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第9話 そのサン
「・・・いろいろと小道具を持っているんだね・・・」
トオルにはそれらが全て女のコがオナニーに使うグッズだとすぐに見当がついた。だが、その一区画からユイコが取り出したスプレーについては何かわからなかった。
「・・・それは?」
「これはですね・・・チンポに吹き掛けるととても感度がよくなる媚薬のスプレーです」
言うが早いか、ユイコはそのスプレー剤―――勿論、ドホモルンクルリン入りだ―――をトオルのペニスにささっと満遍なく吹き掛けた。
「んふっ・・・」
スプレー剤が掛けられた瞬間は少々冷っと感じもしたが、すぐにトオルはペニスがなんとなく自分でいつも感じているよりも熱くなってきたような気がした。
「どうですか?」
「何だか・・・いつもと違うような・・・こんなに熱くなってるのは・・・初めてかもしれない・・・」
ユイコ・・・というよりシンイチの場合では何も効果は認められなかったのだが、トオルは性欲が増大してきたのか、ペニスをピクピクンと律動させてしまった。
「ほぉ~、効いてる効いてる」
「よし、もっとスプレーを掛けるのよ」
「聞こえてないって」
イヤホンを隠していたのが見つかったら、自分達がユイコに指示を出してトオルと交じらわせているのがバレると考えて付けさせていなかったのが悔やまれた。
「・・・そのスプレー・・・ヤバいかもしれない・・・」
トオルは何となくペニスがはじけ飛びそうな感覚―――それは射精の際の絶頂に向かって快楽の度合いが高まっていくような感覚に似ていた―――を覚えて、思わず自分の手でペニスをギュッと握りしめた。そんなトオルを見てすぐにユイコはベッドの上に乗って蹲るように伏せるとお尻だけを高く上げた。
「どうぞ・・・私のアヌスで・・・もっと気持ち良くなって下さい・・・」
アヌス開口用パンティのそのお尻の穴から覗けるユイコのアヌスを見てしまったトオルは、前回のユイコとのアナルセックスの甘美な快楽を思い出してしまい、すぐにユイコの誘いに乗ってしまった。
「はぐっ!?」
トオルのペニスの自前の潤滑剤は既にトロトロと染み出してきていて、トオルの快楽を急ぎ求めるその気持ちのままに、ユイコのアヌスにあてがわれたそのペニスはあっという間にその菊坐を貫いて内部へ侵入してしまった。
「ト・・・トオル・・・さん・・・いきなり・・・過ぎ・・・」
「ご・・・ごめんよ・・・でも・・・腰が・・・止まらないんだ・・・」
手淫だと掌や指で包み込めるのでペニス全体に刺激できるのだが、アナルセックスの場合だと締め付けるのは入口と出口だけで、内部の粘膜は締め付けるとまではいかない。快楽をむさぼるには、腰を動かして―――つまり親指と人差し指で作ったリングでしごくように―――アヌスで刺激するしかない。そしてそれはユイコが腰を動かすよりもトオルが動いた方がやり易い。勿論、アスリンは自分でも腰を動かすように―――実際に前回は二発目はユイコが自分で腰を上下に動かしていた―――シンイチに言っていたのだが、今はトオルがユイコの腰を掴んでホールドして自分の腰を打ち付けているので動くに動けない状態だった。
「も・・・もう・・・ダメだ・・・いくよ・・・」
「は・・・はい・・・どうぞ・・・中に・・・出して・・・」
「でっ・・・出るぅっ!」
ユイコのお尻に激しく下腹部を打ち付けていたトオルは、最後のひと扱きをより強く、つまりより大きいストロークで、より速いスピードで、ユイコのアヌスにペニスを根元まで突き込んでそこで動きを停め、射精した。
“な・・・何だコレ?・・・この前より・・・ずっと気持ちいい・・・”
勿論、トオルは知らなかった。前回のアナルセックスと違う点は、今回のスプレー剤をペニスに振りかけられただけではなかった事に・・・。
「調合がうまくいったみたいね」
「流石はイツコね」
「これでまた改良点が発見できたわ」
前回と違う点のもう一つは、ユイコのアヌス内に蓄えられていた粘液も変わっていた事だ。前回はドホモルンクルリンの軟膏とローションのミックス剤だったが、今回はさらに追加があった。それは、ユイコのアヌス内から抽出したトオルの精液を―――勿論、精巣から出てきた精液だけでなく、トオル自身が分泌するホルモンが含まれている。その中の男性ホルモンの中には、女性を惹き付ける性ホルモンも含まれている訳だ―――分析して、トオルだけに対して絶大な媚薬効果を持つ薬効成分を調合し、それを大量にドホモルンクルリン軟膏に混ぜ込んでいたのだ。そして今回その効果が認められた事により、次回はスプレー剤は勿論、錠剤にも添加してトオルに摂取させる計画なのは言うまでもない。
「ハァハァハァ・・・」
激しいピストン運動の後の激しい射精を終えてそれでもなお激しい息遣いのトオル。
「まだ・・・足りない・・・」
激しい射精による脱力でユイコの背中に覆いかぶさるようになってたトオルだが、射精を終えてもペニスは未だ萎れず熱く硬度を保ったままだった。
「はぃ?」
勿論ユイコは快楽など得ていないからトオルほどの激しい息遣いなどは無く、どちらかと言えば興奮はしていたがトオルよりは心が落ち着いていたので、耳元へのトオルのその呟きを冷静に受け止めていた。
「もっと・・・もっとヤリたい・・・君のアナルで・・・気持ち良くなりたい・・・」
トオルが身体を起こし、もう一度ユイコの腰を掴んでピストン運動を再開しようとした正にその時。
「ちょっと待ったー!」
