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第4話 そのヨン
「どりーむ・ぷろぐらむ・しすてむ?」
「・・・アメリカに留学していたくせに発音は全然ね」
「うっさいわね!」
「それはいいから。で、そのDREAM PROGRAM SYSTEMってどんな機械なんですか?」
「一言で言えば、夢の中で自分のやりたい事を自由に体験できる装置、ってトコね」
もっと単純に言えば、超リアルな夢を見られる装置、である。
大学で心理学を専攻していたイツコは大学を卒業してからも独自にコツコツと一人で理論研究・プログラム開発をしていた。教師と言う職業の片手間に様々なプログラム(と言っても、主にはアダルトゲーム)開発で手っ取り早く資金を調達し、機械(頭にセットするインターフェースや装置本体)については大学の関係先にこれまた伝手があったのでそこに開発を―――勿論、その機械の設計そのものもイツコの作成したものが元になっていた―――依頼してようやく完成したものだ。
それはさておき、何故その装置がDREAM PROGRAM SYSTEMと名付けられたのか?
人間の夢とは、コンピューターのデータ整理に似ているという論説がある。
容量に限りがあるメモリーにおいて、データをどのように整理するか・・・よく使うものはすぐに取り出せる領域に置き、ほとんど滅多に使わないものは奥底の領域に置く。場合によっては圧縮し、一時記録部分の領域を大きく開けておく。
そういったデータ整理を効率よく行うためにメモリー内で空いてる領域を利用して次々と連続でランダムにデータの出し入れが行われる事象は、人間が見る夢に於いては支離滅裂・辻褄が合わない展開があるのと非常に似ている。
ただし、夢がコンピューターのデータ整理と同じものであれば、当然出て来るシーンはメモリーに記憶されたデータと同様に、一度見たり聞いたりして体験した事の記憶でしかない。
だが、このDPSは視覚・聴覚・嗅覚を通しての催眠誘導により被験者の深層心理にある希望―――欲望とも言う―――を掘り起し、今までに経験した事のない事象を夢として見る事ができるものなのだ・・・いや、できるものらしい。しかも、それをちゃんとデータとして記憶できるため、後でまた繰り返し見る事もできる。
という事をイツコは説明したのだが、アスリンとサトミが本当に理解できたかどうかははっきり言ってかなり怪しいものだった。
「それって、本当に大丈夫なの?あっちの世界に行って戻ってこれなくなったりしない?」
「大丈夫、ちゃんとサヤで確認済よ」
勿論、アスリンの心配している事故など起こる筈が無いとイツコは自信を持っていた。なのに何故その確認の為にサヤに被験者―――勿論、サヤにそんな事故の可能性の事などこれっぽっちも説明してはいなかった―――になって貰ったかと言えば、ただ単にサヤの心の奥底にある欲望がどんなものか見て見たかったのがその理由だ。
“普段は物静かで御淑やかでまるでどこぞのおぜうさまみたいな雰囲気のサヤだからこそ、その心の奥底にある欲望はきっとドロドロとしたものの筈。楽しみだわ・・・”
もしそこに何も映し出されなかったら、サヤは白痴あるいは神の領域にある存在かもしれない、とイツコは錯乱したかもしれないが、そんな事は無かった。
最初に映し出されたのは何の変哲も無い日常。サヤが黒板の前で教鞭を取っているのだが、放課後になると教え子たちに囲まれて趣味の手芸―――サヤは手芸部の顧問―――を愉しむ様子だった。
しかし、手芸部員の中に一人だけ男子生徒がいて、他のどの女子よりも上手なのでサヤは日ごろから目に掛けていた。その男子生徒との触れ合いを続けるうちにサヤの思いは生徒に対すると言うよりはむしろ年下の異性に対する恋愛感情に近いものになっていく。
そしてとある夏の日―――それは夏休みの一日―――日本は一年中夏だから夏休みという概念はもう無いのだが―――に海水浴に来たサヤは、ビーチでその男子生徒と偶然出会ってしまい、暑い夏の日差しに目眩を感じたのかそれとも心を萌え・・・もとい、燃えさせられたのか、その夜、自分の宿泊しているバンガローに男子生徒を招き、めくるめく熱い一夜を共にしてしまう。
かつて、今のアスリンと同じ年頃に同級生の不良男子たちに輪姦されるという、心に深い傷を付けられて以来、男ギライとなっていたサヤの奥底に秘められていた、年下の異性との甘いひとときという欲望を知って、イツコは何を感じただろうか・・・。
異性との素敵な体験を夢見る御嬢様と考えるならばそれもサヤらしいと思ったのか、それとも男ギライの筈なのにどうしてそんな欲望を心の奥底に秘めるようになったのか?それはいつ・いったい・どんなきっかけで変化していったのか?と心理学的好奇心が沸き起こったのか?
