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【11】-8
何度も唇を合わせ、頬や額や鼻の頭や髪に小さく口づけられ、途中まで剥ぎ取られていたシャツやジーンズをゆっくりと奪われ……。
千春は、ようやく、この温かい身体に触れていいのだろうかと、このぬくもりを愛していいのだろうかと、海の底に沈んでいた自分の心に、問いかける。
いいの?
誰のものでもないのなら……。本当に。
「誠司さん……、誠司さん……」
全部失っても、手放せなかった想い。
「好き……」
涙の痕を誠司の舌がたどり「バカだな」と笑う。
人の気も知らないでと、少しだけ拗ねた。
「辛かったのか」
頷くと、また涙が溢れる。
辛かった。心が死んでしまうと思った。
「千春……」
この上なく甘い声で名前を呼ばれ、誠司を見上げた。シャツを脱ぎ捨てる仕草に、息が止まる。心臓がドキドキとうるさく騒ぐ。
「俺は、全部千春のものだ」
千春の手が、綺麗な筋肉に覆われた胸の上に導かれた。手のひらに誠司の鼓動が伝わる。強くて、確かな命のリズム。
「僕の……」
「ああ」
その言葉が嘘ではないと知らせるように、熱い塊が千春の腹に当たった。そこもまた、強く脈動していた。
その楔を身体の裡に突き立ててほしくて、千春は回した腕に力を込めた。
「あ……」
同じように硬くなった千春の熱に、長くて大きな熱が擦り付けられ、誘われるように徐々に足が開いてゆく。
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