どこにいたのか―――と言っても、何の事はない、隣の部屋でサトミやユイコとモニターを見ながら待機していただけだった―――またしてもアスリンがその部屋に乱入してきた。
「また君か・・・このコと僕のやってる事に無関係の人は出て行って・・・えっ!?」
トオルの言葉が途中で途切れて驚愕の表情になったのは、アスリンの背後にサトミやイツコがいるのに気づいたからだった。
「か・・・桂木先生に・・・赤城先生・・・どうしてここに・・・」
「アスリンから貴方が不純異性交遊をしていると聞いてね」
とニッコリ笑いながら口から出まかせの嘘を吐くサトミ。それに対し、とくにイツコはトオルには何も言わず無言で怪しい微笑をするだけだった。
「残念でした、私達は無関係じゃないわ。もともとそいつをアナルマゾの変態にしたのは私達だからね」
「えっ!?」
「ヴァギナならまだしも、女がアナルで感じる訳ないでしょ?」
などとアスリンはまた嘲りの表情でそんな勝手論を言って、トオルに困惑の表情を浮かべさせた。
「ユイコのパンティの前の膨らみについて、女性器を刺激する大人の玩具を中に入れていたとか、いつから勘違いしてたのかしらね?」
「ア、アスリン様・・・やめて・・・」
「もういいじゃん、アンタはアナルマゾのほもーん奴隷になるんだから、いい加減に自分でネタばらししなさいよ」
それは、ユイコ自ら自分の正体をトオルに言えと要求しているのと同じだった。そしてトオルはユイコからのアスリンへの呼び掛けに疑問を感じた方がインパクトが大きくて、ほもーんという言葉を知ってはいたのに聞き漏らしてしまっていた。
「アスリン様?・・・って、佳和さん、いったい君と惣竜さんは・・・」
「そいつは私達三人の奴隷なのよ」
「・・・奴隷!?」
あの奴隷宣言をさせられた時にはサヤもいたので本当は四人なのだが、今はいないのでイツコは口を挟むのは差し控えた。
「ということで、パンティを脱いであんたの恥ずかしい秘密をトオルに教えてやりなさい」
「ア、アスリン様・・・それだけは・・・い―」
「嫌なんて言ったらわかってるわよねぇ?あんたの恥ずかしい写真や動画が世界中に広まってしまうんだから・・・その後であんたが破滅しようがどうなろうが私は構わないんだけどさ」
「惣竜さん・・・君は何を・・・いったい何を言って・・・!?」
ついさっき整理棚の腐女子御用達の薄い本についてユイコはアスリンが集めてくれたと言っていたので、やはり彼女達は親しい友人関係で、アスリンはユイコの自分への過度に一方的な想いを叶える為に手助けをしてくれたのではないかとも考えていたのだが・・・そんな疑問を持ってアスリンの表情を見てトオルが絶句したのは、アスリンが底意地の悪そうな昏い薄ら笑いを浮かべていたからだった。
「・・・っ・・・わ・・・わかり・・・ました・・・」
ベッドの上に突っ伏して頭を抱えていたユイコは、そのアスリンの脅迫にびくっと震えると、それに屈してしまったかのようにパンティのサイドにあるスナップホックにおずおずと手を伸ばし、ゆっくりと震える指を掛けた。だが、そこで指は止まってしまった。
「何やってんのよ、さっさとやりなさい!」
そのアスリンの剣幕に怯んで・・・いや、押されて、ユイコ・・・いや、シンイチはスナップホックをパチンと外してしまった。
「・・・なっ!?」
両脚をM字に開脚させられた姿勢でサイドのスナップホックが外されたその瞬間、白いパンティは中に包まれていた肉棒の強烈なしなりによって翻って下に落ちてしまった。
「う・・・嘘だろ・・・」
トオルが驚愕のあまり、普段はクールな表情を思いっ切り崩して両の目をまん丸にしてしまったのも無理はない。自分がアナルセックス大好きな女のコと思っていた相手の股間にフル勃起している男性器が存在していたのだから。
“そ、それは・・・どう見ても・・・ペニス・・・じゃあ、このコは・・・”
女のコで有りながらペニスも有している・・・その存在を「フタナリ」と称し、エロ漫画誌でも毎号一作ぐらいは掲載されているジャンルである事ぐらいは、その年頃の中高生としては一般的にある知識だった。
「・・・君は・・・フタナリだったの?」
「フッ・・・生徒会長の凪羅くんともあろう人が、観察力不足のようね」
それまで一言も発していなかったイツコがやっと自分の話す番が来たとでも言うかのように口を開いた。
「確かに最近のフタナリの表現は、陰茎の他に睾丸や陰核を同時に兼ね備えていると―――しかし、睾丸に隠されて女性器の部分はまず描かれない事が多いが―――いう間違ったものばかりだから勘違いするのも仕方ないわね。でも、残念ながらこのコには女性器は備わっていないのよ」
イツコの説明のとおり、トオルには相手の股間には女性器らしき器官は見えなかった。という事は、目の前の女のコと思っていた存在は実は身体は男のコであり、しかし見た目は殆ど女のコである事から、トオルが次に思いついたのは・・・。
「・・・君は・・・シーメールだったの?」
身体の性別と心の性別が異なる、いわゆる性同一性障害者には体と心の性別が男-女だったり女-男だったりする。新歌舞伎町に存在するゲイバーには、そういった人が働いている事も多く、前者はオカマ、後者はオナベ等と呼称される。あるいは、身に纏う衣類を心の性別と同じにする事で自己完結できる異性装者という者もいる。そして、身体が男で心が女と言う場合、衣類や化粧だけでなく、顔を整形したり胸部にシリコンパッドを入れて豊胸して乳房を形成したりさらには男性器も切除しただけでなく人造膣まで装備するといった、身体を改造して見た目を限りなく女性に近づける者もいて、それらは所謂ニューハーフと称される。しかし、乳房も形成して見た目は限りなく女性に近づけながらも男性器を切除していない人々もいて、そういう人はシーメールと呼称される。
