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第10話
第10話
「凄かったね・・・」
「本当に生やをいが見られるなんて・・・」
「流石はアスリンね・・・」
リエ・ミエ・ミチコの三人は、今日の宴にいたく感激しながらも、アスリンが本当に只者では無かった事を知って初めてアスリンの野望を聞かされた時の事に思いを馳せていた。
「それにしても、アスリンが萩生一族の直系だなんて予想もしなかったわね・・・」
「そういう後ろ盾を持っていたからこそ、あんな宴を開けた訳ね・・・」
「これからもあやかりたいものね・・・」
サエコ・アケミ・ユミの三人は、今日の宴にいたく感動しながらも、アスリンが本当に只者では無かった事を知って初めてアスリンからシンイチを紹介された時の事を思い出していた。
「次は何としても私も参加してみたいものだわ」
チコは今日の宴で腐女子の究極の?野望であるフタナリ化―――まあ、サトミもイツコも双方向ディルドだったので厳密には違うが、ペニスを持った女として生まれてくる事等かなりの奇跡でしかないので、現実的には疑似射精機能付き双方向ディルドを装着するしかない訳で―――して男をアナルレイプするという、言わばその模擬シーンを見せつけられて今日のイツコが心底羨ましく思えていた。
「そうだ、次は私達の学校の方でやって貰いましょうよ」
「BL本買うためにエンコーしてる奴も多いんだし」
「そいつらに声を掛けたら、きっと参加費だってものすごく多くなるから、アスリンもOK出してくれるでしょ」
「うるさいセンセーの方もお金かそのエンコーしてる奴が相手したらきっと黙らせる事もできるって」
「場所はどうする?保健室とかどっかの部屋だとまたアスリンがカメラ設定させろってうるさいかもしれないし」
「中庭とかはどう?ベンチにあの二人が横になってさ、69で同時フェラしてさ、それから・・・」
「プールサイドとかどう?あのシンイチってコはどうも女装してないとチンチンおっきしないみたいだし」
「うーん、やっぱりいきなり屋外はマズイんじゃないかな?無関係の人に見られる可能性もあるわよ」
「となるとやっぱり室内か・・・大学部の方でめったに使われてない教室とかがあるかもしれないわ」
贅嶺女学園の腐女子達の妄想はやいのやいの言いながら終わりそうにない。が、ちょうど話を自分に振られたと思ったチコは・・・。
「貴女達、アスリンを甘く見過ぎよ。あの宴を開くまでにどれほどアスリンが何ステップも計画・準備してきたかを考えれば、そうそうこちらの希望が通る筈が無いわ」
サトミの女装ショタコン趣味を上手く利用してシンイチを女装趣味の変態に堕とし、レズの変態教師であるイツコを「シンイチのアナルマゾほもーん奴隷化」というこれぞ変態という嗜好で興味を持たせて、サトミ・イツコの二人の成人女性(しかも学校の教師)を抱き込み、自分の後ろ盾―――つまりお金―――にモノを言わせて三人組のリーダーに納まったアスリンである。
「用意周到な準備・計画をしてそれを実行に移して成功させる・・・萩生一族の末裔なだけあるわ。はっきり言って、彼女に逆らったら、もしかしたら本当に危険かもしれないんだから」
チコのセッキョーに6人のJKは少々浮かれ過ぎていたと気付いて項垂れた。
「参加費はまあみんな問題は無いと思うけど・・・渡されたお薬をどうすればいいのか・・・頭が痛いわ・・・」
男性にドホモルンクルリンを飲ませて反応を調べたい、というイツコの要望だが、身近にいる男性と言えばまずは自分達の父親とか兄弟だが、流石にそれはいくらなんでもマズイだろう。となるとその次は、やはり学園の先生たちとなるが勿論それも何となくヤバそうな気がする。じゃあその次は・・・用務員のおじいさんを被験者にしたらそれも意味が無いとイツコが怒るかもしれない。勿論、学園の中にはエンコーしている生徒もいるので彼女達に渡して依頼したら・・・それも、エンコーの相手がほもーんになったら勿論彼女達もお金を稼げなくなる可能性大なので拒否されるだろうし・・・。
一方、ブルマー叛逆同盟の三人、キヨミ・コトコ・ヒデコの方はと言えば・・・
「どうすんの?参加費一万円なんておこずかい全部も同じじゃん」
「参加費に使ったら一か月は何も遊べなくなっちゃうし」
「猪狩にばらすって言って金出させたらどうよ?」
「は?そんな事したらアスリンにバレてこっちがトバッチリじゃん!」
「今アスリンを敵に回すのはマズイし」
「じゃあ、凪羅の方に言ったらどうよ?」
「は?バカじゃね?それで凪羅が猪狩にチクったら結局アスリンにバレるじゃん!」
「アンタら、喧嘩はやめなよ。そんなことしたって意味無いし」
「なら、猪狩と凪羅に同時にアスリンに言わない事も含めて脅したらどうよ?」
結局、同じ事を言い合って同じ結論になってしまった。
「「「だったら、直接二人にやをれって言えば・・・」」」
やはり、デブ・ブス・ネクラの三拍子に残念なオツムとあっては、男子女子の誰からも相手にされないのも仕方ないか・・・。
ブルマー叛逆同盟の三人は悪あがきの結果、最低最悪の決定をしてしまった。
宴のフィナーレの余韻に浸っていたアスリンを覚醒させたのはケータイの呼び出しコールだった。こんな最中?に呼び出しコール音が鳴るというのは、その相手だけはコール無視機能をカットしておいたから・・・つまりそれだけ重要な相手であった。
「は、はい、アスリンですぅ」