しかし、そのサヤの夢見たシーンをもう一度よく見てみれば、手芸部のその男子生徒は何となくシンイチに似ているようだった。
“まさか、シンイチくんのエッチな調教に付き合わせたせいで、ショタ魂が目覚めたのかしら?・・・これは、流石にアスリンには言えないわね・・・”
サトミはシンイチをアスリンに譲ってくれた―――もっとも、サトミは女装ショタ趣味としてシンイチを性欲の対象としていただけだが―――と言っても、それをシンイチは受け入れていたのでそこから考えると相思相愛でもあったが―――という事でアスリンはシンイチをペットや奴隷にできただけで、サトミがもしショタ魂に溺れて拒否すれば今のアスリンの愉しみは有りえなかった。
しかし、サヤはサトミと違ってどうやらシンイチを純粋に清らかな―――肉体関係を心の奥底で期待するのは人間としては当然の事で、それを以って不純とか汚れているという事にはならない―――恋愛感情に等しい想いを抱いている。サトミに裏切られてアスリンに酷い扱いを受けているシンイチが、サヤの清らかな想いを受け入れるという可能性は十分考えられた。
それはともかくとして、イツコの誘いを受けてサトミとアスリンがこのDPSを使った結果、シンイチは女装ショタ趣味というサトミの異常性癖を完全に受け入れてユイコと言う名の女装小学生となってくれてサトミはシンイチを思うままに可愛がる、アスリンは今の自分の欲望のままにシンイチをアナルマゾほもーん奴隷に調教するためにまずは変態女装中学生にして思うままにいじめる、という心の奥底の欲望をさらけ出し、それをリアルな体験として愉しんだ。
勿論、イツコ自身もそのDPSを使って男性を必ずほもーんに変えてしまうという腐女子が歓喜の薬を開発してそれを自分の教え子四人に投与してその反応・痴態を鑑賞して愉しむという自分でも気づいていなかった心の奥底の欲望―――サヤとの関係はそれとは全く異なり、自分がタチで相手がネコであるだけでなく自分がサドで相手がマゾでもある、かなりディープなレズビアンであると自分と相手双方が理解していたのだが―――を知って、それに驚きつつも素直に受け入れていた。
(case4・・・猪狩シンイチの場合)
「ごめんなさい、ちょっと急用を思い出したので先に帰らせて貰うわね」
シンイチが生徒会室にやってくるとそれを待っていたかのようにレイナは席を立った。
「「お疲れ様でした」」
ヒロキとシゲキが挨拶したが、それに応える事も忘れてレイナはそそくさと鞄を持って出て行った。
「会長、ノートとシャーペン置き忘れちゃってますけど・・・」
「ああ、それはそのままでいいよ。明日またここで使うんだし」
モモコが気付いたが、トオルは何も問題無いとわかっていてそう返した。
シンイチがトオルに誘われて生徒会の仕事を手伝い始めてから、何故か生徒会長のレイナは席を外す事が多くなっていた。
「トオル先輩・・・僕って、綾見先輩に嫌われているのかな?」
「何だ、そんな事を気にしていたのかい?」
河原の堤防の土手の芝生に寝転んでいたシンイチとカヲル。シンイチは、レイナが自分と一緒の部屋にいる事を拒否しているような気がする、と言う事でトオルに相談したのだ。
「でも、何か気になって・・・」
「気にする事なんか何も無いよ。僕達二人が進級したら、もう生徒会に関わりは無くなる。僕は次の生徒会を君が中心になって纏めていって欲しいと思ってるんだ。だから、彼女の事は気にせず、生徒会の仕事をしっかり覚えて貰いたい」
しっかりとシンイチの方に顔を向けてトオルは微笑みながら諭すように言った。
「・・・うん、わかった」
シンイチもトオルの方に顔を向けて、信じる様に頷いた。
「彼女はね・・・人見知りするタイプなんだよ」
トオルはまた空を見上げてレイナの事を少し話し始めた。
「付き合いは長いんですか?・・・あ、べ、別に二人が彼氏彼女と言う事情だとは・・・」
「フフフ、わかってるよ。ただの幼馴染というだけで、どちらも特別な感情なんて持って無いさ」
「あ、そう・・・ですか・・・あの、よかったら、昔二人はどうだったのかとか、話して貰ってもいいですか?」
中等部のベストカップルとも噂される二人が幼馴染と聞いて、思わずシンイチは興味が湧いてそんな質問をしてしまった。
「あまり記憶は定かではないけど、僕たちは同じ病院で生まれたらしい。その頃の二人は二卵性の双子なんて勘違いされた事もあったそうだ」
「何故ですか?」
「顔立ちが似てて、無口なところもそっくりだったかららしい。でも、その後幼稚園・小学校と成長するに連れて僕は同世代の人と同じようにそれなりに話すようになったけど、レイナは相変わらず必要がある時しか話さなかったなぁ・・・」
それはそのように躾けられていたせいかもしれなかった。
「それで、どうやって生徒会に入ったんですか?トオル先輩は面倒見がいいから誰でも慕うだろうけど、綾見先輩は無口なら・・・」
「僕は周りのクラスメートに推されて立候補した。でも、副会長として、ね。というのは、僕はテストの成績でいつも学年で2位だったからだよ。それで、いつも学年トップの優秀な人を生徒会長の候補として推薦したんだ」
「それが綾見先輩?」
「そう。幼馴染としては、彼女にもう少し社交的になってほしいと思ってね、強引に説得したんだ。学年のテスト1番2番でこの学校の生徒会を支配しよう・・・とか言ってね」