「フッ・・・まだまだね、凪羅くんも・・・このコに胸の膨らみは無いわよ」
イツコを真似てサトミもトオルに上から目線のセリフを口にしたが。
「あーもうじれったい!いつまでやってんのよ!」
短気を起こしたアスリンはユイコに有無を言わせずその頭に装着したウィッグをむんずと掴んで毟り取った。
「はい、ご対面~」
アスリンはユイコ・・・いや、シンイチの背後に回るとその両腕を後ろに絡め取って動けなくした。
「ま・・・まさか・・・」
トオルに正面から見られて気付かれたくないかのように目を瞑って顔を背けていたとしても、トオルはすぐに気付いてしまった。
「シ・・・シンイチくん!?」
何度も口唇愛撫されただけでなく、性交さえも―――アナルセックスではあるが―――した相手が同性の男子中学生―――それも自分が後継者として目を掛けていた―――であるシンイチにそっくりだと気付いて、トオルは思わずその名を口に出してしまっていた。しかし、シンイチは顔を背けたままで答えなかった。
「・・・違うのか?瓜二つの別人・・・」
「そんな訳無いでしょーが!こいつは正真正銘、猪狩シンイチ本人よ!」
「・・・もしかして、本人がそう言い張っているだけなんじゃ・・・」
「違う!こいつは本物よ!」
「・・・本物の・・・パラノイアなのか?」
「あーもう、うっさい!!大体、さっきからあんたが一っ言もしゃべってないから話が進まないんじゃない、このバカ!!」
アスリンは短慮を起こしてシンイチの頭をバシっと叩いた。
「暴力はやめたまえ」
「うっさい!私に命令するな!男にフェラされて喜んでアナルセックスした変態が偉そうに!!」
「僕は相手を女のコと思い込んでいたんだ。騙されていた訳だ。変態呼ばわりは道理に合わないね」
シンイチをそっちのけにしたアスリンとトオルの言い合いに、サトミはお手上げポーズ、イツコはダメだこりゃの頭を振る仕草をした。しかし、そんな反応しても意味が無いとすぐに気付いて・・・
「二人とも、言い合いはやめなさい。本当に話が進まないわ」
「だって、こいつがあまりにも分からず屋だからっ・・・」
「だから、貴方が口を開かなければ、この先何も進まないのよ、シンちゃん?」
「シン・・・ちゃん?」
勿論、トオルがその呼びかけを聞いて史上最低最悪の兇悪怪獣のような幼稚園児を思い浮かべる筈も無かった。
「・・・お願いです・・・・・・・・・二人だけで・・・・・・・・・話をさせて下さい・・・・・・・・・」
漸く口を開いたシンイチは途切れ途切れにお願いしてきたが、トオルとの掛け合いで頭に血が上っていたアスリンは灰色の脳細胞を真っ黒に染めて言い放った。
「いいわ・・・ただし、条件が一つあるわ・・・トオルのチンポをあんたのフェラテクでイカせて一本抜いてからよ」
「あ・・・」
シンイチは目を瞑って顔を背けていたので気付いていなかったが、トオルのペニスはドホモルンクルリンの影響のせいか、未だに本人の意識とは無関係にフル勃起状態を保っていた。トオルはアスリンとの問答に気を逸らされて自分のペニスの状態にも己の性欲にも気付かないでいたのだ。
そして、そんな腐女子の変態な欲望丸出しの要求など、シンイチは拒否できるだろうとトオルは思っていたが。
「わかり・・・ました・・・アスリン様・・・」
なんとトオルの予想は外れてシンイチはその要求を飲むと答えた。
「シ、シンイチくん!?」
「トオルくん・・・ゴメン・・・後で全部話すから・・・・・・・・・今は・・・アスリン様の言う事に従わなきゃいけないから・・・」
シンイチの両目尻には大粒の涙が溜まっていた。それは、アスリンからの変態的な要求に従わなければいけないという屈辱感よりも、トオルを騙していた・裏切っていたという罪悪感によるものが大きかった。
ウィッグも無く、パンティもベビードールも脱いでしまった。もはやシンイチは女装はしておらず、その顔だけがともすれば女性的なイメージを醸し出すだけなのに、トオルは未だにペニスをフル勃起させていた。既にペニスは萎れて縮こまって亀頭部も半分は包皮に覆われているシンイチに対してトオルが正反対であるのは、おそらくはドホモルンクルリンの効果が予想以上に大きかったのか、それとも持って生まれたか或いは過去の辛い経験により自分の意志とは関わりなく獲得してしまった性質なのか・・・。
ベッドの上で両脚を開いてへたり込んでいる感じの姿勢のトオルの股間の間ににじり寄って顔を近づけたシンイチは、一瞬ためらったものの、思い切ってトオルのペニスを咥え込んだ。
「んくっ・・・」
シンイチのリップや舌が己のペニスに優しく触れて、思わずトオルは歓びを感じて身じろぎしてしまった。
この光景をチコやリエ・ミエ・ミチコにサエコ・アケミ・ユミにコトコ・キヨミ・ヒデコが見たら、腐女子として生やをいシーンを目撃できた事に随喜・歓喜の涙を流して喜んだ事だろう。もしかしたら、興奮のあまり涎を垂らして失神するかもしれない。
そして、アスリンも腐女子であるが故に内心は同様の反応であったが其処は必至で我慢してただ垂涎しながら目を見張ってシンイチのトオルのペニスへのフェラチオシーンを網膜に焼き付けていた。おそらく、今夜はそのシーンを何度も脳内再生しながら自慰に浸る事だろう。
イツコの方は腐女子としてではなかったが、自分が作り出したドホモルンクルリンの効果・効能がどんどん高まっていく―――同性の男子中学生にフェラチオされているというのに、トオルは悦楽を感じているように熱い吐息と悶え声を時折漏らしていたのだ―――事が確認できて興奮に近い感動を覚えていた。