その「どこから声を出してんのよ?」といういつもとは全然違うアスリンの甘ったれた声を聞いて、10人の腐女子は電話の相手が誰なのか???状態だったが、サトミとイツコは気付いていた。
““剣崎氏からね・・・””
ビンゴである。
「剣崎です。少々突然で済みませんが、驚かないで聞いて下さい。猪狩シンイチを我々の陣営に取り込むための貴女に与えられたミッションについてですが・・・」
「は、はいっ、それはもう、順調です」
「それは結構。それでですね、萩生コンツェルン総帥が君と少し話したいと言っています」
「ええっ!?」
萩生コンツェルン総帥・萩生セツオとアスリンの関係は、簡単に言えば祖父と孫娘となる。アスリンの母親は惣竜キョウコ・ツェッペリンというドイツ系日系人であり、萩生一族とは無関係だから、アスリンの父親が萩生一族となる。ではその父親は・・・・・・実は本来なら現在は萩生コンツェルンの総帥後継者筆頭の筈の嫡男・萩生ユウイチロウであった。だが、ユウイチロウは残念ながら早逝してしまった。その死は、実はきな臭い話―――萩生コンツェルンが急速な拡大を続ける間にいろいろと発生した問題・・・・・・所謂、反社会勢力との血を血で洗ういざこざ・・・・・・に巻き込まれて命を落としてしまった訳である―――なのでその詳細は省略する。だが、こんな事も有ろうかと・・・・・・そんな事態も想定していたのかどうかは不明だが、ユウイチロウは自分の精子を世界中のあちこちの施設で冷凍保存していた。その精子をアスリンの母・キョウコが買って人工授精により、アスリンは試験管ベビーとして誕生したのだ。つまり、アスリンにとっては腹違いの兄弟姉妹が世界中にいる訳で、そしてそれは全員が萩生コンツェルン総帥の直系の孫という事になり、アスリンは萩生一族の激しい後継者争いの真っただ中にいるのだが、勿論そんな詳細までは母も剣崎も説明してはいなかった。それはそれとして。
「今からですが、いいですか?」
「い、今からですか?あ、いえ、異存はありません。それで、どちらに伺えば―――」
「そのままで大丈夫ですよ。話と言っても電話ですから」
「あ・・・そうですか・・・」
「では、総帥と換わるのでよろしいですね?」
「は、はい」
「では、総帥、どうぞ」
「うむ・・・惣竜・アスリン・ツェッペリンだな?」
「は、はい、そうです」
「猪狩タツヒコの孫とやらをたらし込む計画は順調に進んでおるそうだな。事が成功した暁には儂の正式な孫娘として迎えてやるから、引き続いて励むようにな。以上」
だが、それだけ一方的に言ってグレート萩生はアスリンとの会話を終了させてしまった。
「あ、あの、御爺様・・・」
「残念ですが、その言葉は貴女が正式に萩生一族の一員として認められてからでないと言えませんよ」
すぐに電話の向こうの相手はまた剣崎に戻ってしまったようだ。
「私も一度現在までの状況を確認したいから、貴女と猪狩シンイチと二人一緒に話を聞いてみたいので、心得ておいて下さい」
「は、はい、わかりました」
「それではこれで」
剣崎も忙しいらしく、すぐに電話は切れてしまった。
“・・・剣崎さん・・・”
ケータイのディスプレイの画面の「剣崎さん♡」という着電相手を示す文字を見ながらうっとりした表情になるアスリンだが。
「オッパイもオマンコも曝け出して何やってんだか・・・」
「様にならないわよ、アスリン」
サトミとイツコの指摘したとおり、オナニーに夢中でいつの間にか制服の前ボタンは全部外してブラジャーも上にずらしてしまってさらにパンティも引き下ろして片方の足首に引っ掛かったままというその姿はかなりみっともなかった。
「な、何かな、話って・・・」
とある公園―――木々がかなり生い茂ってトンネルの回廊みたいになっている事からジャングルガーデンとも呼ばれている―――のある一画にシンイチとトオルを呼びだしたのは、ブルマー叛逆同盟の三人だった。
「この前の選挙で、アスリンは協力してくれたら私達の要望を叶えてくれるって言ったのに、約束を守らなかった」
「だから、かわりにそれをあんた達にやって貰うわ」
「嫌とは言わせないからね」
三人の手には、いつぞやのシンイチとトオルが写っている画像をプリントアウトしたものがあった。
「その要求って?」
「私達がブルマーを穿かなくてもいいように特例を求めてくれる筈だったのよ」
だが、正確に言えば、アスリンの選挙運動に協力してくれたら特例を認めるように努力する、であって、努力義務に過ぎず、確約はしていない。自分達の都合がいいように解釈したそれが最初から間違っていた事に気付いていないブルマー叛逆同盟三人衆であったが。しかも連中がアスリンの選挙運動に協力したかと言えば、本人達はそのつもりでも、自らが根も葉もないデマをばらまいた事が周知の事実である以上、協力ではなく妨害と言った方が正しかった。ならば、アスリンがその三人との約束を反故にしようとするのも当然であろう。
「なぜ、アスリンはその約束を反故にしたの?」
「うっさいわね!そんな事はどうでもいいのよ!幸いにもあんたは生徒会長、アスリンの奴は副会長。あんたの方が偉いんだから、あんた達から言えばアスリンもおとなしく―――」
「彼女に僕達の要望が通ると思うかい?しかも彼女の意向と反する事だよ?全く無理だね」
「あっそう、だったら、これの焼き増しをホコ天にでもばらまいてやろうかしらね?」
「そうなったら、もう、あんた達は生きてられないわよ?」
「それとも一生ほもーんを売りにウチらみたいな乙女のオナペットとして生きる?」
““・・・・・・乙女、って何?””
