイチは口からバイヴを抜いた。バイヴに十分潤滑液が付いたら、後はそれをアヌスにはめ込むだけだが。
「じゃあ、私がブルマーとパンティを降ろしてあげるから、その後椅子に後ろ向きに座って…」
サヤは前がテントを張ったように突っ張っているブルマーをゆっくりと膝裏まで引き降ろした。続いてパンティも。
「まあ、レースのフリルがいっぱいね。とっても可愛いパンティだわ」
今からアヌスにバイヴをはめ込むという本心では嫌な事をするのでテンションが下がりかけたシンイチのペニスは、サヤのそのセリフで不思議とテンションをアゲアゲに保ち続けた。
女装趣味に心まで浸ってる変態美少年にとっては、身に着けている下着を褒められる事さえ歓びと受け取るようだった。
サヤに言われたとおり椅子に後ろ向きに座ったシンイチは、椅子の背凭れを支えにして腰を浮かし、バイヴレーターを自分のアヌスに向かって位置させる。
「はい、そのまま、入れて」
バイヴがシンイチのアヌスに狙い違わず当てられた事を確認して、サヤがGOサインを出した。
「…ふぅ~…ん…んぅ~…」
一度深呼吸したシンイチはアヌス周りの力を抜き、そこにバイヴを突き立てた。潤滑剤が塗られていた亀頭部がつるんと飲み込まれていくが、流石に最大径部のところはやはり今までよりも少々太かったようで、シンイチの表情に少々苦悶が浮かぶ。
「シンイチくん、あと少しだから、頑張って」
「…く…んん…はぁ…あ、は、入るぅ…」
さらに力を入れると、潤滑剤のおかげでシンイチのアヌスはようやく最大径部を飲み込んでいった。
「…は、入った…」
「よく頑張ったわ、シンイチくん。さ、あと少しよ」
サヤに促され、シンイチはバイヴの幹の部分も押し込んでいった。それは振動部と駆動部の境界に付けられたストッパーの役目を果たす鍔のところで止まった。
「…はぁ…ふぅ…」
今までもアヌスにバイヴを入れさせられてきたが何とか異物感は気にならなくなってきていた。だが、今のはやはりそれまでのよりは少々ではあるがより太くなっているので、また異物感がより大きく感じられた。
しかしそのままにしているとまたアスリンから何か言われそうなので、シンイチは降ろしていたパンティとブルマーをもう一度ちゃんと穿き直した。しかし、アヌスから突き出しているバイヴの部分はどうやっても誤魔化しきれず、パンティごとブルマーにまるで真っ平らな頂を持つテントのような不自然な出っ張りを見せていた。
「ふむ、どうやらちゃんとできたようね」
「それにしても、意外とスムーズに入れる事ができたじゃない」
アスリンの声に続いてそれまでほとんど何も言ってなかったイツコの声がしたので、はっとしてシンイチは振り向いた。
「あ…」
イツコの構えているハンディカムを見て、今の自らによるアナルバイヴ挿入シーンが全て録画されていた事を知ってシンイチは羞恥に顔を真っ赤に染め上げた。
「普段から入れているって聞いていたし、かなり慣れてるみたいだし、これもどうやらアスリンによる調教の賜物のようね」
「有難うございます、イツコ先生」
このミッションの立案者のイツコからのシナリオに無いお褒めの言葉が出て、アスリンもシンイチの調教が着実に進んでいる事を認識して上機嫌。その一方で。
“…僕…この後…どうなってしまうんだろう…”
今まではあの破廉恥過ぎるランジェリーを着てペニスを勃起させてしまっている、決して他人には見せる事のできない写真一式がシンイチをアスリンの奴隷として縛り付ける唯一のものだったが、またこうして己の痴態を記録されてしまった事に気づいてシンイチはますます不安な面持ちになった。
「二人とも着替え終わったみたいね。それじゃあ、まず第一の課題よ」
サトミの声にシンイチははっとして振り向いた。体操シャツとブルマー姿にさせられてこの後何をさせられるのかはまだ聞いていなかった。
「二人とも、そのままの格好でグラウンドへ行く事。その後は又指示が出るから。わかったかしら?」
「はい」
既にその課題を知っているサヤは素直に答えたが、シンイチは絶句していた…。
「シンちゃーん、返事が聞こえなかったけど?私の話、聞いてた?」
「い、いえ、その…でも…外に出たら、誰かに見られちゃうかも…」
「大丈夫。私達以外は誰も学校の敷地内に入れなくしてあるし、グラウンドを外から見る事ができるような建物も周囲には無いから」
どうやったらそんな非常線を張るような事ができるのか?勿論、例のM資金(笑)の事を知る由も無いシンイチがそのからくりに気付く筈も無かった。
「じゃあ、二人とも行くわよ。付いて来なさい」
イツコに促され、シンイチとサヤは体操シャツとブルマーという姿のまま廊下に出て、イツコの後ろに従って昇降口にまた戻る。その間、イツコは二人の姿をハンディカムに収めながら器用に後ろ歩きで進む。
昇降口に三人がやってくると、サヤは使っていなかった下足箱からスニーカーを二つ取り出して片方をシンイチに渡した。それも女子用の桃色のライン(勿論、男子用は水色のラインが入っている)の入ったものだった。これも準備万端云々と言ったところか。
二人はスニーカーを履くと、昇降口から出てすぐ目の前に広がっているグラウンドに足を踏み入れた。
真夜中だからシンイチとサヤの二人の他には当然誰もいない土のグラウンド。しかし、奥の高いフェンスに取り付けられた照明に照らされているので真っ暗闇という訳ではない。
「二人とも、そのままグラウンドをぐるっと一周回ってきなさい」
「あ・・・はい」
シンイチはちょっと拍子抜けしてしまった。ただグラウンドを一周するだけで一体何だというのか、何の意味があるのか全然わからない。
「行きましょう、猪狩くん」