一方サトミとしてはあまり腐女子趣味ではないので生やをいシーンでもふーんみたいな反応なのだが、それ以上に愛しのシンイチが女のコのように―――勿論女装はしていないので女のコそのものには見えてはいないが―――トオルのペニスを懸命にフェラチオしている姿に女のコらしさを感じ取って感動に心が打ち震えていた。
「・・・あぁ・・・す・・・すごい・・・気持ちいいよ・・・」
そんな反応を見せたトオルを見て、フェラチオをやめて焦らすなんて事をシンイチがする筈も無く。
「あむ・・・ふぐ・・・はむ・・・おぐぅ・・・」
悦楽に耐えかねてトオルが身じろぎあるいは腰を跳ねさせるので、トオルのペニスが時たまシンイチの口腔内壁に激突して―――その衝撃もトオルにとっては心地良し―――シンイチは思わず顔を歪ませるのだが、早くトオルをイカせて全てを説明したい事とトオルを騙していた事への贖罪の意味も兼ねてそのフェラチオの動きは激しさを増していき、さらに三人組の興奮をも激しくさせていく。
“クックックッ・・・シンイチったら、一生懸命にトオルのチンポしゃぶっちゃって・・・本当にアンタはほもーんの変態アナルマゾだわ・・・いいえ、それだけじゃないわ、アナルをレイプしてほしくてたまらない、ケツハメ中毒・・・いや、ケツハメキチガイにしてやるのよ・・・”
アスリンのその無茶苦茶な妄想がよりその表情を昏い笑みに変えていく。
“ドゥフフ・・・シンちゃんったら、愛しの凪羅くんへの奉仕に一生懸命なのね・・・もし、シンちゃんが望むなら、性転換させてもいいかも・・・”
サトミのそのだらしない笑みも、己の妄想でより鼻の下を伸ばしたみっともないものになっていく。
“フフフ・・・凪羅くんったら、シンイチくんのフェラチオであんなに感じている。同じ男子からのフェラチオなのに、嫌悪感よりも性欲の方が強くなっている事の証明ね。きっと、彼はドホモルンクルリンが良く効く体質なんだわ。シンイチくんも嫌がっている素振りなんて全く見えないし、まんざらでもない感じね”
イツコはやはり、自分の開発したドホモルンクルリンの効果についてこそが最も関心が有る事の様だ。だが、シンイチはともかくとして、トオルの事情を知らない故に目の前で見えている事こそ真実と思い込む科学者らしい勘違いをしていた。
「・・・あ・・・あぁ・・・シ、シンイチくん・・・僕、もう・・・我慢できそうに・・・ない・・・」
トオルはそろそろ射精しそうだと途切れ途切れにシンイチに告げた。まさかいきなりではたとえ女性が相手だとしても失礼になる―――相手も準備と言うか覚悟が要るのだから―――と考えたからだろうが、対してシンイチはトオルのペニスを頬張っているので言葉では何とも応えようがなかったが。
“いいよ、トオルくん・・・ボクの口で・・・受け止めてあげるから・・・”
シンイチはそれをボディ・ランゲージで表わすかのように、トオルの腰を強く掻き抱いた。それだけでなく、唇での締め付けを今まで以上にきつく、ヴァキュームもさらに強く、舌の動きも激しくした。三人組から巷の射精産業に従事する女性(フェラガール)と同レベルのテクニックと判断されたそのフェラチオにかかっては、トオルもいつまでも射精衝動を抑制する事はできなかった。
「くぅっ・・・も、もぉ・・・・・・出っ・・・・・・・・・出るうぅっ!」
トオルの腰を強く掻き抱いて頭を前後に振ってシリンダー運動をしていた、あるいはシンイチの頭を掴んで己の下腹部に叩きつけてシリンダー運動をさせていた、言い換えればシンイチの頭を掴んで腰を前後に振ってピストン運動をしていた・・・まあ、どれも正しいのでどうでもいいが、とにかく限界に達したトオルはシンイチの口から己のペニスを抜こうとしたのだが、それ以上の強さで
シンイチがトオルのペニスに吸い付いていたので、結局トオルは己のペニスを根元までシンイチの口腔に突き込んだ形で、本日二回目の射精をシンイチの喉奥に流し込む事になった。
ドホモルンクルリンの効果なのか、いつもよりもずっと増幅された感じの絶頂快楽に、トオルのペニスはいつも―――今まで何回かユイコにフェラチオされた時―――よりも激しく反応し、シンイチの口腔内で暴れまくって、その大きな脈動・ひくつきはいつもよりも強い勢いで大量の精液をまき散らし、シンイチの口腔内の粘膜に激しくブチ当てていた。が。
「・・・んっ・・・んくっ・・・んぐっ・・・」
今までさんざんユイコとして有料フェラチオサービスをしてきた経験が生きて、シンイチは失敗して咽る事も無く、トオルのペニスから激しく吹き出る精液を飲み込んでいった。
「ス・・・スゴヒィッ・・・夢にまで見た・・・生やをいの・・・フェラチオセーエキ生飲みシーンッ!!」
隠しているビデオカメラで盗撮しているから後でじっくり見返せるとは言え、やはり目の前=生LIVE=で見せられたそのチョー強烈に腐女子のリビドーを刺激するそのシーンを見て、アスリンも激しく興奮していた。必死に漏らすのを我慢していた声も堪えきれず出てしまっていた事にも気付かず、そして無意識のうちにスカートの裾から入れた手をパンティの中に差し込んで己の秘所を弄りまくっていた事にも気付いていなかった。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・・・・・・・」
激しい射精がようやく打ち止めを迎え、お互いに腰と頭を掻き抱く形でシンイチの口と己のペニスを結合させたままでトオルがそのままベッドにへたり込んだ時、同時にアスリンもオナニーでイッたかのようにタイル床にへたり込んだ。