「・・・それって・・・冗談ですよね?」
「勿論そのとおりさ。でも、その冗談で初めてだけどレイナは僕に笑みを見せてくれた。それで、彼女も生徒会長を引き受ける気になってくれた。後はもう簡単さ。何せ、学年トップと2位が立候補したんだ。他に立候補者は現れなくて二人とも信任されて生徒会長と副会長の任に就いたって訳。ちなみに書記と会計は選挙があってヒロキ君とモモコ君になったんだ」
「あれ?金子くんは?」
「ああ、彼はレイナ目当てで生徒会のお手伝いをしに来てくれてるだけだよ」
「あ、そうなんだ・・・」
「シンイチくんは何故生徒会のお手伝いをしてくれるんだい?」
「えっと、それは・・・何となくと言うか、流れのままにと言うか・・・」
二人の最初の出会いはブルマー問題でシンイチがクラスのブルマー廃止派の残念な女子に絡まれていた時だった。そこでトオルに助けて貰ったシンイチは彼の「生徒会に遊びに来てほしい」という誘い―――別にトオルがシンイチ個人的に興味を持った訳ではなく、生徒会を生徒会役員だけのものではなくもっと一般生徒に開かれた存在にしたかった―――それによってもっとレイナが社交的になってほしいという希望があったのが事の真相で、声を掛けるのは誰でもよく、それがたまたまシンイチだった訳で、要するに偶然に過ぎなかった―――に乗って生徒会に顔を出して、トオルに本当にちょっとした事を頼まれて、それでトオルに礼を言われたのが嬉しくて、もっとお手伝いをしてあげたいと思ったからだ。
簡単に言えば、トオルの人となりが良かったからだった。
「えーと、上手く言えないけど・・・その、誰かの為に成れたら、人の役に立てたら、それはいい事の筈だし、いい事をするのは僕も好きだし、それで感謝とかされたら嬉しいし・・・」
そう言ってトオルの方を見ると、トオルも自分の方を見ていたようだったので、シンイチは何となく恥ずかしくなって顔を空の方に戻した。
「そんな事かもしれないと思ってたよ。とてもいい事だよ」
「そうですか?」
「うん」
トオルに褒められたのが嬉しくて、シンイチは何故か子供のように頬をほんのりと赤く染めた。
“何となく、恥ずかしいけど・・・でも、何となく、嬉しい・・・”
「・・・君と友達になれたのは本当にとても良かったと思う」
「あ・・・そう言われると、僕も嬉しいです」
「できれば、もっと仲良くなりたいな」
「えっ?」
「別に変な意味じゃないよ。生徒会役員として、とても重要な事だからだよ」
「・・・えっと、それはどうしてですか?」
「僕もレイナも4月になったら高等部に進むから、生徒会長と副会長がいなくなるんだよ」
「まあ、確かに。でも、その前に選挙があるからそれで新しい人が選ばれるし、それに渡辺くんと森本さんがいるし・・・」
生徒会役員だったのだから三年になればヒロキとモモコがそのまま生徒会長と副会長を務めるのではないかとシンイチは思ったのだが。
「確かにその二人は経験者だし引き続き生徒会役員をやって貰いたいと思ってる。でも、それは今の書記や会計という役目でだよ」
「何故ですか?」
「新しい仕事をするより、一年間やってきた仕事の方がスムーズに事が進むだろう?だからその仕事はその二人に引き続き任せたいんだよ」
では、トオルはシンイチに何を望んでいるのだろうか?
「だから、生徒会長と副会長は新しい人にやって貰うべき・・・それも、生徒会の仕事を少しでもいいから知ってる二年生にね」
シゲキはシンイチよりも生徒会のお手伝いは長いが、彼は一年生だからトオルの希望には合致しない。
「・・・まさか・・・」
「そう、そのまさかだよ。はっきり言おう。僕は君に次の生徒会長をやってほしいと思ってるんだ」
「で、でも、どうして僕に・・・」
「君自身がさっき言ってたじゃないか、人の役に立てるのは嬉しいってね」
「そうですが・・・」
「・・・文化祭の時、君はクラスの演劇でシンデレラを演じていたね。誰がそんな配役を言い出したかは知らないけど、君は一生懸命シンデレラを演じていた。女装した男のコじゃなくてちゃんと女のコに見えたよ。でも、最初は嫌だったんじゃないのかい?」
「うん、まあ、そうだけど・・・」
「だけど、しっかりシンデレラ役を務め上げたのはクラスのみんなの為だろう?」
「・・・確かにそうです・・・」
サトミに唆されて自分の女顔のコンプレックスを払拭するのを目的とした訳でもあったが、それは今はもうどうでもいい理由だった。
「この前のブルマー廃止問題も反対派の先頭に立っていたね。本来ならブルマーを着用する当事者の女子が音頭を取る筈だろうけど、君が論陣の筆頭にいたのはみんなが君に期待したからじゃないのかい?」
「・・・うーん・・・それは自分ではよくわからないけど、もしかしたらそうかもしれない・・・」
男子は勿論ブルマー廃止反対派で、そのリーダーとして成績優秀なシンジを担ぎ上げ出した訳だし、女子は勿論ブルマー廃止派の女子とやり合っていたアスリンがリーダーだったが、アスリンが全体のリーダーを自分に任せたのはとある目論見があった事はその後シンイチも知る事となった。まあ、その目論見は絶対に他人に言えない事だったが、それはともかく。
「女子の意見は運動に適しているというのが主だったけど、男子としては正直なところ、どうだったんだい?」
