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「ちょっと目つぶってろ」  雑な手つきで顔中に消毒薬を吹き付ける金井を、薄目を開けて盗み見る。 (金井さんは、もう聞いたのかな……)  一番の親友なのだから、きっと聞いているのだろう。 (どんな人……?)  喉まで出かかった言葉を、慌ててのみこむ。確かめれば、全部本当になってしまう。もっと深い傷が、胸の奥を抉るだけだ。 「金井さん、痛い」 「我慢しろ。ざっと消毒しとくから、後でちゃんと、誠司にやってもらうんだぞ」  返事ができなかった。  金井が不思議そうな顔をする。千春はきつく目を閉じて、心をフリーズさせた。

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