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 それが悪いとは言わない。人から評価されたいと思うのは当然だし、実際、彼らはしっかり仕事をする。  感じよく振る舞い、誰かを不快にさせることもない。客商売なら、それで上々かもしれない。 「でも、だんだんわかってきたんだ」  ドアの外に「OPEN」の札を出しながら、金井が続ける。 「自分がよく思われたいだけの優しさと、本当に相手に寄り添って、思いやってる優しさとはやっぱり違うんだよな。口先だけの言葉に返ってくるのは、その時だけの感謝の言葉だ。何も言わないで、自分の損得とは別のところで、誰かを気にかけていることは、すぐには伝わらないものかもしれないけど、でも、ゆっくり時間をかけて相手の心に届く。うちの常連さんが、何年もの間、飽きずに通ってくれるのはそういうことなんだと思った」  それは千春一人の功績ではないと思う。そう言うと、金井はクシャリと千春の髪を撫でた。 「千春のおかげだ。あの有栖川さんだって、千春のそういうところを買ってただろ?」  それから、「うちにはもう、十分に貢献してもらったよ」と言って、少し寂しそうに笑う。 「だから、誠司が返してほしいと言ってきたら、千春を返す。今度は誠司のために、働いてやりな」  それから金井は、「ところで、有栖川さんと言えば……」と、何かいたずらをした時の顔で笑う。「あの人の登場には、さすがのあいつも慌ててたな」 「有栖川さん? 有栖川さんが、何?」 「誠司があまりにもチキンだから、ちょっと焚きつけてやった」 「焚きつけてって……」  あの優しい紳士を利用したのかと睨めば、金井はひょうひょうと 「確かにあの人はいい人すぎたな。俺は途中から、なんなら千春は有栖川さんに嫁にくれてもいいかと思ってしまった……」 「思ってしまった……、じゃないよ。なんなの、金井さん……」

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