「あ、はい」
二人は地面に張ってあるトラックとフィールドの境界を示す細いロープに沿ってグラウンド内を歩き始めた。
だが、二人とも只無言で歩くのも何だか気まずい気がしていた。と言って、一体何を話したものか?とシンイチが思案していると、先にサヤが口を開いた。
「・・・猪狩くんのブルマー姿、とてもよく似合ってると思うわ」
「はい?」
「えっと、その・・・ぱっと見では、女のコにしか見えないもの」
どうやらサヤは、シンイチのブルマーの前がテントを張っているかのように盛り上がっているのは敢えて言及しない、いや無視したいようだった。
「あ・・・そ、そうですか?」
「あ、いやその、私ったら何を言ってるんだろ・・・そうじゃなくて・・・」
思わず素の感想を言ってしまって、シンイチの心情を何も慮っていなかった事に気付き、少々慌てるサヤ。シナリオ上の台詞ではない事は明白だった。
「ご、ごめんなさい。猪狩くん、無理矢理女装させられてるのに、そんな事言われるなんて嫌だったよね」
「あ、いえ・・・その・・・有難う御座います」
「はぇ?」
シンイチからの感謝の言葉はサヤにとっては想定外。
「僕、生まれた時から女顔で、それがずっとコンプレックスで・・・でも、此間の文化祭の劇で女装した時に、そんな事気にする必要無いんだって気付いたんです」
それはサヤも知っている。その劇の為の女装特訓でサヤもイツコと一緒にサトミ宅に行って一枚噛んでいたからだ。
「それに・・・最初は恥ずかしかったけど、サトミさんが喜んでくれるのを見たら、何だか女装するのも楽しくなって・・・だから、さっきブルマーがよく似合ってるとか、女のコにしか見えないって言ってくれて、何だか嬉しいです」
それは、サヤがシンイチに気兼ねするのを慮っての言葉ではなく、素の感想・・・じゃなくて本心からの言葉だった。
「え・・・ほ、ホントに?」
「はい。だって、女のコ顔ですから、女装して女のコみたいって言われるのは別に嫌な事じゃないです。女に見えないとか言われたら、そっちの方が何か嫌です」
「そ、そう・・・それはよかったわ」
何が良かったのかわからないが、サヤはシンイチに対する考えを少し改める事にした。
過去のトラウマから男性恐怖症、てゆーか男ギライになっていたサヤは、シンイチが女装して女のコのようになる事については別に気持ち悪いとかそんな負の感情は持って無かった。それは先ほどの素の感情を思わず吐露してしまったところから明白であった。ただ、女装で興奮してペニスを勃起させてるのが、やっぱり男のコである事を主張しているので、そこが残念てゆーかちょっと嫌な部分だった。
だが、シンイチは自分の性的欲望ではなく、サトミへの親愛の情・サトミの歓びの為に女装しており、その結果サトミの手練手管によってペニスを勃起させてしまうようになったのだ。それにサヤは気付いた時だった。
「・・・んぅっ!・・・んうぅぅ~~・・・」
いきなりシンイチは立ち止まると、お尻を左右に振りながら悶え始めた。
「どっ、どうしたの、猪狩くん!?」
「・・・バ・・・バイブが・・・いきなり・・・お尻の穴の・・・中を・・・ぐりぐりって・・・」
サヤがシンイチのブルマーのお尻を見ると、アヌスに突き刺さっているアナルバイブがパンティとブルマーの布地を通してぐいんぐいんと揺れているのが見て取れた。
「言い忘れてたけど、そのアナルバイブは一定時間経ったら一定時間動くようにプログラムされてるの。早く進まないと何度もお尻の中をかき回される事になるわよ」
背後からハンディカムで二人を撮り続けていたイツコは、シンイチのブルマーを後ろからアップで撮りながら忘れていた事を思い出したかのように言った。
「そ・・・そんな・・・」
シンイチはバイブの振動でアナル内を刺激されて、一歩も動けなくなってしまった。
「あの、それ、私も聞いていませんでしたけど・・・」
今回のミッションにイツコの命令で参加させられているサヤも、自分が知らない事があるとわかって怪訝な表情を見せたが。
「だって、教えてたら貴女がシンイチくんに話してしまうかもしれないでしょ?それじゃ面白くないから、って事でアスリンの提案で説明省略したのよ。おかげで、ブルマーの中でバイブがぐりんぐりん蠢いている良い画が撮れたわ」
イツコの言うとおり、このミッションのメインの立案者はアスリンだった。シンイチの女性化をより加速させるのを目的として、この屋内・屋外を問わない校内女装露出散歩をさせる。それはもう一つの目的もあって、それは今イツコがハンディカムで録画しているように、シンイチのそんな恥ずかしい姿を録画してまた今後の計画の脅迫ネタに追加するという事だった。
そして今現在、練芙学園中等部がアスリン達によって貸切状態となっているのも、例のM資金(笑)にモノを言わせたからだった。
そして、今もアスリンは次のステージの為に何かを持って校舎内を移動しているところだった。
それはともかく。
「猪狩くん、大丈夫?動ける?」
「・・・ダ・・・ダメです・・・動くと・・・刺激がもっと強くなって・・・」
内股になって中腰になって膝に手を置いている姿は、さながらオシッコを我慢している女のコのようにも見えた。
“・・・猪狩くん・・・カワイイ・・・いえ、そんな事ではなくて”
一瞬シンイチの姿を可愛いと感じたサヤだが、すぐに気を取り直した。
「ホラ、何とか頑張って。我慢して少しずつでもいいから歩かないと・・・時間がどんどん経っていつか朝になってしまうわ」
土曜日は授業は無いが、部活動のために登校する生徒は大勢いる。それらの生徒に自分の痴態が見られてしまったら・・・。
「・・・んぅ・・・はぁ~・・・ふぅ~・・・」