「・・・うーん・・・まあ、僕はやっぱり性別の違いと言う事しか考えつかなかったけど・・・男子の中には・・・ちょっと・・・」
「ブルマーの方がより健康的、とか?」
「えー・・・健康的てゆーか・・・」
「エロスを感じるから?」
「い、いや、別に僕は・・・」
コウジとケンタを始め、当初からブルマー廃止反対に積極的だった一派は実はトオルの指摘した通りだった。その他がシンイチと同様に性差・性別の違いの観点から考えていた者、残る大半は本来無関心だったがそれがブルマー廃止反対側に付いたのは、偏にブルマー廃止を目論む女子達の自滅―――それはあの時の生徒総会でのトオルと家庭科の教師との問答・対決でほぼ判明した―――によるものだったが、それはさておき。
「フフッ、別にそれはおかしい事ではないよ。悪い事でもない。健康な男子ならば、女子が太腿を露わにしている姿にエロスを感じるのは人間として当然の事さ」
「えっ?」
「生徒会役員の立場としてはそんな事は言えないけど、一人の男子生徒としては、それが僕の本音だったりして・・・」
「えっと・・・実は・・・僕も・・・」
「やっぱり・・・そうじゃないかと思ってたんだ」
二人はそこで笑い合った。
「フフフ・・・やっと本音を言ってくれたね」
「トオル先輩と話してたら、つい・・・人の心を掴むのが上手いですね」
「有難う。君にそう言って貰えると嬉しいよ。それに、僕も君のその奥ゆかしい心はとても魅力的だと思うよ。だから僕も君に興味を持ったのかもしれない・・・」
「えっ?」
「好きって事だよ、友達としてね」
トオルのその言葉にシンイチは嬉しいのか恥ずかしいのか、頬を赤く染めた。
「やった!いい、すごくいいじゃないの!」
「アスリン、そんなに興奮しないの」
「これが興奮せずにいられるかっての!こいつらほもーん決定よ!」
「まあ、いいけど・・・それで、どっちがどっち?」
「勿論、バカシンイチが受けに決まってるじゃん!その為に調教してんだから!」
睡眠薬を投与して強制的に眠らせたシンイチにも試しにDPSを装着させてみた結果、シンイチはトオルとの友情を深める夢を見ている事がわかった。
その導き出された映像を見て、かねてから自分が妄想していたシンイチ×トオルのほもーん化計画が具体的に動き出せると確信してアスリンは大興奮。
だが、大興奮のアスリン、アスリンほどではないがニヤついているサトミに対し、イツコは冷静沈着そのもの。それは何故かと言うと、実はその夢の映像記録はシンイチのごく表層部分のものだからだった。つまり、シンイチの深層心理の希望・欲求などではなく、ただ単に記憶の再整理に過ぎない。
なのに諸手を上げて喜んでいるアスリンを見てイツコは真実を言うのに少々気遅れしてしまっていた。
“まあ・・・言わなくてもいいかもしれないし・・・”
勿論、イツコはシンイチの深層心理まで調査していた。だが、そこに映し出されたのは一面周囲の視界が真っ黒の闇に覆われた世界だった。
“まさか・・・まさか、シンイチくんは夢を見ない!?”
今度こそイツコは混乱したが、暴走だけは思い止まる事ができた。イツコは天才とは言えまだ人間であり、シンイチを研究対象としたい欲求が理性のスイッチを強く発動させる事ができたのだった。
そして、この愛(?)の三人組の間で今後のシンイチ×トオルのほもーん化計画が綿密に立案される事になった。
「で、はじめてのあなるしゃせいをさせるのは?」
「そこはやっぱりアスリンじゃなきゃ」
アスリンはシンイチがトオルにカマを掘られて射精するシーンを妄想して激しく興奮していたのだが、サトミの声でその妄想世界から戻ってきた。
アスリンにシンイチを譲ったとは言え、その大前提条件はシンイチとアスリンが歪んだ形でもいいから絆を結ぶ事。ならば、初めての肛姦射精もアスリンによるものであるべきとサトミは強く願っていたのだ。
「・・・うーん・・・私にアヌスを貫かれてシンイチに泣きながら射精させるのもいいし、男にアヌスを(以下同文)・・・」
シンイチをいじめて愉しむ方を取るか、腐女子の欲望を優先させるか、アスリンにとっては悩ましい問題だった。
「それよりも前に、シンイチくんの心をより女性化させる事の方が重要じゃないかしら?」
「うーん・・・えーと・・・イツコ先生、心が女性化してしまったら、きっと女装しても性的興奮は・・・」
「いいえ、心が完全に女性化、とまでは言ってないわ。より心が女性化すれば、アヌスファックでも性的興奮しやすくなる筈よ。でも、身体は男のコだから、性的興奮すれば即ち―」
「チンポがフル勃起ね」
「でも、それだと女装で性的興奮しなくなっちゃうかもしれないでしょ?それはちょっと残念・・・」
「でも、条件反射を覚えてるから、そう簡単に女装フェチも無くならないと考えられるわ」
「つまり、全てはイツコ先生の秘密のドラッグに掛かってる訳ね」
心が女性化してるのに女装して性的興奮し、尚且つアヌスファックでオルガに達する・・・そんな究極のド変態少年にシンイチを作り変えるという野望・欲望をしっかりと自分の頭に刻み込み、イツコはそれを達成した際にどれほど感動できるか―――きっと、その偉業に自分で身震いするだろう―――それを脳裏に思い描き、さらにMADとしての研究意欲が大いに湧き上がっていった。
