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熱*性描写
発情の症状は時間の経過とともに酷くなる。会議の際に突然膝の力が抜けた時よりも、フリードは己の中の欲求が幾倍にも膨れ上がっていることを自覚していた。
クセルの指が裸の肌をなぞる度に、身体の奥底の淫靡な炎が揺れる。腰から項にかけて痺れが走り、少しの接触で身体が強張り息が荒くなる。声を漏らさぬよう息を詰めながら、真上から見下ろす男の顔を見上げた。
「……っおい、押し付けんな」
「はい?」
「当たってんだよ。気色悪いからやめろ」
仰向けにベッドの上に転がるフリードの腰の上に跨がるクセル。その硬くなった股間が、偶然なのか故意なのかフリードの下肢に押し付けられていた。気色が悪いと言いながらも、昂った身体は男の興奮を感じ取りその興奮を共有しようとする。
「すいませんね。でも仕方ないですよ。人狼族のフェロモンに当てられたら誰でもガチガチになります」
弁明しながらクセルは腰をぐっと押し付けた。布地がピンと張るほどに屹立した一物が、同じく既に勃起していたフリードのものを刺激する。通常時であればそんな些細な刺激でさえ今のフリードには酷で、性器に与えられた快感に自分で制御する術もなく腰が揺れた。
「ッ、だから厄介なんだ……今の状態であいつらに近づく訳にはいかない」
「そうでしょうとも。夜にまた集まると言ってましたよね」
下肢を上下に擦りつけながら、クセルの手がフリードの褐色の肌を這う。厚い筋肉に覆われた腹を撫で上げ、盛り上がった胸を押し上げる。女の乳房にするように掌で揉まれ、うんざりしながらも身に与えられる微弱な快感に堪えた。
「耐性のある俺でこうなんですから、人狼族の発情期なんか見たことない奴らに近づいたら迷惑極まりないですよ。特にあの金髪のガキなんて童貞臭いし」
「俺が発情してると知った途端に殺しにかかってきそうだがな」
「そんなに憎まれてるんです?」
「一度背後から襲われたぞ」
「へえ、それはまた度胸ありますね」
度胸があるというより向こう見ず、理性よりもフリードへの憎悪が勝っただけだろう。クセルは感心しながら愛撫を施す。丁寧なほどの仕草は火照った身体には焦れったく、眉根を寄せて男を仰ぐ。
「そういうのはいらねえ。まどろっこしいのは抜きだ」
「早く俺の突っ込んで欲しいってことですか?」
「別にお前じゃなくてもいいんだが、早く楽になりてえってことだ」
「はいはい、承知しましたよ」
クセルは口を尖らせ、胸や腹を撫でていた掌を下方へ滑らせた。辿り着いた先で主張していた屹立を下履きの上から鷲掴みにされると腰が大きく跳ねる。薄ら笑いを浮かべたクセルは下履きの縁に手をかけ下へ引っ張った。
「苦しそうだし一度出しちまいましょう」
下着と一緒にずり下げられると、布を張っていたものが勢いよく頭を出した。剥き出しになった亀頭を滑る布の摩擦さえも強烈な快感となり、熱い吐息が唇から零れる。
「ガチガチじゃないですか。みんなの前で勃起してなくてよかったですね」
「死んでもするか……」
「先っぽも濡れてますよ」
いちいち言わなくていい、そう文句を垂れる前にフリードは息を飲み込んだ。クセルの骨ばった手が天を向いて屹立しているペニスを鷲掴み、親指で亀頭の先をぐっと押し込んだのだ。クセルの言葉通り先端はすでに潤んでいて、ねちねちと透明な液体を擦り込むように親指だけで敏感な場所を刺激してくる。ぶるりと身体中に震えが走り、フリードは硬いベッドの上で見悶えた。
「ぁ、は……ッ、ア!」
「え、嘘もういっちゃいます? 早くないですか?」
「黙、れ……っん、あ」
布越しに触れられるのと直に刺激されるのとでは与えられる快感がまるで違う。ましてや発情期だ、平常であれば多少の慰めにしかならない愛撫も、今のフリードには強烈な快感に変わる。
先走りでびしょびしょに濡れた亀頭全体をクセルの掌が包み込み、液体を撫で付けるように優しく揉む。赤黒く充血した亀頭の鈴口ははくはくと収縮し、早く解放したいと涙を流している。
「ゥう、それ……ッ」
「何です? 先っぽだけじゃ足りない?」
「違う……、ゃ、ア、あ、出る、出る、――ッ」
腰を震わせながら、フリードはそそり立ったペニスの先からびゅっ、びゅっ、と精液を吐き出した。粘着質な白濁は数回に分けて吐き出され、シャツの裾とクセルの手を汚した。
一度射精しただけで熱が収まらないのが発情期だ。達したそばから、刺激していないにも関わらずフリードのものは再び芯を持ち始める。
「早いですね」
「ぁあ、クソ……」
「どうします? もっかい出したい?」
にゅち、にゅち、とペニスを弄びながらクセルが問いを落としてくるのを、生理的な涙で霞む視界で仰ぎ見る。小さく頷きを返したものの、白々しく眉尻を下げた男は「うーん」と曖昧に唸った。
「すいません俺もはち切れそうなんで。入れる準備させてください」
同意を聞く前に、クセルは性急な手つきでフリードの下履きをずり下ろした。腰上げてください、という言葉に素直に従うとあっと言う間に下着ごと膝まで下ろされる。
「足曲げますよ」
「ん……」
膝元に纏わりつく衣類もそのままに、足首を持たれて膝を折り畳むようにグイ、と曲げられる。露になった会陰と孔が心許ない。
「ちょっと自分で足持っててもらっていいですか?」
「要求が多い……」
「それとも俺が支えてるんで、自分で広げられます?」
ここ、と囁きながらクセルの濡れた指先が孔の周辺をぐるりと撫でる。ぐにぐにと解すように粘膜のすぐ近くを揉まれ、淡い期待に腰がかすかに揺れる。そこで得られる快楽を思い起こして背筋が震える自分に辟易しながらも、フリードはクセルに言われた通りに自分の腕を膝裏に回した。
「腕疲れるから、早くしろよ」
「はいはい。力抜いててくださいね」
言うや否や、フリードの精液で濡れた指先が閉ざされたそこに侵入してくる。思わず締め付けそうになるのを意識的に息を吐いて緩め、骨ばった指を柔肉で飲み込む。
ここを他人に触られるのは久しぶりだった。訪れる発情期の大半は薬でどうにか鎮めることができる。抑制剤を用いてもどうにもならない時は、手近で従順そうな兵士を引きずり込んで尻を借りていた。
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