シンイチは中腰の姿勢から何とか戻ると、深呼吸をしてみた。お尻の中でバイブはまだ暴れまくっているが、それでも何とかギリギリ我慢できるような気がした。
「猪狩くん、しっかり」
サヤはシンイチの片手を取った。そしてシンイチの前に立ってシンイチを導くようにその手を引きながら少しずつ歩き始めた。
「す・・・すみません・・・」
シンイチはサヤの手をガイドに、何とか歩を進め始めた。
グラウンドを半周したところで蠢き始めたアナルバイブはその後グラウンドを1/4周進んだところで―――それはシンイチにとっては永遠にも思われた時間に思われたが、実際は5分程度だった―――一旦停止した。
「はぁ・・・はぁ・・・」
アヌスへの拷問?―――とは言っても実際は痛みはなくて違和感―――不快感と言う方が正しい―――に襲われていた訳だが―――かもしれないような仕打ちを何とか耐えきったシンイチは、思わずグラウンドに両手両膝を付いてしまった。
「・・・大丈夫?」
「・・・何とか・・・」
「・・・あの、猪狩くん・・・酷な事言うようで悪いけど、多分また10分ぐらい後でバイブは動き出すと思うの。できるだけ先に進んだ方がいいわ」
「は、はい」
サヤの叱咤?激励?に促されて、シンイチは両手両膝に付いた土埃を払い、またグラウンドをサヤと一緒に歩き始めた。
そしてグラウンド内をやっと一周したところでイツコが次の指示を出した。
「じゃあ、次はそのまま体育館に行きなさい。そこで新たなミッションが出るから」
と言いつつもイツコはハンディカムで二人の姿を撮影しながら後ろ歩きで―――もちろん時折後を見て進路を確認しながらだが―――体育館前まで二人に先行して歩いた。
それも、さっきはシンイチのブルマーの後ろのバイブによる膨らみをメインにしていたが、今はシンイチのブルマーの前のテントを張ったような膨らみをメインにしてだった。遠目だと本当にシンイチは女のコに見えるので、男のコの証明であるブルマーの前の膨らみを撮っておかないと意味が無いのだ。それを見た腐女子に「こんな可愛いコが女のコの筈が無い」と言うセリフを言わせるのが目的とでも言わんばかりのカット割りだった。
イツコに撮影されながらシンイチがサヤと一緒に体育館の前まで来ると、そこにアスリンが待っていた。
「やっと来たわね。この私を待たせるなんて、いい度胸してるじゃないのよ」
「ご、ごめんなさい、アスリン様・・・」
「まあまあ、それでもシンイチくんは頑張ってたわよ」
イツコはシンイチを庇う台詞を吐きながらもハンディカムをアスリンに渡した。
「どう?大好きなブルマーを穿いてのグラウンド一周は?ずっとしたかったんでしょ?」
「そ、それは・・・そうですけど・・・」
“え?本当に?・・・もしかしたら、ブルマー廃止問題に反対したのって・・・”
サヤの疑問は半分は当たっていたが半分は外れと言ったところだった。
それはともかく、シンイチが否定するかと思いきや、肯定したのでサヤも一瞬不思議顔になったが。
「そうだけど、何?」
「その・・・アナルバイブが・・・強すぎて・・・」
シンイチがあまりアスリンを怒らせないように、逆らわないように、不機嫌にさせないように慎重に言葉を選んでいる事はすぐにサヤにもわかった。愛するイツコとのプレイで、イツコの機嫌を損ねて途中で放置されてしまってせつなさに心を締め付けられた事を経験済みだからこそ、イツコにとってペットであるサヤだからこそ、気付いたシンイチの心情だった。
「でも、しっかりチンポはフル勃起してんじゃん。ホントに変態なんだから」
アスリンはイツコが撮ったムービーを少し戻してプレイバックを二回見て確認し、シンイチを詰った。
そうやって言葉で嬲られるのが一番心を抉られるが、それでもシンイチに抗弁する術は無かった。
「まあ、いいわ。じゃあ、次のミッションよ」
アスリンは体育館の入り口のドアを開け放った。中は既に天井灯が灯されていたが、窓は全て暗幕カーテンで覆われていたので外に光は漏れていなかった。
「じゃあ、そのまま中に入って・・・ああ、靴はちゃんと上穿きに穿き替えてね」
アスリンの言うとおり、体育館への上がり口にはさっき昇降口で脱いだ上穿きが二人分揃えられていた。ここでのミッションの為にアスリンが自分で運んできたのだ。
「ありがとうございます、アスリン様」
いちいち何か言われる前にシンイチはすぐにアスリンにお礼を述べた。
さて、体育館の中には・・・別に何も用意されていなかった。ここで女子の体操服のブルマーを廃止するか否かについて、いろいろと残念な女子と論戦を繰り広げてブルマー廃止を否決したのはつい先日の事だったが・・・。
「じゃあ、シンイチはそのままステージに上がって」
「はい、アスリン様」
一体ステージの上で何をするのか全く分からないが、シンイチは言われたままに歩いて行って左右の両端にある上り口の右から階段を上がってそのままステージの中央正面まで進んだ。
「いいわ、そこでストップ」
一体アスリンはそこでシンイチに何をさせようというのか、サヤは少々不安な面持ちで見ていた。訊いているシナリオではここで何かする事にはなっておらず、上のプールで違うミッションがある筈だったのだが。
「スイッチ、オーン!」
ハンディカムを構えたアスリンはポケットに入れていた何かのスイッチを入れた。その途端。
「・・・んぅっ!・・・んうぅぅ~~・・・」
いきなりシンイチは顔をしかめて呻きだした。それは先ほどのグラウンドでの異変と全く同じ反応だった。
「どう、アナルバイブの感触は?あんたはそこしか女のコのヴァギナの代用品は無いんだから、もうそろそろそこで感じてくれる筈なんだけど?」