「アスリンもまだまだお子様ねぇ、無意識でオナニーしちゃうなんて。人間、我慢が辛抱よ」
「サトミ、そのボケはアスリンの専売特許・・・じゃなくて、それを言うなら『人間、我慢が肝心だ』か『人間、辛抱だ』でしょ」
「そりゃあさ、私はまだピチピチのJCだからして、何かがカーブに差し掛かった誰かさんとは違いますからね」
雉も鳴かずば撃たれまいに、てゆーか、五十歩百歩・目糞鼻糞・同類相憐れむ・・・などという感じだがそれはさておき。
「二人ともくだらない言い争いをするのはやめなさいな。今夜は、シンイチくんと凪羅くんのほもーんカップル完成を祝うんでしょ?」
テーブルの上には一応料理は載ってはいるが、それらは注文してデリバリーして貰ったピザと寿司とケーキに過ぎず、飲料もビール(勿論サトミ用のエビチュ)とワイン(イツコ用のボードレ・ヌーボ)とシャンパン(アスリン用のシャンベリー)程度だった。生活無能者が二人いてはイツコも手料理を作って振る舞うにも邪魔されるのがオチなので、飲料は自分達で購入して後はデリバった訳だ。
「シンちゃんの手料理だったら良かったんだけどなぁ・・・」
自分達があんな目に遭わせた相手にさらに自分達用の御馳走を作らせるなどと言うのもかなり鬼畜な要望であったが。
「私はちょっと・・・確かに料理は上手だったけどさ、アイツがいなかったらご飯も食べられないなんて、そんなのお断りよ」
シンイチしか料理ができない以上、二人はある意味生殺与奪権を握られているような感じでもあったのだ。
「本当ならサヤに来てほしかったんだけどね・・・」
DPSでその心の奥底の欲望に気付いてしまった以上、その心が暴走する切っ掛けを与えかねないと考えてイツコは今回の計画にサヤを咬ませなかった訳だが、取りあえず彼女に電話して料理をお願いしたものの、体調不良を理由に断られてしまったのだった。
“ここの所、シンイチくんばかりに目が行っていて、あのコに構ってあげられなかったから、拗ねてるのかしらね・・・”
それも正解なのだが、シンイチがそこにいない理由は別にあった。
「今夜はシンイチくんと凪羅くんはそのままにしておきましょう。明日になったら、きっとあの二人は離れられなくなっているでしょうから・・・」
とイツコが意味深な事をアスリンとサトミに告げたからだった。その言葉の意味―――二人がより深い仲になっているだろうし、そうなる事が予測できるのだから敢えてシンイチを連れて帰る必要は無い―――という事にすぐに気付いたのはアスリンで、サトミは首を傾げるばかりだった・・・。
“何故気付かなかった!?”
トオルは自己嫌悪していた。贅嶺女学園に行ってアスリン達の罠に引っかかって以来、そこでも練芙学園の校舎内でも何度もユイコ、つまりシンイチにフェラチオされていたというのに、以前に自分が感じた疑問―――シンイチにそっくりな女のコが如何わしい事・・・つまり有料フェラチオサービス・・・をしているらしいという噂を聞いて、シンイチの親戚ではないかと考えてそれをシンイチに尋ねた―――について、その存在を否定された事で全く赤の他人と思い込んでしまっていた事が裏目に出た。その事前の偽情報を得る事をしなかったら、あるいは初めての出会いで気付いた可能性があるかもしれない、とトオルは自分の判断ミスを悔いるしかなかった。
「・・・最初から・・・話すね・・・」
全裸になっていたその身を白いシーツで隠したシンイチはどうして自分がこんな境遇に追い込まれたのか、トオルに包み隠さず話した。
自分が女顔で悩んでいた事を吹っ切らせるのは建前として、サトミが彼女の欲望(ショタコンでシンイチに女装させて弄りたかった)を満たす為にいろいろ女装させてきた事。その一環として文化祭でのシンデレラを演じて劇が成功したので自分はサトミの欲望に気付かず彼女に感謝し、憧憬の念を持ってしまったせいで、彼女の欲望を受け入れてしまった事。しかしそれも実はアスリンの悪巧みの一環に過ぎず、自分は女装倒錯者になってしまい、その女装写真や動画を盗撮され、それで弱みを握られてしまった事。それらの計画にはイツコも裏で絡んでいて、自分は三人の奴隷にされてしまった事。アスリンは実は腐女子だったので、そっちの性的嗜好からシンイチをほもーん奴隷にしようと企み、たまたまシンイチと知り合ったトオルにそのほもーんの相手の白羽の矢を立てた事。トオルを篭絡するためのテクニックを身に付けるのとアスリンの小遣い稼ぎも兼ねて、自分は女装してユイコとなって有料フェラチオサービスをさせられた事。トオルを受け入れる為に日夜アヌスにバイブを入れられ、サトミ達にアナルレイプされた事。トオルを罠に掛ける為にアスリンは友人の贅嶺女学園の高校生を仲間につけるべく、シンイチは彼女達の前で恥ずかしいダンスとオナニーショーをさせられた事。女装してユイコとなってる時は心も女性化しているようで男子を歓ばす事に積極的になってしまう事。
他にも女装姿で深夜の校内を徘徊させられた事やランジェリーショップで女性用の下着類を買わせられた事などもシンイチは告白したが、サヤの事とバレエ教室で知り合ったバレリーナの卵達9人については意識的に話す事を避けた。その10人はどちらかと言えばシンイチの事をある意味理解してくれていて、決して三人組のように自分に悪意を持っている訳ではなかったからだ。
「どうして・・・惣竜さんはシンイチくんにそんなに悪意を持つようになったの?」
それは、アスリンの自己紹介の時に彼女が黒板に書いた字が間違っている事を指摘した事を、恥をかかされたと逆恨みしているだけだった。