目の前の三人が乙女と自称した事にシンイチもトオルも頭の上に?を浮かべたがそれはともかく。
「そんな・・・そんなの・・・無理だよ・・・」
「むしろ、君たちが交渉するよりもハードルが高い、って事が理解できないのかい?」
同好の士が叶えられない要望をどうして生殺与奪を握られている者が要望して叶えられるのか、オツムの弱い三人は理解できないようだった。
「あんた達の意見なんかウチらの知った事じゃないってーの!」
「あんた達はウチらに逆らったりはできないってわからないの?バカじゃね?」
「あんた達にはこれがある以上、ウチらのいう事は聞いてもらうからね!」
ブルマー叛逆同盟の三人は手にした写真をシンイチとトオルに突き付けた。そしてそれで何事かを思い出したようだ。
「そうそう、もう、いちいちアスリンの奴にお願いなんかする必要無かったじゃん!」
「いちいち一万円なんか払ってられるかっつーの!」
「あいつがウチらを除け者にしようって事ぐらいわかってるし!」
一万円、というキーワードで、あの時の宴でアスリンが何事かを宣言して10人の腐女子に何事かを約束させていた事をトオルは思い出した。宴の参加費として一万円を徴収するとか言っていたのだ。つまり、一万円を出さねば、今後はあの宴に参加する事はできない。
「だから、あんた達はまたフェラチオサービスとかやって稼いだ金をウチらに出す事」
「何言ってんのよ、そんな事しなくたって、今ここで私達のためにほもーんショーをやれって言えばいいじゃん」
「あそっか、その方が手間省けるし、いいわね。そのうち、贅嶺女学園の人も巻き込んで、アスリンの奴を追放しちゃおうよ」
ブルマー叛逆同盟の三人が薄ら笑いを浮かべた時。
「誰を追放するって?」
その声にブルマー叛逆同盟の三人が驚愕の表情で振り向いたその背後に、アスリンが黒服の女性を後ろに従えて立っていた。
「「「ア、ア、アスリン!!!何でここに???おまえらチクッたな!!!」」」
その焦燥・驚愕・逆ギレの声は見事に三人ともシンクロしていた。って何の意味も無いが。
「僕達は何も・・・」
「いちいち報告する筈がないだろう?」
シンイチとトオルは下校しようとしてそれぞれの靴箱に入っていた呼び出し状・・・それには勿論アスリンに黙っているように、約束を破ったり来なかったら例の写真をバラまくという脅迫もあった・・・に従ってここに来ただけなのだから。
「そのとおりよ。あんた達の事だから、どうせ無い頭で考えたってこの程度だろうって思って、ちゃんとこっちもマークしてたのよ」
そしてアスリンは指をパチンと鳴らした。すると、どこにいたのか三人の黒服達がいきなり出てきてあっと言う間にブルマー叛逆同盟の三人を後ろ手に拘束してしまった。
「「「は、離して、離せーっ」」」
だが、その黒服はいずれも剣崎キョウヤの配下、もっと正確に言えば例の対非合法組織部門のその手のプロだった訳で、ブルマー叛逆同盟の三人について、一気に両腕も両脚も完全に動けなく固めてしまった。すかさず、アスリンはブルマー叛逆同盟の三人が手から落とした写真を拾って回収した。
「こんな感じでいいかしら?」
「スゴイですね、流石プロです、ヒトミさん」
その黒服の女性は、キョウヤの秘書で有事には副官となる加賀ヒトミであった。
「「「ふじこフジコ~~~!!!」」」
「おまエラ、うっさい!」
ぱん!パン!PAN!と頬に平手打ちが放たれた小気味よい音が三つ響き、ブルマー叛逆同盟の三人全員の頬に綺麗な紅葉が張り付いた。そしてすぐに猿轡もされてその三人は沈黙した。
「うーん、やっぱり顔はやめてボディにした方が・・・」
「この三人にその仁義は必要無いでしょ?これが男女平等というものです。V(サイン)」
ヒトミが案じたのは、女性は顔が大事だからと言う理由なのだが、アスリンの言葉はブルマー叛逆同盟が今までブルマー廃止に関していろいろと口にしてきた主張の一つだったのが痛快だった。
「それにしても、この私も見くびられたもんねぇ・・・」
いや、それ以前にオツムが足りなかった故の愚行と簡単に片づけられるものだったが。
「ま、私、ひいては萩生一族に泥を塗ったも同然なんだから・・・おまエラヒトモドキの命はもう崖っぷちね」
その時のアスリンの顔はシンイチやトオルからは見えなかったが、拘束されたブルマー叛逆同盟の三人全員が驚愕に目を見開いて一気に顔が真っ青になった事から、昏い邪悪に満ちた薄ら笑い――略して邪笑―――を見せていたに違いない。
「ヒトミさん、後始末はお任せという事で、よろしくお願いします」
「わかったわ。それでは」
ヒトミは目配せすると、三人の黒服はブルマー叛逆同盟の三人の首筋に軽く一撃を与えて失神させると、軽々と肩に担いで―――背中を下にしているのがシャレが効いていた―――ヒトミと一緒に何処へと去っていった。おそらくどこかの出口に停め置いた車に放り込んで何処へと消えたのだろう。
「これでもう、あの三人が二度と私達の前に現れる事は無くなったから、安心していいわよ」
アスリンは一瞬で邪笑を微笑に変えてシンイチとトオルに振り返って告げた。しかし、二人は安心するどころか、自分達の窮地を救ってくれたとは言え、アスリンの権力の乱用を目の当たりにしてぎこちなく無言で頷くだけだった。それに、アスリンが微笑の裏に邪笑を隠している事ぐらい、シンイチもトオルも気付いていた。
「・・・とは言え、あの三バカにほもーんやれって言われて、あんた達、もう疼いてるんじゃない?」
「そ、そんな事は・・・」
シンイチはすぐに否定したが、トオルは顔を背けるだけだった。さっきまでシンイチと一緒にここに来るまで何も意識していなかったのに、ついさっき三バカにほもーんショーをしろと言われて無意識に追いやっていたその感情が戻ってきていたのだ。それをアスリンに見透かされてしまったと誤解したトオルは自分の欲望がむくむくと鎌首をもたげて来ている事に気付いていなかった。
それを目ざとく発見したのは、やはり男のコのそこに興味が有り過ぎる世代の女のコであるアスリンだった。
「ぷぷぷ、隠そうとしたって無理よ、トオル。あんたのチンポ、どんどん膨らんできてるじゃん?もうすぐ、フル勃起になるんじゃない?」
「ト・・・トオルくん?」
「すまない、シンイチくん・・・君を好きな気持ちは・・・止めようとしても、もう止まらないんだ・・・」