イツコは一定の時間間隔で一定時間作動するプログラムになっていると言っていたが、どうやら無線スイッチでオン・オフできるようにもなっているようだった。
まあ、内股になって中腰になって膝に手を置いている姿は、さながらオシッコを我慢している女のコのようにも見えるのだが。
「ダ、ダメです・・・な、何か・・・く、苦しくて・・・お、お願いです、アスリン様・・・と、止めて下さい・・・」
「ダメよ。女のコなんだからそれぐらい我慢してくれないと」
「そんな・・・ちょっとやり過ぎじゃないかしら?」
サヤは今のブルマー姿はともかく一応は教師なので、流石にアスリンが暴走気味と思って窘めた。
「え?そうかしら?んーと、じゃあ、こうしましょう」
まるで最初からシナリオが組まれているかのようにアスリンはサヤの言葉を受け入れた。が。
「この前のブルマー問題、あんたの本当の反対理由をそこでちゃんと言ったら、スイッチをオフにしてあげるわ」
勿論、それがどんな事であるかは耳にしたのでアスリンはわかりきっている。そして、ここでシンイチをわざわざステージに上げたのは、やはりシンイチに恥ずかしい言葉を言わせるのが目的だった。
勿論、そんなアスリンの意図ぐらいシンイチはわかっていたが、バカ正直に本当の事を言ってもアスリンが満足しない事もわかっていた。
何とかアナルからの不快感を我慢しながら前屈みだった身体を起こしたシンイチは、一回深呼吸をすると、口を開いた。
「わ、私はっ・・・んっ・・・ブルマーが大好きでっ・・・うっ・・・た、体育の時間でっ・・・くっ・・・ブルマーを穿いてっ・・・」
途切れ途切れだが、何とかシンイチはアスリンに聞こえるように大きな声で言葉を綴る。
「・・・授業を、受けたかったんですっ・・・だ、だから・・・ふっ・・・ブルマーが、廃止っ・・・されたら、困るからっ・・・・・・」
途中までシンイチの言葉を聞いてすぐにサヤは気付いた。さっき、アスリンが体育館の入り口で何故あんな事を言ったのかを。
「だから・・・ブ、ブルマー廃止は・・・反対ですっ!」
何とかシンイチはアスリンの気に入りそうな言葉を言い終えると、アナルバイブの刺激に耐えられずにその場にしゃがみ込んでしまった。
“猪狩くん、女装教育で本当にブルマーを穿くのが好きになってしまっていたのね・・・”
しかし、それに気付いたとしても、別にサヤにシンイチへの嫌悪感が湧くという事でもなかった。
「はい、良く言えました~。ブルマー廃止にハンタイしたのは、ブルマー大好きなヘンタイだからだったのね」
自分が事細かい説明をしなくてもシンイチに恥ずかしい発言をさせた事で、アスリンは喜色満面の笑顔だった。
「アスリン、スイッチは?」
「あ、そうね。じゃあ・・・スイッチ、オッフ!」
約束通りアスリンはアナルバイブを止めてくれたので、シンイチはようやく不快感から解放された。
サヤはステージに駆けのぼると、すぐにシンイチの傍に行った。
「猪狩くん、大丈夫?」
「・・・何とか・・・」
そして、さっきのグラウンドの時と同様にサヤはシンイチの手を引いてステージから降りてきた。
「んーと、あまり勝手な事してほしくないんですけど・・・」
「でも、今のここでの事も私は何も聞いてないのよ。予定外の事をしているのは貴女も同じではないかしら?」
「あー、サヤ先生には話してなかったけど、これもサトミやイツコ先生の了解を得ているんです。つまり、シナリオどおり」
「あら、そうだったの。わかったわ、じゃあシナリオどおり、上に行きましょう」
シンイチの了解など全く取らず―――勿論、シンイチにはまず拒否権そのものが無かったが―――二人は次のミッションのためにシンイチを上の階へ連れて行った。
体育館の二階はプール。既に天井照明が灯されている。階段から上ってきてすぐ左は体育教務室、その先が男子更衣室。階段の右は用具室でその奥は女子更衣室。その女子更衣室が目的地だった。
中に入ると、壁際に棚がいくつも並んでおり、中央には長テーブルが数個置かれている。棚も長テーブルも脱いだ制服などを入れる・置くためのもので、それはシンイチがいつも使っている男子更衣室と全く何も変わっていない。
「じゃあ、まずはその棚に置いてある水着に着替えて」
アスリンが指差したその棚の二か所に置かれていたのは、ハイレグの競泳用の水着だった。
「こ、これって・・・」
シンプルな紺色無地でUバックの化繊の水着は、水泳の授業で女子生徒がいつも着ているスクール水着ではなく、それをハイレグタイプにした水泳部のものだった。
「最初はビキニの水着にしようかと思ったんだけど、それじゃ学校のプールには違うんじゃないかとなって、じゃあ普通のスクール水着にしようかと思ったんだけど、考えてみればシンイチはハイレグも大好きだったよね」
前にサトミからブレザームーンのコスプレをさせられた事があって、その衣装は基本はハイレグレオタードでその上にブレザーとミニスカートをくっつけるというもので、勿論シンイチはしっかりとペニスをフル勃起させて下腹部にテントを張ってしまい、それがサトミの一番のお気に入りで、シンイチはいろんなコスプレの中でそれが一番気に入っているとサトミの妄言から勝手にそう思われてしまっていた。
「どう?わざわざ水泳部の競泳用水着を準備してあげたのよ」
「あ、ありがとうございます、アスリン様・・・」
「という訳で、それに着替えたらプールサイドに集合よ」
「わ、わかりました・・・」
シンイチは答えてサヤの方を見た。さっきは教室で一緒に着替えたが、それはブルマーを穿いてからスカートを脱ぐといった、女子ならではの同性相手にさえも神経質な着替え方だった。だが、今回はスカートは無い。どうするサヤ?