「そんな・・・たったそれだけの事で・・・」
第三者の誰がどう考えてもそれはあまりにも理不尽な怨念のように感じるものだった。
「桂木先生は、どうして・・・仮にも君の保護者の筈なのに・・・」
だが、サトミにとってもシンイチは所詮自分の性的嗜好を満たす為の女装美少年という存在でしかなかったようで、アスリンが何と超大手企業・萩生コンツェルンの後継者候補の一人であると知ったら掌返しで自分の保護者という立場は表向きの身にして裏では自分をアスリンにまるでモノのように下げ渡したのだ。
「そんな事が・・・あっていいのか!?」
トオルもサトミの教師としてあるまじき姿勢に愕然とした。個人の趣味や性的嗜好にケチをつける気は毛頭無いが、未成年でありかつ自身が保護すべきシンイチを己の性的欲望の相手にした事―――勿論、その後シンイチが成人した以降も大人として付き合うという事であればある程度は寛容できるかもしれないが―――だけでなく、悪意ある人間にシンイチを譲り渡すなど、大人として社会的責任―――ましてや教師となればさらにそれはより確りとしたものでなければならない―――など全く皆無であると言える。
「赤城先生は・・・どうして・・・その二人に協力してるんだい?」
それはサトミとイツコが大学時代からのクサレ縁という事でイツコが悪ノリしてきたという側面もあるが、やはりアスリンの軍資金を当てにして好きな事―――薬剤調合・科学実験、そして作った物質を生体投与(それも実験動物ではなく、人間そのものにである)して観察したいという、正にサトミの言うところのMADそのものである―――ができるからというのがその主な理由である。そして悪魔の薬・ドホモルンクルリンを作り出したのだ。
「その薬って?」
勿論、正確な化学組成式などシンイチが知る由もない―――サトミは当然、アスリンでさえ理解できないだろう―――その薬は口から飲む錠剤、アヌス内に注入する軟膏、ペニスに噴霧するスプレー液の三つで構成されている事しか知らなかったが、三人組からはそれが男をほもーんに変えてしまう効果が有ると聞かされていた。だが、シンイチがそれを使わされ始めたのは贅嶺女学園でトオルにフェラチオさせられる直前で、有料フェラチオサービスをしていた時は女装で意識が女のコに切り替わってしまっていたが故に熱心なサービスをして見事なテクニックを身に付けてしまっただけで、シンイチに果たして効果があったかどうかは甚だ疑問だった。どちらかと言うと、ジュースに溶かして摂取した錠剤と今日のプレイでユイコ・・・いや、今はシンイチが最初に使ったそのスプレー液で激しく興奮してしまったトオルの方に効果があるように思えた。事実、先ほどシンイチにフェラチオされて今日二回目の激しい射精をした筈のトオルのペニスは未だ射精前と同じ大きさと硬さを維持していたのだ。
射精してもペニス内に流入していた血液流が減少するにはタイムラグが出る事もままある事はシンイチもトオルも自分で経験して知っている事だった。
「なかなか治まらないのは・・・その薬のせいなのか・・・」
トオルは自分のペニスが未だにフル勃起をし続けている事を自覚していた。勿論、トオルのズボンの前がずっとテントを張りまくっていた事もシンイチは気付いていた。
「・・・何て・・・僕は情けないんだ・・・シンイチくんの辛い境遇の話を聞いているというのに・・・まだ身体は疼いているなんて・・・」
トオルは思い余って拳を握って振り上げた。
「ト、トオルくん、待って!」
トオルがそれを己のペニスの上に振り下ろそうとしている事に気付いたシンイチは慌ててその手を掴んで停めた。
「シンイチくん、離してくれ・・・君に対してこんな失礼な反応をしているなんて、いくら自分の身体の一部でも許せないんだ!」
「落ち着いて、トオルくん・・・君の気持だけで僕は嬉しいから・・・心と肉体とが違う時もあるし・・・だから、自棄にならないで・・・」
シンイチのその真摯な瞳で見つめられ説得されたトオルの腕から力が抜けていった事を確認したシンイチは、身体に巻き付けていた白いシーツを脱ぎ始めた。
「シ、シンイチくん!?」
「・・・僕に・・・責任があるから・・・僕は、僕の身体でしか・・・トオル君にお詫びするしかできないんだ・・・」
「違う!君は悪くない!悪いのはあの三人だ!」
「でも・・・トオルくんも知ってるでしょ?あの三人は僕達を簡単に破滅させる事ができるんだ・・・」
それは、今までの出来事を全て撮影して弱みを握って、二人が他人に見られたくない姿をいつでも世界に広める事ができるという事だった。
「僕は・・・それを怖れて・・・トオルくんまで引きずり込んでしまった・・・たとえ死んでもその罪は消えない・・・だから・・・」
シンイチはシーツを全て脱ぎ捨てて一糸まとわぬ姿になってしまった。
「シンイチくん・・・」
死んでもその罪は消えないというそのシンイチの言葉から、トオルへの償いの為に、せめて自分の身体でトオルの身体を鎮める・・・そうするしか、シンイチ自身の罪悪感が和らぐ事は無い・・・という事にトオルは思い至った。
「わかったよ、シンイチくん・・・」
頷くと、トオルも着ている衣類を全て脱ぎ捨ててシンイチと同じ生まれたままの姿になった。
「今日から・・・君と僕の二人で・・・一緒に地獄に堕ちよう・・・」
そして、両膝を立てて両脚を大きく開いて自分のそこが見えるようにしたシンイチの両脚の間に身体を入れたトオルは、シンイチのアヌスに自分のペニスを突き立てていった。
「ああっ・・・ト、トオルくんっ!」
「シンイチくんっ!」
