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そんな中、奏がエアコンのよく当たる席に座ったところで髪を緩く束ねた女子がずかずかとやって来た。
「ちょっと麻生、あんたなんでそんなに濡れてるの!?」
「ん? 暑かったから水被った」
「水被ったって……。はぁ、呆れる」
「別に吉川には関係ないだろ」
「あんたが視界に入って見苦しい」
「俺は見苦しくない」
吉川がずっと奏が濡れていることに関して意見を言うが、奏には全く伝わっていないようだ。それでも必死に続けていることに、一年の後輩たちは驚いているが、三年の先輩たちと二年の同級生は呆れているようだ。そんな中、龍司だけは奏の横で笑いを堪えていた。
いつものように賑やかな状態が続いていると、教室の前のドアから誰かが入ってきた。Tシャツに半ズボン姿の眼鏡を掛けた男の手には、水滴の付いた袋がある。
その姿を見た部員は自ら挨拶していた。それに挨拶を返した彼は教卓の前に立ち、持っていた袋をそこへ置く。
「もー、こんな暑いのにさとちゃんとかなちゃんはまた喧嘩してんの?」
「角田さん! 麻生のやつ暑いからって水被って見苦しいんですよ!? 信じられない」
「まあまあ。さとちゃんがそんなに怒ってるとみんな暑いからちょっと落ち着こ? それに、今日は俺の奢りでアイス買ってきたよ。今日はアイス食べながら話し合いしよ」
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