「・・・さっきも言ったけど、私はあなたを女のコと思ってるから・・・ただ、相手の身体をじろじろ見るのは失礼だという事さえ留意しておいてね」
「は、はい」
サヤはそう言って棚の方だけ向いて着替え始めた。シンイチもサヤに背を向けがちにして着替え始める。サヤに裸を見られたくない・見せてはいけない、そんな気持ちだったのだが、アスリンはしっかりシンイチの方に回り込んでハンディカムを回す。
「ア、アスリン様・・・」
「何よ、今更恥ずかしがる事ないでしょうが。あんたは女装で興奮するヘンタイだって事はちゃんと理解してんのよ」
以前はシンイチを女装趣味だという間違った認識をしていたが―――勿論それは表向きの態度を取って理解していたと言っていただけだった―――今は事実として哀れな女装美少年を苛める目的でそんなセリフを吐くアスリン。
「ほら、隠さないの。女装趣味の変態男子中学生の競泳水着への生着替えシーンを撮らせなさい。後でサトミも見るんだから」
今もサトミは次のステージの為に何かを持って校舎内を移動しているところだった。
それはともかく、またいつもと同じ、いやいつもよりはもしかしたら辛辣で屈辱的な言葉で侮辱されながらも、シンイチはアスリンの言葉に従うしかなかった。奇しくもサヤと同じ順番で上穿き、靴下、体操シャツ、ブルマー、ブラ、パンティと脱いで華奢な身体の全裸をアスリンのハンディカムのレンズの前に晒したシンイチは、ペニスを少しでも早く隠したくて競泳水着に脚を通した。
その競泳水着のサイズはサヤ、シンイチともジャストフィットであったが、やはりシンイチの場合はアナルバイブの存在を隠す事は不可能で、お尻に突き出た部分は山頂が真っ平らな富士山のように盛り上がっていた。
着替え終わった二人は女子更衣室を出てプールサイドに移動した。
「じゃあ、二人ともプールに入って向こうまで泳いで」
「えっ・・・」
シンイチは絶句した。
「何よ、言う事がきけないってーの?」
「ち、違います・・・わ、私、泳げないんです・・・」
「ウッソー!?あんた中二にもなって泳げないの?」
アスリンはまたシンイチの弱点を見つけたと思って心底嬉しそうな顔で侮蔑の眼差しを向ける。
「だ、だって、人は水に浮くようにはできてないんだし、仕方ない―」
「でも、水が怖いとか、お風呂も入れない訳じゃないんでしょ?」
「それはそうですけど・・・」
「と言う事は、つまり、ちゃんと足がついて首から上が水の上に十分出ていれば怖くは無いんじゃなくて?」
サヤの言った事は確かに当たっていた。
「そうかもしれません・・・」
「だったら大丈夫よ。このプールはスタート地点は深いけど、奥に行くほど浅くなっているの。だから、最初は足がつかないからプールの端に捉まって進んで、足がつくようになったらちゃんとコースの中を歩けばいいのよ。ここはこんな妥協案でいくしかないんじゃないかしら?」
「そうね、そうしましょう。シンイチ、いいわね?」
「あ、あの、バイブは・・・」
「安心なさい。それはちゃんと防水仕様だから、濡れたって故障して動かなくなるなんて事はないから。てゆーか、アナルバイブの故障を心配するなんて、どうやらだいぶそれを気に入ったみたいね。じっくり考えて選んだ甲斐があったってもんよ。嬉しいわ」
「・・・あ・・・ありがとう・・・ございます・・・」
シンイチの本心は別にバイブが壊れたって構いはしなかった。どちらかと言うと、壊れてアヌスの中を掻き回すのが止まって欲しかった。そうなるのであれば、壊れないように水の中だけでもバイブを抜く事が許されるかもしれなかった。それを期待しての問い掛けだったのだが、アスリンの言葉は惨酷な物だった。
しかしそれに不満を言うとアスリンが不機嫌になるし、逆らった事でどんな酷い仕打ちが待っているかわからないし、それが怖くて自分の心を偽って感謝の言葉を口にしただけだった。
「じゃあ、二人とも水の中に入って」
アスリンの指示に従って、二人ともコース脇のタラップからゆっくりプールの水―――と言ってもちゃんと温水になっているが―――の中に入り、サヤはコースの真ん中を平泳ぎで泳ぎ始めた。シンイチはサヤの提案どおりプールの端に捉まって進む。
「うーん・・・考えてみれば、水の中だからあまりバッチリと納められるという訳でもなかったわね・・・まいっか」
水中カメラ―――それを用意する資金は十分ある―――でもあればシンイチが水の中を進む様子もしっかり捉えられたであろうが、今更言っても仕方がない。後は、水に濡れた姿をじっくり撮影すればいい。
とかアスリンがぶつくさ言ってる間にも、全長50mのコースの真ん中程まできて、足が付いて首から上が出るようになったのがわかったシンイチはようやくプールの端から離れた。
