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伝統のあるこの大学は、人口の多い都市に建っている割には広い敷地面積を誇っている。建物はいくつかあり、場所によって役割が異なっている。研究室の集まっている建物、教室の集まっている建物。
奏たち含め、部活やサークルの活動場所として部室棟がある。しかし、団体によっては人数が多すぎて入り切らない。そのため、空き教室を活動場所として貸し出して使うことも可能である。写真部はかなり人数が多いため、その対象になっている。
慣れた足取りで奏は『4』と書かれた建物へ入っていった。目の前にある階段を上り、二階に着くとすぐにトイレへ入る。空調もないこの空間は熱の籠もった場所であまり長居したくない。それでも、直射日光が当たらないだけ多少は涼しかった。
そそくさと水道の前に立つと、蛇口を捻り勢いよく水を出す。かばんとカメラを後ろに回し、冷たい水が出始めた頃合いになると、そこへ奏が頭を入れる。水は汗と混じり、髪の毛を濡らして顔まで垂れていく。顔を左右に傾けて全体を濡らしていく頃には、シャワーを浴びたようにずぶ濡れになっていた。
シャツまで水滴が飛んで濡れた頃になってようやく満足したのか、水を止めた。ポタポタと水滴の垂れる頭をその場で止め、かばんの中へ右手を入れて何かを探している。
そこから取り出したのは、フェイスタオルだった。頭からすっぽりと被ると、ガシガシと手を動かして水気を拭き取る。水分は髪からタオルへと移動していき、今度はタオルが湿っぽくなるが、元が冷たい水だっただけあって少しひんやりとしている。
「ふぅ……」
あらかた拭き取ると、タオルを首に掛けてトイレを後にした。
廊下に戻り、活動場所の教室を目指して歩き出す。
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