同じ男子同士であるが故の肛門性交であるが、やはり健全な身体を持つ中学生ともなればその性欲も大きく強いもの―――それは女子とて変わりはない。実際、このシーンをビデオで再生して確認したアスリンはほぼ一晩中それを繰り返し見ながらオナニーしまくって正にイキ狂うという表現がぴったりな程に何度も絶頂を迎えていたのだから―――であるが故に、二人は激しく愛し合った。と言っても、シンイチには快楽はなくともただひたすらトオルのペニスを己のアヌスで締め付け、トオルは快楽の赴くがままにシンイチのアヌスを己のペニスで激しく突きまくった。
ベッドの中で二人はシーツにくるまっていた。
「僕の事・・・説明していなかったね・・・」
シンイチのアナルの中にまた激しく射精した後で少し落ち着いてから―――射精直後は激しいピストン運動で腰を振り過ぎて体力を消耗し、シンイチの傍に横になって息を荒げていた訳だが―――トオルはぽつりぽつりと話し始めた。
ちなみに、まだトオルのペニスはフル勃起したままでシンイチのアナルに嵌っている。
「僕は・・・孤児院育ちだったけど・・・10歳の時、レイナと同じ日に最初の養子に出されたんだ・・・」
そして練芙学園中等部に入学した際に二人は綾見レイナ、凪羅トオルという姓名で再会したのだがそれはそうとして・・・。
「今の僕の保護者はとってもいい人で・・・とても忙しい人なんだけど、僕に自由と責任という言葉の正しい意味を教えてくれた・・・」
勿論、その保護者はとある理由で自分の仕事をトオルには正しくは教えていなかったのだがそれはさておいて・・・。
「最初の保護者は最悪だった・・・いや、保護者でもなんでもなかった・・・」
トオルを引き取った女はトオルを虐待し、アナルレイプした。その目的は、日本の男子の総アナル奴隷化という常軌を逸した狂気のものであり、その手始めとしてトオルが狙われたのだった。正にこれを(キ)と言わずして何とするか・・・。だが、トオルの不幸はまだ終わらない。その女は自分の情夫にもトオルをアナルレイプさせ続けたのだ。そんな地獄の日々は、その非人としか言えない男女の死によって終わったのだが・・・。
「・・・そんな経験があるから・・・僕は普通の男子とは・・・違うのかもしれない・・・」
もしかしたら、それ故にアスリンがシンイチに無理矢理見させ続けていた腐女子御用達の薄い本を見ても酷い嫌悪感を抱く事も無かったのかもしれない。
もしかしたら、それ故にドホモルンクルリンが初めてかなりの高効果を発揮したかのようにイツコやアスリンにある意味錯覚させたのかもしれない。
もしかしたら、それ故に二人は出会う運命にあったのかもしれない。
「僕は・・・君に出会うために生まれたのかもしれない・・・」
「トオルくん・・・」
シンイチのアヌスとトオルのペニスがつながったままで―――もう、シンイチはそれで酷い不快感を覚える事は無くなっていたし、何故かトオルのペニスであれば違和感もほとんど無かった・・・激しいアナルセックスでアヌスが少々弛緩してしまっていたせいかもしれない―――それ故に二人はベッドに横を向いて横たわっていたので、二人は向き合っていた。
「何だか・・・そう言ってくれて・・・嬉しい・・・」
勿論、トオルの言葉はある嗜好の人間が聞くと、それは愛の告白も同然と解釈されるらしいが、シンイチは別にそんな気分ではなくとも、自分に対する友好的な心情の吐露である事であるとは理解できたので、素直に自分の気持ちをトオルに言う事ができた。
「本当に・・・シンイチくんは素直だね・・・好意に値するよ」
「え?・・・それって・・・」
「好きって事さ」
いよいよ、次期生徒会総選挙が近づいてきた。勿論、生徒一人当たり投票は一人しかできないので、搾取目的(しかもそれに気づいているオタは一人としていないという)で開催される、どこかの集団アイドルについての人気投票を題目とした総選挙という名のイベントとは全く違って公正な選挙である。
もっとも、投票と開票は公正だが、その選挙運動は証拠さえつかませなければルール違反も不問にされると勘違いしている女子生徒もいたようだ。
「考えたんだけどさ、アイツの女装写真とかばらまいたらいいと思うんだけどぉ~」
ブルマー叛逆同盟の三人はアスリンへの選挙協力のためにシンイチの人気を下げようと考え、シンイチの女装写真―――と言っても、勿論、公になっている文化祭でのシンデレラ姿ではなく、ブルマー女装姿―――を校内にばらまこうと思いついたのだ。と言っても、勿論その三人にはまだ例のアスリンやサトミによって撮影された女子の体操服姿(ブルマー姿や水着姿やレオタード姿)や女子の制服姿などの写真を見せた事は無い。つまりどういう事かと言うと、シンイチの顔をCG合成しようという事だった。それで、ブルマー女装したいからブルマー廃止に反対した、という嘘の噂を流すのが目的だった。
「そんな写真を見たら誰もがキモッ!って感じて、一気に人気が無くなるんじゃね?」
「そうなったらもうアイツは生徒会長に当選するどころか、後ろ指差され者になって蔑まれ惨めな境遇になって転校していなくなる、ってなるジャン?」
三人は最高のアイデアを考えついたと思ってアスリンもそれに同意するだろうと信じていたが。
「全然ダメ」
描いたシナリオは呆気なく却下された。
「「「何でよ!?」」」
「あのねぇ、シンイチが落ちるだけで済むと思ってるの?そんな写真がばらまかれたら、話が大事になってしまうじゃない。その写真はどうやって撮られたのか、誰がばらまいたのか、それを調べられる事になるわ」