「猪狩くん、大丈夫?」
途中で待ってくれていたサヤが声を掛けると、ゆっくりとだがしっかり頷いたシンイチはそのままサヤの元に歩み寄った。
「見よう見まねでいいから、一緒に進みましょう」
「あ、はい、ありがとうございます」
今までの授業では水の中には入れなかったが、畳水練で一応泳ぎ方は知っている。シンイチは歩きながらも平泳ぎのように両手両腕を動かして水の中を進んでいく。
「・・・あの・・・井吹先生・・・」
「何?」
「最初から・・・ずっと僕を助けてくれて・・・ありがとうございました・・・」
シンイチをちゃんと女のコとして見てくれて気持ち悪がったりするような事はなかった事、女子の着替え方を教えてくれた事、アナルバイブの挿入を手伝ってくれた事、グラウンドでアナルバイブが動き出して動けなくなった時に励まして支えてくれた事、そして今、プールの水に入るのが怖かったのを何とか入れるようにしてくれた事・・・どんなに感謝しても感謝しきれないほどだった。
“猪狩くん・・・本当に素直で心根の美しいコなのね・・・”
女装趣味に堕とされてしまったのはともかく、自分の望まない仕打ちを健気に受け入れるその姿は、その本当の姿は男のコであるというのに、可愛らしさまで漂わせている。
もし自分が男ギライではなく、せめてショタコンだったら、きっとシンイチを巡ってサトミと恋の鞘当てをしただろう。
しかし、今夜のミッションはまだまだ残っている。それはシンイチにとって今よりももっと屈辱的なものだろうと言う事をサヤは知っている。
複雑な想いが心の中で渦巻いている中で、サヤはとにかくシンイチのためを思って言葉を綴った。
「んーと・・・その、そんなに気にしなくてもいいのよ。私も一応、猪狩くんのサポートをするように、って赤城先輩から言われてるし」
シンイチはまだイツコとサヤの爛れた関係に気付いていない。前に文化祭のシンデレラの劇の練習と称してアスリン、サトミ、イツコらに酷い事をされた事があったが、その時のサヤの異常な仕草も当のシンイチには余裕が無くて認識さえしていなかった。
サヤのサポートのおかげもあって、何とかシンイチは50mプールのゴール地点付近―――水の深さはシンイチの胸元までになっていた―――まで来たが、その時また不意にアナルバイブが蠢きだした。
「んくぅ・・・」
声を上げて顔をしかめたシンイチを見て、すぐに事に気付いたサヤはシンイチの傍に行った。
「猪狩くん、しっかり。あと少しだから」
内股気味に脚を踏ん張って何とか堪えているその姿は、プールの中で尿意を催して必死で耐えている女子生徒にしか見えなくて、サヤは一瞬そんなシンイチに可愛らしさを感じたが、一瞬でそんな感情を消してシンイチの手を取った。
「頑張って。また私がリードしてあげるから」
サヤはさっきのグラウンドと同様にしてシンイチをゆっくりと歩いて進ませる。
「サヤ先生、さっきも言ったけど、あまり勝手な事してほしくないんですけど・・・」
「ここはプールの中よ。もし猪狩くんが水の中に倒れ込んでしまったら大変な事になるわ。私は赤城先輩から猪狩くんのサポートをするように言われているけど、それ以前に生徒が危険な目に遭いそうなのを見過ごす訳にはいかないのよ」
アスリンはさっきの講堂の時と同じく少々不満な口調になったが、サヤは教師という立場からそれを頑として撥ね付けた。
そして、ゴールまで何とか辿り着いたシンイチはそのままサヤに手を引かれながらコース脇のタラップからプールサイドに上がった。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
アナルバイブでお尻の中を掻き回される不快感に耐えようとするシンイチの息は少々荒くなっている。しかし、シンイチいじめを愉しみにしているアスリンにとってはシンイチのそんな様子を見るのも楽しくて仕方が無かった。
「じゃあ、水から出たからこれで大丈夫ですよね?サヤ先生。さあ、シンイチ、そのまま一人でプールサイドを歩いてスタート側まで戻るのよ」
“ちょっと・・・このコは・・・”
さっき水の中だから危険かもしれないと言った自分の言を逆手に取ってアスリンがまた無茶な事を言い出した事に、サヤは驚くと言うか呆れ返ると言うか、もしかしたら不快感に近いかもしれないがそんな感情を持った。傍から見るとと理不尽な要求と言うのも、パートナーがお互いに信頼し合っているからこそ成り立つもの―――イツコとサヤがそうであるように―――なのだが、アスリンとシンイチの間にはそんな信頼感など一切なく、シンイチが一方的にアスリンに従わされているだけだった。
「は・・・はぃ・・・アスリン様・・・」