トオルはシンイチを背後から抱きしめた。シンイチは自分の臀部に押し付けられているトオルの下腹部の感触で、トオルが既にフル勃起してしまっている事に気付いた。しかし、シンイチ自身は全く反応が無い。やはり、ドホモルンクルリンは今のところその真の効力はトオルにしか発揮できていないようだった。
“トオルって、もしかしたら根っからのほもーんだったのかしらね?まあ、いいわ。シンイチが完全にほもーんにならなくたって、アナルマゾ奴隷にするのは決まってるんだもの。それに、本気で嫌がってるシンイチを見る方が楽しいし・・・”
サトミとイツコが本当に二人が思い合って結び付く事が最良と考えているのに対し、アスリンの方はあくまでもシンイチを不幸のどん底に叩き落す事を最高と考えているところが、バックの資金力はさておき三人組の中で最年少のアスリンがリーダーになっている所以でもあった。
「やれやれ、この変態ほもーん達にも困ったもんねぇ、所かまわず欲情して、みっともないったらありゃしない」
では、所かまわずシンイチいじめを妄想しているアスリンはどうなんだ?とサトミやイツコがツッコミ入れそうだが。
「こんな所だと、もしかしたら人に見られない可能性も無いとは言い切れないわ。ヤルならちゃっちゃとやってしまいなさいよ」
「ごめん・・・シンイチくん・・・」
「ううん、気にしないで、トオルくん・・・」
シンイチはトオルの前にしゃがみ込むと、手慣れた手つきでトオルのペニスを取り出した。
「口で・・・ガマンしてね・・・」
「うん、お願いするよ・・・」
そして、シンイチはトオルのペニスをフェラチオし始めた。今までに何度も、どこでも―――もっとも、練芙学園の中ではシンイチが女装して贅嶺女学園のJC・佳和ユイコに変身してのケースが多かったが―――その行為はしているので、すぐに二人は風因気に流され、そして・・・
「くぅっ・・・シンイチくん・・・でっ・・・出るうぅっ!」
トオルは自分のペニスから白濁した粘液をシンイチの口腔にしとどに迸らせた。
「え、もう?・・・トオルっって、早漏なの?もっと我慢して私を楽しませてほしかったんだけどね」
とアスリンがしれーっとイヤミっぽい言葉を掛けるが、二人ともこんな行為はさっさと終わらせたいという気持ちは同じだったようで、早くイキたい・イカせたいという想いがシンクロすれば、早く終える事ができたのも当然だったのだが、それではアスリンの方が面白くなかったようで・・・。
「この中なら安心ね。人に見られる可能性は無いから、存分に愉しみなさいな・・・ククククク・・・」
アスリンは二人を公園のトイレに連れてきて、男子トイレの個室内でほもーんをしろと言ってきたのだ。そして、それを二人は拒否できる筈も無かった。
「あぁっ・・・ト、トオルくん・・・」
「うぅっ・・・シ、シンイチくん・・・」
壁に手をついてお尻、いや、アヌスを差し出したシンイチにトオルがペニスを激しく突き込む姿を見て、またアスリンの脳内に怪しい妄想が広がった。
“ここで・・・トオルでない屈強な黒人男性達に・・・シンイチがアヌスや口を替わるがわるレイプされて・・・泣き喚くのを見るのも愉しそう・・・ぐふふのふ”
「・・・ふぅ・・・」
「何、どうしたの?ツブラ・・・いつも元気の貴女が溜息をつくなんて珍しいね」
「ノナか・・・いや、あのさ・・・あのコ、今頃どうしてるのかな、ってさ・・・」
「あのコ?」
すると、ツブラは人差指一本だけ立てた拳を股間に持っていってそれとなくわかるようにした。
「あ、あぁ、あのコ・・・ユイコさんね」
街ですれ違ったとしても、決して誰も自分だとは気付かないだろう、とユイコはさみしそうに言っていたのが忘れられなかった。
「えーと、ユイコさんって、あのオチンチンがついてたフタナリさんですね?」
「え?違うよ、変態女装美少年でしょ?」
ノナとツブラの後ろから話に加わってきたのは双子のミチルとミサキ。
「そこを除けば本当に女のコに見えたのに・・・」
「バレエも凄く上達しているってキヌコ先生も褒めていたのにね・・・」
さらにアロエとマヤも話に乗ってきた。
「どうしていきなりやめちゃったのかしらね?」
「チハヤさんが毛嫌いしたからとか?」
「ちょっと待ってよ!それは、最初はイヤだったけどさ、でもホントに最初だけで、途中から別にちゃんと時々話もしたりして仲良くなってたし!」
チハヤもすぐにやってきて否定した。
「・・・それに・・・いい目の保養になったし・・・」
ユイコはただの女装美少年ではない、女装して性的興奮してペニスをフル勃起させてしまう変態だったのだ。しかもブルセラムーン・プティットとかプリティーキューンなどのコスプレっぽい超ハイレグレオタードを着ていたので、フル勃起したペニスが内側からレオタードにシルエットをクッキリさせて形が丸わかりとなってしまっていては、性欲の権化と言われるJC~JKはユイコの姿を思い出すたびに―――流石にレッスン中はバレエに集中していたので意識の奥底に封じ込まれていたが―――性欲がムラムラと沸き上がってきて、全員が深夜に自室のベッドの中でオナニーをした事も一度や二度では無かったらしい。
「お別れの日の彼女のバレエはエロスが爆発していましたネ」
「初めて見たトコロテン、とっても感激したヨ」
フランソワとロビンは事も有ろうに?ユイコがお別れの日に見せてくれたエロチックなバレエ―――レッスンの時から普段とは違ってほとんど透けてみえるベージュのハイレグボディストッキングだったのでフル勃起したペニスが丸わかりだったし、最後のパ・パ・ドゥで披露した衣装は露出用のチュチュだったのでやはりフル勃起したペニスが丸見えになる事もあった―――の事を思い出してしまった。
ユイコはそこにいた9人のバレリーナの誰もが見た事が無かったフル勃起したペニスを開チンしただけでなく、オナニーして射精するシーンまで披露してくれたのだ。勿論、それは表向きは彼女たちに対する感謝・御礼と称していたが、その裏では三人組の邪な欲望が蠢いていた事等、彼女達が知る筈も無かった。
「わぁ・・・フランソワさんもロビンさんもエッチですぅ・・・」
「お国柄、オープンな性格だしね・・・」
等とフロアで車座になってきゃいきゃいダベっていると、控室のドアが開いてキヌコが姿を現した。
「はい、休憩時間は終わりですよ~」
「「「「「「「「「は~い」」」」」」」」」
バレリーナ・ナインはキヌコの合図でまたバレエのレッスンに戻っていった。
その頃、シンイチは何をしていたか?
