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【11】-6

 ああ、と急に誠司は、合点がいったというように笑った。 「鬼木(おにき)さんのことか。彼女がどうかしたのか」  名前は知らない。けれど、その人のことだと頷いた。 「誠司さん、あの人と結婚するんでしょ」 「はああっ??」  今度は誠司が目を剥いた。  身体を起こし「いったいどこからそんな話が出てくるんだ」と千春をまじまじと見る。  千春は、ひと月半ほど前に母から聞いたのだと、泣きながら話した。 「お母さん、奈美恵おばさんと電話で話してた……。あと、有栖川さんと行ったお店でも、あの人と一緒にいるのを見た。結婚式の打ち合わせ、してた。今日も、新居を見に行ってきたんでしょ」  ちょっと待てと誠司が話を戻す。 「一ヶ月半前? なんで理恵おばさんが……?」 「だから、電話で奈美恵おばさんと話してたんだってば。その後で、誠司さんが結婚するんだって言った。ちゃんと、奈美恵おばさんから聞いたって、言ってたんだからね」   怒ったように言って、わっと泣き出す。 「ちょっと待て。あの人は、なんだってそんなこと……。つーか、おまえなんで、直接俺に確かめないんだよ」 「そんなことできないよ……!」 「だから、なんでだよ」 「せ、誠司さんの口から聞いたりしたら……」  ポロポロと涙が零れ落ちる。 「い、生きていけない」  盛大に溢れ出した涙に慌てて、誠司が「ああっ」とおかしな声を立てた。  それから、一度緩めていた腕で、きつく千春を抱きしめる。骨が軋んで、息ができなくなりそうだった。息などできなくてもいいと思った。 「せい、……」

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