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【11】-7
抗うことも受け入れることもできなくなって固まる。すると、千春の耳たぶを誠司が軽く噛んだ。
吐息のような囁きが脳に滑り落ちる。
「千春……、誤解だ」
「誤解……?」
「あの二人は、何か勘違いをしている」
何がどうしてそんな話になったのか、皆目見当がつかないけれどと、どこか脱力した声が耳元で流れる。
「誤解だよ」
こめかみに唇が押し当てられる。
大きな手で千春の髪を撫で、何度も額に口づけを落としながら、誠司が囁く。
「俺が結婚するわけないだろ。千春がいるのに」
「……僕?」
広い胸に千春をすっぽりと包み込んで、誠司はもう一度「誤解だ。結婚なんか死んでもしない」と宣言した。
「法律が変わらない限りな」
千春はまだ混乱していた。
「本当に……?」
「ああ。疑うなら、今から証明してやる。俺が、誰を、どれだけ愛しているか。ちゃんと思い知らせてやるから」
頬を両手で包まれて、長くて深いキスが与えられる。舌の先が触れ合い、上あごを舐められるたびに、身体の奥に悦びが生まれる。
千春は、おそるおそる、その愉悦に手を伸ばす。
(本当に……?)
そっと誠司の首に腕を回すと、強く抱き返されて、そのまま一緒に広いベッドに倒れ込んだ。
「千春……」
「誠司さん……」
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