「アンタ達、もっと積極的に絡みなさいよ!チコさんの薄い本の参考として使って貰うんだから!」
サトミ邸に呼び出されたトオルは、アスリンの有無を言わせぬ命令で一糸纏わぬ姿にさせられ、同じく一糸纏わぬ姿にさせられたシンイチと共にアスリンの構えるデジカメの前で様々なポーズを取らされた。そうやって二人の絡む構図の写真をチコに渡して彼女が作る薄い本の参考にして貰う・・・というのがお題目だが、勿論その写真は自分でもズリネタに使う他、次のパーティーで参加する腐女子達に生写真販売する事も考えていた。
前回のパーティーもそれまでの様々な企みも全部しっかり録画してきている―――それ故に、それが脅迫の材料となっており、シンイチとトオルはそれが世に出れば身の破滅になってしまうのでアスリンの邪悪な欲望に従わざるをえないのだ―――のだが、それらの映像はアスリン、サトミ、イツコの三人以外には公開されていない。腐女子達にとっては垂涎の生やをいシーンは脳裏に記憶した光景を脳内再生してズリネタにせざるをえなかった。そこで、実際に生やをい写真があれば、脳内の不確かな曖昧なビジュアルよりも写真というやっぱりしっかりはっきりくっきりなビジュアルがあった方がオナニーでの興奮の度合いもより昂るというものと考えたのだ。
「ほらっ、シンイチ!せっかく愛しのトオルのチンポがフル勃起してんだから、さっさと口に咥えてしゃぶりなさいよ!トオルはバイヴを使ってシンイチのアヌスをいじめるのよ。シンイチのチンポなんて勃とうが萎れようがどうでもいいの!」
ドホモルンクルリンのせいでしっかりトオルはシンイチに対してほもーんとなってしまったようで、全裸のシンイチに興奮してペニスをしっかりフル勃起させてしまっていた。それに対し、ほもーんではないシンイチは女装で性的興奮する事がずっと続いていたせいもあって、全裸になろうがなるまいが別に性的興奮はせずにペニスは萎れたままである。そんな二人を69の形で―――トオルが下でシンイチが上である―――絡ませたアスリンはそんな命令を出した。シンイチは受けであり、男のコのチンポを積極的に愛撫しつつ、アヌスをいじめられるのを基本形とアスリンは考えていたようだ。シンイチをアナルマゾ奴隷にする事はするのだが、アナルレイプされてシンイチが性的興奮してペニスをフル勃起させてあまつさえ射精してしまうかどうかはもうどうでもよく―――もちろん、そんな反応をした方がそれはそれで興奮するが―――今後はマッチョな黒人男性と何とかお知り合いになってシンイチのアヌスをごん太ペニスでレイプしてもらい、それでシンイチがアヌスの痛みで泣き叫ぶ様を見てみたい、というのが最近のアスリンの邪悪な夢だった。
「ああっ!・・・い、いい、すごく、気持いいよ、シンイチくん・・・」
トオルはベッドの上でシンイチの頭を押さえてそのフェラチオによる快楽に悶えていた。一方のシンイチは、アヌスにハメ込まれたごん太バイヴがグイングインと唸りを上げてアナル内を滅茶苦茶にかき回しているというとてつもない不快感―――痛みはもう我慢できる程度になっていた―――に必死に耐えながら、早くこの恥辱から逃れたいと懸命にトオルのペニスを舐めしゃぶっていた。
アスリンの邪悪な計画でほもーんフェラを覚えさせられてしまったシンイチのフェラチオテクニックは、本職のフェラガール・フェラレディに勝るとも劣らぬモノだったが、それ以上にトオルを悶えさせているのはイツコの開発したドホモルンクルリンによる影響が大きかった。いくらフェラチオされているとは言ってもそれが同じ男性に咥えられるなんて、まず気持ち悪さが強くて普通は性的快楽など感じよう筈も無いのだが、トオルは激しく劣情を催してしまっているのだ。
「ようし、良いわよ、二人とも・・・そのままシンイチはトオルがイクまでチンポをしゃぶり続けなさい。トオルはイキたくなったら我慢しなくていいからしっかり射精しなさい。ただし、ちゃんとシンイチの口からは抜いてからよ。シンイチはトオルのザーメンをしっかり顔で受け止めるのよ。いいわね?」
腐女子が見たら泣いて喜んで―――あるいは「濡れるぜ」などと言いながら―――愛液を漏らして矢も楯もたまらずオナニーに勤しむであろう過激なやをいシーンをデジカメで撮影しながら、アスリンは自分自身も秘所を愛液でぬめらせている事も気付かず、そんなおぞましい命令を出していた。しかも、シンイチにとっては口腔をトオルのペニスが満たしているので受け答えさえできない状態なのに・・・。
「こちらは、ラングレー・コーポレーションの剣崎キョウヤさん」
「初めまして、剣崎です」
「で、こちらがクラスメートの・・・」
「は、初めまして・・・猪狩シンイチです・・・」
学校帰りについてこいと言われてアスリンに従うままにやってきたところは、ギョウザ料理が主体の中華風レストランチェーン店だった。一応ファミレスに近い形態だが、二階にはお客さんの予約状況に応じて自由に広さを変えられる、自在壁の個室も用意されていた。
そしてそこに、アスリンの後見役であるキョウヤが待っていた。
アスリンはやっぱり落ち着いた雰囲気のホテルにある☆以上のレストランを希望していたのだが、キョウヤとしてはそんな堅苦しい雰囲気ではシンイチを緊張させてしまうのではないかと思って、より大衆食堂に近い感じのこのお店を選んだのだった。
「ま、堅苦しい挨拶は抜きにして、座り給え」
「あ、はい・・・」
既にキョウヤと何度も面会して見知っている間柄のアスリンはさっさと勝手にテーブルに付いていたが、初対面の相手を前にシンイチは言われるまでは立っていた。
