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【11】-4

 けれど、次の瞬間にはほとんど引きずられるように寝室まで連れていかれた。靴を脱がない外国仕様の暮らしを恨む。  ベッドに押し倒され、濡れたような黒い瞳に見下ろされる。このまま腕を伸ばして縋りつきたい衝動を抑え、最後の理性で首を振った。 「だめ……」 「なんでだよ。この前はいいって言っただろ」  だめだと繰り返しても、誠司は聞かなかった。強引に肌を暴いて所有の証を刻みつける。 「だめ……」 「あんな話をされて、我慢できるわけないだろ……っ、ロンドンに来たかっただと……?」  首を噛み、兆した欲望に千春の手を導く。熱く湿った感触に、また泣きたくなった。 「千春……」 「や……っ」 「千春、千春……」  鎖骨から胸へ、いくつもの赤い痕を残しながら、誠司は何度も千春の名前を口にした。何度も何度も千春の名を呼び、「俺のものだ」と繰り返した。  千春は誠司のものだ。  それは、本当だ。だけど……。 「ひど……い……っ」  涙が溢れ出る。 「ひどい……。やだ……」 「何が、ひどいんだ」  ひくりと喉が鳴った。  千春は誠司のものだ。全部、誠司のものだ。それでいい。  同じものを誠司からもらおうとも思わない。けれど……。  誠司に触れてほしい、触れたいと願う、その願い自体が罪なのだ。それがわかっているのに、抗えない。自分の弱さが、苦しい。

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