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理由*性描写

 長い射精が終わり瞼を上げると、涙で霞む視界の中、息を押し殺しながら見下ろしてくる青年の上気した顔が見えた。達したばかりのフリードのペニスは再び勃起し、はしたない姿を見つめる青年の視線に期待しびくりと震える。 「もっと……全然、足りねえ」 「っ……」 「ぁ、ひっ! ぁア、……ンっ」  ずちゅ、と熱い楔が打ち込まれる。先走りやら中から漏れ出た精液やらで濡れた尻と、ツチラトの下腹の肌がぴったりと触れ合い、奥まですべてみっちりと埋められたのだとわかる。張り出た亀頭で最奥を小突かれると、瘧のような震えが項と背筋を駆ける。 「はぁ、あ……、奥…っ、いい……っ」  発情の衝動は、一度や二度達したばかりでは到底治まらない。酷い時ではクセルと一晩中繋がっていたこともある。身体の熱は冷めやらず、むしろ激しく犯されて達したいという欲求は強まっている気がした。  中を擦るツチラトのペニスをもっと感じようと肉襞で締め付けた時、頬にずるりと熱い塊が擦り付けられた。 「あ、……なに……っ?」 「俺だって隊長の中に突っ込みたいんですがね、童貞のツチラト殿があまりに夢中なようなので」  青臭い匂いのするそれはクセルのペニスだった。ずり下げた下履きから飛び出した屹立は硬く勃起し、露出した亀頭の先は先走りで濡れている。 「ツチラト殿のもの気に入ったみたいですけど、俺のも好きでしょ?」 「ん、む、ぅ……ッ」  興奮気味に熱い息を吐き出した男は、フリードの同意を得る気などないようで、返事を聞く前に熱塊を口に捩じ込んできた。 「お願い、舐めて……」  熱い吐息を溢すクセルのペニスの先端が、濡れた舌の根に擦り付けられる。所在なかった手で竿を掴み、充血した先端をぺろりと舐めると先走りの苦い味がした。  竿をゆるゆると扱きながら、くびれに吸い付き大きな亀頭を口に含む。音を立てながら先端を含んだり出したりすると、切れ目にぷっくりと透明な汁が浮かぶのをちゅう、と吸う。びくりと揺れるペニスを丹念にしゃぶっていると、下で咥え込んでいたツチラトのものが入り口から最奥まで一息に貫いた。 「あアっ……」  その衝撃にクセルのペニスが口から離れ、涎で濡れた顎を滑る。奥まで行き着いたペニスがずる、と抜けて行く感覚にぞくぞくと背筋が震える。抜けちまう、そう思った瞬間それは再び肉を開いて奥まで進んできた。ツチラトの手はフリードの膝裏を掴み、浅い息を突きながら激しい抽挿を何度も繰り返した。その様子をじっとりと見つめながらクセルが唇の端で笑う。 「あんなに嫌がってたのに、すっかり虜みたいですね?」 「うるさい……っ、あんたが言ったんだろ、効果的な復讐だって」 「それで、憎しみはいくらか晴れました?」  揶揄するようにクセルの問いかけにツチラトは答えない。その代わりに腰を乱暴を打ちつける。 「ぃ、あ、……ッあ、あ……!」  中を穿つ速度は徐々に早まっていく。絶頂を迎えるためだけに腰を打ちつけ、瞼を伏せて呼吸を乱している姿を見上げ、喉から漏れる喘ぎの合間にフリードは笑った。 「ふ、っ……は、はは……っ」 「何か、おかしいことでもあるか……っ」 「……、親の仇の、尻はどうだ……?」  ぐん、と首が仰け反る。唐突に喉元が苦しくて呼吸ができなくなる。 「が、は、……ッ」 「黙れ、この……!」  喉仏が圧迫されて痛い。頭の奥がジンと痺れていくのは酸素の供給が絶たれたからか、それとも激しく突き上げられているからだろうか。どこからかクセルの珍しく戸惑ったような声が聞こえるが、じきにわからなくなる。  周囲から黒く侵食されて狭まっていく視界の中に、憎悪に顔を染めながらフリードの首を締め付けるツチラトが見える。意識が徐々に遠退くのを感じながらも、フリードの身体は肉を裂くような強烈な快感を受け取っていた。 「が、あ゛ぁ、……ッ――!」  頭の中が真っ白に染まる。爪先が痙攣している。正体がわからなくなるほどの激しい絶頂感に襲われ、フリードは喉を絞められたまま声もなく喘いだ。神経が焼ききれるような感覚は長く続き、開いた唇と舌を引き攣らせてそれが終わるのを待った。  不意に空気が喉へ入り込み、大きく噎せる。その合間、ツチラトは腰を最奥まで捩じ込んだまま動きを止めて、仇の首から離した手でその横のシーツをぐっと掴んだ。奥歯を軋ませて声を噛み殺し、うねり締め付け収斂するフリードの中に吐精する。 「くそ、こんな奴に……っ」  ぽたり、と。