3 / 5

3

 カシャッ──  目の前にはカメラを構えた青年がニヤリと笑って立っている。彼はファインダーから目を離すと、まっすぐ奏を見つめた。 「水も滴るいい男、ってか」 「……なんだよ、りゅう。ストーカーか?」 「まあな。……ってのは半分冗談で、廊下出たらお前の姿見つけたから待ってた」  りゅうと呼ばれた彼──竹本龍司は笑顔を保ったまま、奏の隣に並んで歩き出した。 「うわっ、ストーカーと変わらねえだろ」 「そんなこと言うなよ。それよりも奏、すげー濡れてるな」 「今日やけに暑くねーか? さっきトイレで水被ってた」 「なーる。でも、そんなみっともないと吉川にグチグチ言われるぞ」 「他人のことは知らねー」  そんな軽口を叩きながら歩いていると、目的の部屋に着いたようで二人の足はドアの前で止まった。奏がドアをガラガラとスライドさせて先に入っていく。 「ちわーっす」  奏の挨拶に先に来ていた部員がちらほらと反応を示して返事をする。奏の姿を見て一瞬驚きを見せている者もいるが、ほとんどの者はいつも通りかという反応をして戻っていった。

ともだちにシェアしよう!