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第22話

……おらと……出会わない方がよかった? 嵬仁丸の言葉は佐助の胸に鋭く突き刺さった。 その痛みに両の目からつうと涙が零れる。 おらは嵬仁丸様が大好きで頭の中は嵬仁丸様の事でいっぱいじゃけど、嵬仁丸様はそうでないんだ。 本当は今までおらが押し掛けてくるんで仕方なく相手してくれとったんかな。おらと知り合うたこと、一緒に過ごすようになったことを、面倒やと悔いとったんかな。 もうその日は獣と遊ぶ気にもなれず、佐助は涙を拭って立ち上がった。 だが、とぼとぼと小屋へ帰る道のりも嵬仁丸の言葉を思い返すたびに哀しくなってぽろぽろと涙が零れてしまう。 こんな泣きはらした顔は婆様に見せられないと、寒い中、沢で水浴びをして帰った。 それから月見が原へ足が向かなくなった。 「今日は出掛けんのか?」と婆様に尋ねられてから、いつも通り小屋は出るけれども沢で魚を獲ったり、あてもなく山の中を歩き回って時間を潰した。 『出会わぬほうがよかった』 何をしていてもその言葉が浮かんできて、胸が痛くなる。 毎日あんなに浮かれて月見が原に通い、嵬仁丸様に会えるのが嬉しくて仕方なかったのに。 でも、きっとおらがいけなかったんじゃろな。初めて婆様以外に人らしく扱ってもらえて舞い上がってしもうたんじゃ。きっと自分のことばっかりだったんじゃ。 いつもは聞き過ぎぬように気を付けていたのに、あの日は変に突っかかってしまった。嵬仁丸様の優しさに甘えて、いつの間にか図々しく分を(わきま)えなくなっていた自分が悪いのだ。 ずっとそんなことばかり鬱々と考えて、溜息が漏れてしまう。 せっかく好物のアケビを見つけたのに、少しも味がしなくて半分でやめた。残りは鳥たちにやろうと手近(てぢか)な木の枝に刺したとき。佐助の耳が物音を捉えた。

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