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【14】-2

「半透明のスクリーンパネルで目隠しをしようと思うんだけど、それだと、厨房からの見通しが悪くなるかしら?」  人の流れの多い入り口部分と客席との間に設ける仕切りについて、相談される。 「観葉植物か、低い間仕切りのほうがいい?」 「スクリーンパネルで大丈夫だと思います……」 「半透明って言っても、厨房側からはこちら側の客席がほとんど見えなくなるの……」 「ええ。でも、たぶん、ずっと厨房側にいることはないと思うし……」  店内を行き来する時間のほうが多いので、それほど目が届かないということはないと思うと伝えた。 「なるほどね。だとしたら、逆に、もっとしっかりした目隠しにしたほうが、お客様は落ち着くのかしら」  それにも、千春は「今のままで」と答える。 「姿が見えなくても、人がいるのがわかれば、なんとなく気にするんです。だから……」  了解、と鬼木が納得するまで、何度かやり取りを繰り返した。  店の雰囲気は明るくカジュアルで、先日のヌーベル・シノワのような目を引く要素はあまりない。あれだけ芸術的な内装も手掛ける人なのに、鬼木はあくまで施主のニーズを優先し、今回は敢えて癖のない店づくりに徹している。  癖はないけれど、平凡でも単純でもない。地中海の明るい日差しや、春のおとずれを感じるような、明るく温かく品のいい店に仕上がっている。  そして、使い勝手へのこだわりが半端ではなかった。  聞けば、仕事ごとに、かなり徹底して内装の戦略を決めているらしい。  ヌーベル・シノワの月明かりのような照明は、エスコートする側がさりげなく相手に手を貸せるギリギリの照度を計算していると言う。恋人同士の利用が八割以上の店ならではの、攻めた造りなのだと教えてくれた。 「あのお店では、暗さという欠点は、必要な欠点なのよ」

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