生暖かい滴が頬に落ち、フリードが咳き込みながら涙で霞む視界で見上げると、青年の目の縁から再び滴が零れて落ちた。 「何で、お前は……」  荒れた呼吸を整えながらツチラトが喘ぐ。いまだに違和感のある喉に息を通し、フリードは傍らのクセルの視線をやった。 「……クセル、水」  下肢を露出させたままの男が目を瞬かせる。 「はい? マジですか?」 「持って来い。今」 「俺こんな状態なんですけど?」 「水。聞こえなかったか?」  酷くしゃがれた声で再度要求すると、クセルは長い息を吐き出し「そりゃないですよ」と文句を垂れてから身を整えた。 「ありえねえ……俺、まだ何もしてない……」 「早くしろ」  ぶつぶつと低く文句をたれながら、クセルがベッドから降りて離れて行く。部屋の扉が閉まる音がして、蝋燭の炎がかすかに照らす薄暗い空間は、息を整える獣の息遣いだけが残される。  身体の熱が引いた訳ではなかった。吐精したが、少しの煽りで厄介な獣欲は再び呼び戻される。じりじりと内側を焼く欲望を意識しながら上を仰ぐと、ツチラトははっとして目元を擦り、おもむろに腰を引いた。 「ん、……っ」  芯を失ったものがずるりと肉襞を擦りながら身体の外に出ていく感覚さえも、小さくなりかけた熱の炎を燃やそうとする。腹の中に吐き出された白濁がともに溢れ出す濡れた感触に、フリードは無意識に熱い吐息を吐いた。 「……とんでもねえ時に来ちまったな、お前」  丸めた背を向ける青年に、乾いた笑いを滲ませながら声をかけるが、息遣いの音が聞こえるのみで反応はない。  会話を期待しているのではない。青年が言葉を交わせるような心情ではないことは理解している。 「はぁ、……ッ」  汗ばんだ身体で身じろぎし、しとどに濡れた脚の間に手を這わせる。どろりと粘着質な液体が溢れる窄まりはまだ熱を持っていて、自身の指先で触れると期待に入り口を引き絞る。  ぬちゅ、と水音を立たせる精液を掻き出すため中で指を折り曲げる。今の今までこの青年に犯されていた身体の中は、熱くうねって酷く濡れていた。  解放できない熱を溜め込んだ身体をこの青年に貫かれるのは酷く気持ちよかった。硬く、大きく張り出た亀頭で敏感な部分を突かれ、最奥を抉じ開けるように押し込まれると、肌が粟立った。抑えきれない憎悪と抗えない欲望で歪んだ顔に見下ろされると、酷く興奮した。  発情期の人狼の身体は見境がない。相手が気に食わない生意気なガキだろうが、自分を殺したいほど憎む青年だろうが、関係なく情欲を煽り受け入れる。もっとも、身体の中に入り込むことを許したのはクセルと、ツチラトだけだった。  ゆっくりと指を引き抜くと、二度も吐き出された精液が赤く腫れた縁からとろとろと溢れ出した。排泄に似た感覚に、息を詰めてやり過ごす。 「……何で」  かろうじて耳に届いた声は掠れ、震えていた。 「……あ?」  鎮まらない熱に辟易しながら、か細い声を落とした青年の後ろ背を見やると、細かく震える肩が目に映る。 「何で、俺を助けた」  またか、とフリードは浅く嘆息した。 「馬鹿みてえな質問はやめろ」 「何だと……」  肩越しに振り返ったツチラトは、しかしすぐに顔を背けた。フリードの脚の間を濡らす自身の放った欲望を目にし、ばつが悪そうに目を伏せる。  どうして助けたのか。フリード自身も自問した。考えるより先に、身体が動いて城壁を上って歩廊へ出ていた。こんな面倒で生意気なガキ、死なせておけばよかったものをと思う。そうすれば、命が脅かされることも、厄介な言いがかりをつけられることもなくなる。  城壁から投げ出されたツチラトの腕を咄嗟に掴んでいた。恐怖に顔を強張らせる青年に、俺を見ろ――などと口走らなかったか。 「味方だからに決まってんだろ。……それ以外の理由はねえよ」  そのままの意味だった。以前は、コールマン軍に属するフリードは敵であったが、ガーランドに投降した今は同じ陣営に属する味方だ。たとえ憎まれていたとしても、目的を同じにする味方だ。窮地から命を救う理由は、それだけで十分な筈だ。 「……俺は、お前の命を狙ったんだ」  静寂の中、ツチラトが消え入りそうに呟く。 「だから何だよ」 「俺なんか、放っておけばよかったのに」 「……ああ、そうだな。今後悔してるとこだ」  放っておけば、こんな風に問い質されることもなかった。表情の見えない華奢な背中を一瞥し、フリードはわずかに瞼を伏せた。

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