つまり、痛い腹をさらに抉られる事態になり得る訳だが、やはりアスリンが見込んだとおり、この三人は頭の出来も残念だったようだ。
「それに、今時CG合成なんてすぐに見破られるのよ。お話にならないわ」
だからこそアスリンはCG合成などではなくて本当にシンイチが女装―――その方向は勿論サトミ主導だったが―――している姿を写真・動画で撮影する事にこだわったのだ。
“うぐぐ・・・”
アスリンに弾丸のような速さで論破されてしまってブルマー叛逆同盟の三人はグギギ・・・と言うような表情になるのを堪えて押し黙った。
「どうせ足を引っ張るなら、それらしい事を噂で流せばいいのよ」
「それらしい、って?」
「簡単な事よ。例えば・・・シンイチとトオルは仲がいい、というのは疑いのない事実でしょ?」
そこまでアスリンに言われて、腐女子でもあった三人はようやく気が付いた。
「あっそうか、アイツらがデキてるって言いふらせばいーんだ!」
勿論、デキてるというのはほもーんであるという意味であった。
早速三人は行動を開始した。と言っても、生徒が多く集まっている所に行って生徒会総選挙の話題を持ち出して、シンイチとトオルが仲がいい事から二人はほもーんな関係じゃないのか?などとテケトーな事をべらべらと喋る、というだけの話だったが。
しかし、その三人が言いたい事だけ言ってその場から去っていくと、そこにいて話を小耳にはさんだ生徒達は・・・
「何なの、あいつら・・・事もあろうに猪狩くんと凪羅先輩がデキてるなんて・・・」
「腐女子の妄想って言うの?どうしようもないわね、自分達だけ盛り上がって周りの人間を不快にさせて・・・」
「ってゆーか、あいつらってブルマーを廃止しろって騒いでた連中でしょ?」
「そう言えば・・・あっ!じゃあ、何?猪狩くんとかが生徒総会でブルマー廃止に反対して、それでワガママが通らなかったって事で逆恨みして・・・」
「それで猪狩くんと凪羅先輩をほもーんとか言ってディスってる訳!?サイテーじゃん!!」
ブルマー叛逆同盟の三人はアスリンを勝たせようと行動しているつもりのようだったが、実際はシンイチへの票を多くしているだけであった。
シンイチに自分勝手な理由で反感を持っている、という普段の行いによって、三人は誰からも相手にされていない事に気付いていなかったようだ。
という事で、アスリンはブルマー叛逆同盟の行動によって自分への追い風が強くなるかと思いきや。
「猪狩くん、選挙頑張ってね」
「応援してまーす」
「来年の中等部を頼むわね」
と、時々シンイチとすれ違う女子生徒は同級生も下級生も上級生も誰もが選挙頑張れとか応援してるとか後を頼むとか言うのがだんだん目に付くようになってきて、ようやくアスリンはあの三人の行動に何の効果も無かった(てゆーか、逆効果だった?)事に気付き始めた。勿論、その三人にその行動を取るように白羽の矢を立てた自分の人選が悪かった事には気付きもしなかったが。
そこで、次にアスリンが考えたシンイチへのネガティブ・キャンペーンは・・・何とシンイチとレイナのロマンスをデッチ上げる事だった。勿論、アスリンに従わざるを得ないシンイチはともかく、レイナがそうそう簡単にアスリン―――どうやら生徒会役員選挙ではシンイチのライバルになる事は既に知られている―――の罠に引っ掛かるような隙を見せる筈がない訳で、二人を密会させてその証拠写真を盗撮するなんて作戦は成功率0%だったが。
「姉妹校の贅嶺女学園だけでなく、もっと他校との交流を深めたい、ってか・・・いいよね、アスリンの公約。他の学校の人との出会いが増えるって事じゃん」
「こっちの、生徒会をもっと開かれたものにしたい、ってーのは何かズレてるんだよね・・・そんな事誰も期待してねーっての」
「ま、今の生徒会長と乳繰り合ってる仲じゃ、どーせテケトーな公約しか出せないんじゃね?」
校内の掲示板に張り出してあった校内新聞(勿論、新聞部が発行したもので、生徒会役員選挙の候補者の選挙公約が纏められていた)の前で、ブルマー叛逆同盟の三人はそんな話をこれ見よがしあるいは聞きよがしに口にした。勿論、その目的は、シンイチとレイナがデキてる―――今度はほもーんではなく恋愛関係という意味である―――という噂を流して、シンイチが恋愛がらみで生徒会と癒着しているという疑惑誘導、もしくはそれによるシンイチへの好意的あるいは恋愛的な感情の女子生徒の支持下げであった。
勿論、そんな事を言い出した当の連中がまたしてもシンイチに反感を持っていると周囲に知れ渡っている―――という事を本人達は全く気付いていない―――例のブルマー叛逆同盟の三人だった事もあって、全く信憑性は無いと思われたのだが、やはり恋する乙女たちや美少女に憧れる一般男子とすれば何とは無しに気に掛かる事であって、そこで本当の所はどうかと本人ではない関係者が質問責めに逢う事になってしまった。流石に本人に訊くのも憚られるてゆーか勇気が出なかったらしい。
「いやいや、それはちょっと考えられないなぁ」
「どっちかと言うと、レイナ先輩はシンイチくんを何となく苦手に思ってる節が有るのよね」
「絶対、絶対、絶対x4、ゼーッタイ、有り得ないっ!!!」
現生徒会役員であるヒロキやモモコ、そして手伝いのシゲキはしっかり否定した。
かつて自分と意見を正反対にしていた相手と和解して味方に引き入れるという事で少しは協調性をアピールできたアスリンだったが、その三人が結局シンイチ憎しで凝り固まっている残念な女子生徒だった事が災いしてアスリンは自分で自分の首を絞める事になった。
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