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【6】-5

 窓の外に目をやると、細かい雨が降っていた。  午後のピークを過ぎて、店内に人の姿はまばらだ。この時間帯の静寂を求める常連客が数人。ミセス読書と千春たちが呼んでいる四十代から五十代くらいの女性と、『カナイ珈琲』の下の階で不動産屋を営む年齢不詳の女社長、一本裏手の通りにあるクラブのママ、ほかに五、六人の客が、思い思いの席でのんびりくつろいでいる。あとは奥にグループでひと組。  ふだんより、だいぶ少ない。  奥のソファ席に陣取っているのは、初めて見る五人組の女性グループだった。結婚式か何かの帰りなのだろう。皆、華やかなワンピースやスーツ姿で、レインコートと、同じ文字の入った大きな紙の袋が五つ、空いた席に積み上げられている。久しぶりに会って話し足りなくて、近くにあった店に入ったという印象だ。  突然、ソファ席の女性グループから大きな笑い声が上がった。  離れた場所でテーブルを拭いていた千春が、思わず振り返ったほどの大音量だった。話に熱中しすぎているのか、まわりのことが見えていないらしい。身振り手振りを交え、かなりの大声で話し続ける。  少しの間目を向けていると、急にピタリと、その声が小さくなった。ほっと胸を撫で下ろした直後、それまで以上の大きな笑い声が店内に響き渡った。 「うっそぉ。信じらんなーい」 「マジ?」 「マジ!」 「ウケるー!」  ミセス読書が眉をひそめて、チラリと視線をそちらに投げる。女社長は不機嫌そうにスマホを睨んでいる。出勤前のクラブのママは、昼寝の邪魔をされて迷惑顔だ。  しばらく様子を見ていたが、五人組の声は大きくなるばかりだった。  千春はカウンターの中の金井に声をかけた。立ったままパソコンに向かい、何か入力していた金井が、顔を上げて千春に近づいてくる。 「どうした?」 「ミセス読書たちに、何かサービスできる飲みものとかある?」 「ん? どういう……」  金井の声にかぶさるように、また大きな笑い声が上がる。ビクリとして目を向けながら、金井は「ああ」と頷いた。 「なるほど」  出ていってもらうか? と小声で聞くので、とんでもないと首を振る。 「それより、試飲用の何かがあれば……」  金井は、少し考えてからにこりと笑ってこう言った。 「ミセス読書たちがいつもオーダーするものを、試飲として出してやってくれ」

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