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第3話

そう思い泣き続けるいつもの昼休みに 変化が訪れた。 けれど僕は泣いてて気づかなかった。 忍び寄るひとつの影に。 「おい。」 ビクッ 少し低めの声が聞こえた。 驚いて肩をはねさせて上を見上げた。 ____狼だ。 そんな第一印象だった。 高い背に真っ黒な髪。 整った顔には釣り上がった目尻。 少し着崩したシャツのすき間から シンプルな赤い石のネックレスが 顔を覗かせていた。 首にかけられたネクタイの色は 僕と同じ色だから同学年だ。 そんな彼に驚きで固まっていた。 「ピーピー泣いてんじゃねぇよ。」 目の前の彼に強めに言われ、 弱虫でビビりで臆病な僕は 更に体を固まらせた。 「ご、ごめんなさい…すみません…。 静かにします…ごめんなさい……。」 ビビった僕はひたすらに謝った。 「チッ。おいお前、手を出せ。」 怒られるのが怖くて急いで手を出すと コロン と手の上にミント味の飴が置かれた。 「やるよ、じゃあな。」 それだけ言って彼はすぐにいなくなった。 彼に貰った飴は心を癒すような 甘さのある飴では無かったけれど そのミントの爽やかさは 心のわだかまりを取り除いて 心を軽くしてくれるような気がした。

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