「じゃあ、取りあえずの結論として、まず第一段階はシンイチに女装させてもっと辱める、という事でいいかしら?」
どこからどうやってそんな結論が導き出されたのか全く不明だが、取りあえずサトミもイツコも異論は無かった。
「ほら、行ってきなさい、ユイコ」
アスリンに言われてユイコは車を降りた。運転手はもうサトミではなく―――もしサトミに運転手役をさせていたら、シンイチに何かあってバレた時に迷惑が掛かるという事で―――例のM資金によるお抱え運転手付の車だった。
「わかってるわね?」
それだけの台詞だったがユイコは怖れながら小さく頷いた。アスリンに命じられた事は、すぐ傍のランジェリー・ショップで買い物をしてくる事だった。それも、とびっきりいやらしいものを。
そこらのなんちゃって女子高生と区別はつかない極有触れた、プリーツのミニスカの上にブラウスとスクールベストにハイソックスという姿のユイコことシンイチは、ゆっくりとした―――慎重過ぎるとも思える―――歩みでランジェリー・ショップに向かった。
自動ドアが開いてすぐのフロアはごく普通のブラジャーやパンティにキャミソールやストッキングが置かれているが、目的地はそこから階段で降りたフロアだった。
奥にいる店員の「いらっしゃいませー」「どうぞご自由にご覧ください」と言った声など聞こえないようなあるいは聞く気がないような素振りでシンイチは階段を降りて目的地へ。
そのフロアにはアスリンが買って来いと命令したとびっきりいやらしいランジェリーが所狭しと置かれていた。本来の乳房を包み保持するという機能を完全に捨て去ったカップの無いブラジャー、恥部を目立たせるあるいは恥部に刺激を与える機能しかないパンティ、その他にベビードール―――漏れなくTバックのGストリングスが必ず付いてくる―――やテディ―――キャミソールとフレアーパンティが合体しただけの筈が露出目的(特に背中はお尻まで99.89%丸出し)のハイレグレオタード型になっている―――やボディストッキング―――要するにストッキング生地のハイレグレオタード?―――など、男性の性的興奮を促すのが目的としか思えないセクシーなランジェリーの数々。
シンイチが本当に女のコだったらそれを身に着けて誰か男性を―――例えばトオルとか?―――萌え勃たせるのだろうが、変態女装少年に堕とされた今のシンイチは、それを身に着ける事を想像するだけで既に興奮してしまっていた。
それでも、ウィッグを付けた上にここぞとばかりに以前はコンプレックスだった女顔を活用させたシンイチは素知らぬ顔をして品定めをしていた。
ミニスカの前に注目してそこが不自然に盛り上がっている―――既にミニスカの下のパンティの中でペニスは激しくフル勃起してその亀頭部を覗かせてしまっている―――と言う事に気付かなければ、誰がそこに変態女装美少年がいるなどと思うだろうか?
おそらく、ただ単に女子中高生が背伸びしてセクシー・ランジェリーを見に来ているのだろうぐらいにしか思われていないだろう。
それはともかく。
胸も恥部もオープンになったもの、ストッキングのように生地の薄いレース地なのでスケスケになってるもの、パンティに到っては前から後ろまで単なる紐にしかなっていないもの、何故かその紐に大きなビーズが通されているもの、恥部のところに何かを入れるポケットが付いてるもの・・・
様々なセクシー・ランジェリーの中からシンイチが選び出したのは白のボディ・ストッキングだった。内部から光る電飾トルソーでディスプレイされたせいか、そのボディ・ストッキングはまるで生地がないかと思うように透けていたが、腰回りにはまるでバレエのチュチュを思わすようなふんわりとしたレースのミニスカートを纏っていた。しかし、後ろを見ればTバックで前を見ればフロントは割れる様になっていた。
もしそれを今のシンイチが着たとすれば、勿論ペニスは割れたフロント部分から全部露出してしまうだろう。しかし、腰の周りのレースのミニスカートが覆ってすぐには見えないように隠してくれるだろう。だから、誰かの手や風によってミニスカートが捲り上げられるか、あるいはシンイチがその場でくるっとターンしてミニスカートがふわりと持ち上がらなければ、誰もシンイチのペニスを目にする事はできないだろう。
「お気に入りの物は見つかりましたか?」
女性店員が寄ってきた。
「あの・・・これを・・・」
シンイチはか細い声でバレエのチュチュのようなボディ・ストッキングを指差した。それは、気を許せば苦悶の声を零してその場にしゃがみ込んでしまいそうだからだ。
ブラウスの下に付けているカップの深さが殆どないブラジャーは、代わりにバストトップに高周波を発する電気パッドが入っていて絶えずシンイチの乳首を刺激していた。さらに、ミニスカートの下に穿いているパンティのバックには首振りするアナルバイブが付いていて、これまた絶えずシンイチのアヌス内を掻き回していた。
乳首に与えられる高周波は、要するに整体で腰に電気パッドを当てて神経を刺激するものと同じであって、別にシンイチは性的興奮どころか、ただ単に乳首に電気が流されて少しピリピリとしていると感じるだけであった。だが、アヌス内を凌辱しているアナルバイブの刺激ははっきり言って性感どころかむしろ不快感が大きかった。
「お買い上げ有難うございましたー」