“ふむ、礼儀はしっかりしているようだな・・・”
その辺は幼いころから祖父ジュウゾウに教え込まれていたようだ。が、座ってもシンイチはまだ緊張しているようだった。そのままでは、シンイチの人となりもよくはわからないだろうと考えたキョウヤは
「そう緊張しなくてもいいよ。別に取って食おうという訳でもないんだし。そうだ、せっかくだからまずは食事にしよう。今日は私がスポンサーだからお金の心配はしなくてもいい。好きなものを注文し給え」
「じゃあ、私、フカヒレチャーシューメン大盛で」
臆す事無くアスリンは単品としては割とお高めの値段のものを選んだ。
「えっと・・・じゃあ、僕は・・・唐揚げチャーハン・・・唐揚げ増量でお願いします」
対するシンイチは如何にも一般庶民らしいものを選んだが、好物らしきものはしっかり増量してもらう事にした。
「ところで、君たち二人は来年から生徒会の役員になるそうだね」
「ええ・・・まぁ、周りの人からやって欲しいという話もあって・・・」
「切っ掛けは何だったのかな?」
「切っ掛け・・・ですか・・・」
まあ、シンイチは学業優秀で性格も明朗快活、唯一の弱点と言えば泳げない事だがそれ以外に運動を不得手としている事も無く、責任感もあって教師たちの覚えも目出度い・・・それだけでも次期生徒会長に推されるに十分すぎるとも言えるが、本当の切っ掛けは・・・それもあんまり突っ込まれると学校側の不祥事も出てくる訳で、シンイチはどう答えるか思案しようとしたその矢先に
「やっぱり、ブルマー廃止運動の廃止ですね」
アスリンは事も無げに口にしてしまった。
「・・・えっと、よくわからないが・・・君たちの学校もブルマーを廃止しようとしたけど、それを食い止めたという事かな?」
通常は、学校側の横暴・意味不明な校則の押し付けに生徒が反対して生徒総会でなんとか対抗する・・・一昔前の管理教育vs生徒の自由運動という構図はキョウヤも青春時代によく目にしていた訳だが。
「いえ、そうではなくて・・・」
結局、シンイチではなくアスリンがブルマー廃止運動の始まりから終わりまでを一人でキョウヤに説明してしまった。ブルマー廃止運動の廃止そしてとある教師の汚職まで暴く事になったその功績を自分一人のものとでも言いたいかのようだった。
「それで、男子のまとめ役が猪狩くんで、女子のまとめ役が私だったんです。だから、周囲から次の生徒会役員になって欲しいという話が来て、総選挙で選ばれたんです。猪狩くんが生徒会長、私は副会長になりました」
あくまでも投票は一人一票であって、どこぞのアイドルの総選挙―――その実質は、金で票がいくらでも買える人気投票に過ぎないのを頭のワルイ言い換えをしているに過ぎない―――とは全く違う、国会議員・都道府県会議員・市町村会議員と同様の真っ当な選挙であった事は言うまでもない。
“緊張しているのか、それとも人と話すのが苦手なのかな?”
ブルマー廃止運動廃止運動の話からアスリンの独壇場になってしまっている感もあったので、キョウヤはシンイチに訊いてみた。
「ブルマーって、女子生徒の体操服だよね?本来なら男子生徒は関係ない話だと思うけど、君はどう思っていたのかな?」
これはキョウヤが直接シンイチに問い掛けたので、アスリンが口を挟む事はできなかった。
「確かに最初は関係ないとか、男子が口を挟むべき事ではないとか、女子だけで解決すべき問題だとか、そんな風に思いました。でも、クラスの問題だという事でやっぱりちゃんと考えないといけないと思い直しました。それに、生徒会長になると、男女を問わず生徒からの相談があるとの事ですから、男女全ての生徒の事を考えるのが生徒会長の仕事です」
勿論、そういう意識になったのはこのブルマー廃止運動事件が切っ掛けと言えばきっかけだが、その多くはトオルの指導による部分が大きかった。
「まあ、そう思うようになったのも、僕の前の生徒会役員の人が指導してくれたからですけど」
アスリンは、「どうせ人の受け売りなんじゃないの?」と茶化そうと思ったのだが、その前にシンイチが自らバラしたので口を挟む切っ掛けを失ってしまった。
ちょうどそこにタイミング良く料理が運ばれてきたので、ひとまず食事となった。
ここがレストランとかでちゃんとしたコース料理だったりすれば、テーブル・マナーなども確認できただろう。しかし、そこまでやるとシンイチの人となりを確認するというよりは値踏みするも同然になるのでキョウヤはやめたのだ。結婚する男女のお見合いの場所でもあるまいし―――まあ、将来アスリンが萩生一族の正統後継者となって猪狩シンイチと結婚する事になるのであれば、萩生コンツェルンと猪狩財閥に大きな絆ができる訳で、勿論アスリンがシンイチをたらし込むのであれば、シンイチはアスリンの為、引いては萩生コンツェルン側に有利に動く事になるだろう、というのもグレート萩生の計算の内だった―――ここはやはり男子中学生らしい自然な姿でいてくれた方がキョウヤも落ち着いてシンイチを観察できる、という事だった。
「あの、剣崎さんは食べないんですか?」
「ああ、さっきコーヒーも飲んだし、今は大丈夫だ。私に遠慮せずに食べてくれ給え」
「じゃあ、いっただきまーす」
「それでは、お言葉に甘えて・・・頂きます」
アスリンは早速レンゲを取ってラーメンのスープを味わう事から始めた。それからスープが絡んだメインの麺を味わい、フカヒレやチャーシューもそれ単独での味、そして麺とスープと一緒に食べてそれぞれの味のハーモニーを楽しむ訳だ。まあ、それも、こっちに来てラーメンを知ってから妙な方向にこだわりを持つようになったらしいが。
