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【9】-14

「好き……」  涙が零れ落ちる。包み込むようなキスが瞼に落とされ、唇に移る。好き……。吐息で繰り返す。  その言葉がどこにも行ってしまわないように、永遠に閉じこめるように、ぴたりと唇を塞ぎ合う。  萎えかけた千春の陽徳を指で包み、誠司が腰を小さく揺らす。深い愉悦を与える場所を意図的に擦られ、呼吸が乱れてゆく。 「あ……、あ、あ……っ」 「は……千春……、く……」  何もわからなくなって、本能のまま貪り合った。四肢を絡め、愛しい男の律動に合わせて腰を揺らし、喘ぎ、心と身体の全部で一つになる。  一点、罪という名の雨雲が影を落とす。  雨雲からポツリと水滴が落ちる。心が冷たい罪の海に沈んでゆく。涙が頬を伝うと、誠司の舌が何度もそれを舐めた。 「千春……」 (ごめんなさい……)   しがみついた腕に力を込めて、つながった場所を強く収縮させた。 「く……」  一度動きを止めた誠司が、突然激しい動きで千春を翻弄し始めた。速く鋭い活塞が身体を奥まで貫く。背骨に沿って内臓を串刺しにされるかのように、強く、激しく突かれて悲鳴を上げた。 「あ、あ……、あああぁ……っ!」  荒い呼吸が耳にかかる。喘ぐ形に開かれた誠司の口から、熱い息が吐き出される。  汗の雫が光って落ちる。  千春の頬に。  バチが当たる。  地獄に堕ちる。  それでもいい。  それで、いい。  ほかの誰かのものだとわかっていても、誠司が欲しかった。  痛みの全て、悲しいほどの幸福の全て、そして身を切られるような罪の意識をも、身体に焼き付ける。  一生、忘れないように。

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