シンイチが商品を受け取った正にその時、いきなりアナルバイブの動くスピードが大きくなった。電ブラも電動アナルバイブ付きパンティも、どちらも無線でその動作をコントロールできる代物だった。そしてそのコントローラーを持ってるのは勿論外にいるアスリンだった。
「はぅんっ!?」
商品の入った紙袋を両手で胸に抱えたまま、シンイチは小さな悲鳴を上げてその場に立ち竦んでしまった。
「お客様?どうされました?」
「あっ・・・い、いえ・・・何でも・・・」
歩み寄ろうとした店員を片手を出して制して、シンイチは入ってきた時よりもさらに慎重な足取りでレジを後にしたが。
「んっ・・・くふぅっ!」
堪えきれず、シンイチは階段の前で脚をM字にして座り込んでしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
思わず駆け寄ろうとした店員は途中ではたと足を止めた。それは、目の前の女子中高生と思わしき客が穿いているミニスカートの前が何故か不自然な角度のスロープを持っている事に気付いたからだった。
「・・・えっ?・・・ちょっと、まさか・・・」
「あ、あの、こ、これは・・・ち、違うんですっ・・・」
店員が何に気付いて自分に不審な目を向けてきたのかに気付いたシンイチは、思わずしどろもどろに言い訳の意味さえ為さない言葉を口にするしかできなかった。
“お、お願い・・・止まって・・・”
このままでは、自分が変な事―――男のコのくせに女装してエッチなランジェリーを買いに来て興奮してペニスを勃起させている―――をしている事がバレバレになってしまう。
オカマとか男の娘とか誤解・勘違いされるのならまだ気は楽で、女装趣味の変態等と騒がれてしまったら・・・。
すぐにこの店を出て行きたかったが、あまりにアナルバイブの動きが大きすぎて、その不快感はシンイチの足に力を伝えるのを妨げて、シンイチはなかなか立ち上がれなかった。
ようやく両手で胸に抱えていた商品を入れた紙袋をミニスカの上に降ろしてそのテントを張ったような不自然なスロープを隠した時、アナルバイブの蠢きは元の強さに戻った。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
ようやく耐え切れない不快感から解放された事で、シンイチは熱い吐息を零した。
女装してサトミと外出してデートした時は、勿論ペニスは固くフル勃起しっぱなしだったが、アナルバイブは入れられていなかった。大好きなサトミとのデートという嬉しさで、女装して外出している事への不安も解消されていた。
だからこんな女装がバレルかもしれない―――いや、もう既にこの店の女性にはバレてしまっている―――という、変態女装美少年であるが故の羞恥責めは初めてで、既にシンイチの両の目尻には大粒の涙が溜まっていて今にも零れそうだった。
「あの・・・大丈夫ですか?」
再び声を掛けてきたのはこの店の女性ではなく、シンイチと同じくこの店で品定めをしていた本物の女子中高生だった。
「は、はい・・・もう、大丈夫です・・・」
ようやくシンイチは立ち上がったが、ミニスカの前から紙袋は動かす訳には行かなかった。
シンイチはその女子中高生に軽く会釈すると、女性店員の侮蔑とも嫌悪とも好奇心丸出しの下卑たにやつきともとれる複雑な表情と冷たい視線を浴びてそそくさとランジェリー・ショップを後にしたが。
「・・・あれ?・・・車が・・・いない・・・」
ランジェリー・ショップの前の路肩に止まっていた筈の黒のセダン車は忽然と姿を消していた。
と、不意にポケットに入れていたケータイが鳴った。
「ちゃんとランジェリーは買ったかしら?」
電話の先方はアスリンだった。
「は、はい・・・」
「一応確認するけど、ちゃんとものすごくいやらしいのを買ったんでしょうね?」
「は、はい・・・」
シンイチは答えるが具体的にどんなものを買ったまでかは口にできなかった。そこは周囲を他人が往来しているところだからだ。
「まあ、いいわ。私はその通りの反対側に要るんだけど、そこから見える筈よ」
シンイチが通りの向こうを見ると、確かに乗ってきた車がそこに停車していた。
「ど、どうして・・・ここで待っていてくれる筈では・・・」
「それだと面白くないからよ。今もチンポはフル勃起してんでしょ?その恥ずかしい姿のままここまで歩いてくるのよ」
「そ、そんな・・・」
目の前の広い大通りは車が忙しなく行き交っている。そのまま横断するのは不可能で、反対側に行くには、ずっと先の横断歩道まで戻るか、近くの歩道橋を利用するしかない。
長い距離を歩けばそれだけ多くの人に自分の姿を見られる。変態女装美少年と気付かれるリスクも大きい。
だが、歩道橋を使えば歩く距離は短いが歩く部分が狭いので自分の姿は確実に視認される。リスクは同じかもしれない。
「早く来ないとあんたを置いて先に帰っちゃうわよ?」
「わ、わかりました」
「あ、言っとくけど、紙袋でいつまでもそこを隠していたら、逆に不自然な目で見られるかもしれないからね」
アスリンの言うとおり、女子はそんな事をする必要が無いのでそんな事はしない。だからシンイチがそんな事をしていれば確かに不自然な目で見られるかもしれない。