一方のシンイチもレンゲでチャーハンを食べ始めた。
キョウヤも日本人であるからには、麺類を食す時にすすり上げる音については外国人のような不快感など持たないが、口の中に入れたものを噛み砕いて咀嚼する時にくちゃくちゃと音を立てる、所謂「クチャラー」はお断りだった。その点でも、シンイチはクチャラーではなかったのでキョウヤも好感を持った。
「アスリン、唐揚げ、食べる?」
「あ、嬉しいな。有難う、シンイチ」
シンイチは新品の割りばしでチャーハンの脇に置かれていた数個の唐揚げを取るとテーブルの上に元から数枚置かれていた小皿―――ギョウザを食べる時に付けるタレを入れる為に元から数枚用意されているのだ―――に乗せてアスリンにあげた。増量で頼んだのはこれが目的だったようで、アスリンは箸休めに早速一つパクついた。
食事で緊張が少々解けたのか、ついいつも通りの普段の学校での二人に戻ってシンイチとアスリンは互いに苗字ではなく名前で呼び合った。そしてその事に気が付かないキョウヤでは無かった。
“ふむ、かなり親密な間柄にはなっているようだな”
アスリンは帰国子女だからファーストネームで呼ぶ事は慣れているだろうが、日本人だと彼氏彼女レベルのかなり親密な間柄でなければそんな呼び方はしない。
「君は彼女に優しいんだね」
とキョウヤはシンイチを褒めてやったつもりなのだが
「い、いや、アスリンが彼女なんて、僕はそんなつもりは・・・」
シンイチは顔を赤くして否定した。
勿論、それはシンイチの本音だった。事情を知っているサトミやイツコやサヤが見たら「さもありなん・・・」と思うだろう。自分にとんでもない衆道を強いている腐女子であるアスリンをシンイチが彼女と思うどころか、蛇蝎の如く嫌っているのが本心だったのだが、勿論それは半ば諦観を帯びた寂しげな表情の裏に隠して決して見せる事はしなかったので、シンイチの心を思いやる気も無い三人組の誰も知らない事だった。それは同じ非道をアスリンから強いられているトオルも、シンイチと心を・・・いや、身も結んだサヤでさえも気付かない事であり、さらにはイツコ自慢のDPSでさえも映像化できないものだった。もし映像化されてるならば、その負の感情故に暗黒の世界しか見えなかっただろう。そしてシンイチの心の最深部にはイツコも理解できない真っ白な世界が広がっているのだ。
ならば、今日初めて会ったキョウヤがシンイチの本心を見抜く事等できる筈も無かった。
だから、キョウヤの反応は・・・
「いや、そういう意味ではなくて、一般的な意味で彼女と言ったつもりなんだが・・・」
と言いつつアスリンの方を見ると、アスリンの方も少々頬をほんのり赤く染めていた。
当然、それは演技に過ぎない。アスリンの想い人は一方通行ではあるが、目の前にいるキョウヤなのだ。勿論、まだその想いを伝えた事はない。だから、シンイチを自分のペット兼奴隷と考えているアスリンにとっては、自分がシンイチの彼女呼ばわりされる事なんて嫌悪すべき事だった。しかし、今は、シンイチとの関係がどんなものか、その真実をキョウヤに知られる訳にもいかなかったので、アスリンはシンイチと仲の良い間柄という設定で、それを指摘されると恥じらってみせたのだ。
勿論、シンイチには学校でのモードのままでいる事を要求していた。
「あ~、美味しかった」
「御馳走様でした」
二人とも本当に、アスリンはスープも全て飲んで、完食してしまった。提供された料理は全て完食するというのも、料理人に対する礼儀であるかもしれないし、命をくれた生き物に対する礼儀であるかもしれない。それから、料理を残せばそれは残飯となって処理されてしまうので勿体無いし、eco的にも良くない。そういった事は中学生たちが自ら学ぶものではなく、親や教師たちが教育・躾ける・意識づける事であった。
となると、二人の保護者であるサトミについてもなかなかの人物であるとキョウヤは思った。まあ、実のところ、やはりそれも勘違いで、シンイチは祖父のジュウゾウから薫陶を受けたのに対し、アスリンはただ単に食い意地が張ってるだけだった。
最後に一つだけ、キョウヤはシンイチに質問してみた。
「生徒会長になったら、どんな活動をしていくのかな?」
「そうですね・・・できるだけ多くの生徒の事を考えて生徒会を運営しようと思います。さっきも言いましたけど、男子とか女子とかの分け隔ての無い、そんな学校生活を過ごせるように・・・その辺は、アスリンが副会長だから一緒にやっていけるので心強いと思ってます」
男女の分け隔ての無い、それはつまり何でもかんでも男女が一緒という訳ではなく、男女平等・男女同権ではあるが、TPOによって男女を区別する事は必要であるが差別はあってはならない・・・そういう意味である。そしてそれは、超高齢化社会である日本においては男女が同時に様々な分野において活躍すべきであるという思想・文化が広がっていかねばならないという、現代の日本の大問題への対応にも合致していると言えよう。
そんな考えを持つシンイチにやはりキョウヤは好印象を持った。事によれば、アスリンと結婚したならば、グレート萩生の思惑の斜め上を行って萩生コンツェルンと猪狩財閥の双方が供に発展していく、という可能性もあるだろう。
“彼女が萩生コンツェルンの、彼が猪狩財閥のトップになれば、双方はますます発展していく・・・”
この二大世界的企業がますます発展する事は、それだけ日本の国力をも高める事になる。そうなった場合、一般犯罪から捏造による国家的ディスカウントまで、特アからの攻撃はますます酷くなっていくだろう。そしてそれを食い止めるのが対非合法組織部門であるラングレー特殊工作部隊と言った裏の世界で暗躍する者達と言う事なのだが・・・。