だが、アスリンに決して逆らえないシンイチはそう答えて指示に従うしかない。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「猪狩くん、しっかり。頑張って歩いて。早くしないと、朝が来るかもしれないわ」
まるで亀のようなスピードで歩みを続けるシンイチをその隣にいるサヤは言葉を掛けて叱咤激励するしかない。ここでシンイチに手を差し伸べたら、さっきの自分の言葉と行動とに食い違いが出る事になってしまう。教師のプライドもあり、アスリンのいる前では尚更だった。
そんな二人の様子をアスリンは後ろから前からハンディカムで撮影していく。アスリンやサトミにとっては撮影対象はシンイチ一人でもよかったのだが、ここにサヤの姿も入れると言うのはイツコの条件だった。イツコもサヤのこういった野外コスプレシーンを撮ってみたかった訳である。
「おーい、いつまでやってんのかなー?結構時間押してるんだけどー?」
シンイチにとってはまさに救世主というか地獄の使者と言うか、プールの入り口にやってきたサトミから声が掛かった。
「だって、シンイチがグズなんだもん、仕方無いじゃーん!」
「仕方無いってーのは理由にならないでしょ。そこはアスリンが急がせなきゃダメじゃないの」
サトミが三人の傍に歩み寄って来たので、今だと言わんばかりのタイミングでサヤがシンイチの苦境を告げる。
「でも、さっきからアナルバイブのスイッチが入っていて、猪狩くんは歩くのも一苦労しているんです」
「えっ?バイブの起動はプログラムでしょ?何で今の状況で・・・ちょっとアスリン?あんた勝手な事してるんじゃないでしょうね?」
「だって・・・いいじゃん、シンイチは私のペットなんだし、多少予定を外れて好きにやっても・・・」
「何言ってんの?ちゃんと四人で決めた今夜のミッションなんだから、一人勝手な事をされたら予定が狂ってマズイ事態にもなりかねないでしょーが!」
ミッションが予定より早めに進むのは問題無いが、予定より遅れるのは問題がある。日本は一年中夏であっても一日中夜ではないのだ。
「わかったわよ・・・」
アスリンはシンイチのアナルバイブのリモコンスイッチをオフにした。
「・・・くはっ・・・はぁー・・・はぁー・・・」
お尻の中を掻き回される不快感から解放されて、思わずほっとしたシンイチは内股のまましゃがみ込んでM字座りしてしまった。
「ほらっ、シンイチ!休んでいるヒマなんて無いんだからね。時間押してるしさっさと歩きなさい!」
““その時間が押した理由は貴女でしょーに””
サトミとサヤは心の中で全く同じ事を思った。
「は・・・はい・・・アスリン様・・・」
ほんの一瞬の小休止ではあったが、それでもシンイチはよろけそうな足取りで立って歩き始めた。
二人が再び女子更衣室に戻ると、サトミは何かを抱えて出て行こうとしていた。それはシンイチの分の体操シャツとブルマーや下着に靴下だった。
「サ、サトミさん・・・何を・・・」
それを持って行かれたら、濡れた水着のまま教室まで戻らされる事になるかもしれないと思ってシンイチは思わず声を掛けたのだが。
「大丈夫、安心して。ちゃんと代わりの衣装は準備しているから。それもチョーとびっきりカワイイの。待ってるわよん」
どこで待つとかは何も言わずサトミは言い残して出て行った。
果たして、サトミが代わりに置いていった衣装とは・・・
「っ!?こ、これってっ・・・」
シンイチは思わず絶句した。それは、カワイイと言うよりは―――サトミにとってはシンイチが着るとなんでもカワイイになるのだろうが―――どちらかというと卑猥過ぎるものだった。
それは、所謂セクシーランジェリーで、ハイレグのスキャンティと前開きのベビードールだった。
「前にランジェリーパーティの時にもそんな変態チックなの着たじゃん。今更恥ずかしがる必要ないでしょ」
そう、今シンイチの目の前にあるセクシーランジェリーはその時のものとほぼ同じだった。肩紐や全ての縁がレースのリボンになっているそのベビードールは腰までの丈で、胸元をレースのリボンで結んで閉じるのだが、そこから下は逆V字に開いていておへそまで丸見えになっている。丸見えになっているのはそれだけでなく、本来は乳房を覆う部分も完全にオープンされていて、レースのリボンで縁どられていた。ハイレグのスキャンティもお揃いのようで、フロントからバックの部分とそれをサイドで紐で結ぶのはレースのリボンで、生地は股間のクロッチ部分に申し訳程度にしかなくフロントもバックも完全にオープン。あと一つはこれまた一番上にレースのリボンが飾られたオーバーニーのストッキング。どれも生地はスケスケの無地のレースになっていたので、肌を隠せる部分など何も無いに等しかった。
“こ・・・こんなのを着て、校内を歩けって言うの!?”