そして、結局、シンイチは距離が短い方を取った。そこから僅か10数メートル離れたところにある歩道橋にシンイチは向かった。
足に穿いているクラビーノは特にヒールが高い訳でもないので段差を踏み外す危険は無いが、それでもシンイチは慎重に上っていく。もし踏み外して転げ落ちたら怪我をする可能性があるだけでなく、変態女装美少年だとバレるのは必至だろう。
紙袋をミニスカの前の不自然に膨らんだ部分を隠していると逆にバレる恐れがある、というアスリンの言葉を信じて―――勿論、本当は隠れていないと不自然な事に気付かれるリスクが大きくなるのでそっちが狙いだった―――紙袋は右手に持ち、左手で階段の手摺を持ってシンイチは登って行く。
だが、歩道橋は下から見上げられるリスクがある事をシンイチは忘れていた。
女性はともかく、シンイチの女装―――女装ではなくて本当の女のコだと勘違いして―――姿に魅力を感じた成人男性・男子中高生はシンイチとすれ違い様に必ずその後ろ姿を見ようと振り向いた。そして、その相手の穿いているスカートが短い事に気付いて、男子中高生はその場に立ち止まったまま、見上げている。
勿論、下からパンティがチラ見えしてしまう程のミニスカでは無かったので、男子中高生の淡い期待は儚く裏切られてしまう―――勿論、見上げているその相手がちょっとでも腰を折ろうものなら見える可能性はずっと大きくなったのだが―――という結果が待っていたのだが、そんな事を今のシンイチが気づく筈も気にする余裕も気に掛ける知識も無かった。
「あっ」
後一段と言うところで少し気が緩んだのか、シンイチは最後の一段に躓いて前につんのめったものの、なんとか踏み止まって転ぶのは免れた。だが、つんのめった瞬間に思わず軽く跳ねてしまってミニスカがふわりとして、下から見上げている男子中高生にパンティのお尻を見られてしまった。
すぐ近くで見れば、パンティに付いているアナルバイブのモーター部が1cmほど少しだけ突き出ているのに気付いただろうが、運良く距離があったのでそれには気付かれなかった。てゆーか、パンティのお尻を見られた事さえシンイチは知らなかった。
まずは転倒する可能性がある部分をクリアしてほっとしたものの、シンイチの前からは老若男女を問わず人が歩いてくる。
シンイチは女顔である事を利用してそれらしく先へ歩いて行く。前方から歩いてくる人の表情には特に不自然さは無い。
今のところ、前から歩いてくるミニスカ女子中高生の正体が変態女装美少年である事はバレていないようだった。
そして、歩道橋の上を渡って後は階段を下るだけ。シンイチは再び誤って転げ落ちないように手摺を掴んでゆっくりと階段を降りていく。
だが、普通のミニスカ女子中高生では問題無いが、ミニスカ変態女装美少年では問題があった。
シンイチの前から上ってきた数人の女子高生はシンイチを見て何かに気付いた。
「何、あのコ・・・パンティ見えちゃってない?」
その亀頭部をパンティの上の縁からはみ出させるほどにフル勃起したペニスは、勿論ミニスカの前にテントを張ったような突っ張りを作っていた。それ故にミニスカは前が不自然なスロープを張って持ち上がり、パンティのクロッチ部分が下から覗けるようになってしまっていたのだ。もし風が吹いたりしてミニスカの前が少しでも捲り上げられれば、下にいる女子高生にペニスの亀頭部を見られてしまうかもしれない恐れもあった。
しかし、自分の足元だけを見て階段を降りているシンイチには、その危険も女子高生に注目されている事にも全く気付かなかった。
やがて、シンイチと階段の踊り場ですれ違う際、その女子高生達は立ち止まってシンイチのミニスカに注目して・・・
「・・・何、あれ?」
「・・・スカート、何か膨らんでなかった?」
「・・・どうなってるの?」
そんな疑問を持ったが、気付かずにシンイチはそのまま降りていった。
彼女達が何かに思い立ったのは、シンイチが歩道橋を降り切った頃だった。
「・・・今の、もしかして、男なんじゃない?」
「えっ?まさか、女装してたの?」
「・・・じゃ、スカートが膨らんでたのは・・・」
すれ違ったのは自分達と同じ女子中高生ではなく、女子中高生に化けたものの興奮してペニスを勃起させてミニスカの前にテントを張っている変態女装美少年だった事に思い至って、シンイチに振りかえった彼女達は引き攣ったような下卑た薄ら笑いを浮かべたような複雑な表情をしていた。
そして、その様子を双眼鏡で観察していたアスリンはほくそ笑んだ。
歩道橋を渡り切ってようやく帰ってきたシンイチは、アスリンの待つ車に乗り込んだ。
「・・・か・・・買って・・・きました・・・」
車に乗り込んでシンイチがほっと一息付くのを見計らっていたようにアスリンは切り出した。
「じゃあ、早速見せて貰いましょうか?変態のあんたが気に入ったいやらしいランジェリーをね」
そんなシンイチを侮蔑する言葉をアスリンが口にしても、運転手席にいる女性は何の反応もしない。シンイチはアスリンのペットであるから、そのペットに興味を持つ事さえアスリンは禁じているようだ。
「・・・こ・・・これです・・・」
紙袋を開けてビニールのパッケージに包まれたそれをシンイチは取り出したが。
「あんたバカァ?そのままじゃどんなのかわからないでしょうが!ちゃんと広げて見せなさいよ!」
「は、はい・・・アスリン様・・・」
