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第10話

驚いて見れば、脚に大きな蛇が噛みついている。慌てて振り払うと、落ちた蛇は何本か下の枝に絡みついた。 いくら大きいと言ってもおらを丸飲みには出来んだろうに。物思いにふけるうちに木を登っていた蛇をおらが蹴りでもしたか?そうだったら、ごめんよ。 そんなことを思ううちに噛まれたところからどんどん体に痺れが回り始めたことに気が付いた。 これはまずい。(はよ)う毒を吸いださんと。しかし、噛まれた箇所が悪く口が届かない。出来る限り手で血を押し出そうとするが木の枝の上という不安定な場所ということもあり上手くいかない。 全身に痺れが回る前に、木から降りなければ。 痺れが広がりつつある体で降り始めたところで、運悪く祠から里の人達が出てきた。見つからないようにしなければ。この体で見つかって打ちのめされたら……。 しかし、焦る気持ちと痺れのせいで、いくらも降りないうちに佐助は足を踏み外してしまった。 落ちる! この高さから落ちたら、きっとただでは済まない。 だが、地面に叩きつけられると身構えた体は、ふわりと誰かに抱き留められた。 「なんじゃ、今の音は?」 物音に気付いた里の人が声を上げたとき、大きな(とび)が枝に絡んでいた蛇を鋭い鉤爪で捕え、参道へ叩きつける様に落とした。 里の人達が大きな蛇に驚くうちに、舞い戻って来た鳶がもう一度両足で蛇を掴んで、飛び去った。 「大きな蛇じゃったのう」 「鳶も大きかったわ」 そんな風に話しながら里の人達は山を下って行く。 見つからずに済んだ。ほっとしてやっと佐助は自分が大きな男に抱きかかえられていることに気付き、慌てた。 里の人が思わず落ちてきたおらを見て助けてくれたんか?だが、助けたのがおらだと分かったら……怯えて身をすくめたとき、 「蛇に噛まれたか」 落ち着いた声が降って来た。と、同時にそっと地面に下ろされる。 逃げなければ。 だが立ち上がる前に、男は佐助の右足を持ち上げると、蛇に噛まれた跡に口を付けた。 驚愕する佐助をよそに男は傷口から血を吸いだしては、地面に吐き出すことを何度か繰り返した。 「大丈夫だ。この毒は暫く体が痺れるが死んだりはしない。少し休んでいるといい」 このときになってやっと、佐助は男のいで立ちが随分と変わったものであることに気が付いた。 見た事も無い衣を身に着けている上に、女の様に長い結わえていない豊かな髪がしろがね色に光り輝いている。 そのまま立ち去ろうとする男に、佐助は縋る様に声を掛けた。

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