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第2話
「アユム……」
「ヒロ、コーヒーは?せっかく淹れたんだから冷める前に飲もうよ」
「もう、コーヒーなんてどうでもいい」
ええ……。安っぽいインスタントコーヒーの味、俺は結構好きなのになあ。
「ンッ……」
まだ何か言おうとした唇を強引に塞がれた。麦茶は飲んだけど、まだ口の何処かにパスタソースが残っているかもしれないのに。
でもヒロも同じものを食べたから、気にならないのかな。
「ンッ、ふ、ァ……」
口付けがだんだん深くなる。チュ、チュ、と可愛く触れ合うだけのものから、柔く噛み合って、そのうち舌を出して互いに追いかけるように絡めていく。
熱くてニュルニュルした舌の感触が久しぶりで気持ちいい。 目を閉じてキスに夢中になると、身体が芯から熱くなってくる気配がする。
ヒロは立っていて俺は座ったままだったけど、ヒロの首に腕を回すと腰を抱かれて、そのまま立たされてソファーまで誘導される。ドサリとソファーの上に座らされると、ヒロが俺の上に被さってきた。
「あ、ヒロぉ……」
「アユム、今すぐ抱きたい」
口端に垂れた唾液をぐっと手の甲で拭いながら、飢えた獣のようにギラギラした目を俺に向けてくるヒロに胸が震える。――でも。
「先にシャワー浴びたいな……ダメ?」
「駄目だ」
ヒロの、こうやって切羽詰まった感じで強引にコトに及ぼうとするところ、俺は嫌いじゃない。記憶を失くしている間など――俺が本当に嫌がっているのだと分かったらすぐに止めてくれたし、つまり今の俺は全くそんな風には見えないのだろう。
まあ、嫌がってはいない……けど。
ただ、こういうことになるとうっすら分かっていたから、帰ってから即シャワーを浴びるべきだった。でも、そうするとヤル気満々って感じがして少し恥ずかしかったというか……。
ヤル気も満々だけどね。
「そのままのアユムを味わいたいんだ、久しぶりだからな」
「ヒロ、その発言結構オヤジっぽいよ?」
「俺はもう立派なオヤジだよ、アユムが一番よく知ってるだろう?」
「うん……」
そう言いながら、ヒロはスウェット越しの俺の下半身に触れてきた。服の上から形を確かめるように優しく撫でられれば、既に半勃ちだったそこはみるみるうちに硬くなった。
「あっ……」
「ほら、アユムだってもう興奮してる」
「そりゃあするよ。ヒロに触られてるのに興奮しないわけないじゃん」
少し拗ねたように言うと、ふとヒロが腑に落ちたような顔をして言った。
「……あんなに触れても、一度も後ろに頂戴って言わなかったから、本当に記憶喪失だったんだなぁ、アユム」
「だからそうなんだってば!ねえ、あんまり焦らさないでよ……」
上目遣いで、ヒロのワイシャツのボタンを外しながらおねだりすると、ヒロの男らしい喉仏がゴクリと大きく上下した。
それを見て、俺の唇は弧を描いてしまう。
ヒロは本当に、素直な大人だね。
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