「言っとくけど、アタシが気に入らなかったらもう一度買いに行かせるからね」
そんな事になったら、またあの店員に今度こそ何か恥ずかしい事を言われてしまうかもしれない。そんな事にはならないよう、どうかアスリンが気に入ってくれるよう、シンイチは不安な面持ちになりながらパッケージを開けてボディストッキングを取り出して広げて見せた。
「それは何?」
「え?その・・・ボディストッキングです・・・」
「ふーん・・・何だかレオタードみたいね。それもバレエの練習用みたいな・・・どうしてそれが気に入った訳?」
「え、えっと・・・これ、生地がストッキングでとても柔らかくて・・・それで透けているので・・・」
「ははーん、わかったわ。これを着て踊ってみたかった訳ね。そうなんでしょ?」
「あ・・・そ、そうです・・・」
「ん?よく見たら後ろはTバックで前はオープンになってるじゃないの。胸はスケスケでお尻は丸出しでチンポは丸見えになるじゃん。こんなのを着て踊りたいなんて、あんたって本当に変態ね」
「は、はい・・・私は・・・こんな・・・恥ずかしいいやらしい衣装を着て踊りたい変態なんです・・・」
アスリンの嗜虐心を満たすような返事をするシンイチ。そしてそれが本当になる事など全く考えもできなかった。
「いいわ、出して」
アスリンの指示によって車は走り出した。
「確か、この通りにバレエの専門店があった筈よ」
「えっ?」
「バレエを踊るなら、トゥ・シューズが必要でしょ?」
どうやら、アスリンは今度はバレエ・ショップにシンイチを行かせてトゥ・シューズを買わせるらしい。
“も、もしかして・・・本当にこの恥ずかしいいやらしいボディストッキングを着てバレエを踊らされるの?”
思わずシンイチはそのシーンを想像してしまった。自分の痴態を何度となく見ているアスリン、サトミ、イツコ、サヤはまだしも、さらにもしかしたら見ず知らずの女子高生達も見ている前で恥ずかしい姿でペニスを見られながら踊っている自分・・・恥ずかしさと惨めさに胸が締め付けられそうな思いだった。
「そうそう、さっきバイブの動きが大きくなった筈だけど、どうだった?」
「えっ?そ、それは・・・」
「どうなの、よ!」
アスリンがポケットに手を入れた途端、またシンイチのアナルバイブの動きが大きくなった。
「はぅんっ!そ、そんな・・・アスリン様・・・」
シンイチは顔を顰めて苦悶の表情になった。
「答えないといつまでもそのまんまよ」
アスリンは悶えるシンイチの表情を楽しそうに眺める。
「・・・あ、あの・・・バイブが・・・お腹の中・・・ぐりぐり動いて・・・く、苦しいです・・・」
一応シンイチが答えた―――それはアスリンの嗜虐心を満足させるような言葉ではなく、シンイチの本音であったが―――ので、アスリンはポケットの中のコントローラでアナルバイブの動きを小に戻した。
「ったく、いつまでたってもアヌスで感じるようにはならないわね。あんた不感症?」
しかし、シンイチはアナルバイブからの苦悶から解放されて「はぁー、はぁー・・・」と肩で息をしているだけだった。
「ったく、男なんだからいい加減アナルで感じる様になりなさいよね」
勝手な言い草であるが、それを窘める大人は今はいない。
「まあ、いいわ。ところで、あんた、女装趣味の変態だってバレたの、気付いてる?」
「・・・それは・・・ランジェリー・ショップの・・・店員さんには・・・」
「そうじゃないわ。歩道橋を降りてきた時、女子高生が二~三人登ってきたの、気付かなかった?」
「え?」
「ほら、今もそのミニスカにチンポでテント張ってるじゃん。下から見たら、そのせいでパンティ見えてたんじゃないかしら?その人たち、踊り場であんたを横から観察して、笑ってたわよ」
「う、嘘っ!?」
「もしどこかでまたあんたと出会ったらどうなるかしらね?指差して笑われるか、写真取られて拡散されるか、あるいは脅迫されてもっと恥ずかしい目に遭わされちゃうかもしれないわよ?」
「そ、そんなぁ~・・・そんなの嫌です、アスリン様・・・」
「嫌だっつったって、あんたは女装してチンポをフル勃起させる変態なんだから仕方ないじゃん。今後もあたしのペットである事は変わらないけど、やっぱり変態は変態として生きるしかないわよねぇ」
シンイチは何も言葉にできなかった。アスリンのペットとして一生イジメられ続ける―――その内アスリンも飽きるかもしれない。その可能性はゼロではない―――のは何とか耐えられるかもしれないが、他人にばれてしまったら、それが拡散されてしまったら自分ではもうどうしようもできない。
微かな望みは、学校とか普段は女装させられないで済む事。学校以外の時間でも女装を要求されなければ、自分がその変態女装美少年であるとバレる筈も無いのだが・・・。
やがて、そうこうしている内に車はバレエ専門店の前に到着した。そしてさっきのランジェリー・ショップと同様にシンイチは一人でトゥ・シューズを買いに行かされ、アナルバイブの動き―――さっきはいきなり大きくなって随分と長い間変わらなかったが、今度は微妙に大きくなったり元に戻ったりを小刻みに繰り返されていた―――に翻弄され、背中に嫌な汗をじっとりかかされてしまった。
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