アスリン、シンイチとの会食を終えたキョウヤはさっそくグレート萩生に報告しようとレポートを作ろうとしていたのだが、その矢先にアスリンから連絡があった。
「相談に乗ってほしい事があるんです・・・」
電話での話では他人に聞かれたくない、二人っきりでないと話せないという内容らしく、アスリンのミッションのサポートを担当しているキョウヤとしては彼女の心配事のケアもしなければならない。
という事で、キョウヤが臨時に宿泊しているホテルの一室で二人っきりになって、アスリンはその相談内容を告白し始めた。
それは、確かにあの会食の場では、シンイチがいなかったとしても何処に誰の耳が潜んでいるかもわからない事からアスリンが口にできない内容だった。
その告白内容は・・・アスリン曰く、シンイチを誘惑したいのだが、ライバルが多すぎるという事だった。
確かに生徒会長に推されたシンイチは男女からの信頼厚く人気も高い。特に例のブルマー廃止問題では、ブルマー叛逆同盟の男子全体に対するセクハラ的ネガティブ・キャンペーン―――ブルマー廃止に反対する男子は、女子のブルマー姿をいやらしい目で見ているからだ―――にも毅然とした態度で反論し、謂れの無い暴言と切り返した。それに、「運動の面でブルマーの方がハーパンよりも優れている」というアスリンの女子としての正論がサポートとしてあったが、「ブルマーを廃止して男女同じ体操服にする事に合理的な理由は無いが、男女が違う衣類を身にまとう事には合理的な理由がある」という男女全体を見通したシンイチの論が男子だけでなく女子にも至極当然の事だと認められた事がブルマー叛逆同盟の野望を打ち砕いた訳で、それがやはり多くの女子からも支持を得る事につながった。
先の生徒会総選挙では、クラスメートのヒカリ、マナ、マユミは一応アスリンをより強く応援してくれたが、一年生のサクラやノゾミ、同じ二年生で生徒会会計のモモコ、三年生で生徒会長のレイナとかコダマ―――最後の二人は投票権は無かったが―――はシンイチ派につくなど、シンイチへの女子の人気は一年生、二年生、三年生まで広かった。
とは言っても、普段の様子ではシンイチはアスリンに甘々と言っていいほど二人は仲が良いので学校の女子生徒の誰もがアスリンを押しのけてまでシンイチの彼女の座を狙おうなどとは考えていなかった。
「問題は、学校外でシンイチを知っている女子なんです・・・」
まだ小学生に上がる前までだが、幼いシンイチは何故かバレエを習っていたらしい。それは小学生になってすぐにやめてしまったらしいが、その理由はどうやらクラスメートの男子に「男のくせにバレエだってさ!」とバカにされたかららしい。
バレエは女性だけが行うものではなく、場面によっては男性も登場する。クラシックバレエでは確かに男性よりも女性の方が舞台に登場する人数としては多いが、それがコンテンポラリーになれば全く関係なくなる。しかし、小学生になったばかりではそんな知識など無く、バレエと言えば誰もが普通はチュチュ姿の女性バレリーナを思い浮かべるように「バレエは女子がやるもの」と思い込んでいた訳だ。
アスリンとしてはシンイチがバレエをしようがしまいが趣味の話だし別に何も口を挟む気は毛頭無かったのだが、問題は、シンイチと一緒にバレエを学んでいた女子―――それは同い年も年上も年下もいる―――が未だにシンイチと交流を続けている事のようだった。そのバレエのレッスン・スタヂオ―――と言っても、当時はユ★ザワヤの最上階のレンタル・フロアを使用していたらしいが―――でバレエを学んでいた男子はシンイチただ一人だったそうで、それ故に女子の誰もがシンイチと仲が良く、好意的なのだ。アスリンとしてはその好意というのはバレエのレッスンメイトだった誼ではなく、立派な中学生男子になったシンイチに対する異性への異性としての好意、つまり恋愛感情とほぼ同じものだと見抜いていたらしい。
そしてそのバレエのレッスンメイトの人数は9人もいるらしい。
アスリンの要望は、その9人がシンイチの前に現れないようにして貰えないか、という事だった。
萩生コンツェルンは世界的企業である故にその支社・グループ会社・子会社も無数にあり、調査の結果、その9人の中にも数名は父親の勤務先がそこに含まれている事もわかった。だが、アスリンの為に父親を通して娘にシンイチへの接触禁止をさせる―――例えば、シンイチについての捏造の悪しき噂を流したりして誘導する―――のもおかしな勘繰りをされるだろうし・・・シンイチがバレエをやめる直前に取られた集合写真とかを彼女達がアルバムに保存しているとも考えられるので、余計な事をして藪蛇にならないとも限らない。また、父親の勤務先を遠方に移してもおそらくは単身赴任か母親だけ一緒について行って娘は学校の寮に入るだろう・・・実際、9人の中に数名は既に父親が単身赴任していたり、両親が遠方に行っていて本人はバレエがしたくてこの地に留まり、学校の寮に入っている者もいたのだ。それほど、そのバレエ・スタヂオの主催者と教え子たちの絆は深いものらしい。
相手は一般市民だし、そういう穏便な手法を取れば時間も費用も掛かるのは目に見えていて、グレート萩生も渋い顔をするだろう。
「さて、どうしたものかな・・・」
「私は・・・何があってもあなたに付いて行きますわ・・・」
ベッドの中でヒトミはそっとキョウヤに寄り添った。
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