あのランジェリーパーティの時は騙されていた訳だし、それも室内だったのだ。いくらなんでもあの時と同じ恥ずかし過ぎる姿になって校内を歩くと言うのはあまりにも恥ずかし過ぎた。
しかし、アスリンは容赦しなかった。
「ほらっ、早くそれに着替えなさいよ!時間が押しているし、サトミが待っているんだから」
だが、サトミが待っている、というその言葉でシンイチは決心がついた。
“サトミさんが待っているのなら・・・サトミさんが見たいのなら・・・”
シンイチはいそいそと濡れた競泳水着を脱いでセクシーランジェリーに着替えた。
「わは、良く似合ってるじゃない。流石サトミ、サイズピッタリのを用意してきたわね」
“・・・た、確かに・・・似合ってるわ・・・猪狩くんったら、本当に女のコみたい・・・なんだけど・・・”
サヤもシンイチのそのセクシーランジェリー姿を見て確かに可愛らしさを一瞬は感じたのだが、しかしやっぱりシンイチは男のコで、しかも女装趣味に堕とされているので、先っちょしかムケていない可愛らしいペニスではあったがしっかりフル勃起していたのが玉に傷―――まあ、クロッチ部分でタマの部分だけは覆われているけれども―――と言った感じだった。
いずれにしても、あの時着たのも、これも、どちらも男性をその気にさせるために女性が身に着ける挑発的なランジェリーに他ならないのに、それを男のコのシンイチが身に着けているというのがどうにも倒錯感が大きくて、男ギライという感覚が惑わされてしまったのか、シンイチの可愛らしいペニスがフル勃起している様を見ても、可愛らしいとサヤは思ってしまった。
「あ・・・」
サヤに凝視されているのに気付いたシンイチは思わず俯いてペニスを両手で隠してしまったが。
「何やってんの、シンイチ!手をどけなさい!女装して興奮してチンポをフルボッキさせるなんて、変態のあんたには当たり前の事でしょーが!変態は変態らしく、堂々とそのチンポを晒しなさいよ!」
アスリンの容赦ない罵声交じりの命令がシンイチに浴びせられた。
「言う事を聞けないんだったら、それでもいいんだけどね。あんたのその恥ずかしい姿が全世界に広がるだけだし」
もしそんな事になったら、シンイチはもう・・・
「わ、わかりました・・・それだけはやめてください・・・アスリン様・・・」
僅かな人の前での今この時分だけの恥か、無数の人々の前での死んでも消えない恥か、どっちかを取るなら前者しか無いに決まっている。
シンイチはペニスを隠す両手を外して後ろ手に組んだ。そして俯いた顔を上げて不安そうな面持ちでサヤの顔色を窺った。しかしてそのサヤの顔は、微かに微笑んでいた。
そして、今までサヤはシンイチと同じコスプレをして一緒に行動してきたのだが、今はまだ競泳水着を―――バスタオルで拭いて水分は十分に取っていたが―――着たままだった。
“こんなに可愛いコなのに・・・今までよりももっと恥ずかしい事をさせられてしまうなんて・・・”
愛するイツコからの命令ならばどんな恥ずかしい事も歓びに変えて受け入れてきたサヤである。嫌々ながら恥ずかしい命令に従わざるを得ないシンイチのその姿を見て、その心を慮って、サヤは同情したのかもしくはそれ以上の親愛の心を抱いたのか、自分でも予定外の行動に出た。
「・・・水着、濡れてるかもしれないからね・・・」
何と、サヤは水着を脱いで全裸になってしまった。呆気にとられるアスリンを尻目に、呆然とするシンイチにそのまま歩み寄ったサヤは、そっとその身体を抱きしめた。下腹部に感じるシンイチのペニスも、イツコがいつもつけていたペニスバンドと同じだと思えば何も気にならなかった。
「・・・井、井吹先生・・・」
「いい、猪狩くん。ここから先はもう貴方一人よ。ずっと一人で歩きなさい。誰の助けも無く」
先ほどの柔和な表情から一転して、サヤは普段の教師としての落ち着きを漂わせた顔になった。
「・・・そんな・・・僕は・・・ムリです・・・・・・・・・井吹先生の助けがあって、やっとここまで・・・・・・・・・」
サヤのある意味突き放すような言葉にシンイチは思わず涙声になった。
「今、泣いたってどうにもならないわ」
そう言ったサヤはまた優しい顔になった。
「恥ずかしいのはわかるわ。それ以上に不安なのも。でも、どんな思いになっても、それは貴方が自分一人で乗り越えなければいけない事だわ。それは価値のある事なのよ、猪狩くん。貴方自身の事なのよ。怖がらずに、自分にできる事を考え、実行しなさい」
「そんな・・・・・・・・・井吹先生は、自分がもうこんなカッコをしなくていいから、そんな事言えるんでしょう?僕の気持ちなんて・・・・・・・・・他の人は誰も、何もわかる筈ないのにっ!」
「他人だからどうだと言うの?」
サヤはシンイチの身体を抱きしめる両手を解き、その両手でそっとシンイチの頬を包んだ。
「今の思いが全てではないわ。これからも色んな事を経験し、そのたびに新たな自分に気付く。私はその繰り返しだった。愉しい事もあった。嫌な事もあった。死にたいと思った事も・・・ヌカ喜びと自己嫌悪を重ねるだけ。でも、その度に前に進めた気がするの」
そのサヤの真摯な想いからの励ましの心は確りとシンイチの心に届き、シンイチの不安な気持ちや羞恥心を和らげていった。
「わかった?」
「はい・・・井吹先生・・・」
「・・・できれば、名前で呼んでくれる?」
「?・・・えと・・・サヤ・・・さん?」
「それでいいわ」
そう言ってサヤはいきなりシンイチにキスをした。アスリンは未だに呆気にとられた表情のまま。
「大人のキスよ。帰って来たら続きをしましょう」
「・・・はい・・・」
「いってらっしゃい」
そこまでで、サヤはシンイチから離れるとバスタオルで身体を覆った。アスリンは未だ呆然自失のアホ顔を晒したまま。
「アスリン、いつまでボケっとしているのかしら?」
サヤに言われてはっと気づいたアスリンは、慌てて目を剥いてサヤに言い寄った。
「ちょっと、サヤ先生、今シンイチにキスとかしてなかったかしら?シンイチは私のペットなんですから、そんな勝手な事をされたら困るんですけど」
「時間がないんでしょ?桂木先生も準備して待っているんだから、早くお行きなさいな」
「あ、そうだった。じゃあ、シンイチ、このまま渡り廊下を通って校舎に戻るのよ」
サヤに急かされてアスリンはシンイチを追い立てるように次のミッションの舞台へと移動を開始した。M資金(笑)を管理しているサトミに何かヘソを曲げられたら今後のお楽しみに何かいろいろと不都合が出るかもしれないのだ。
“・・・頑張って、シンイチくん”
サヤは心の中で呟いて二人を見送った。
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