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【13】-2

 あの日、傘も差さずに雨の中を歩いた。誠司に腕を掴まれて、どこへ行くともわからずに……。 「駐車場にクルマとめてたのに、外に出たりしたのも……?」 「だから、頭に血が上ってたんだよ」  ムッとした声で誠司が言い返す。 「千春を、誰にも渡したくなくなったし、おまえを不幸にしてでも、奪いたいと思ったし、一緒に地獄に堕ちてもいいと思った……」 「地獄……」 「ああ」  思いがけない不穏な言葉に、少し驚いた。 「そんなこと、できるわけないけどな。……千春の幸せが俺の望みで、ほかには何もいらないと思ってたんだから……」  なのに、許せなかった。その割り切れなさが苦しかったと、誠司は言った。  千春も同じだった。  誠司の幸せを何より願っていたのに、そうすることができない自分が苦しくて……。ダメだと思っても誠司が欲しくて、心が二つに裂けそうだった。  なんだかひどく切なくなって、誠司の胸に頬を寄せた。パジャマの上からぎゅっと腕を回してしがみつく。  誠司が小さく笑う。 「千春……。最後に、ここで一緒に寝た日を覚えてるか?」 「中二の、夏が終わる頃……?」 「ああ」  台風の多い年だった。  もう嵐を怖がる年ではなかったけれど、風の音に怯えるふりをして、今と同じように誠司にしがみついていた。 「あの頃が限界だった」  耳元で誠司が囁く。

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